わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

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第四章 旅行

第三十四話 シェイラの行き先

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 ルティアスに王妃様達のことを説明し、王妃様達にもルティアスのことを説明した後、『絶対者』の姿で王妃様をファム帝国に送り、事情を知ったファム帝国の国王様……王妃様の父君に歓待されそうになったのを何とか断ってログハウスに戻ってきた。すると……。


「やぁ、『絶対者』」

「……アルム?」


 そこには、なぜか、アルムが居て、リビングでお茶を啜っていた。


「この前の報酬を持ってきたんだって」


 ブスッとした表情でアルムを睨むルティアスと、警戒した様子のシェイラ。そんな歓迎されていない状態のアルムは、涼しい顔でわたくしに笑いかける。


「ここに来れるのはぁ、ボクくらいだからねぇ。そっちに報酬はまとめてあるから、確認してねぇ」


 アルムの指差す方向を見てみれば、大きな布の袋が二つと、小箱が二つあった。一つうなずいて確認してみれば、袋には金貨がザクザクと、小箱には、『緋玉』と『蒼玉』がそれぞれに入っている。


「結界の分と、討伐の分だよぉ。今回は、本当にありがとうねぇ、『絶対者』」


 ニッコリと笑ったアルムは、いつの間にかわたくしの近くに来ていて、わたくしの手にそっと口づけを落とす。


「なっ!」

「っ!」


 その瞬間、ルティアスの大きな殺気と、シェイラの小さな殺気がアルムへと向かう。


「あなたは、お姉様の何なんですかっ!」


 フシャーっと威嚇するようにアルムに突っかかるシェイラに、わたくしはすぐ説明しようとして、その前にアルムに遮られる。


「ボクは、アルム・ドラグニル。ドラグニル竜国の国王で、『絶対者』への求婚者、だったんだけどねぇ……。それよりも、君はだぁれ? ここは、君みたいな弱い人間が居られる場所じゃあないはずだけどぉ?」


 ドラグニル竜国の国王という言葉に一瞬青ざめたシェイラは、その後のわたくしへの求婚者という言葉に目を細める。そして、自分のことを問われると、アルムを睨み付けたまま、そっと口を開く。


「私は、シェイラ・シャルティー。リリスお姉様の妹です」


 落ち着いた声音で言い放ったシェイラに、アルムは容赦なくわたくしとシェイラを交互に見て、『似てない、よねぇ』と言う。


「似てなくとも、わたくしとシェイラが姉妹なのは間違いありませんわ」

「ふぅん?」


 似てないと言われるのは慣れている。別に、それで何か思うことはないものの、残念そうなアルムの様子が妙に気になった。


「『絶対者』には、他に姉妹が居たりするぅ?」

「いえ、わたくしにはシェイラだけですわ」


 そう言って、ふと、わたくしは妙案を思い付く。


「……アルム、昔、貸しがありましたわよね? それを、今返せと言ったら、返していただけますか?」


 アルムへの貸しは、五年前、アルムが乗る馬車が強力な魔物に襲われていた時、それを助けたことで発生したものだ。アルム一人では、さすがに全く被害を出さずに魔物を倒すことはできなかったため、その時はいたく感謝され、報奨を取らせると言われたものの、当時のわたくしは依頼遂行中で時間がなかったために断ったのだ。
 その後、たまたま訪れたドラグニル竜国で、初めてアルムがドラグニル竜国の国王だと知ったり、その強さに惚れたと言われて求婚されたりと色々あったものの、結局、あの時助けたことに関しては貸しにしたままにしていたのだ。


「うんっ、あの時の借りが返せるならぁ、できる限りのことはするよぉ」

「なら、シェイラをアルムの国で預かってください」


 そう言えば、アルムは目を丸くし、シェイラは『お姉様!?』と叫ぶ。


「事情があって、シェイラは元の国に戻れませんわ。そして、人間の国であれば、下手な国に預けることもできません。アルムの国であれば、人間の国とは国交なんてほとんどありませんし、シェイラを利用するようなことだってありませんでしょう?」

「……確かにぃ、例え彼女が王家の娘だとしても、ボク達には関係ないことだよぉ」

「お、お姉様? 本気でおっしゃってます?」

「えぇ、アルムはこんなチャラチャラしてそうな話し方ではありますが、誠実な男だと思っていますわ。アルムの国に保護されるとなれば、わたくしも安心できますもの。もちろん、時々はわたくしがそちらに赴きますよ」

「チャラチャラ……ボク、『絶対者』にそう思われてたんだぁ……」


 地味にダメージを受けているらしいアルムを無視して、わたくしはシェイラに言い聞かせる。


「シェイラ、大丈夫ですわ。アルムは信頼できる男です。ここに居られない以上、アルムの元に居るのが安全ですわ」

「お姉様……」


 わたくしの言葉に、シェイラは迷うような表情を見せたものの、すぐに覚悟を決めたような表情でうなずく。


「分かりました。お姉様のお手を煩わせるわけにはいきませんものね」


 シェイラからの返答は得られた。後は、アルムだけだ。そう思って見つめれば、アルムは眉を下げてうなずく。


「うん、分かったよぉ。それじゃあ、詳しい話を詰めようか」


 どうやら、シェイラの行き先が決まったことに、わたくしはようやく安堵するのだった。
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