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第四章 旅行
第三十五話 気がかりと提案
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アルムとともに転移でドラグニル竜国へと向かったシェイラを見送ったわたくしは、ようやくいつものログハウスに戻ったことに安心する。やはり、このログハウスに大勢を招くのは疲れそうだ。
「お疲れ様、リリスさん」
「っ、つ、疲れてなどいませんわ」
苦笑気味に声をかけられ、図星を突かれたわたくしは、つい、そんな素っ気ない態度を取ってしまう。何だか、ルティアスの前だとこれが通常通りになってしまっていて、非常にいたたまれない。
「ところで、リリスさん。さっきは他の話に流れちゃったけど、この家、増築したの?」
言いながら、ログハウスの中を不思議そうに眺めるルティアス。そこで、わたくしはその件について説明していなかったことを思い出す。
「それは、その……」
ルティアスが寝床に困らないように、外で眠って、風邪でも引いてしまわないように増築したことを伝えようとしたわたくしは、はたと気づく。
(……これって、一般的に同棲と呼ばれるものなのでは……?)
なぜ、その事実に今の今まで気づかなかったのか、わたくしはその場で頭を抱えそうになりながら、どうにか上手い言い回しはないかと考える。
「そ、そう、シェイラ達が来ることになったので、急遽増築したのですわっ! それで、その……ルティアスも使っても構いませんわよっ!」
本当は、ルティアスのために造ったのだけれど、それを直球で伝える勇気のないわたくしは、そんな言い回しでルティアスへと伝える。正直、色々と間違っている気がしなくもないけれど、せっかく造ったのに使ってもらえないのは寂しい。そんな思いで、不安に揺れる瞳をルティアスに向けると、ルティアスは、パアァッとその顔を明るくしていた。
「ほんと! 僕、リリスさんと一緒に住んでも良いのっ!?」
「っ、良いと言っているのですから、良いのですわっ! そ、それとも、ルティアスは部屋を使いたくないのですの?」
「そんなこと、あるわけないじゃないかっ! リリスさんと住めるなんて、夢みたいだ……」
まさに、夢心地といった具合のルティアスの姿に、わたくしはホッとすると同時に、『同棲』という言葉が頭をちらつき、『これは違う、シェアルームみたいなものですわっ』と否定しておいた。
「では、案内しますわ」
そうして案内するわたくしは、失念していた。シックな造りの部屋が、どう考えても王妃様達用ではないということを。ちょっと考えれば、男性を想定して造ったことが、ルティアスを想定して造ったことがバレてしまうような内装になっていたことを。
それに気づくのは、ルティアスを案内した後のことで、わたくしは、必死にごまかす羽目になるのだった。
「美味しいですわっ」
ルティアスとともに住むことになってから、家の細々とした用事を片付けて、現在はお昼時。ルティアスが持ってきた生姜や醤油、みりんなどによって、豚の生姜焼きを作ってもらったのと、後は何と、お米を持ち帰ったルティアスがご飯を炊いてくれたのとで、わたくしは久々のお米の味を、しみじみと感じて幸せに浸る。
「そんなに喜んでもらえると、作ったかいがあるよ」
「っ、ま、まだまだわたくしは満足していないのですから、もっと精進することですわねっ!」
「うんっ、リリスさんのために、料理の腕はいくらでも磨いておくよっ」
『美味しい』の一言だけで良かったはずが、なぜか勝手に動いた口によって、ルティアスの料理の腕の向上が約束されてしまう。
(これ以上美味しくなったら、わたくし、ルティアスから離れられませんわっ)
そんな予感を抱きながら、わたくしは、ふと、ルティアスの刻印の状況が気になって尋ねてみる。
「ルティアス、その、刻印の状態は、どうなんですの?」
まだ、そんなに広がっているはずのない刻印。わたくしのせいで現れてしまった刻印。そして、それの解除の方法が曖昧なままの刻印。
全身に広がってしまえば、ルティアスは何らかの代償を払うこととなってしまう。
(食材を取りに行かせている場合なんかじゃ、ありませんでしたわ……)
わたくしは、ルティアスのために動く責任がある。わたくしのために刻印を持ったルティアスに、わたくしは最大限の罪滅ぼしをしなくてはならないのに、それを忘れてはしゃいでいた自分が、今は情けない。
「うん? 大丈夫だよ。それより、リリスさん。旅行に行かない?」
「旅行、ですの?」
心配を軽く流されてしまったことに不満を覚えるものの、キラキラと目を輝かせるルティアスを前に、わたくしは何も言えなくなる。
「そう、もし良かったら、ヴァイラン魔国に来てみない? 生誕祭には間に合わないかもしれないけど、それでも今の時期、ヴァイラン魔国は活気があって、とても楽しいはずなんだよ」
今のヴァイラン魔国がいかに楽しいところなのかを力説し始めるルティアスに、わたくしは、つい、刻印のことを考えて、そちらを優先させようとするものの、ルティアスは受け入れてはくれない。
「嫌だよ。僕はリリスさんと一緒に、色んなところに行って楽しく過ごしたいんだ。だから、頑張って食材を取ってきた僕に、ご褒美をちょうだい?」
「……分かりましたわ。ただし、約束してください。旅行が終われば、その刻印をどうにかするために動くということを」
「うーん、分かったよ。しっかり頑張るねっ」
結局、刻印を消す方法は愛する者の口づけ以外判明していないし、その情報ですら曖昧なのだ。だから、ルティアスには、正確な情報を仕入れてもらい、行動に移してもらう必要がある。
そんな約束をしたわたくし達は、食事を終えて、ヴァイラン魔国へ向かう日程を確認し合うのだった。
「お疲れ様、リリスさん」
「っ、つ、疲れてなどいませんわ」
苦笑気味に声をかけられ、図星を突かれたわたくしは、つい、そんな素っ気ない態度を取ってしまう。何だか、ルティアスの前だとこれが通常通りになってしまっていて、非常にいたたまれない。
「ところで、リリスさん。さっきは他の話に流れちゃったけど、この家、増築したの?」
言いながら、ログハウスの中を不思議そうに眺めるルティアス。そこで、わたくしはその件について説明していなかったことを思い出す。
「それは、その……」
ルティアスが寝床に困らないように、外で眠って、風邪でも引いてしまわないように増築したことを伝えようとしたわたくしは、はたと気づく。
(……これって、一般的に同棲と呼ばれるものなのでは……?)
なぜ、その事実に今の今まで気づかなかったのか、わたくしはその場で頭を抱えそうになりながら、どうにか上手い言い回しはないかと考える。
「そ、そう、シェイラ達が来ることになったので、急遽増築したのですわっ! それで、その……ルティアスも使っても構いませんわよっ!」
本当は、ルティアスのために造ったのだけれど、それを直球で伝える勇気のないわたくしは、そんな言い回しでルティアスへと伝える。正直、色々と間違っている気がしなくもないけれど、せっかく造ったのに使ってもらえないのは寂しい。そんな思いで、不安に揺れる瞳をルティアスに向けると、ルティアスは、パアァッとその顔を明るくしていた。
「ほんと! 僕、リリスさんと一緒に住んでも良いのっ!?」
「っ、良いと言っているのですから、良いのですわっ! そ、それとも、ルティアスは部屋を使いたくないのですの?」
「そんなこと、あるわけないじゃないかっ! リリスさんと住めるなんて、夢みたいだ……」
まさに、夢心地といった具合のルティアスの姿に、わたくしはホッとすると同時に、『同棲』という言葉が頭をちらつき、『これは違う、シェアルームみたいなものですわっ』と否定しておいた。
「では、案内しますわ」
そうして案内するわたくしは、失念していた。シックな造りの部屋が、どう考えても王妃様達用ではないということを。ちょっと考えれば、男性を想定して造ったことが、ルティアスを想定して造ったことがバレてしまうような内装になっていたことを。
それに気づくのは、ルティアスを案内した後のことで、わたくしは、必死にごまかす羽目になるのだった。
「美味しいですわっ」
ルティアスとともに住むことになってから、家の細々とした用事を片付けて、現在はお昼時。ルティアスが持ってきた生姜や醤油、みりんなどによって、豚の生姜焼きを作ってもらったのと、後は何と、お米を持ち帰ったルティアスがご飯を炊いてくれたのとで、わたくしは久々のお米の味を、しみじみと感じて幸せに浸る。
「そんなに喜んでもらえると、作ったかいがあるよ」
「っ、ま、まだまだわたくしは満足していないのですから、もっと精進することですわねっ!」
「うんっ、リリスさんのために、料理の腕はいくらでも磨いておくよっ」
『美味しい』の一言だけで良かったはずが、なぜか勝手に動いた口によって、ルティアスの料理の腕の向上が約束されてしまう。
(これ以上美味しくなったら、わたくし、ルティアスから離れられませんわっ)
そんな予感を抱きながら、わたくしは、ふと、ルティアスの刻印の状況が気になって尋ねてみる。
「ルティアス、その、刻印の状態は、どうなんですの?」
まだ、そんなに広がっているはずのない刻印。わたくしのせいで現れてしまった刻印。そして、それの解除の方法が曖昧なままの刻印。
全身に広がってしまえば、ルティアスは何らかの代償を払うこととなってしまう。
(食材を取りに行かせている場合なんかじゃ、ありませんでしたわ……)
わたくしは、ルティアスのために動く責任がある。わたくしのために刻印を持ったルティアスに、わたくしは最大限の罪滅ぼしをしなくてはならないのに、それを忘れてはしゃいでいた自分が、今は情けない。
「うん? 大丈夫だよ。それより、リリスさん。旅行に行かない?」
「旅行、ですの?」
心配を軽く流されてしまったことに不満を覚えるものの、キラキラと目を輝かせるルティアスを前に、わたくしは何も言えなくなる。
「そう、もし良かったら、ヴァイラン魔国に来てみない? 生誕祭には間に合わないかもしれないけど、それでも今の時期、ヴァイラン魔国は活気があって、とても楽しいはずなんだよ」
今のヴァイラン魔国がいかに楽しいところなのかを力説し始めるルティアスに、わたくしは、つい、刻印のことを考えて、そちらを優先させようとするものの、ルティアスは受け入れてはくれない。
「嫌だよ。僕はリリスさんと一緒に、色んなところに行って楽しく過ごしたいんだ。だから、頑張って食材を取ってきた僕に、ご褒美をちょうだい?」
「……分かりましたわ。ただし、約束してください。旅行が終われば、その刻印をどうにかするために動くということを」
「うーん、分かったよ。しっかり頑張るねっ」
結局、刻印を消す方法は愛する者の口づけ以外判明していないし、その情報ですら曖昧なのだ。だから、ルティアスには、正確な情報を仕入れてもらい、行動に移してもらう必要がある。
そんな約束をしたわたくし達は、食事を終えて、ヴァイラン魔国へ向かう日程を確認し合うのだった。
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