悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
231 / 412
第二章 少女期 瘴気編

第二百三十話 大切な贈り物

しおりを挟む
 パーティーが終わり、イルト様にエスコートされた私は……なぜか、またしても、イルト様の私室でテーブルを挟み、向かい合わせに座っていた。


「あ、あの、イルト様? 私、そろそろ帰らなければならないと思うのですが……」

「うん? ユミリアの帰る場所はここだよ?」

「みゅ?」


 メイドの姿があって、二人っきりというわけではないにしろ、イルト様の私室というのは落ち着かないとソワソワしていた私は、何やら聞き捨てならない言葉を聞いたような気がして、首をかしげる。


「っ、ユミリアが、可愛いっ」

「えっと、イルト様?」


 何やら小さな声で呟いたイルト様。しかし、それは本当に小さな声で、私の耳でも聞き取れない。


「いや、何でもない。ねぇ、ユミリア? ユミリアは、僕のお嫁さんになるために、花嫁修業をこの城で行うことになったんだよ? ここに来る前、話したでしょう?」

「…………みゅ!?」


 何の話だと混乱しかけるものの、そこまで鈍くない頭は、その話をしていたであろう瞬間を思い出してしまう。


(あ、あの時!? イルト様と一緒に休むって言葉に混乱してる最中の話!?)


 よくよく思い出してみれば、私は、イルト様の何らかの同意を求める言葉にうなずいてしまっていた。そして、その言葉に対して、お父様とミーシャが沈み、その他の面々から生暖かい視線を送られたのも覚えている。


「え、えっと……」

「さすがに、同じ部屋で眠る許可は下りなかったけど、ユミリアには隣の部屋を用意してもらったから、いつでも僕のところにおいで。もちろん、内緒で一緒に寝るのも歓迎するよ?」


 まさか、本当に一緒に眠ることになるのだろうかと、顔を赤くしたり青くしたりしていた私に、イルト様は少し困ったような微笑みを浮かべて告げる。


(よ、良かった……ちょっとざんね、いやいや、うん、良かった良かった)


 さすがに、もう私達は幼い子供と言える年ではない。だから、同じ部屋というのはダメだとの真っ当な判断が下されたのだろう。……まぁ、一緒に寝ようという提案は、恐らく本気なのだろうけど。


「本当は、ずっとユミリアを独占したいんだけどね? あぁ、後、一人じゃ寂しいだろうから、ミーシャ嬢も近々呼ばれると思うよ? 部屋は、全く別のところになるだろうけど」


 なぜ、そこでミーシャが? と思うものの、きっと何か考えがあってのことだろうとうなずく。もちろん、ミーシャが側に居てくれるのはありがたいとも思うので、否定する気にはならない。


「一応、荷物は全て運び込んであるし、今回送られたプレゼントもユミリアの部屋にあるよ。後で、しっかり確認してね」

「は、はい」

「それと……これは、僕から」


 そうして取り出されたのは、小さなプレゼント。


「あ、そ、その、私、今回は何も用意してなくて」

「それは構わないよ。僕は、ユミリアさえ居てくれたら良いんだから。それより、開けてみて?」


 私の誕生日であり、イルト様と初めて出会った記念日。それなのに、何も用意していないことを謝れば、イルト様はそれを全く気にした様子もなく、私にプレゼントを差し出す。
 ピンクの可愛らしい包装紙。茶色のリボンを解いて、中身をそっと取り出すと、黒いケースが出てくる。その中身の想像ができる形のケースに、胸を高鳴らせて慎重に蓋を持ち上げれば……そこには、美しく輝く指輪があった。


「こ、れ……」

「うん、ブラックダイヤの指輪。一年間、僕の魔力を込め続けた特製の指輪だよ?」


 この学園で三年間勉強した後に、私達は結婚することになっている。結婚が決まったのは、イルト様の瘴気を浄化した翌日であり、それによって、私のイルト様の婚約者という立場は揺るぎないものとなった。


「僕からユミリアに、ようやく渡せる」


 婚約者としての発表はされていたものの、婚約指輪は、男性側が一年間、指輪に魔力を込め続けなければならないという王族のみの風習があったため、準備に時間がかかっていた。それも、イルト様は瘴気に侵されていたため、その影響がなくなってから作るべきとの意見が多く、ずっと、婚約指輪がないままだったのだ。


「一時的に瘴気に侵されたことはあったけど、ミーシャ嬢の話では、その影響は出てないみたいだから、安心して? もう、絶対に離さないからね?」

「っ、はいっ」


 この日、私は嬉しさのあまり、初めて涙をこぼしたのだった。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...