悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
40 / 412
第一章 幼少期編

第三十九 メリーの起床

しおりを挟む
 メリーの声に、セイと鋼は即座に身を隠す。ちなみに、ローランは現在、メリー以外の人間が入って来ないように入り口で見張っているため、まだこちらには戻ってきていない。


「う……?」

「めりー?」


 ゆっくり目を開けて、パチリ、パチリと瞬きするメリー。そして、その視線が、私を……捉えた・・・


「ユ、ミリア……お嬢、様?」

「みゅっ」


 パチ、パチと瞬きを繰り返しながら、信じられないといった様子で私を見つめるメリー。初めて見たメリーの瞳は、髪の色と同じで、海のような青さを持っていた。


「ユミリア、お嬢様?」

「しょーにゃにょっ(そうなのっ)」

「……これは、夢? いえ、きっと、私の願望が最期に見せた奇跡ですね」

「みゅっ!?」


 呆然としていたメリーが、何やらおかしな納得をしかけている事実に、私は大いに慌てる。


「ちがうにょっ。ゆめでもちせちでもにゃいにょっ(違うのっ。夢でも奇跡でもないのっ)」


 耳をピンっと立てて必死に反論すれば、何やらメリーはとても穏やかな表情になる。


(分かって、もらえた?)

「ふふふっ、そうですね。こんなに可愛いユミリアお嬢様が言うんですものね。きっとこれは、神様からの贈り物です」

「みゅうぅっ!?」

(分かってないっ!?)


 やはり、理解してもらえていないということを知って、声をあげた私に、メリーはクスクスと笑う。


「あぁ、これが贈り物なら、ユミリアお嬢様を抱き締めても良いですよね?」

「っ、もちろんにゃにょっ(っ、もちろんなのっ)」


 どうやったらメリーにこれが現実だと理解してもらえるだろうかと、耳を垂らして唸っていた私は、そんなメリーの言葉に、現実を見せるということを盛大に後回しにする。
 そっと、危なげなく起き上がったメリーは、私の前にしゃがみ込んでそっと抱き締めてくれる。


「み、みゅうっ」


 柔らかく、優しい香りに包まれて、私はしばしの間、幸せを満喫する。


「あぁ、ユミリアお嬢様が可愛いっ。私の願望だとは分かっていますが、可愛くて可愛くて可愛いですっ」


 ちょっと苦しいくらいの力で抱き締め始めたメリーだったものの、私はそれすらも幸せに感じて、ただただメリーの温もりに身を委ねる。
 しかし、そんな幸せの中、話はおかしな方向に進み出す。


「ユミリアお嬢様、私は長くありませんが、必ず、ユミリアお嬢様を守れる誰かを見つけてみせます。そして、その方にユミリアお嬢様をずっと守ってもらうんです」

「やっ。わちゃしは、めりーがいいにょっ(やっ。私は、メリーが良いのっ)」


 やはり、現実が分かっていないメリーは、私が絶対にうなずけない考えを披露してくる。


「……あぁ、その言葉を聞けるだけで、私は、ユミリアお嬢様にお仕えした甲斐があったというものです。どうか、どうか、幸せになって……私の、大切な娘……」

「……」


 『大切な娘』と言われるのは、嬉しい。しかし、その前がとんでもなく問題だ。だから、私は……。


「めりーにょ、おばかぁっ(メリーの、おバカぁっ)」

「いひゃいいひゃいっ」


 夢ではないことの証明のため、メリーのほっぺをギュムッとつねる。メリーは涙目になっているが、そんなの知るもんかとばかりに私はメリーを上目遣いに睨む。


「めりー、はんしぇいっ! (メリー、反省っ!)」

「えっ? あれ? 痛い? えっ? 夢……じゃない? ……現実……?」


 ほっぺから手を離して、強く言えば、ようやくメリーの意識は現実を認識したらしく、呆然と頭を触ったり、目をパチパチさせたり、辺りを見渡したりしている。


「しゃっちかりゃ、にゃんどもいってりゅにょっ(さっきから、何度も言ってるのっ)」


 メリーの腕から逃れた私は、精一杯メリーに言い聞かせる。


「……ユミリア、お嬢様?」


 信じられないとばかりに、私を見つめて名前を呼ぶメリーに、私はピョコンっと手を挙げる。


「みゅっ」

「私、毒を呷って死んだんじゃ……」

「みゅうっ!?」


 なぜか、メリーの中では毒を呷って死んだということになっていて、私は混乱する。


「えっと……?」


 しかし、混乱しているのはメリーも同じだ。お互いがお互いを困惑の顔で眺めるという、中々におかしな図ができてしまう。


「ひとまず、話し合いましょうか?」

「みゅっ」


 今、必要なのは、言葉のみ。そう認識した私達は、椅子がない部屋で、遠慮するメリーを強引に説得してベッドに座らせると、私も隣に座って話を始めた。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...