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第五章 お姉様
第八十八話 あの世界、この世界
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お茶会の話題は、最初のうちはニナの話だった。ユーカ様は、ニナの境遇に同情して、力になる方法を探すと約束してくれたのだ。
(まぁ、その言葉だけでも嬉しいかな?)
義憤に駆られているらしいユーカ様を見ても、俺は社交辞令くらいにしか取れなかった。後々、それは大きな間違いだと気づくのだが、それは別の話だ。
「そういえば、ユーカ様はこの世界がゲームの世界に似てるって話は知っているんですか?」
「あぁ、その話は、リリスにも聞きましたが……すみません。私はそのゲームをやっていなくて、何も知らないんです」
「えっ? あっ、やっ、謝る必要はないといいますか……もし、知ってたら、何か情報があるかと思っただけですので」
無表情ながらも、どこか申し訳なさそうに話すユーカ様に、俺は慌てて言葉を重ねる。
(目上の人に謝られるって、わりと戸惑う)
「ですが、今この世界を生きている私達だからこそ、知ることが、感じられることがあります。それは、カイト様も分かるでしょう?」
そう問われて、俺は一瞬言葉に詰まる。
(今、この世界を生きている俺達だからこそ、か……)
確かに、ゲームの画面だけを見ていたのでは、ここに生きる人達を本当の意味で知れたことにはならないのだろう。実際は、俺はゲームをしていないから、そこら辺は知らないとはいえ、ユーカ様が言わんとしていることの理解はできる。
(俺には、この世界で大切なものができた)
「カイト様は、元の世界に帰りたいと思いますか?」
そんな質問をされるのは、何度目だっただろうか?
ライナードからされていた質問を、今、ユーカ様からされて、俺は迷うことなく告げる。
「あちらに大切な人達を残してきた以上、帰りたい気持ちがないとは言いません。でも、私は、この世界に大切なものを作り過ぎた。だから、例え帰る方法があったとしても、帰りません」
ライナードが大切だ。ノーラやリュシリーが大切だ。ドム爺が大切だ。ニナが大切だ。リリスさんもローレルさんも大切だ。他にも、アメリアさんやルティアスさん、ジェドさんといった人達にも関わって、俺は、大切な時間を過ごしてきた。
「そうですか」
その瞬間、ユーカ様がフワリと微笑む。一瞬のことで、見間違いかとも思えたが、きっとそうではないのだろう。どことなく、ユーカ様の雰囲気は明るいものだった。
「なら、日本人仲間として、これからもよろしくお願いしますね」
「はい」
それから、俺達は日本人ならではの話をしたり、ニナを構い倒したりしながら時間を過ごした。
「そういえば、カイトさんは、他の勇者一行の行方とかはご存知ですか?」
「いや、全く知らないです」
呼び方も『カイト様』から『カイトさん』に変えてもらって話していると、何やらそんな話へと変わっていく。
「……なら、知らないままの方が良いですか?」
何やら悩んでいる様子で告げられて、俺はそこで始めて、彼らがあの後どうなったのか知りたいと思えた。
「もし、差し支えなければ、教えてください」
言い淀むということは、きっと、何か知っているのだろうと思って、俺は尋ねてみる。
「……私も、詳しくは知らないのですが、彼らはこの国に集まりつつあるらしいです」
「えっ?」
てっきり、レイリン王国があった場所に戻って、何らかの出世か何かを果たしたのかと思って尋ねてみれば、まさかの、この国にまた戻ってきているという発言に動揺する。
「ジークもハミルも、何かを考えているみたいではありますが、私もそこまで詳しく聞こうとしていなかったので、彼らがもうすぐこの国に来るらしい、ということしか分かりません」
ジークというのは、もちろんヴァイラン魔国の魔王で、ハミルというのは、お隣のリアン魔国の魔王のことだ。ユーカ様は、その二人と結婚した魔族にとって両翼と呼ばれる珍しい存在だという知識くらいはある。
(あいつらが、この国に……?)
今さら、何をしにやってくるというのか。まさか、俺がちゃんと死んだかどうかの確認に来たわけではないだろうとは思うが、不安は隠せない。
「……ライナードさんがあの勇者一行とやらに遅れを取ることはあり得ないことですので、安心してください」
「は、はい」
いつの間にか血の気が引いていた俺に、ユーカ様は優しく話しかけてくれる。
(そう、だよな。ライナードが、あんな奴らにやられるわけはないし、大丈夫だよな?)
「……よっぽど、ライナードさんを信用してるんですね」
「っ、それはもうっ。ライナードには助けられてばっかりなんですよ」
言って始めて、俺はライナードに随分助けられてきていることを自覚する。
「……私、何も返せてない……」
今更ながら、俺はライナードに何も返せていないことに気づく。住む場所も、衣服も、美味しい食事も、心の拠り所だって、ライナードのところにあるというのに、何も、お礼ができていない。
「それは……うーん、なら、こんなのはどうですか?」
耳を貸すように合図されて、俺はユーカ様の提案を聞く。
「それって、お礼になってないような……」
「いいえ。魔族にとっては、片翼からのこれは、相当嬉しいみたいですよ?」
「そう、ですか?」
「そうです」
「……なら、頑張ってみます」
そうして、ユーカ様とのお茶会は終わりを迎えるのだった。
(まぁ、その言葉だけでも嬉しいかな?)
義憤に駆られているらしいユーカ様を見ても、俺は社交辞令くらいにしか取れなかった。後々、それは大きな間違いだと気づくのだが、それは別の話だ。
「そういえば、ユーカ様はこの世界がゲームの世界に似てるって話は知っているんですか?」
「あぁ、その話は、リリスにも聞きましたが……すみません。私はそのゲームをやっていなくて、何も知らないんです」
「えっ? あっ、やっ、謝る必要はないといいますか……もし、知ってたら、何か情報があるかと思っただけですので」
無表情ながらも、どこか申し訳なさそうに話すユーカ様に、俺は慌てて言葉を重ねる。
(目上の人に謝られるって、わりと戸惑う)
「ですが、今この世界を生きている私達だからこそ、知ることが、感じられることがあります。それは、カイト様も分かるでしょう?」
そう問われて、俺は一瞬言葉に詰まる。
(今、この世界を生きている俺達だからこそ、か……)
確かに、ゲームの画面だけを見ていたのでは、ここに生きる人達を本当の意味で知れたことにはならないのだろう。実際は、俺はゲームをしていないから、そこら辺は知らないとはいえ、ユーカ様が言わんとしていることの理解はできる。
(俺には、この世界で大切なものができた)
「カイト様は、元の世界に帰りたいと思いますか?」
そんな質問をされるのは、何度目だっただろうか?
ライナードからされていた質問を、今、ユーカ様からされて、俺は迷うことなく告げる。
「あちらに大切な人達を残してきた以上、帰りたい気持ちがないとは言いません。でも、私は、この世界に大切なものを作り過ぎた。だから、例え帰る方法があったとしても、帰りません」
ライナードが大切だ。ノーラやリュシリーが大切だ。ドム爺が大切だ。ニナが大切だ。リリスさんもローレルさんも大切だ。他にも、アメリアさんやルティアスさん、ジェドさんといった人達にも関わって、俺は、大切な時間を過ごしてきた。
「そうですか」
その瞬間、ユーカ様がフワリと微笑む。一瞬のことで、見間違いかとも思えたが、きっとそうではないのだろう。どことなく、ユーカ様の雰囲気は明るいものだった。
「なら、日本人仲間として、これからもよろしくお願いしますね」
「はい」
それから、俺達は日本人ならではの話をしたり、ニナを構い倒したりしながら時間を過ごした。
「そういえば、カイトさんは、他の勇者一行の行方とかはご存知ですか?」
「いや、全く知らないです」
呼び方も『カイト様』から『カイトさん』に変えてもらって話していると、何やらそんな話へと変わっていく。
「……なら、知らないままの方が良いですか?」
何やら悩んでいる様子で告げられて、俺はそこで始めて、彼らがあの後どうなったのか知りたいと思えた。
「もし、差し支えなければ、教えてください」
言い淀むということは、きっと、何か知っているのだろうと思って、俺は尋ねてみる。
「……私も、詳しくは知らないのですが、彼らはこの国に集まりつつあるらしいです」
「えっ?」
てっきり、レイリン王国があった場所に戻って、何らかの出世か何かを果たしたのかと思って尋ねてみれば、まさかの、この国にまた戻ってきているという発言に動揺する。
「ジークもハミルも、何かを考えているみたいではありますが、私もそこまで詳しく聞こうとしていなかったので、彼らがもうすぐこの国に来るらしい、ということしか分かりません」
ジークというのは、もちろんヴァイラン魔国の魔王で、ハミルというのは、お隣のリアン魔国の魔王のことだ。ユーカ様は、その二人と結婚した魔族にとって両翼と呼ばれる珍しい存在だという知識くらいはある。
(あいつらが、この国に……?)
今さら、何をしにやってくるというのか。まさか、俺がちゃんと死んだかどうかの確認に来たわけではないだろうとは思うが、不安は隠せない。
「……ライナードさんがあの勇者一行とやらに遅れを取ることはあり得ないことですので、安心してください」
「は、はい」
いつの間にか血の気が引いていた俺に、ユーカ様は優しく話しかけてくれる。
(そう、だよな。ライナードが、あんな奴らにやられるわけはないし、大丈夫だよな?)
「……よっぽど、ライナードさんを信用してるんですね」
「っ、それはもうっ。ライナードには助けられてばっかりなんですよ」
言って始めて、俺はライナードに随分助けられてきていることを自覚する。
「……私、何も返せてない……」
今更ながら、俺はライナードに何も返せていないことに気づく。住む場所も、衣服も、美味しい食事も、心の拠り所だって、ライナードのところにあるというのに、何も、お礼ができていない。
「それは……うーん、なら、こんなのはどうですか?」
耳を貸すように合図されて、俺はユーカ様の提案を聞く。
「それって、お礼になってないような……」
「いいえ。魔族にとっては、片翼からのこれは、相当嬉しいみたいですよ?」
「そう、ですか?」
「そうです」
「……なら、頑張ってみます」
そうして、ユーカ様とのお茶会は終わりを迎えるのだった。
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