わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

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第三章 離れる時間

第二十六話 気づいた気持ち

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 ギルド長へ報復行為をしてから二日が経った。


(ルティアスは無事でしょうか? いえ、ちゃんと結界は張っていますし、それが発動した様子もありませんし……結界に気づかれて、先に解除でもされていない限り、問題はないはず、ですわよね?)


 今、ルティアスが何をしているのかを気にしながら、ぼんやりと朝食を作り……。


「あっ! こ、焦げますわっ!」


 ベーコンを焼いていたフライパンからモクモクと煙が上がっているのを見て、わたくしは慌ててベーコンを引き上げる。


「……はぁ、どうして、こう、落ち着かないのでしょうか?」


 ルティアスが居なくなってから、わたくしは何かしら失敗をすることが多くなった。料理をすれば、焦がしたり指を切ったり、裁縫をすれば、別の部分の布を巻き込んで縫っていたり、掃除をすれば、棚にぶつかって色々と落としてしまったり……。


「はぁ……」


 そして、ため息も多くなり、何だか憂鬱な気分になってしまう。


「こんな調子で魔物に挑むのは……危険ですわね、明らかに」


 別に、食料に困っているわけではないため、魔物にわざわざ挑む必要などない。危険を冒さずにすむという事実に、わたくしは少しだけ、現状に感謝する。


「これは……もしかすると、もしかするかもしれませんわ」


 ルティアスが居なくなってからの不調。何事も手につかず、上の空になるこの状況に、わたくしはとうとう自分の気持ちへと向き合って、観念する。


「これは…………









ルティアスの料理が忘れられなさ過ぎるのですわっ!」


 結論が出てしまえば、何ということはない。この世界に生まれて初めて食べた日本食を前に、わたくしは食い意地を張っていたということなのだろう。


「令嬢としてはいかがなものではありますが……いいえ、ですがっ、わたくしはこれから好きに生きるためにここに来たのですっ! 少しくらい、食い意地が張っていても仕方ないのですわっ!」


 ルティアスには、生姜やお米を持ってきてもらうことを頼んでいる。豚の生姜焼きはもちろん、豚丼も食べたい。そして、ルティアスはそれ以外にも色々と見繕ってくれるらしく、豚の角煮も作ってくれるらしいのだ。きっと、今のわたくしは、それらの日本食が楽しみで、そして、今、それらが食べられないことが悲しくて、ずっと上の空になっているのだろう。


「っ、そうですわっ! 家を増築して、ルティアスの寝床も確保してしまいましょうっ! そうすれば、外で眠るルティアスが風邪を引いたりして、わたくしに料理が作れないということはなくなりますわよねっ」


 一階の料理スペースにはルティアスを入れることはあれど、二階には、ルティアスが闇の神級魔法を使用した時と、アルムが訪れた時くらいしか入れていない。しかし、これからもルティアスがここから離れないというのであれば、わたくしはルティアスのために部屋を一つ作るくらいのことはできる。何せ、このログハウス自体は、わたくしが冒険者稼業をしながら、建築の知識を身につけ、魔法で造ったものなのだから。

 すでに、ルティアスがこの家で一緒に住んでくれることを疑っていないわたくしは、二日ぶりにはっきりとした頭で考える。


「そうと決まれば、早速……いえ、ご飯を食べてから造りましょう」


 ちょっと卵の殻が入ってしまったスクランブルエッグと、焦げたベーコン、後は、ドラグニル竜国で買っておいた黒パンを食べると、わたくしはすぐに外に出る。


「ここを分解して、こっちに扉を造って……部屋の広さは、わたくしの部屋と同じで良いでしょうか?」


 地面に設計図を簡単に書いていくわたくしは、一階のリビングの奥に部屋を造ろうと思考をまとめていく。


「まずは木材の調達ですわね。今日のところは、木材の調達と乾燥、後は的確な大きさに揃えていく作業で終わりそうですわね」


 ルティアスが戻ってくるまでに、増築を終えてしまおうと思えば、きっと何とかなるような気がした。


「最短で五日と言っていましたし、今日を入れて三日……必ず、完成させてみせますわっ!」


 クローゼットに関しては、ドラグニル竜国で買ってくれば良い。他にも必要そうな小物類は揃えておいた方が良いだろうと、わたくしはどんどん考えを深めていく。


「ドラグニル竜国の家具は、今日のうちに注文に行った方が良いですわね。ベッドは……わたくしが造った方が早いかしら? いえ、木材で基礎を造って、布団の部分はやはり注文しましょう……後は……」


 必要なものを全て書き出したわたくしは、先にドラグニル竜国へ飛ぶことにする。


「さぁ、これから忙しくなりますわ」


 暖かな日の光が照らす中、わたくしは褐色の石畳へと踏み出すのだった。
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