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第七章 結ぶ心
第七十話 魔の森の異変
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逃げた先は、魔の森の中心地。ここならば、ルティアスは追って来られないはずだ。もし追ってきたら、結界が作動するだろうから、それで居場所が分かるため問題はない。
「あぁぁっ、分かっていたことではありますけれど……」
恥ずかしい。とにかく、恥ずかしい。甘く甘く囁かれ、口づけを落とされて、わたくしはとってもいたたまれない。
顔を赤くしながら、それでも周囲に注意を払っていたわたくしは、しばらく悶え続けた後に、ようやくその異変に気づく。
「? 森が、静かですわね?」
いつもならば、どこかしらで断末魔の叫びが上がっているような魔の森。けれど、今はなぜか、不気味なほどに静かだった。まるで、何か大きな存在を刺激しないように、息を潜めているみたいだ。
「……いったい、何が……?」
魔の森に集まる魔物は、そのほとんどがSランクと呼ばれるランクに位置している魔物だ。その上には、災害級、国家滅亡級、神罰級と続く。この中で、わたくしが対処できるのは災害級までだ。と、いうより、国家滅亡級より上は、そもそも出会ったことがないため、良く分からなかった。
「災害級は、この森にたまに生息していたりしますが……それでも、ここまでの異変はなかったはずですわ」
できれば、たまたま災害級の魔物が暴れていて、それを恐れた魔物が息を潜めているという状態が望ましいけれど、それにしてはあまりにも森全体が怯えているような雰囲気が気になる。
「調査、すべきですわね」
魔の森に隣接している国は三つ。南東にレイリン王国、南西にファム帝国、そして、北にドラグニル竜国だ。ちなみに、ヴァイラン魔国は、ドラグニル竜国のさらに北に位置する。
(どこの国に流れても、問題が大きいですわね)
レイリン王国に未練はないけれど、強力な魔物が流れた場合、真っ先に犠牲になるのは民だ。そして、ファム帝国には王妃様が居るし、ドラグニル竜国にはアルムとシェイラが居る。どこの国も、危険に晒すわけにはいかなかった。
(とりあえず、調査して、結果次第ではアルムに協力を仰ぎましょうか)
もし、魔物が国家滅亡級だとするなら、それは言葉を発する魔物かもしれない。しかも、伝説として語り継がれているような魔物かもしれない。そうなれば、どこかに、その痕跡があるはずだった。
(家の結界が破られることはないと思いますが、もし、国家滅亡級が居ると確認できれば、一時的にアルムのところにでも避難させてもらった方が良いでしょうね)
わたくしは、『絶対者』としての顔で、魔の森を慎重に歩く。
(本当に、声がしない。しかも、魔物の気配が薄いですわね)
こんな状態になるまで気づかなかったことは、不覚としか言いようがない。これで、Sランクの魔物がどこかの国に流出しているなんてことになっていれば、かなりの大事だ。
(早く、調査をしなければ)
歩くこと一時間。わたくしは、とうとう、その痕跡を見つける。
「これ、は……」
そこにあったのは、無惨に殺された魔物の死骸。それも、災害級に数えられるキリングドールと呼ばれる魔物の死骸だった。道化のような顔をしたその人型の魔物は、両手両足をもぎ取られた状態で無惨に打ち捨てられている。しかも……。
「これだけの、大群を……」
キリングドールの死骸は、一つではなかった。森の木々に引っ掛かったものや、下に落ちているもの、木にめり込んでいるもの。それらを合わせれば、軽く百は越える。この数は、わたくしでも厳しいと言わざるを得ないものだ。
(っ、アルムに連絡を取らなければいけませんわねっ。それに、王妃様にも。レイリン王国の方も王妃様が何とかしてくれるはずですわ)
国の代表者に連絡を取って、即座に対策を練らなければならないような状態だと判断したわたくしは、すぐに転移してルティアスが待つログハウスへと戻る。
それを、二つの瞳がじっと見つめていたことになど、わたくしは気づいていなかった。
「ルティ!」
「? リリス? どうしたの?」
わたくしの剣幕に、ルティアスはたじろぎながら、問いかけてくる。
「すぐに、ドラグニル竜国とファム帝国に向かいますっ。場合によっては、ドラグニル竜国に避難することになるかもしれませんわ」
「どういうこと?」
何かがあったことを察したルティアスは、詳しい説明を求めてくるものの、今は時間が惜しい。
「とりあえず、先にドラグニル竜国に向かいます。その時にちゃんと説明しますわっ」
「分かった。なら、行こうか」
わたくしが説明すると言えば、何の不満も口にすることなく、ルティアスは言うことを聞いてくれる。わたくしは、『絶対者』としていつも着ているローブを羽織り、フードを被ると、ルティアスを連れて一気にドラグニル竜国へと転移するのだった。
「あぁぁっ、分かっていたことではありますけれど……」
恥ずかしい。とにかく、恥ずかしい。甘く甘く囁かれ、口づけを落とされて、わたくしはとってもいたたまれない。
顔を赤くしながら、それでも周囲に注意を払っていたわたくしは、しばらく悶え続けた後に、ようやくその異変に気づく。
「? 森が、静かですわね?」
いつもならば、どこかしらで断末魔の叫びが上がっているような魔の森。けれど、今はなぜか、不気味なほどに静かだった。まるで、何か大きな存在を刺激しないように、息を潜めているみたいだ。
「……いったい、何が……?」
魔の森に集まる魔物は、そのほとんどがSランクと呼ばれるランクに位置している魔物だ。その上には、災害級、国家滅亡級、神罰級と続く。この中で、わたくしが対処できるのは災害級までだ。と、いうより、国家滅亡級より上は、そもそも出会ったことがないため、良く分からなかった。
「災害級は、この森にたまに生息していたりしますが……それでも、ここまでの異変はなかったはずですわ」
できれば、たまたま災害級の魔物が暴れていて、それを恐れた魔物が息を潜めているという状態が望ましいけれど、それにしてはあまりにも森全体が怯えているような雰囲気が気になる。
「調査、すべきですわね」
魔の森に隣接している国は三つ。南東にレイリン王国、南西にファム帝国、そして、北にドラグニル竜国だ。ちなみに、ヴァイラン魔国は、ドラグニル竜国のさらに北に位置する。
(どこの国に流れても、問題が大きいですわね)
レイリン王国に未練はないけれど、強力な魔物が流れた場合、真っ先に犠牲になるのは民だ。そして、ファム帝国には王妃様が居るし、ドラグニル竜国にはアルムとシェイラが居る。どこの国も、危険に晒すわけにはいかなかった。
(とりあえず、調査して、結果次第ではアルムに協力を仰ぎましょうか)
もし、魔物が国家滅亡級だとするなら、それは言葉を発する魔物かもしれない。しかも、伝説として語り継がれているような魔物かもしれない。そうなれば、どこかに、その痕跡があるはずだった。
(家の結界が破られることはないと思いますが、もし、国家滅亡級が居ると確認できれば、一時的にアルムのところにでも避難させてもらった方が良いでしょうね)
わたくしは、『絶対者』としての顔で、魔の森を慎重に歩く。
(本当に、声がしない。しかも、魔物の気配が薄いですわね)
こんな状態になるまで気づかなかったことは、不覚としか言いようがない。これで、Sランクの魔物がどこかの国に流出しているなんてことになっていれば、かなりの大事だ。
(早く、調査をしなければ)
歩くこと一時間。わたくしは、とうとう、その痕跡を見つける。
「これ、は……」
そこにあったのは、無惨に殺された魔物の死骸。それも、災害級に数えられるキリングドールと呼ばれる魔物の死骸だった。道化のような顔をしたその人型の魔物は、両手両足をもぎ取られた状態で無惨に打ち捨てられている。しかも……。
「これだけの、大群を……」
キリングドールの死骸は、一つではなかった。森の木々に引っ掛かったものや、下に落ちているもの、木にめり込んでいるもの。それらを合わせれば、軽く百は越える。この数は、わたくしでも厳しいと言わざるを得ないものだ。
(っ、アルムに連絡を取らなければいけませんわねっ。それに、王妃様にも。レイリン王国の方も王妃様が何とかしてくれるはずですわ)
国の代表者に連絡を取って、即座に対策を練らなければならないような状態だと判断したわたくしは、すぐに転移してルティアスが待つログハウスへと戻る。
それを、二つの瞳がじっと見つめていたことになど、わたくしは気づいていなかった。
「ルティ!」
「? リリス? どうしたの?」
わたくしの剣幕に、ルティアスはたじろぎながら、問いかけてくる。
「すぐに、ドラグニル竜国とファム帝国に向かいますっ。場合によっては、ドラグニル竜国に避難することになるかもしれませんわ」
「どういうこと?」
何かがあったことを察したルティアスは、詳しい説明を求めてくるものの、今は時間が惜しい。
「とりあえず、先にドラグニル竜国に向かいます。その時にちゃんと説明しますわっ」
「分かった。なら、行こうか」
わたくしが説明すると言えば、何の不満も口にすることなく、ルティアスは言うことを聞いてくれる。わたくしは、『絶対者』としていつも着ているローブを羽織り、フードを被ると、ルティアスを連れて一気にドラグニル竜国へと転移するのだった。
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