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第一章 幼少期編
第百四十話 軽率な行動
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セイ達を迎えに行って、急いで帰ってきた私達は、門の前で仁王立ちしているメリーを目撃することとなる。
「ユミリアお嬢様? 何か、弁明はございますか?」
そう尋ねるメリーの背後には、般若が見える。
「み、みゅうぅ……」
戦闘能力だけを見れば、私の方が上ではある。しかし、しかし、だ。今、目の前に居るメリーには、勝てる気がしない。
「……とりあえず、中に入りましょうか。お話はそれからです」
転移を行って、セイ達を保護して、ここに連れて帰るまで、五分も経ってはいない。転移前に、私のことを気にする者が居ないことは確認済みで、バレるはずがなかったのに、どうしてか、メリーは私の無断外出を察知していたらしい。
未だに慌ただしい屋敷の中、自室へと連れてこられた私は、有無を言わせぬ表情で、椅子に座るよう、メリーから勧められる。
「それで、なぜ、無断で外に出られたのですか?」
「いや、ユミリアは「あなた方は黙っていてもらえますか?」……はい」
これは、誤魔化せない。いや、そもそも、誤魔化すつもりもなかったが、懸命に私をフォローしようとしたセイが一撃でのされている。セイとともに、私を擁護しようとしていたローランは、メリーの剣幕を前にピシリと固まっている。……私は、覚悟を決めた。
「つまりは、この二人が気絶させられるという異常事態を前に、誰にも何も言うことなく、単独で挑んだ、ということですね?」
「ぼ、ぼくも、一緒に「鋼が一匹増えても意味がありません」きゅーん」
新たに鋼が撃沈して、私は改めて、自分が危険なことをしていたと認識してうなだれる。
「ユミリアお嬢様。婚約者である第二王子殿下があのような状態になり、追い打ちをかけるようにセイ達が危険に晒されたことで、動転していたのは分かります。ですが、そんな時だからこそ、頼るということをしてください。ユミリアお嬢様なら、誰を頼るべきか、考えられるでしょう?」
「みゅう、ごめんなさい」
貴族の令嬢が、しかも、王族と婚約している公爵家の令嬢が、自らを危険に晒すことなど、本来はあってはならないことだ。どうしても心配ならば、鋼やメリーを向かわせれば良かった。それでも不安なら、守りになる道具を作って渡す手もあった。
私が動けば、確かに転移と装備変更による能力操作で早く行って早く戻ることは可能だ。実際、私は転移して、セイ達の反応を追ってどこにも怪我をしていない様子の彼らを見た後、この屋敷まで、残像が見えるほどの速度で駆け抜けてきた。しかし、私の立場上、それではいけないのだ。
「ユミリアお嬢様。どうか、私達がユミリアお嬢様の側に居ることを忘れないでください。私達は、いつだって、ユミリアお嬢様の手を取りましょう」
「ありがとう。ごめんなさい。メリー」
私を助けることを宣言するメリーへ感謝と、愚かな行動に出たことへの反省。その言葉は、正確にメリーへと伝わり、ようやく、背後の般若が姿を消す。
「では、ホットココアを持って参りますので、少々お待ちくださいね」
いつもの優しいメリーにそう言われて、私は、コクリとうなずくのだった。
「ユミリアお嬢様? 何か、弁明はございますか?」
そう尋ねるメリーの背後には、般若が見える。
「み、みゅうぅ……」
戦闘能力だけを見れば、私の方が上ではある。しかし、しかし、だ。今、目の前に居るメリーには、勝てる気がしない。
「……とりあえず、中に入りましょうか。お話はそれからです」
転移を行って、セイ達を保護して、ここに連れて帰るまで、五分も経ってはいない。転移前に、私のことを気にする者が居ないことは確認済みで、バレるはずがなかったのに、どうしてか、メリーは私の無断外出を察知していたらしい。
未だに慌ただしい屋敷の中、自室へと連れてこられた私は、有無を言わせぬ表情で、椅子に座るよう、メリーから勧められる。
「それで、なぜ、無断で外に出られたのですか?」
「いや、ユミリアは「あなた方は黙っていてもらえますか?」……はい」
これは、誤魔化せない。いや、そもそも、誤魔化すつもりもなかったが、懸命に私をフォローしようとしたセイが一撃でのされている。セイとともに、私を擁護しようとしていたローランは、メリーの剣幕を前にピシリと固まっている。……私は、覚悟を決めた。
「つまりは、この二人が気絶させられるという異常事態を前に、誰にも何も言うことなく、単独で挑んだ、ということですね?」
「ぼ、ぼくも、一緒に「鋼が一匹増えても意味がありません」きゅーん」
新たに鋼が撃沈して、私は改めて、自分が危険なことをしていたと認識してうなだれる。
「ユミリアお嬢様。婚約者である第二王子殿下があのような状態になり、追い打ちをかけるようにセイ達が危険に晒されたことで、動転していたのは分かります。ですが、そんな時だからこそ、頼るということをしてください。ユミリアお嬢様なら、誰を頼るべきか、考えられるでしょう?」
「みゅう、ごめんなさい」
貴族の令嬢が、しかも、王族と婚約している公爵家の令嬢が、自らを危険に晒すことなど、本来はあってはならないことだ。どうしても心配ならば、鋼やメリーを向かわせれば良かった。それでも不安なら、守りになる道具を作って渡す手もあった。
私が動けば、確かに転移と装備変更による能力操作で早く行って早く戻ることは可能だ。実際、私は転移して、セイ達の反応を追ってどこにも怪我をしていない様子の彼らを見た後、この屋敷まで、残像が見えるほどの速度で駆け抜けてきた。しかし、私の立場上、それではいけないのだ。
「ユミリアお嬢様。どうか、私達がユミリアお嬢様の側に居ることを忘れないでください。私達は、いつだって、ユミリアお嬢様の手を取りましょう」
「ありがとう。ごめんなさい。メリー」
私を助けることを宣言するメリーへ感謝と、愚かな行動に出たことへの反省。その言葉は、正確にメリーへと伝わり、ようやく、背後の般若が姿を消す。
「では、ホットココアを持って参りますので、少々お待ちくださいね」
いつもの優しいメリーにそう言われて、私は、コクリとうなずくのだった。
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