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第二章 旅と王都

第二十五話 胸を痛めるゼス(ゼス視点)

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「彼女は、長旅で疲れているんだ。だから、俺は半身の健康を優先させた。ただそれだけだ」


 説明といっても、それは予め父上と母上との打ち合わせ通りの答えだ。


「なっ、兄上ともあろうものが、半身を優先させるのですか!?」

「その言葉、そっくりそのまま返そう。お前達は、俺が眠りに就くと思って、随分と勝手をしたらしいな。それも、半身のために」


 ギロリと睨めば、ルキウスはビクッと怯む。
 刺客は、ルキウスの指示で送られたもの、というのが、刺客達本人の答えだった。もちろん、実際はジェスが送り込んでいて、ルキウスではない可能性もあったし、全ての刺客達に聞いて回ったわけでもないので、実際のところはジェスとルキウスが半々で送り込んでいる可能性が高い。しかし、刺客の証言がある以上、ルキウスは今後大きく立ち回ることはできなくなるだろう。


「ははっ、何のことやら。私が兄上に何かをするわけがないじゃないですか」

「誰も、お前が俺に何かをした、という話はしていなかったがな?」

「っ、いえ、これは、言葉の綾というもので……」


 苦しい言い訳を続けるルキウスに、俺は、大きく息を吐く。
 本当は、俺達は仲の良い兄弟だった。それが狂ったのは、ジェスとルキウスが同時期に見つけた半身のせいだ、というのが、俺と父上達の見解だ。歴史上、半身によって狂わされた王族は存在しない。と、いうよりも、ついこの前にネリアさんの件で訪ねて来た観測者によると、本来の人格を歪めるような半身はそもそも存在しないとのこと。半身は、相手の足りない部分を補い、支え合える存在であり、どちらかが何かを強要して、その心を歪めようとするのは半身ではあり得ないという話も聞いている。


「現在、俺を襲った刺客達の一部は、この城の牢屋に入れてある。どんな証言が得られるのか楽しみだな」


 我ながら性格が悪いと思いながらも、そう告げれば、ルキウスもジェスも青ざめる。やはり、ジェスも俺に刺客を送り込んでいたらしい。その事実に、ズキリとした胸の痛みを感じるものの、とりあえず、二人には俺を殺そうとした罪で牢屋に保護しておく必要がある。真の敵はきっと、二人ではないのだから。


「うむ、ゼスよ。ひとまずはその辺にしておくように。そして、半身の体調が戻った時は、必ず紹介するのだぞ」

「はい、もちろんです」


 そうなると、今必要なのはネリアさんの目を治せる人物だ。そのまま、少し話が続いて、謁見が終わると、俺はすぐに、その人物の元へと急いだ。
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