わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

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第二章 ライバル

第十三話 侵入と異変

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 城への侵入は、案外上手くいった。城を出る際に転移防止結界を破壊していたため、わたくしは直接、城の図書館へと転移できたのだ。今は、その図書館の中で、こっそりと本を探している最中である。


(恐らく、転移防止結界を復活させるのに時間がかかっているのでしょうね)


 城の転移防止結界は、わたくしが『絶対者』として活躍していた頃に張った結界だ。最初の頃は、正直、城にもお抱えの魔法使いくらいは居るので、そちらに任せるべきではと思ったものの、どうやら、転移防止結界というのは魔法使い十人がかりで二週間ほど、交互に魔法を使い続けて張るような代物だったらしい。それを、わたくしは一人で、一瞬で張ってしまうのだから、適材適所として、わたくしが呼ばれたようだった。それ以来、年に一度は結界を張り変える依頼があったのだけれど……今はわたくしが居ないために、魔法使い達が必死に結界を張り直していることだろう。


(そういえば、王妃様からの依頼もありましたわね)


 王妃様個人から『絶対者』への依頼は、いくつかあった。指輪に毒消しの魔法を付与したり、属性耐性の素材集め、害意を知らせる魔法をイヤリングに付与したり、一定以上の攻撃を受ける際に展開する結界魔法をネックレスに込めることもあった。
 どれだけ王妃様は危険な立場に居るのだろうと、その頃は不思議だったけれど、どうにも王妃様は命を狙われることが多いらしい。その理由の多くは、優秀な王妃様を逆恨みした者達によるものだったのだけれど……わたくしの王妃様の印象は、いつも怒っている、というか、睨まれるというか……実害らしい実害はないものの、何だかギクシャクとしていたというものしかないため、よくは分からない。


(今になっても、まだ、王妃様から嫌われていた理由は分かりませんが……もう、考えても仕方ないことですわね)


 もしかしたら、わたくし個人が原因ではなく、わたくしの周りに居る誰かが王妃様の恨みを買うようなことをしたとかだったのかもしれないけれど、今のわたくしには関係ない。今は、魔の森で楽しく暮らしているのだから。


(あっ、ありましたわ)


 ようやく、闇の神級魔法について書かれた本を見つけ、わたくしは辺りに気配がないことを確認しながらゆっくりとページを捲る。


『闇の神級魔法『虚無』は、魔族が開発したとされる魔法である。
 その代償は多岐に渡り、そのほとんどがまともな生活を送れなくなる類いのものである。
 代償を回避する方法として、愛する者同士の口づけが挙げられているが、実際にそれに成功したのは二人のみという結果になっている。実行者は過去の記録の中では七人おり、彼ら彼女らには確かに愛する者が居たはずだが、代償を払わずにすんだのが二人だけというのは不可解である。もしかしたら、何か別の条件があるのかもしれないが、それは伝えられていない』

(……これは……代償を払うしかないということ?)


 愛する者同士の口づけで、必ず代償を回避できるというのであれば、わたくしも努力しようと思えた。具体的には、ルティアスにもっと色々な人と出会ってもらい、わたくし以外の愛する人を見つけてもらおうと思っていたのだ。けれど、これを見る限り、口づけは確実な手段ではないように思えた。


(いえ、まだですわ。この魔法は、魔族が作ったとあるのですから、もしかしたらルティアスが何か知っているかもしれませんもの)


 まだ一冊見つけただけだ。もしかしたら、まだ闇の神級魔法について書かれたものがあるかもしれない。


(今日のところは、戻りましょうか)


 ルティアスには、家で待機してもらっている。まだ代償を払うところまで刻印が広がっていないとはいえ、心配なことには変わりなかったため、家に居るよう、きつく言っておいたのだ。


(戻ったら、ルティアスから話を聞きましょう)


 一応、刻印が広がるまでの期間は三ヶ月くらいあるらしい。そして、わたくしが刻印の広がる時間を遅らせていることから考えると、もっと期間があるはずだというのがルティアスの言だ。


「転移」


 こっそりと魔法を発動させて、わたくしは魔の森のログハウスの前へと戻る。


「? この気配は……」


 戻った途端感じたのは、どこか、覚えのある気配。それも、招かれざる客である予感がヒシヒシとする。


「……まだ、家には気づいていないのでしょうか?」


 しかし、それも時間の問題だろう。何せ、奴はこういうことに関しては鼻が効く。


「……ルティアスを避難させるべき、ですわね」


 ただでさえ面倒な相手が、ルティアスに会ったらどんな反応をするのか、考えたくもない。

 わたくしは、早々に結論を出すと、ログハウスの中へ早足で向かうのだった。
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