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第二章 ライバル
第十六話 ドラグニル竜国
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美しい褐色の石畳が敷き詰められた街道。白を基調とした大きめの建物が数多く立ち並び、遠くには巨大な時計台が見える。
行き交う人々はどこかのんびりとした様子で、この場所だけ、ゆったりとした時間が流れているように錯覚してしまう。
「ここが、ドラグニル竜国……」
「えぇ、とりあえず、入国証はもらいましたし、行きますわよ?」
この国には、何度か転移で来たことがあるため、わたくしはフードを被り、ルティアスを連れて、朝食後、すぐに転移して来ていた。物珍しそうに辺りを見るルティアスに、わたくしはさっさと用件を済ませようと歩き出す。
「ん? あれ? リリスさん? 竜珠殿って、お城みたいな場所なんだよね?」
「えぇ、大きな宮殿ですわね。それが何か?」
「……それらしい建物が見当たらないようなんだけど……」
そう言われて、もしかしたら、ルティアスが所属する国では、城は縦に長いものというイメージが強いのかもしれないと思い至る。
「竜珠殿は、横に長い建物ですの。もちろん、高さがないわけではありませんが、ここでは個々の建物が大きいので、ここからだと見えないでしょうね」
「それって、他国から来た人とか、困らないかなぁ?」
「普通は案内人がつくものですから、大丈夫ですわ」
わたくしが先導する形で歩いていくと、次第に、竜珠殿が見え出す。
「……何か、距離感がおかしくなりそうな大きさだね」
「えぇ、わたくしも、初めて見た時にはそう思いましたわ」
街の建物が白を基調としているのに対して、竜珠殿は黒一色で造られた堅牢な建物だった。ズラリと、何本あるのか数えたくもないくらいに大量にある柵がびっしりと並び、その奥に、漆黒の建物が待ち構えている。
「……魔王城?」
「それは、ルティアスの方が本物を知っているのではなくて?」
どうやら、ルティアスの中で、竜珠殿は魔王城らしい。確かに、わたくしも最初に見た時は同じ感想を抱いたけれど……本物の魔王城を知っているはずのルティアスにまでそう言わしめるというのは、中々にすごいことなのかもしれない。
あまりの大きさに、距離感がおかしいような気持ちになりながらも、わたくし達は、竜珠殿の正門へと辿り着く。
「少し、声を変えますので、驚かないでください」
正門の門番である竜人達に話しかける前に、わたくしは小声でルティアスにそう注意をして、口を開く。
「『絶対者』が来たと伝えろ」
「ははっ、少々お待ちくださいっ」
男とも女ともつかない中性的な声で二人の門番に命じると、彼らは急いで伝音魔法を行使する。
わたくしの声が変わったことか、それとも、この口調のことかは分からないけれど、ルティアスは少し目を見開いて、それでも黙ってわたくしの行動を見守っていてくれる。
「それと、今からは私のことは『絶対者』と呼ぶように」
「分かったよ」
名前を呼ばれて、誰かに特定されてしまうのを避けたかったわたくしは、ルティアスにそう告げておく。
少しすると、門番達は責任者からの伝音魔法を受けて、わたくし達の入場許可を出してくれた。
じっと黙ったまま、玄関に居た侍女の案内に付き従う。さすがに、宮殿の中まで真っ黒ということはなく、所々に魔法の明かりが浮かぶそこは、赤い絨毯が敷かれていて、様々な調度品が展示してある。
「こちらで、陛下がお待ちです」
「あぁ、ご苦労様」
威厳たっぷりにそう言って、わたくしはルティアスとともにその部屋へと入る。
「やぁ、『絶対者』。来てくれて嬉しいよぉ」
ゆったりと豪華な椅子に腰かけた彼は、昨日見たばかりの、色気駄々漏れの顔で微笑んでいた。
「早速、作業に取りかかる。さっさと案内しろ」
「えぇーっ。せっかく来たんだから、もうちょっとお話しようよぉ。ほら、美味しいお茶とお菓子も用意してるんだからさぁ」
「不要だ」
「むー、可愛い小動物も取り揃えてるよ? モフモフだよ? 狼ももちろん用意してるよ?」
「…………不要だ」
少し……いや、だいぶ悩んだけれど、ルティアスのうるうるとした視線を受けて、どうにか拒否する。
「そんなぁっ、『絶対者』はこれで必ず落ちるはずだったのにぃっ」
「ふっ」
「っ! むーっ」
アルムの言葉に、ルティアスが鼻で笑い、アルムはそんなルティアスを睨み付ける。
(どうしてこんなに仲が悪いのかしら?)
アルムもルティアスも、性格的には人懐っこい者同士で気が合いそうなものなのだけれど、どういうわけか、二人の仲は最悪だ。
(これが、同族嫌悪というやつかしら?)
二人の険悪な様子を眺めながらため息を吐いたわたくしは、さっさと仕事を終わらせるべく、魔力を周囲に散りばめて、結界の損壊具合を調べ始めるのだった。
行き交う人々はどこかのんびりとした様子で、この場所だけ、ゆったりとした時間が流れているように錯覚してしまう。
「ここが、ドラグニル竜国……」
「えぇ、とりあえず、入国証はもらいましたし、行きますわよ?」
この国には、何度か転移で来たことがあるため、わたくしはフードを被り、ルティアスを連れて、朝食後、すぐに転移して来ていた。物珍しそうに辺りを見るルティアスに、わたくしはさっさと用件を済ませようと歩き出す。
「ん? あれ? リリスさん? 竜珠殿って、お城みたいな場所なんだよね?」
「えぇ、大きな宮殿ですわね。それが何か?」
「……それらしい建物が見当たらないようなんだけど……」
そう言われて、もしかしたら、ルティアスが所属する国では、城は縦に長いものというイメージが強いのかもしれないと思い至る。
「竜珠殿は、横に長い建物ですの。もちろん、高さがないわけではありませんが、ここでは個々の建物が大きいので、ここからだと見えないでしょうね」
「それって、他国から来た人とか、困らないかなぁ?」
「普通は案内人がつくものですから、大丈夫ですわ」
わたくしが先導する形で歩いていくと、次第に、竜珠殿が見え出す。
「……何か、距離感がおかしくなりそうな大きさだね」
「えぇ、わたくしも、初めて見た時にはそう思いましたわ」
街の建物が白を基調としているのに対して、竜珠殿は黒一色で造られた堅牢な建物だった。ズラリと、何本あるのか数えたくもないくらいに大量にある柵がびっしりと並び、その奥に、漆黒の建物が待ち構えている。
「……魔王城?」
「それは、ルティアスの方が本物を知っているのではなくて?」
どうやら、ルティアスの中で、竜珠殿は魔王城らしい。確かに、わたくしも最初に見た時は同じ感想を抱いたけれど……本物の魔王城を知っているはずのルティアスにまでそう言わしめるというのは、中々にすごいことなのかもしれない。
あまりの大きさに、距離感がおかしいような気持ちになりながらも、わたくし達は、竜珠殿の正門へと辿り着く。
「少し、声を変えますので、驚かないでください」
正門の門番である竜人達に話しかける前に、わたくしは小声でルティアスにそう注意をして、口を開く。
「『絶対者』が来たと伝えろ」
「ははっ、少々お待ちくださいっ」
男とも女ともつかない中性的な声で二人の門番に命じると、彼らは急いで伝音魔法を行使する。
わたくしの声が変わったことか、それとも、この口調のことかは分からないけれど、ルティアスは少し目を見開いて、それでも黙ってわたくしの行動を見守っていてくれる。
「それと、今からは私のことは『絶対者』と呼ぶように」
「分かったよ」
名前を呼ばれて、誰かに特定されてしまうのを避けたかったわたくしは、ルティアスにそう告げておく。
少しすると、門番達は責任者からの伝音魔法を受けて、わたくし達の入場許可を出してくれた。
じっと黙ったまま、玄関に居た侍女の案内に付き従う。さすがに、宮殿の中まで真っ黒ということはなく、所々に魔法の明かりが浮かぶそこは、赤い絨毯が敷かれていて、様々な調度品が展示してある。
「こちらで、陛下がお待ちです」
「あぁ、ご苦労様」
威厳たっぷりにそう言って、わたくしはルティアスとともにその部屋へと入る。
「やぁ、『絶対者』。来てくれて嬉しいよぉ」
ゆったりと豪華な椅子に腰かけた彼は、昨日見たばかりの、色気駄々漏れの顔で微笑んでいた。
「早速、作業に取りかかる。さっさと案内しろ」
「えぇーっ。せっかく来たんだから、もうちょっとお話しようよぉ。ほら、美味しいお茶とお菓子も用意してるんだからさぁ」
「不要だ」
「むー、可愛い小動物も取り揃えてるよ? モフモフだよ? 狼ももちろん用意してるよ?」
「…………不要だ」
少し……いや、だいぶ悩んだけれど、ルティアスのうるうるとした視線を受けて、どうにか拒否する。
「そんなぁっ、『絶対者』はこれで必ず落ちるはずだったのにぃっ」
「ふっ」
「っ! むーっ」
アルムの言葉に、ルティアスが鼻で笑い、アルムはそんなルティアスを睨み付ける。
(どうしてこんなに仲が悪いのかしら?)
アルムもルティアスも、性格的には人懐っこい者同士で気が合いそうなものなのだけれど、どういうわけか、二人の仲は最悪だ。
(これが、同族嫌悪というやつかしら?)
二人の険悪な様子を眺めながらため息を吐いたわたくしは、さっさと仕事を終わらせるべく、魔力を周囲に散りばめて、結界の損壊具合を調べ始めるのだった。
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