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第一章 幼少期編
第百四十四話 余命
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「入りなさい、ユミリア嬢」
アルト王子の叫びを聞いて、扉の前で固まっていた私は、なぜか私がここに居ることを察知した陛下によって、扉の内側から招き入れられる。
「イルト、様、は……?」
陛下の御前、挨拶もなしに、いきなり質問をするのは失礼なことだと分かっている。しかし、それでも問わずにはいられなかった。
震えそうになる足に必死に力を入れて、ベッドの方へと視線を向ける。そこには、陛下やアルト王子だけではなく、王妃様、そして、側妃様まで来ていて、皆、一様に青ざめている。
「峠は、越えた」
「っ、なら!」
「だが、イルトの命は、後五年だ」
「……えっ?」
陛下が、何を言ったのか、私は理解できなかった。
そっとイルト王子の側に控えていた医師の方へと視線を向ければ、無言で首を横に振られる。
「どう、いうこと、ですか? だって、だってっ、イルト様の体に異常なんてありませんでしたっ! それなのにっ、なんで、そんなことっ!!」
ちゃんと、イルト王子の体に異常がないかは調べたはずだ。病も傷もなく、呪いにもかかっていなかった。それなのに、それなのにっ、イルト王子の命は長くないなど、納得できるわけがなかった。
「私が、調べますっ、調べさせてくださいっ。 そうしたら、イルト王子はもっと、もっと長生きするって分かるはずです!」
陛下を前に、不敬であるなんて考えは、つゆほども浮かばなかった。ただ、頭にあるのは『何かの間違いだ』ということのみ。
「それで納得できるのであれば、好きにせよ」
「っ、ありがとうございます!」
陛下の許可を元に、私はすぐさま、イルト王子の側へと駆け寄る。
「イルト、イルトっ……」
その側で、側妃様が絶望の表情を浮かべ、涙を流していることの違和感も、私は気にすることなく、ただひたすらにイルト王子の状態を確かめることに専念する。病の確認、傷の確認、呪いの確認を、私は確実に行うために、集中して……傷の確認をしている最中に、とてつもない違和感に襲われた。
(な、に……?)
見落としてはいけない、深刻な何か。ドクン、ドクンと、心臓がやけに大きく脈打つ。
日本のレントゲンよりも、格段に性能を上げた体内透過の魔法で、ゆっくり、ゆっくり、何がおかしかったのかを確認していく。
「なん、で……?」
そうして、見つけたそれ。それは確かに、医師に余命宣告させるだけのものであり、むしろ、五年も生きるというのは難しいと思われるものだった。
「なんで、魔石がこんな、変な魔力に覆われてるの……?」
私達の体の中には、魔石がある。そして、その魔石に刻まれた魔法だけが、私達に使用できるものであり、私達の体の中で、心臓の次に大切なものとなっている。何せ、私達の体の中にある魔石に異常が起これば、私達は長く生きていられないのだから……。
そして、今、私の目の前には、イルト王子の魔石に、禍々しい魔力がまとわりついている様子が映し出されていた。
アルト王子の叫びを聞いて、扉の前で固まっていた私は、なぜか私がここに居ることを察知した陛下によって、扉の内側から招き入れられる。
「イルト、様、は……?」
陛下の御前、挨拶もなしに、いきなり質問をするのは失礼なことだと分かっている。しかし、それでも問わずにはいられなかった。
震えそうになる足に必死に力を入れて、ベッドの方へと視線を向ける。そこには、陛下やアルト王子だけではなく、王妃様、そして、側妃様まで来ていて、皆、一様に青ざめている。
「峠は、越えた」
「っ、なら!」
「だが、イルトの命は、後五年だ」
「……えっ?」
陛下が、何を言ったのか、私は理解できなかった。
そっとイルト王子の側に控えていた医師の方へと視線を向ければ、無言で首を横に振られる。
「どう、いうこと、ですか? だって、だってっ、イルト様の体に異常なんてありませんでしたっ! それなのにっ、なんで、そんなことっ!!」
ちゃんと、イルト王子の体に異常がないかは調べたはずだ。病も傷もなく、呪いにもかかっていなかった。それなのに、それなのにっ、イルト王子の命は長くないなど、納得できるわけがなかった。
「私が、調べますっ、調べさせてくださいっ。 そうしたら、イルト王子はもっと、もっと長生きするって分かるはずです!」
陛下を前に、不敬であるなんて考えは、つゆほども浮かばなかった。ただ、頭にあるのは『何かの間違いだ』ということのみ。
「それで納得できるのであれば、好きにせよ」
「っ、ありがとうございます!」
陛下の許可を元に、私はすぐさま、イルト王子の側へと駆け寄る。
「イルト、イルトっ……」
その側で、側妃様が絶望の表情を浮かべ、涙を流していることの違和感も、私は気にすることなく、ただひたすらにイルト王子の状態を確かめることに専念する。病の確認、傷の確認、呪いの確認を、私は確実に行うために、集中して……傷の確認をしている最中に、とてつもない違和感に襲われた。
(な、に……?)
見落としてはいけない、深刻な何か。ドクン、ドクンと、心臓がやけに大きく脈打つ。
日本のレントゲンよりも、格段に性能を上げた体内透過の魔法で、ゆっくり、ゆっくり、何がおかしかったのかを確認していく。
「なん、で……?」
そうして、見つけたそれ。それは確かに、医師に余命宣告させるだけのものであり、むしろ、五年も生きるというのは難しいと思われるものだった。
「なんで、魔石がこんな、変な魔力に覆われてるの……?」
私達の体の中には、魔石がある。そして、その魔石に刻まれた魔法だけが、私達に使用できるものであり、私達の体の中で、心臓の次に大切なものとなっている。何せ、私達の体の中にある魔石に異常が起これば、私達は長く生きていられないのだから……。
そして、今、私の目の前には、イルト王子の魔石に、禍々しい魔力がまとわりついている様子が映し出されていた。
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