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第三章 少女期 女神編
第三百八十話 イリアスの記憶
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「僕は、ユレイラと初めて出会った時、自分の名前以外、何も覚えていなかったんだ」
イリアスと出会った時、彼は、随分と酷い怪我を負っていた。神とはいえ、怪我を負えば痛い。そして、神に傷を負わせられるのは、神力のみであるため、イリアスが、何者かに襲われてその状態になったことだけは明らかだった。
「ユレイラと過ごす日々の中、少しずつ、断片的に思い出すことはあっても、自分が何者なのか、どうして、怪我をしていたのかは思い出せなかった」
神にとって、自分の存在を認識するという行為は、力を行使するために必要なことだ。自分の名前、神としての力。それらを認識しないことには、神は力の五分の一しか発揮できないとされている。
「……と、いうことは、イリアス様って、かなりとんでもない神だったんじゃあ……」
頬を引つらせるセイの言葉に、イルト様はうなずく。
「僕が、自分の神としての力を思い出したのは、イルトとして転生して、イリアスだった頃のことを思い出した時。……僕の神の力は……断罪の力だ」
そう告げたイルト様の言葉に、全員が絶句する。
断罪の神は、神と邪神の間に立つ天秤の神とも言われている。かの神は、神界の理に縛られることなく、悠久の時を生きる神。創世神様よりも、よほど強力な神であり、神の間でも、その存在は伝説級だった。
神と邪神の割合を調整し、増えすぎた邪神を断罪して、新たな神の魂を生み出す神。その姿を見た者は誰も居ないとされ、どこに居るのかすらも分からない神。
「そして、僕が、傷つき、記憶を失った原因は、僕と同格の神、審判の神に殺されかけたからだ」
「審判の神……断罪の神と審判の神は同じものとして語られることもありますが、そう言うということは、違うんですね?」
「うん、審判の神の判断に基づいて、僕は断罪を行っていた。もちろん、僕自身もある程度調整するけど、彼の判断が大元だったんだ」
イルト様の話では、その頃の審判の神はどこかおかしいと思える状態だったものの、すぐに元に戻ると考えて放置していたのだという。本来、彼らはお互いに干渉することなく、ただただ役割を果たすのみの存在であったため、それは仕方のないことだった。しかし、審判の神の異変はどんどん大きくなり、気がつけば、イリアスは審判の神に刃を向けられ、大きく傷ついて、神界の端に落ちたのだそうだ。
「何があったのかは、未だに分からない。けど、邪神達が攻め込んだのは、明らかに僕が断罪の神として仕事をしてこなかったせいだし、もしかしたら、審判の神も関わりがあるかもしれない」
そう言いながら、鋭い目つきでこの先の道を睨んだイルト様は、じっくりとそこを観察して、一つうなずく。
「この神鏡邸は、入り込もうとした者を問答無用に屠ってきた。そしてそれは、僕の力で断罪することが可能だということの理由にもなる」
侵入者の排除。しかし、その事情も何も汲むことのない一方的な排除は、イルト様の断罪の対象にすることができる。そうすれば、神鏡邸そのものの力を失わせることだって可能なのだ。いや、そうでなくとも、きっと、今持っているイルト様が力をちゃんと使えば、一人だけがこの神鏡邸を攻略することだってできるかもしれない。それだけ、感じ取れるイルト様の力は規格外だった。
「……ユミリアが望むなら、僕は、この力をふるってみせるよ」
そう笑ったイルト様を前に、私は……首を横に振った。
イリアスと出会った時、彼は、随分と酷い怪我を負っていた。神とはいえ、怪我を負えば痛い。そして、神に傷を負わせられるのは、神力のみであるため、イリアスが、何者かに襲われてその状態になったことだけは明らかだった。
「ユレイラと過ごす日々の中、少しずつ、断片的に思い出すことはあっても、自分が何者なのか、どうして、怪我をしていたのかは思い出せなかった」
神にとって、自分の存在を認識するという行為は、力を行使するために必要なことだ。自分の名前、神としての力。それらを認識しないことには、神は力の五分の一しか発揮できないとされている。
「……と、いうことは、イリアス様って、かなりとんでもない神だったんじゃあ……」
頬を引つらせるセイの言葉に、イルト様はうなずく。
「僕が、自分の神としての力を思い出したのは、イルトとして転生して、イリアスだった頃のことを思い出した時。……僕の神の力は……断罪の力だ」
そう告げたイルト様の言葉に、全員が絶句する。
断罪の神は、神と邪神の間に立つ天秤の神とも言われている。かの神は、神界の理に縛られることなく、悠久の時を生きる神。創世神様よりも、よほど強力な神であり、神の間でも、その存在は伝説級だった。
神と邪神の割合を調整し、増えすぎた邪神を断罪して、新たな神の魂を生み出す神。その姿を見た者は誰も居ないとされ、どこに居るのかすらも分からない神。
「そして、僕が、傷つき、記憶を失った原因は、僕と同格の神、審判の神に殺されかけたからだ」
「審判の神……断罪の神と審判の神は同じものとして語られることもありますが、そう言うということは、違うんですね?」
「うん、審判の神の判断に基づいて、僕は断罪を行っていた。もちろん、僕自身もある程度調整するけど、彼の判断が大元だったんだ」
イルト様の話では、その頃の審判の神はどこかおかしいと思える状態だったものの、すぐに元に戻ると考えて放置していたのだという。本来、彼らはお互いに干渉することなく、ただただ役割を果たすのみの存在であったため、それは仕方のないことだった。しかし、審判の神の異変はどんどん大きくなり、気がつけば、イリアスは審判の神に刃を向けられ、大きく傷ついて、神界の端に落ちたのだそうだ。
「何があったのかは、未だに分からない。けど、邪神達が攻め込んだのは、明らかに僕が断罪の神として仕事をしてこなかったせいだし、もしかしたら、審判の神も関わりがあるかもしれない」
そう言いながら、鋭い目つきでこの先の道を睨んだイルト様は、じっくりとそこを観察して、一つうなずく。
「この神鏡邸は、入り込もうとした者を問答無用に屠ってきた。そしてそれは、僕の力で断罪することが可能だということの理由にもなる」
侵入者の排除。しかし、その事情も何も汲むことのない一方的な排除は、イルト様の断罪の対象にすることができる。そうすれば、神鏡邸そのものの力を失わせることだって可能なのだ。いや、そうでなくとも、きっと、今持っているイルト様が力をちゃんと使えば、一人だけがこの神鏡邸を攻略することだってできるかもしれない。それだけ、感じ取れるイルト様の力は規格外だった。
「……ユミリアが望むなら、僕は、この力をふるってみせるよ」
そう笑ったイルト様を前に、私は……首を横に振った。
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