俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌

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第四章 隠し事

第五十五話 謝罪の理由(ライナード視点)

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(すまない、カイト)


 謝罪はもういらないと、何があっても、俺を責めることはないと断言するカイトに、俺は内心で、もう一度謝罪する。


(俺は、カイトを諦められそうに、ない……)


 カイトが片翼を失った魔族に襲われたと聞いた時、俺の世界は真っ暗闇に染まった。もし、カイトが怪我でも負っていれば……いや、それ以前に、死んでしまったりなどしていようものなら……そう考えた瞬間、俺の心はギシリと軋んだ。


(嫌だ、嫌だっ、失いたくないっ! カイト、カイト、カイトっ、カイトっ!)


 カイトと離れなければならないなどと考えていたことも忘れて、立ち上がったところで、カイトの無事を知らされ、とにかく屋敷の前で待機することにする。その間、あまりに心配で泣きそうに……いや、実際泣いてしまったのは、仕方ないことだろう。


(カイト、すまないっ。俺が、俺が、こんな日に外出を許可したばっかりに……)


 もちろん、外出先で理性を失った魔族と遭遇することなど予想外だ。それでも、俺は自分を責めずにはいられなかった。
 そして、無事な姿を見せたカイトを抱き締めた途端、俺は、安堵し、ちょっとカイトへの力がこもり過ぎだとの指摘を受けて離して……そこで、一つの大きな懸念を抱く。


(こんなことで、カイトを元の世界に帰すことなど、できるのか……?)


 カイトはきっと、元の世界に帰りたいはずだ。それが、カイトにとっての幸せなのだ。そう思って、今日も、必死に城で書物を漁っていたのだ。


(それにもかかわらず、俺は、一体何を思って……?)


 しかし、俺は、カイトを元の世界に戻すと断言できない自分が居ることに愕然とする。


「すまないっ」


 自然と、俺の口からは、謝罪の言葉が漏れていた。


「すまない、すまないっ、カイトっ」

(俺は、カイトが元の世界に戻るのを、否定してしまった。カイトは、幸せになるべきなのに、離したくないと、帰したくないと思う自分が居る)


 カイトにどんなに慰められても、俺は、自分が抱いてしまった感情に苦しめられる。


(カイトに、側に居てほしい……いや、いけない、カイトは、幸せになるべきなんだっ)


 相反する感情の波に、俺は大きく混乱する。


(ダメだっ。カイトを引き留めるのだけは、やってはいけないっ)


 そう思っても、心はカイトを手放したくないと叫ぶ。


(いっそ、俺が居なければ……いや、だが、今、この世界でカイトが頼れるのは俺だけだ。俺が、命を絶つわけには……)


 何度も何度も口から出る謝罪。理由を尋ねられても、こんな醜い感情を伝えるわけにはいかない。ここまで醜い感情を抱いておきながら、俺はまだ、カイトに嫌われたくなかった。
 俺は、カイトの体に手を回しながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「約束する。必ず、守る」


 ありとあらゆる害悪から。そして、俺自身から、俺は、カイトを守ってみせよう。


「何があろうとも、カイトを守ってみせる」


 そして、きっと、いつか、カイトを元の世界に帰してみせよう。それでたとえ俺が狂うのだとしても、カイトの幸せの前では何でもないことだ。
 少しの間を置いて返事をしてくれたカイトに、俺は腕の力を緩めながら、深く深く、この決意を魂に刻む。けっして、それを違えぬようにと、深く、深く……。
 次からは、カイトを守るため、俺も外出には一緒に付き合うということを約束しながら、俺はもう一度、その温もりを確かめるかのように、愛しい愛しいカイトを抱き締めるのだった。
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