159 / 412
第二章 少女期 瘴気編
第百五十八話 三人組との関係
しおりを挟む
どうにか、アルト様とミーシャを黙らせることに成功した私達は、二人の拘束を解いて、改めて、教室の中を見渡す。
現在、入学式を終えた新入生達は、それぞれの教室へと続々と集まって……アルト様とミーシャが拘束されているのを目撃した瞬間、硬直したり、青ざめたり、オロオロしたりと面白い反応をしてくれていた。まだ、教師が入ってくるまでには時間があるのだが、二人の拘束を解いた今、私とイルト様には、恐怖をあらわにした視線が送られている。しかし、それに気づくのは私やイルト様だけではない。アルト様もミーシャも、それに、ハイル、ティト、ディランもちゃんと気づいて、その上で、私達がその視線に晒されないように周りを固めてくれた。
「そういやぁ、ユミリア嬢。今度、暇な時で良いからよ。また、稽古をつけてくれねぇか?」
「はい、それは構いませんが……「僕も行く」だそうです」
「おうっ、そりゃあもちろん分かってるさっ! 二人がラブラブなのはよく知ってるからよっ」
「では、後で予定を詰めましょう」
抜け目なく周囲を確認したハイルは、次の瞬間にはいつもの明るさで、私へと稽古のお誘いをしてくる。実を言うと……現在の私は、ハイルの父親、つまりは、この国の騎士団長を負かすほどの力を身につけており、それを知っているハイルは、度々稽古を頼んで来るのだ。
「ついでに、僕も稽古をつけてやる」
「うげっ、イルト殿下も、ですか?」
「何? 不満でもある?」
「イ、イイエ。ナニモ」
真っ青になりながら、ぎこちなく首を横に振るハイル。しかし、それも無理はない。イルト様もイルト様で、騎士団長と対等に渡り合える……いや、恐らくはもう、騎士団よりも強いであろう力を身につけているのだが、イルト様の戦い方は……エグい。的確に敵の急所を狙うくらいは序の口で、騎士というよりも傭兵のような何でもありな戦い方をする。そして、暗器に関してはかなりの技術を持っており、いつの間にか毒で動けなくなったハイルを見たのは一度や二度ではない。もちろん、解毒剤はあるのだが、それまでが恐ろしく苦しそうだった。
「あ、あの、僕は、そろそろ教室に戻りますね?」
ハイルとのやり取りを見届けた後、そろそろ教師が来るであろうことを察したディランは、学年が違うために自分の教室に戻ると言い出した。
「はい、今日は、ありがとうございました」
そう笑顔で告げれば、ディランは、ポッと頬を赤くする。
「はいっ! あ、あの、それと……もし良ければ踏んで「さっさと行け」……はい」
イルト様の言葉で遮られてしょんぼりとしたディランだったが……薄々分かるとは思うが、私がディランに関与した結果、彼は、気弱なドMへと成長していた。
(おかしい。どこで間違えたんだろう……?)
その性癖さえなければ、かなり頼れる人間であることに間違いはないのだが……とにかく、残念で仕方がない。
「ユミリア様、我々は、アルト様の側近候補ではありますが、ユミリア様に多大な恩義があります。ですので、煩わしいことがあれば、全て、我らが排除してみせましょうっ」
「ありがとう。ティト、でも、私は何も知らずに守られるなんてごめんですからね?」
「それはもちろん、承知の上です。そこはしっかりとご報告させていただきます。そして、その……働きに応じて、例のものをいただければ、と……」
「えぇ、もちろん」
最後の言葉は、ごくごく小さなものではあるものの、獣つきである私達には十分聞こえる。
ティトが、青い瞳の奥を光らせて告げた『例のもの』というのは、私が作る極上のスイーツのことであり、彼は、すっかり私が作るお菓子の虜だった。
「ユミリア。僕にも」
「もちろん、イルト様になら、いつだってご用意しますよっ!」
そうして話をしているうちに、教師が教室へと入ってきて……教室に居たほとんどの者が青ざめることとなった。
現在、入学式を終えた新入生達は、それぞれの教室へと続々と集まって……アルト様とミーシャが拘束されているのを目撃した瞬間、硬直したり、青ざめたり、オロオロしたりと面白い反応をしてくれていた。まだ、教師が入ってくるまでには時間があるのだが、二人の拘束を解いた今、私とイルト様には、恐怖をあらわにした視線が送られている。しかし、それに気づくのは私やイルト様だけではない。アルト様もミーシャも、それに、ハイル、ティト、ディランもちゃんと気づいて、その上で、私達がその視線に晒されないように周りを固めてくれた。
「そういやぁ、ユミリア嬢。今度、暇な時で良いからよ。また、稽古をつけてくれねぇか?」
「はい、それは構いませんが……「僕も行く」だそうです」
「おうっ、そりゃあもちろん分かってるさっ! 二人がラブラブなのはよく知ってるからよっ」
「では、後で予定を詰めましょう」
抜け目なく周囲を確認したハイルは、次の瞬間にはいつもの明るさで、私へと稽古のお誘いをしてくる。実を言うと……現在の私は、ハイルの父親、つまりは、この国の騎士団長を負かすほどの力を身につけており、それを知っているハイルは、度々稽古を頼んで来るのだ。
「ついでに、僕も稽古をつけてやる」
「うげっ、イルト殿下も、ですか?」
「何? 不満でもある?」
「イ、イイエ。ナニモ」
真っ青になりながら、ぎこちなく首を横に振るハイル。しかし、それも無理はない。イルト様もイルト様で、騎士団長と対等に渡り合える……いや、恐らくはもう、騎士団よりも強いであろう力を身につけているのだが、イルト様の戦い方は……エグい。的確に敵の急所を狙うくらいは序の口で、騎士というよりも傭兵のような何でもありな戦い方をする。そして、暗器に関してはかなりの技術を持っており、いつの間にか毒で動けなくなったハイルを見たのは一度や二度ではない。もちろん、解毒剤はあるのだが、それまでが恐ろしく苦しそうだった。
「あ、あの、僕は、そろそろ教室に戻りますね?」
ハイルとのやり取りを見届けた後、そろそろ教師が来るであろうことを察したディランは、学年が違うために自分の教室に戻ると言い出した。
「はい、今日は、ありがとうございました」
そう笑顔で告げれば、ディランは、ポッと頬を赤くする。
「はいっ! あ、あの、それと……もし良ければ踏んで「さっさと行け」……はい」
イルト様の言葉で遮られてしょんぼりとしたディランだったが……薄々分かるとは思うが、私がディランに関与した結果、彼は、気弱なドMへと成長していた。
(おかしい。どこで間違えたんだろう……?)
その性癖さえなければ、かなり頼れる人間であることに間違いはないのだが……とにかく、残念で仕方がない。
「ユミリア様、我々は、アルト様の側近候補ではありますが、ユミリア様に多大な恩義があります。ですので、煩わしいことがあれば、全て、我らが排除してみせましょうっ」
「ありがとう。ティト、でも、私は何も知らずに守られるなんてごめんですからね?」
「それはもちろん、承知の上です。そこはしっかりとご報告させていただきます。そして、その……働きに応じて、例のものをいただければ、と……」
「えぇ、もちろん」
最後の言葉は、ごくごく小さなものではあるものの、獣つきである私達には十分聞こえる。
ティトが、青い瞳の奥を光らせて告げた『例のもの』というのは、私が作る極上のスイーツのことであり、彼は、すっかり私が作るお菓子の虜だった。
「ユミリア。僕にも」
「もちろん、イルト様になら、いつだってご用意しますよっ!」
そうして話をしているうちに、教師が教室へと入ってきて……教室に居たほとんどの者が青ざめることとなった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
5,536
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる