26 / 78
第三章 離れる時間
第二十六話 気づいた気持ち
しおりを挟む
ギルド長へ報復行為をしてから二日が経った。
(ルティアスは無事でしょうか? いえ、ちゃんと結界は張っていますし、それが発動した様子もありませんし……結界に気づかれて、先に解除でもされていない限り、問題はないはず、ですわよね?)
今、ルティアスが何をしているのかを気にしながら、ぼんやりと朝食を作り……。
「あっ! こ、焦げますわっ!」
ベーコンを焼いていたフライパンからモクモクと煙が上がっているのを見て、わたくしは慌ててベーコンを引き上げる。
「……はぁ、どうして、こう、落ち着かないのでしょうか?」
ルティアスが居なくなってから、わたくしは何かしら失敗をすることが多くなった。料理をすれば、焦がしたり指を切ったり、裁縫をすれば、別の部分の布を巻き込んで縫っていたり、掃除をすれば、棚にぶつかって色々と落としてしまったり……。
「はぁ……」
そして、ため息も多くなり、何だか憂鬱な気分になってしまう。
「こんな調子で魔物に挑むのは……危険ですわね、明らかに」
別に、食料に困っているわけではないため、魔物にわざわざ挑む必要などない。危険を冒さずにすむという事実に、わたくしは少しだけ、現状に感謝する。
「これは……もしかすると、もしかするかもしれませんわ」
ルティアスが居なくなってからの不調。何事も手につかず、上の空になるこの状況に、わたくしはとうとう自分の気持ちへと向き合って、観念する。
「これは…………
ルティアスの料理が忘れられなさ過ぎるのですわっ!」
結論が出てしまえば、何ということはない。この世界に生まれて初めて食べた日本食を前に、わたくしは食い意地を張っていたということなのだろう。
「令嬢としてはいかがなものではありますが……いいえ、ですがっ、わたくしはこれから好きに生きるためにここに来たのですっ! 少しくらい、食い意地が張っていても仕方ないのですわっ!」
ルティアスには、生姜やお米を持ってきてもらうことを頼んでいる。豚の生姜焼きはもちろん、豚丼も食べたい。そして、ルティアスはそれ以外にも色々と見繕ってくれるらしく、豚の角煮も作ってくれるらしいのだ。きっと、今のわたくしは、それらの日本食が楽しみで、そして、今、それらが食べられないことが悲しくて、ずっと上の空になっているのだろう。
「っ、そうですわっ! 家を増築して、ルティアスの寝床も確保してしまいましょうっ! そうすれば、外で眠るルティアスが風邪を引いたりして、わたくしに料理が作れないということはなくなりますわよねっ」
一階の料理スペースにはルティアスを入れることはあれど、二階には、ルティアスが闇の神級魔法を使用した時と、アルムが訪れた時くらいしか入れていない。しかし、これからもルティアスがここから離れないというのであれば、わたくしはルティアスのために部屋を一つ作るくらいのことはできる。何せ、このログハウス自体は、わたくしが冒険者稼業をしながら、建築の知識を身につけ、魔法で造ったものなのだから。
すでに、ルティアスがこの家で一緒に住んでくれることを疑っていないわたくしは、二日ぶりにはっきりとした頭で考える。
「そうと決まれば、早速……いえ、ご飯を食べてから造りましょう」
ちょっと卵の殻が入ってしまったスクランブルエッグと、焦げたベーコン、後は、ドラグニル竜国で買っておいた黒パンを食べると、わたくしはすぐに外に出る。
「ここを分解して、こっちに扉を造って……部屋の広さは、わたくしの部屋と同じで良いでしょうか?」
地面に設計図を簡単に書いていくわたくしは、一階のリビングの奥に部屋を造ろうと思考をまとめていく。
「まずは木材の調達ですわね。今日のところは、木材の調達と乾燥、後は的確な大きさに揃えていく作業で終わりそうですわね」
ルティアスが戻ってくるまでに、増築を終えてしまおうと思えば、きっと何とかなるような気がした。
「最短で五日と言っていましたし、今日を入れて三日……必ず、完成させてみせますわっ!」
クローゼットに関しては、ドラグニル竜国で買ってくれば良い。他にも必要そうな小物類は揃えておいた方が良いだろうと、わたくしはどんどん考えを深めていく。
「ドラグニル竜国の家具は、今日のうちに注文に行った方が良いですわね。ベッドは……わたくしが造った方が早いかしら? いえ、木材で基礎を造って、布団の部分はやはり注文しましょう……後は……」
必要なものを全て書き出したわたくしは、先にドラグニル竜国へ飛ぶことにする。
「さぁ、これから忙しくなりますわ」
暖かな日の光が照らす中、わたくしは褐色の石畳へと踏み出すのだった。
(ルティアスは無事でしょうか? いえ、ちゃんと結界は張っていますし、それが発動した様子もありませんし……結界に気づかれて、先に解除でもされていない限り、問題はないはず、ですわよね?)
今、ルティアスが何をしているのかを気にしながら、ぼんやりと朝食を作り……。
「あっ! こ、焦げますわっ!」
ベーコンを焼いていたフライパンからモクモクと煙が上がっているのを見て、わたくしは慌ててベーコンを引き上げる。
「……はぁ、どうして、こう、落ち着かないのでしょうか?」
ルティアスが居なくなってから、わたくしは何かしら失敗をすることが多くなった。料理をすれば、焦がしたり指を切ったり、裁縫をすれば、別の部分の布を巻き込んで縫っていたり、掃除をすれば、棚にぶつかって色々と落としてしまったり……。
「はぁ……」
そして、ため息も多くなり、何だか憂鬱な気分になってしまう。
「こんな調子で魔物に挑むのは……危険ですわね、明らかに」
別に、食料に困っているわけではないため、魔物にわざわざ挑む必要などない。危険を冒さずにすむという事実に、わたくしは少しだけ、現状に感謝する。
「これは……もしかすると、もしかするかもしれませんわ」
ルティアスが居なくなってからの不調。何事も手につかず、上の空になるこの状況に、わたくしはとうとう自分の気持ちへと向き合って、観念する。
「これは…………
ルティアスの料理が忘れられなさ過ぎるのですわっ!」
結論が出てしまえば、何ということはない。この世界に生まれて初めて食べた日本食を前に、わたくしは食い意地を張っていたということなのだろう。
「令嬢としてはいかがなものではありますが……いいえ、ですがっ、わたくしはこれから好きに生きるためにここに来たのですっ! 少しくらい、食い意地が張っていても仕方ないのですわっ!」
ルティアスには、生姜やお米を持ってきてもらうことを頼んでいる。豚の生姜焼きはもちろん、豚丼も食べたい。そして、ルティアスはそれ以外にも色々と見繕ってくれるらしく、豚の角煮も作ってくれるらしいのだ。きっと、今のわたくしは、それらの日本食が楽しみで、そして、今、それらが食べられないことが悲しくて、ずっと上の空になっているのだろう。
「っ、そうですわっ! 家を増築して、ルティアスの寝床も確保してしまいましょうっ! そうすれば、外で眠るルティアスが風邪を引いたりして、わたくしに料理が作れないということはなくなりますわよねっ」
一階の料理スペースにはルティアスを入れることはあれど、二階には、ルティアスが闇の神級魔法を使用した時と、アルムが訪れた時くらいしか入れていない。しかし、これからもルティアスがここから離れないというのであれば、わたくしはルティアスのために部屋を一つ作るくらいのことはできる。何せ、このログハウス自体は、わたくしが冒険者稼業をしながら、建築の知識を身につけ、魔法で造ったものなのだから。
すでに、ルティアスがこの家で一緒に住んでくれることを疑っていないわたくしは、二日ぶりにはっきりとした頭で考える。
「そうと決まれば、早速……いえ、ご飯を食べてから造りましょう」
ちょっと卵の殻が入ってしまったスクランブルエッグと、焦げたベーコン、後は、ドラグニル竜国で買っておいた黒パンを食べると、わたくしはすぐに外に出る。
「ここを分解して、こっちに扉を造って……部屋の広さは、わたくしの部屋と同じで良いでしょうか?」
地面に設計図を簡単に書いていくわたくしは、一階のリビングの奥に部屋を造ろうと思考をまとめていく。
「まずは木材の調達ですわね。今日のところは、木材の調達と乾燥、後は的確な大きさに揃えていく作業で終わりそうですわね」
ルティアスが戻ってくるまでに、増築を終えてしまおうと思えば、きっと何とかなるような気がした。
「最短で五日と言っていましたし、今日を入れて三日……必ず、完成させてみせますわっ!」
クローゼットに関しては、ドラグニル竜国で買ってくれば良い。他にも必要そうな小物類は揃えておいた方が良いだろうと、わたくしはどんどん考えを深めていく。
「ドラグニル竜国の家具は、今日のうちに注文に行った方が良いですわね。ベッドは……わたくしが造った方が早いかしら? いえ、木材で基礎を造って、布団の部分はやはり注文しましょう……後は……」
必要なものを全て書き出したわたくしは、先にドラグニル竜国へ飛ぶことにする。
「さぁ、これから忙しくなりますわ」
暖かな日の光が照らす中、わたくしは褐色の石畳へと踏み出すのだった。
43
あなたにおすすめの小説
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる