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第一章 幼少期編
第三十三話 神霊樹の森 前編 (三人称視点)
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そこは、木で埋め尽くされた場所。木の中から木が生えて、土という存在が見当たらない場所。縦横無尽に木の枝が伸び、道を生み出したそこにとびきり小さな影と二つの大きな影が駆け抜ける。そう、それは、ユミリアと鋼、ローランだった。
「ユミリア様が、神々しい……」
「ユミリア、可愛い」
「みゅう?」
ユミリアの後ろを走っていた黒衣のローランと何かを背負った鋼の言葉に、ユミリアは走りながらも疑問符だけを浮かべる。現在、ユミリアは滅殺シリーズの装備を身につけている。
キラキラと光る美しい銀の法衣に、背中にはメカニックな翼、手を覆う手袋は、漆黒で、甲の部分には赤い半球が埋め込まれている。銀のティアラは、どこか冷たく感じるものではあったが、ユミリアの黒髪には良く映えており、それ以外にも銀のブレスレットとイヤリングがついている。ちなみに、背中の翼は飾りなどではなく、飛ぶ機能はもちろん、殲滅機能も備えている優れものだ。
「っ、じぇんぽう、ごちゃいにょまもにょっ(っ、前方、五体の魔物っ)」
「ここは、俺が!」
走りながら告げるユミリアに、ローランが即座に反応して、ユミリアを追い越す。そして、まもなくして現れたのは、五体のゴブリンだった。
「でりゃあぁあっ!」
現れたゴブリンに対して、ローランは黒い柄だけを持って襲いかかり、一瞬、青白い刀身のようなものが見えたかと思えば……次の瞬間には、ゴブリン達は悲鳴をあげる間もなく首を飛ばす。
「みゅっ、れーざーちにょうはもんだいにゃいみちゃい(みゅっ、レーザー機能は問題ないみたい)」
それは、剣と魔法の世界にあるまじき存在。レーザーブレードだった。もちろん、これもユミリア作だ。
「ユミリア様にもらった剣は、かなり特殊ではあるが、使い心地抜群だぞ」
「しょれはよかっちゃにょ(それは良かったの)」
「次は、ぼくの番っ」
「みゅうっ、にゃら、こにょしゃちにいっぱいいりゅにょ。じゅういち、かにゃあ? (みゅうっ、なら、この先にいっぱい居るの。十一、かなぁ?)」
その言葉に、今度は鋼がユミリアとローランを追い越して前に出る。そして、現れた花型モンスター、マンイーターを前に止まるとググっとその場で踏ん張り……背中の二つの細長いものが、その反動でガチャンっと音を立てて前に倒れる。
「殲滅する」
そして、鋼が魔力をそれに込めた瞬間、背中にあった二つの筒……いや、銃口が、火を吹く。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ!
重々しい銃撃音が響けば、その度に、マンイーター達は反撃することすらできずに、粘液を散らして爆散していく。
「みゅうっ、こりぇももんだいにゃしゃしょうっ(みゅうっ、これも問題なさそうっ)」
ウキウキとした様子の鋼にそんな判断を下すと、今度はユミリアが先頭に出て加速する。そして……。
「ちゅぎはわちゃしっ。しぇんめちゅぅっ(次は私っ。殲滅ぅっ)」
マンイーターの奥で、ユラユラと揺れていた巨大な魔物エルダートレントの群れへと突っ込んだユミリアは、走りながら背中の翼を広げ、とうとう上空に飛び立つ。そして、その翼が凄まじい光を放ったかと思えば、翼はユミリアを包み込むような形で先端のみを離し、そこに高魔力の球体を生み出す。それが、キュンッと音を立てて一瞬にしてエルダートレントの元へ放たれた途端、エルダートレントはその光に呑まれ……消失した。
「みゅっ、こっちももんだいにゃいにょ(みゅっ、こっちも問題ないの)」
そうして、再び走り出そうとしたのだが、なぜか、ローランと鋼がついてこないことに気づいて振り向く。するとそこには、パカンと口を開けたローランと鋼、そして、上空でユミリア達を追っていたはずのセイが居た。
「みゅ?」
「……ユミリア様、すげぇ」
「痕跡も、残らないなんて……」
「うわぁ……」
どうやら、三人はユミリアの技に呆けているらしかった。
「みゅう、いしょがにゃいと、おいてくにょ(みゅう、急がないと、置いてくの)」
「す、すまない」
「ごめん」
「っ、わ、分かってるってば……ごめん」
ユミリアの言葉に我に返ったセイ達は、すぐさま、先程までのフォーメーションに戻り、走り出す。
ユミリア達が先を急ぐ理由。それは、この神霊樹の森の広大さにある。『コツ生』においても、この神霊樹の森は広大過ぎて、探索を終えるまでとても時間がかかっていたのだ。だから、急がなければ、夕飯の時間に間に合わない、というわけだった。
浅い部分に出現する敵は、特に苦戦することなく、一撃で倒していく。しかし、だんだんと奥深くまで入り込んでいけば、そうもいかない。頭上からの奇襲や、高威力の魔法攻撃、いやらしい罠の数々が待ち受けている。
「みゅうぅぅうっ!」
猫耳をピンっと立てたユミリアは、突如として降ってきた巨大な丸太を破壊して、側の枝に飛び乗ると、そこを走り出す。
そんなユミリアの背後に、怪しい影が迫ったのを、鋼が撃ち抜き、ローランが斬り捨てる。上空に居るセイは、何もしていないわけもなく、空を飛ぶ魔物達へ鱗粉を浴びせ、永遠の眠りへと誘っていく。
「もうしゅぐにゃにょっ(もうすぐなのっ)」
そんなユミリアの言葉に、より張り詰めた空気。そして、その言葉通り、ユミリア達はその場所へ辿り着いた。
「ユミリア様が、神々しい……」
「ユミリア、可愛い」
「みゅう?」
ユミリアの後ろを走っていた黒衣のローランと何かを背負った鋼の言葉に、ユミリアは走りながらも疑問符だけを浮かべる。現在、ユミリアは滅殺シリーズの装備を身につけている。
キラキラと光る美しい銀の法衣に、背中にはメカニックな翼、手を覆う手袋は、漆黒で、甲の部分には赤い半球が埋め込まれている。銀のティアラは、どこか冷たく感じるものではあったが、ユミリアの黒髪には良く映えており、それ以外にも銀のブレスレットとイヤリングがついている。ちなみに、背中の翼は飾りなどではなく、飛ぶ機能はもちろん、殲滅機能も備えている優れものだ。
「っ、じぇんぽう、ごちゃいにょまもにょっ(っ、前方、五体の魔物っ)」
「ここは、俺が!」
走りながら告げるユミリアに、ローランが即座に反応して、ユミリアを追い越す。そして、まもなくして現れたのは、五体のゴブリンだった。
「でりゃあぁあっ!」
現れたゴブリンに対して、ローランは黒い柄だけを持って襲いかかり、一瞬、青白い刀身のようなものが見えたかと思えば……次の瞬間には、ゴブリン達は悲鳴をあげる間もなく首を飛ばす。
「みゅっ、れーざーちにょうはもんだいにゃいみちゃい(みゅっ、レーザー機能は問題ないみたい)」
それは、剣と魔法の世界にあるまじき存在。レーザーブレードだった。もちろん、これもユミリア作だ。
「ユミリア様にもらった剣は、かなり特殊ではあるが、使い心地抜群だぞ」
「しょれはよかっちゃにょ(それは良かったの)」
「次は、ぼくの番っ」
「みゅうっ、にゃら、こにょしゃちにいっぱいいりゅにょ。じゅういち、かにゃあ? (みゅうっ、なら、この先にいっぱい居るの。十一、かなぁ?)」
その言葉に、今度は鋼がユミリアとローランを追い越して前に出る。そして、現れた花型モンスター、マンイーターを前に止まるとググっとその場で踏ん張り……背中の二つの細長いものが、その反動でガチャンっと音を立てて前に倒れる。
「殲滅する」
そして、鋼が魔力をそれに込めた瞬間、背中にあった二つの筒……いや、銃口が、火を吹く。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ!
重々しい銃撃音が響けば、その度に、マンイーター達は反撃することすらできずに、粘液を散らして爆散していく。
「みゅうっ、こりぇももんだいにゃしゃしょうっ(みゅうっ、これも問題なさそうっ)」
ウキウキとした様子の鋼にそんな判断を下すと、今度はユミリアが先頭に出て加速する。そして……。
「ちゅぎはわちゃしっ。しぇんめちゅぅっ(次は私っ。殲滅ぅっ)」
マンイーターの奥で、ユラユラと揺れていた巨大な魔物エルダートレントの群れへと突っ込んだユミリアは、走りながら背中の翼を広げ、とうとう上空に飛び立つ。そして、その翼が凄まじい光を放ったかと思えば、翼はユミリアを包み込むような形で先端のみを離し、そこに高魔力の球体を生み出す。それが、キュンッと音を立てて一瞬にしてエルダートレントの元へ放たれた途端、エルダートレントはその光に呑まれ……消失した。
「みゅっ、こっちももんだいにゃいにょ(みゅっ、こっちも問題ないの)」
そうして、再び走り出そうとしたのだが、なぜか、ローランと鋼がついてこないことに気づいて振り向く。するとそこには、パカンと口を開けたローランと鋼、そして、上空でユミリア達を追っていたはずのセイが居た。
「みゅ?」
「……ユミリア様、すげぇ」
「痕跡も、残らないなんて……」
「うわぁ……」
どうやら、三人はユミリアの技に呆けているらしかった。
「みゅう、いしょがにゃいと、おいてくにょ(みゅう、急がないと、置いてくの)」
「す、すまない」
「ごめん」
「っ、わ、分かってるってば……ごめん」
ユミリアの言葉に我に返ったセイ達は、すぐさま、先程までのフォーメーションに戻り、走り出す。
ユミリア達が先を急ぐ理由。それは、この神霊樹の森の広大さにある。『コツ生』においても、この神霊樹の森は広大過ぎて、探索を終えるまでとても時間がかかっていたのだ。だから、急がなければ、夕飯の時間に間に合わない、というわけだった。
浅い部分に出現する敵は、特に苦戦することなく、一撃で倒していく。しかし、だんだんと奥深くまで入り込んでいけば、そうもいかない。頭上からの奇襲や、高威力の魔法攻撃、いやらしい罠の数々が待ち受けている。
「みゅうぅぅうっ!」
猫耳をピンっと立てたユミリアは、突如として降ってきた巨大な丸太を破壊して、側の枝に飛び乗ると、そこを走り出す。
そんなユミリアの背後に、怪しい影が迫ったのを、鋼が撃ち抜き、ローランが斬り捨てる。上空に居るセイは、何もしていないわけもなく、空を飛ぶ魔物達へ鱗粉を浴びせ、永遠の眠りへと誘っていく。
「もうしゅぐにゃにょっ(もうすぐなのっ)」
そんなユミリアの言葉に、より張り詰めた空気。そして、その言葉通り、ユミリア達はその場所へ辿り着いた。
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