悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百八十六話 ゲーム

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(おかしい……)


 そう思い始めたのは、いつの頃からだったろうか。


(何で、私は、ロード様以外と話せていないんだろう?)


 最近の私は、なぜか、ロード様以外と話せていない。と、いうより、ロード様が、自分以外を私に寄せ付けないようにしているように感じる。


(それだけじゃない。……ロード様は、本当に、昔から、私達の側に居たロード様……?)


 私にとってのロード様は、紳士的ではあるものの、強い自己主張をする人ではなかった。独占欲を発揮することもなく、ただただ、穏やかな人。イルト様と比べれば、強烈な思い出など存在しない、失礼な言い方をすれば、影の薄い方だった。それが、今は、ドロリとした瞳でこちらを見つめ、私が他の人と接触しようとするのを全て、拒絶している。


(ロード様が別人と入れ替わった? それとも……)


 どうなっているのかは分からないものの、今のロード様がおかしいことは確かだ。
 こちらへ戻ってきてから、なぜか、家族は全員どこかへ行っているし、セイ達の姿も見えない。メリーやムト達は、その辺は仕事関係だと思っているようだが、もしかしたら、何らかの危険を察知して、セイ達が私の家族を避難させたのではないかとも思っている。ただ……。


(何が危険なのか、正確なことが分からない、か……)


 現在、私は城の中の自室で、何をどうすれば、情報が得られるだろうかと唸っていた。もし、現在の状態に邪神が絡んでいるのだとすれば、とにかくローランと接触したいところではある。たとえ、この世界がゲームの世界だとしても・・・・・・・・・・・、ハッピーエンドの方が良いに決まっている。


「でも、面倒だよね……」


 体感型恋愛ゲーム『モフモフとゆく、悪の花』をプレイしている今、さっさと謎解きをして、恋愛パートへと移行したいところではある。


「黒の獣つきとして虐げられたユミリア・リ・アルテナは、学園に入ると、ヒロインとして、様々な男性と恋愛するゲーム、だったはずなんだけどなぁ」


 女神様と話したゲームは、体感型ではない、普通の画面で行うテレビゲームだ。そのゲームでは悪役なユミリアも、こちらでは、悪役っぽい部分はあるものの、ユミリアがヒロインなゲームだったはずだ。


「ストーリー自体は、結構壮大だし、面白いとは思うけど、ちょっと難しいな……」


 こんなことならば、攻略本を読んでおけば良かったと思うものの、これは、一度プレイを始めたら、最後までログアウトできない。どうにか頑張って、攻略するしかなさそうだった。


 私は、この時、自分の記憶が歪められているかもしれないと知らされていながら、気づくことはなかった。ここが、ゲームの世界ではないのだという現実に。この記憶に、なんの整合性もないということに。だからこそ……その悲劇は、起こるべくして、起こったのだろう。私は、翌日、それを思い知ることとなる。
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