悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第一章 幼少期編

第七十話 私の想い

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 『世界の強制力』。それを忘れていた私は、呑気だったのか、それとも、その力で忘れるよう仕向けられていたのか。恐らくは前者だろうと思いながら、私はイルト王子へといつもの手紙を書いて送る。


「よしっ、完璧!」


 いつも通り、イルト王子宛の手紙に何かしようものなら罠が発動するようにしておいた私は、最近過保護としか思えないほどに心配してくるセイ達を振り返る。


「ユミリア……」

「うーん、心配してくれるのはありがたいけど、私、本当に大丈夫だよ?」


 実際、私は特に気に病んでいるなんてことはなかった。


(『世界の強制力』があるのかないのか分からない今、悩んでも仕方ないし、イルト王子が私の好みドンピシャなのは、前世の記憶と照らし合わせれば分かるし。つまりは、私の一目惚れは間違いないってことになるっ)


 そう、私にだけ存在する大きなアドバンテージ。『前世の記憶』。これがあるからこそ、私は冷静でいられた。『世界の強制力』は、あくまでもこの世界でしか発揮されないものだ。だから、別世界の記憶を持つ私にとって、この想いが本物なのかどうかを判断することは、一応可能ではあるのだ。


(もちろん、この想いが増強されてる、とかだと判断が難しいところではあるけど……それは些細な問題だしね)


 一番大きな問題があるとするなら、イルト王子の私への想いが偽物かもしれない、というところではあるのだが、それは今後の努力次第で何とでもなるところだ。むしろ、強制力だろうが何だろうが、一度は想いを向けてくれる状態ができるのだ。それを簡単に冷めさせるつもりは毛頭ない。


「それより、準備の方はどうなってる?」

「それなら、今はまだ調査の段階から出てないよ。僕達全員で調べてはいるけど、数が多いからね……」

「そう……なら、どのくらいで終わりそう?」

「一月あれば、何とか」

「一月、ね。分かった。なら、その辺りで陛下から許可をもぎ取ってくるね」


 セイと話しているのは、イルト王子に危害を加えようとする貴族の洗い出しに関してだ。それさえ終われば、私は行動に移れる。


(確か、『モフ恋』でイルト様が顔を焼くのも、そのくらいの時期だったかな?)


 私がイルト王子の顔を知らなかった原因となるできごと。イルト王子が自分の顔を焼いて、その後、ずっとローブと仮面で顔を見せなくなるというできごとは、確か、イルト王子が五歳の頃に起こるはずだ。それも、寒い時期だったとのことだから、今から一月後以降の冬の時期だと思われる。


(シナリオでは、黒ということに絶望して顔を焼くってことだったけど……今はきっと、そんなことしない、よね?)


 正直、『モフ恋』のイルト王子に関して知っていることはほとんどない。ローブと仮面で顔を隠した不審者の設定にまで目を通そうとは思わずに、そのまま読み飛ばした記憶があるのだ。


(こんなことなら、しっかり読んでおけば良かった!)


 シナリオでのイルト王子は、大体ユミリアとともに死ぬ。ユミリアが死ななくとも死ぬ。とにかく、死ぬことが多いキャラクターだ。


(イルト様の死亡フラグは、全力で回避したいところ……なのにっ、肝心の情報がない!)


 何となく、覚えているシーンはあるものの、正直、あまりにも影が薄くていつの間にか死んでいたと気づいたルートが多いような気がする。


(いや、待つのよ、私。そのための魔導具なんだから、大抵の死亡フラグは折れるはず。大丈夫。きっと、大丈夫っ)


 イルト王子の死亡フラグで警戒すべきは、魔王の存在はもちろんのこと、事故や自殺、ということも警戒しなければならない。いくら、魔導具があるといっても、まだカバーしきれていない部分が存在するのも確かなのだから。
 しかし、やはりその中でももっとも警戒すべきは、魔王の存在だろう。


「セイ、魔王については、何か分かった?」


 だから、私は貴族の調査の合間に調べてもらっている魔王について、セイに尋ねた。
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