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第三章 離れる時間
第二十八話 守るために(???視点)
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最近、毒を仕込まれることが多い上、刺客も増えた。まだ、誰の仕業かは分かってはいないものの、恐らくは国王ではないかとの当たりはつけている。
王族の部屋としては、随分と質素な部屋で、私は椅子に軽く腰かけて、本来なら国王陛下が処理すべき書類とにらめっこを続ける。
「王妃様。本日はいかがなさいますか?」
「とりあえず、このままいつも通り執務を片付けます。その間に情報収集の方は任せました」
「はっ」
私は、このレイリン王国の隣国に当たるファム帝国の姫だ。政略結婚のために、レイリン王国に嫁ぎはしたものの、気を許せる相手など、帝国から連れてきた侍女や護衛達くらいしか居ない。いや、後一人、『絶対者』と呼ばれる冒険者も、信頼に足る人物ではある。
しかし、彼は最近、この王都に唯一あるギルドのギルド長に愛想を尽かせたとかで旅立ってしまった。だから、この困難を乗り切るのは、私一人の力でなくてはならない。
一人の侍女が去っていく様子を見ながら、護衛二人と侍女一人が残る部屋で、私はため息を吐く。
「陛下は、まだあの愚か者を庇うつもり、なのでしょうね」
「そのようですね」
まず一つ目の問題は、先にも挙げたギルド長のことだ。ギルド長とはいえ、冒険者を貶めて殺し続けたことは、普通ならば強制労働か極刑に処されてもおかしくはない。王弟という立場から、極刑は難しいにしても、強制労働くらいの処分を下すべきだと思っているのに、国王陛下はあろうことか、数日の謹慎処分だけで済まそうとしている。
(このままでは、この王都は冒険者に見捨てられます)
ギルド長であったダルタスは、話によると随分冒険者達の恨みを買っていたらしく、憲兵が駆けつけた頃にはボロボロだったらしい。闇の回復魔法まで使っていたというのだから、甘い処分など、冒険者を怒らせるだけにしかならない。
(いえ、ですが、これはまだ時間があることですね)
謹慎期間は今日を入れて残り三日。それだけの期間で、まだ時間があると言える現状に、乾いた笑いしか浮かばないものの、実際のところ、それが実情だ。
「問題は、エルヴィスです」
今日、エルヴィスの謹慎が解ける。それと同時に国王陛下はエルヴィスとシェイラを出会わせるつもりだ。
もちろん、ただの見合い程度の場であるならば、私もこんなに頭を悩ますことはない。問題なのは、国王陛下が二人に媚薬を盛って、既成事実を作らせようとしているという事実だ。
(何としても、シェイラ嬢をあの愚か者達から守らなければっ)
何といっても、シェイラ嬢はリリス嬢の妹だ。それだけで、私には彼女を守る理由になりうる。
「シェイラ嬢の様子は?」
「はっ、父親であるアドスからの暴行、及び、悪名高い家庭教師、ジェリコによる体罰によって、現在臥せっておられます」
「……そのような状態で、今日、顔合わせですか……」
応える護衛の言葉に、私は苦虫を噛み潰したような表情をしていることだろう。本来ならば、シェイラ嬢が登城する最中に、賊の襲撃にみせかけてシェイラ嬢を拐い、安全な場所に匿おうと思っていたものの、どうやらそれはシェイラ嬢の負担が大きい。
「仕方ありません。緊急の話だと言って、私のところに先に来るよう手配しましょう」
幼い頃のリリス嬢が、国王陛下に目をつけられたことには、すぐに気づいた。そして、私がリリス嬢の味方をすれば、歪んだ愛情を持つ国王陛下が、私を排除しようと動くことも、そして、それができないと分かれば、リリス嬢をさらに危険に晒して、自分を頼るよう仕向けることも。だから、私は、傍目には嫉妬しているように見せかけて、リリス嬢と距離を取ることにした。そうすることで、リリス嬢に向けられる数多の危険から、リリス嬢を遠ざけたのだ。
しかし、そのリリス嬢は現在行方知れず。状況から考えると、リリス嬢が自分で逃げ出したように思えるため、無事だろうとは思うものの、私が動かせる人間は少ない。リリス嬢を追わせることなんて、その安否の確認なんて、できなかった。
(国王陛下とエルヴィスに散々迷惑をかけられたリリス嬢の妹。私は、何がなんでも守り抜いてみせます)
聞くところによれば、姉妹の仲は良好だったとのこと。両親に対しては、ほとんど義務だけで接しているようなリリス嬢も、シェイラ嬢には心を砕いていたという。
(リリス嬢の表情を奪い、楽しい時を奪ってきた私には、これくらいの償いしかできません)
本当は、シェイラ嬢のことがなければさっさと亡命してしまいたいと思うくらいに、この国の腐敗は進んでしまっている。だから、シェイラ嬢の安全さえ確保できれば、私は、身近な侍女や護衛達を連れて、さっさと国を出るつもりだった。
「まもなく、シェイラ様が到着されるようです」
「分かりました。それでは、準備をしましょう」
一度だけ、その危機に駆けつけようという言葉とともに『絶対者』から贈られたネックレス。それを胸に、私は立ち上がるのだった。
王族の部屋としては、随分と質素な部屋で、私は椅子に軽く腰かけて、本来なら国王陛下が処理すべき書類とにらめっこを続ける。
「王妃様。本日はいかがなさいますか?」
「とりあえず、このままいつも通り執務を片付けます。その間に情報収集の方は任せました」
「はっ」
私は、このレイリン王国の隣国に当たるファム帝国の姫だ。政略結婚のために、レイリン王国に嫁ぎはしたものの、気を許せる相手など、帝国から連れてきた侍女や護衛達くらいしか居ない。いや、後一人、『絶対者』と呼ばれる冒険者も、信頼に足る人物ではある。
しかし、彼は最近、この王都に唯一あるギルドのギルド長に愛想を尽かせたとかで旅立ってしまった。だから、この困難を乗り切るのは、私一人の力でなくてはならない。
一人の侍女が去っていく様子を見ながら、護衛二人と侍女一人が残る部屋で、私はため息を吐く。
「陛下は、まだあの愚か者を庇うつもり、なのでしょうね」
「そのようですね」
まず一つ目の問題は、先にも挙げたギルド長のことだ。ギルド長とはいえ、冒険者を貶めて殺し続けたことは、普通ならば強制労働か極刑に処されてもおかしくはない。王弟という立場から、極刑は難しいにしても、強制労働くらいの処分を下すべきだと思っているのに、国王陛下はあろうことか、数日の謹慎処分だけで済まそうとしている。
(このままでは、この王都は冒険者に見捨てられます)
ギルド長であったダルタスは、話によると随分冒険者達の恨みを買っていたらしく、憲兵が駆けつけた頃にはボロボロだったらしい。闇の回復魔法まで使っていたというのだから、甘い処分など、冒険者を怒らせるだけにしかならない。
(いえ、ですが、これはまだ時間があることですね)
謹慎期間は今日を入れて残り三日。それだけの期間で、まだ時間があると言える現状に、乾いた笑いしか浮かばないものの、実際のところ、それが実情だ。
「問題は、エルヴィスです」
今日、エルヴィスの謹慎が解ける。それと同時に国王陛下はエルヴィスとシェイラを出会わせるつもりだ。
もちろん、ただの見合い程度の場であるならば、私もこんなに頭を悩ますことはない。問題なのは、国王陛下が二人に媚薬を盛って、既成事実を作らせようとしているという事実だ。
(何としても、シェイラ嬢をあの愚か者達から守らなければっ)
何といっても、シェイラ嬢はリリス嬢の妹だ。それだけで、私には彼女を守る理由になりうる。
「シェイラ嬢の様子は?」
「はっ、父親であるアドスからの暴行、及び、悪名高い家庭教師、ジェリコによる体罰によって、現在臥せっておられます」
「……そのような状態で、今日、顔合わせですか……」
応える護衛の言葉に、私は苦虫を噛み潰したような表情をしていることだろう。本来ならば、シェイラ嬢が登城する最中に、賊の襲撃にみせかけてシェイラ嬢を拐い、安全な場所に匿おうと思っていたものの、どうやらそれはシェイラ嬢の負担が大きい。
「仕方ありません。緊急の話だと言って、私のところに先に来るよう手配しましょう」
幼い頃のリリス嬢が、国王陛下に目をつけられたことには、すぐに気づいた。そして、私がリリス嬢の味方をすれば、歪んだ愛情を持つ国王陛下が、私を排除しようと動くことも、そして、それができないと分かれば、リリス嬢をさらに危険に晒して、自分を頼るよう仕向けることも。だから、私は、傍目には嫉妬しているように見せかけて、リリス嬢と距離を取ることにした。そうすることで、リリス嬢に向けられる数多の危険から、リリス嬢を遠ざけたのだ。
しかし、そのリリス嬢は現在行方知れず。状況から考えると、リリス嬢が自分で逃げ出したように思えるため、無事だろうとは思うものの、私が動かせる人間は少ない。リリス嬢を追わせることなんて、その安否の確認なんて、できなかった。
(国王陛下とエルヴィスに散々迷惑をかけられたリリス嬢の妹。私は、何がなんでも守り抜いてみせます)
聞くところによれば、姉妹の仲は良好だったとのこと。両親に対しては、ほとんど義務だけで接しているようなリリス嬢も、シェイラ嬢には心を砕いていたという。
(リリス嬢の表情を奪い、楽しい時を奪ってきた私には、これくらいの償いしかできません)
本当は、シェイラ嬢のことがなければさっさと亡命してしまいたいと思うくらいに、この国の腐敗は進んでしまっている。だから、シェイラ嬢の安全さえ確保できれば、私は、身近な侍女や護衛達を連れて、さっさと国を出るつもりだった。
「まもなく、シェイラ様が到着されるようです」
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