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第一章 幼少期編
第二十二話 魔境
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「にゃんとか、にゃっちゃ……(何とか、なった……)」
鋼の巨体に巻き込まれた時は、本当にどうなることかと思ったものの、急いでエアークッションの魔法が入った魔石を取り出して使用したことで、私達は地面との激突は免れていた。しかし……。
「ぐすっ、ずずっ、ユミリアぁっ、よ、よがっだよぉぉおっ!」
『ふ、ふん、お前がどんくさいのが悪いんだっ! 少しは反省しろっ』
右手には、私にくっついて号泣しているもふもふ……鋼と、左手には、私の袖をギュッと握りしめ、そっぽを向きながらもブルブルと震えているセイ。どうやら、二人にはとても心配をかけたらしい。
妖精の森とは異なり、随分と暗い森の中、私はそっと口を開く。
「わちゃしは、だいじょーぶっ。ちんぱいちてくりぇちぇ、ありあちょー(私は、大丈夫。心配してくれて、ありがとう)」
両手が幸せで不自由になってしまっているため、私はとにかく感謝を告げる。
そうして、しばらくすると落ち着いたのか、まずはセイが手を離して……。
「っ、しぇい!? (っ、セイ!?)」
セイは、地面にまともに降り立つのではなく、そのまま倒れ込んでしまう。
「しぇいっ、しぇいっ!? (セイっ、セイっ!?)」
「うっ、ユミリア……ぼく、も……」
「みゅっ!? こうっ!? (みゅっ!? 鋼っ!?)」
ドサリと音を立てて、鋼までもがその場で倒れる。
「みゅっ、みゅうぅぅうっ!?」
なぜ、二人が倒れてしまったのか分からず、私は戸惑うことしかできない。
(毒? いや、でも、それなら私だって危険なはず。あ……毒の耐性が効いてる、とか?)
それならば、解毒の魔法をかければ大丈夫なはずだと、デトックスの魔法をかけるが……。
「ちかにゃい? (効かない?)」
デトックスの魔法は、効果があれば対象が少し光るのだが、今回、それはなかった。つまりは、毒は毒でもデトックスではどうにもならない毒か、毒以外の何かが原因ということになる。
「……ぱりゃりゃいじゅちゃんしぇりゅっ(パラライズキャンセルっ)」
試しに麻痺に効果のある魔法を使ってみるものの、それも効果がない。
「み、みゅう……」
どうすれば良いのか分からず、私は幼い姿に精神が引きずられて泣きそうになる。
(落ち着け。まずは、話せるうちに症状を聞いて、対策を考えなきゃ)
「しぇい、こう、はにゃしぇりゅ? どこかいちゃい? くりゅしい? (セイ、鋼、話せる? どこか痛い? 苦しい?)」
『ち、が……魔力、吸われ……』
「この土地……魔力、吸い出して、る……」
「っ、まりょく、こかちゅっ!? (っ、魔力、枯渇っ!?)」
何が原因だと思って、辺りを見れば、すぐにそれに気づく。
「まにょみ……(魔の実……)」
暗いこの森の至るところで実っている青いリンゴサイズの木の実。それは、その土地の魔力を吸い上げて実る木の実であり、群生した場合、生き物の魔力すらも吸い取るとされている。
(これは……不味いっ!)
私は、何やら魔力がカンストしているらしいので何ともないが、早く避難しなければ、セイと鋼は死んでしまう。しかし、さすがの私も、何の情報もない魔境で、二人を守りながら、抱えながら探索する、なんていうのは無謀だった。
(上には、登れない。魔法を使ったとしても、この世界には十メートル飛べるくらいの魔法しかないっ)
しかも、転移の魔法はなぜか使えない。いや、本当は分かっている。『コツ生』では、新しい場所に来た場合、その場所で二時間経たなければ転移魔法は使えないのだ。普段なら何ともないその制約は、現在、致命的な弱点となっていた。
(どう、すれば……)
絶望的な状況に青ざめていると、ふいに、足に何かが触れる感覚を覚えた。
鋼の巨体に巻き込まれた時は、本当にどうなることかと思ったものの、急いでエアークッションの魔法が入った魔石を取り出して使用したことで、私達は地面との激突は免れていた。しかし……。
「ぐすっ、ずずっ、ユミリアぁっ、よ、よがっだよぉぉおっ!」
『ふ、ふん、お前がどんくさいのが悪いんだっ! 少しは反省しろっ』
右手には、私にくっついて号泣しているもふもふ……鋼と、左手には、私の袖をギュッと握りしめ、そっぽを向きながらもブルブルと震えているセイ。どうやら、二人にはとても心配をかけたらしい。
妖精の森とは異なり、随分と暗い森の中、私はそっと口を開く。
「わちゃしは、だいじょーぶっ。ちんぱいちてくりぇちぇ、ありあちょー(私は、大丈夫。心配してくれて、ありがとう)」
両手が幸せで不自由になってしまっているため、私はとにかく感謝を告げる。
そうして、しばらくすると落ち着いたのか、まずはセイが手を離して……。
「っ、しぇい!? (っ、セイ!?)」
セイは、地面にまともに降り立つのではなく、そのまま倒れ込んでしまう。
「しぇいっ、しぇいっ!? (セイっ、セイっ!?)」
「うっ、ユミリア……ぼく、も……」
「みゅっ!? こうっ!? (みゅっ!? 鋼っ!?)」
ドサリと音を立てて、鋼までもがその場で倒れる。
「みゅっ、みゅうぅぅうっ!?」
なぜ、二人が倒れてしまったのか分からず、私は戸惑うことしかできない。
(毒? いや、でも、それなら私だって危険なはず。あ……毒の耐性が効いてる、とか?)
それならば、解毒の魔法をかければ大丈夫なはずだと、デトックスの魔法をかけるが……。
「ちかにゃい? (効かない?)」
デトックスの魔法は、効果があれば対象が少し光るのだが、今回、それはなかった。つまりは、毒は毒でもデトックスではどうにもならない毒か、毒以外の何かが原因ということになる。
「……ぱりゃりゃいじゅちゃんしぇりゅっ(パラライズキャンセルっ)」
試しに麻痺に効果のある魔法を使ってみるものの、それも効果がない。
「み、みゅう……」
どうすれば良いのか分からず、私は幼い姿に精神が引きずられて泣きそうになる。
(落ち着け。まずは、話せるうちに症状を聞いて、対策を考えなきゃ)
「しぇい、こう、はにゃしぇりゅ? どこかいちゃい? くりゅしい? (セイ、鋼、話せる? どこか痛い? 苦しい?)」
『ち、が……魔力、吸われ……』
「この土地……魔力、吸い出して、る……」
「っ、まりょく、こかちゅっ!? (っ、魔力、枯渇っ!?)」
何が原因だと思って、辺りを見れば、すぐにそれに気づく。
「まにょみ……(魔の実……)」
暗いこの森の至るところで実っている青いリンゴサイズの木の実。それは、その土地の魔力を吸い上げて実る木の実であり、群生した場合、生き物の魔力すらも吸い取るとされている。
(これは……不味いっ!)
私は、何やら魔力がカンストしているらしいので何ともないが、早く避難しなければ、セイと鋼は死んでしまう。しかし、さすがの私も、何の情報もない魔境で、二人を守りながら、抱えながら探索する、なんていうのは無謀だった。
(上には、登れない。魔法を使ったとしても、この世界には十メートル飛べるくらいの魔法しかないっ)
しかも、転移の魔法はなぜか使えない。いや、本当は分かっている。『コツ生』では、新しい場所に来た場合、その場所で二時間経たなければ転移魔法は使えないのだ。普段なら何ともないその制約は、現在、致命的な弱点となっていた。
(どう、すれば……)
絶望的な状況に青ざめていると、ふいに、足に何かが触れる感覚を覚えた。
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