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第一章 幼少期編
第百六話 レッツ、パーティー!9
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辺りが闇に包まれた途端、こちらへ猛然と向かってくる気配が一つ。足音も、気配もほとんど感じられないそいつは、恐らくは暗殺の専門家。ただし、今回の目的は暗殺とは少し違う。ただ、『呪言の石』をイルト王子に触れさせるだけのお仕事のはずだ。
(配下の貴族は、ブラフかっ!)
殺気を向けてくる、分かりやすい敵対者である貴族達は、どうやらこいつに気づかれないためのブラフだったらしい。きっと、イルト王子につけられている護衛に対抗する手段だったのだろう。しかし、こちとら、何の対策もしていないなんてことはあり得ないのだ。
(嘗めてもらったら、困る)
イルト王子の近くに来たそいつへと、私はひっそり魔石を取り出し、その魔法を行使する。
暗闇に包まれて、ほとんどの人間が混乱する中、私はしっかりと視界を確保し、そいつの姿を捉えていたのだ。それもこれも、慎重に選んだドレスのおかげだ。
「っ!?」
あともうちょっと、というところで、実行犯は転倒する。
地面を少し盛り上げる程度の土魔法。即座に元に戻せば、証拠すら残らないその所業によって、実行犯はつまづいたのだ。
バランスを崩した実行犯を前に、私は万事上手くいくことを確信して、笑みを浮かべる。
ザワザワと落ち着きのなかった空間に、一度だけ、ガンっと、そこそこ重い音が響いたものの、それを気にする者は居ない。誰もが、今は自分達のことで手一杯なのだ。
……だから、実行犯を気絶させて、グルグルと簀巻きにして、セイ達のところに転移で送ってあげた私に非はない。ちょっと、気が動転していただけ、なのだから。
「イルト様。とりあえず、うずくまっていてもらえますか?」
「? うん、わかった」
魔法灯が消えた原因は不明だ。しかし、灯りがない状態がずっと続くはずもなく、チラホラと、ランタンが提供されて、辺りを認識できるようになる。
(さて、上手く騙されてくれるかな?)
「イルト様、大丈夫ですか?」
「……だいじょうぶ」
私の考えを読めないイルト王子は、その内容の解説を私に求めて、視線を向けてくる。
(とりあえず、陛下から許可をいただいて、早めに退席させてもらいましょう。きっと、そうすれば……)
今回のことを知る貴族ならば、今の演技で騙されてくれるかもしれない。そうなれば、儲けものというやつだ。
(さぁ、どう出る?)
後に待つのは、イルト王子にとってのトラウマ要因とされるはずだった襲撃のみ。これによって、周囲には、イルト王子がこの襲撃で心を病んだようにみせかけるのだ。ただし、大前提が覆った今、それは通用しない。
そうして気を抜いていたのがいけなかったのだろうか? 私は、もう一人の刺客に気づけなかった。
(配下の貴族は、ブラフかっ!)
殺気を向けてくる、分かりやすい敵対者である貴族達は、どうやらこいつに気づかれないためのブラフだったらしい。きっと、イルト王子につけられている護衛に対抗する手段だったのだろう。しかし、こちとら、何の対策もしていないなんてことはあり得ないのだ。
(嘗めてもらったら、困る)
イルト王子の近くに来たそいつへと、私はひっそり魔石を取り出し、その魔法を行使する。
暗闇に包まれて、ほとんどの人間が混乱する中、私はしっかりと視界を確保し、そいつの姿を捉えていたのだ。それもこれも、慎重に選んだドレスのおかげだ。
「っ!?」
あともうちょっと、というところで、実行犯は転倒する。
地面を少し盛り上げる程度の土魔法。即座に元に戻せば、証拠すら残らないその所業によって、実行犯はつまづいたのだ。
バランスを崩した実行犯を前に、私は万事上手くいくことを確信して、笑みを浮かべる。
ザワザワと落ち着きのなかった空間に、一度だけ、ガンっと、そこそこ重い音が響いたものの、それを気にする者は居ない。誰もが、今は自分達のことで手一杯なのだ。
……だから、実行犯を気絶させて、グルグルと簀巻きにして、セイ達のところに転移で送ってあげた私に非はない。ちょっと、気が動転していただけ、なのだから。
「イルト様。とりあえず、うずくまっていてもらえますか?」
「? うん、わかった」
魔法灯が消えた原因は不明だ。しかし、灯りがない状態がずっと続くはずもなく、チラホラと、ランタンが提供されて、辺りを認識できるようになる。
(さて、上手く騙されてくれるかな?)
「イルト様、大丈夫ですか?」
「……だいじょうぶ」
私の考えを読めないイルト王子は、その内容の解説を私に求めて、視線を向けてくる。
(とりあえず、陛下から許可をいただいて、早めに退席させてもらいましょう。きっと、そうすれば……)
今回のことを知る貴族ならば、今の演技で騙されてくれるかもしれない。そうなれば、儲けものというやつだ。
(さぁ、どう出る?)
後に待つのは、イルト王子にとってのトラウマ要因とされるはずだった襲撃のみ。これによって、周囲には、イルト王子がこの襲撃で心を病んだようにみせかけるのだ。ただし、大前提が覆った今、それは通用しない。
そうして気を抜いていたのがいけなかったのだろうか? 私は、もう一人の刺客に気づけなかった。
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