わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

文字の大きさ
74 / 78
第七章 結ぶ心

第七十四話 魔王立図書館

しおりを挟む
 ヴァイラン魔国へ転移したわたくし達は、早速行動を開始する。入国して、アルムの権限で転移門を使わせてもらって、一気に魔王都まで向かう。


「では、ボクは魔王に謁見の許可をもらってくる。何かあれば、いつでも呼んでくれ」

「えぇ、わたくしは、ルティアスの家の方に行ってみますわ」


 今は、『絶対者』としてではなく、リリスとしてこのヴァイラン魔国に居るわたくしは、アルムと別れて急いでルティアスの家へと向かう。
 本当は、ルティアスを危険に晒したわたくしはルティアスの家に踏み入れる資格なんてない。けれど、わたくしが頼れるのは、そこくらいしかなかった。ミーア達に関しては、ルティアスが平民だと言っていたので、情報収集という観点から見れば論外だ。
 身体強化を施した状態で走り続けていると、少し小高い位置に前に教えてもらったルティアスの家が見える。
 緊張で喉がカラカラに渇いていたものの、わたくしはそれを無視して家の前まで来る。そうして、ドアのノッカーに手を伸ばしたところ……先に、ガチャリと扉が開く。


「っ!?」

「ん?」


 目の前に居たのは、どこかルティアスに似た顔立ちの魔族の男性。ルティアスと同じ白い角に、ルティアスより濃い色の青い髪、そして、ルティアスとは違う青い目を持つ男性は、わたくしを前に首をかしげる。


「あなたは……弟の片翼じゃありませんか?」

「弟? ルティアスのお兄様ですか?」


 十中八九、外に出る用事があったのであろうその男性は、わたくしを前にして扉に手をかけたまま話しかけてくる。


「はい。ラディス・バルトランと申します。本日はどういったご用件で? もしかして、結婚の日取りが決まったとか?」


 にこやかに告げるラディス様に、わたくしは要件を思い出して必死に口を開く。


「ルティアスが、危険な状態なのですわっ。初対面で不躾かとは存じますが、どうか、知恵を貸してくださいましっ」


 頭を下げて頼み込むわたくしに、ラディス様は大きく目を見開いた後、『とりあえず入ってください』と家に招き入れてくれた。


「それで、ルティアスが危険とは、どういうことですか?」


 応接室らしき場所で腰掛けた後、鋭い視線で問いかけられ、自身の責任だと自覚のあるわたくしは、息が詰まりそうになるものの、順を追って全ての説明をする。


「……なるほど、確かに、それは危険ですね」


 ラディス様は、全てを聞き終えると、顔面を蒼白にして握った手を震わせていた。


「申し訳、ありません。わたくしが、力不足だったせいで……」

「いや、リリスさんを責めているわけではありません。しかし、そうなると、少しでも情報が欲しいところですね。……よし、魔王立図書館に行きましょう」

「魔王立図書館、ですか?」

「えぇ、説明は道中にでもしますので、急ぎましょう」


 そう言って、ラディス様はわたくしを連れて外に出る。


「馬車を呼ぶ時間も惜しい。リリスさん、身体強化をしてついて来れますか?」

「はい、いけますわ」


 貴族らしからぬラディス様の言動に多少驚きはしたものの、それ以上にルティアスが心配で、すぐさま返事をする。


「よろしい。では、行きますよ」


 そう言った直後、ラディス様は身体強化をした上で走り出す。わたくしも遅れまいと、同じく身体強化をして走る。道中、ラディス様は走りながら魔王立図書館はこの国の全ての蔵書が集まった場所なのだと説明を受け、日本の国立図書館のようなものなのだろうと考える。そして、そこに解決策がなければ、ルティアスは代償を払うこととなるだろうと話されて、胸がズキリと痛む。


(どうか、ルティアスが助かる方法が載ってますようにっ)


 五分ほどで辿り着いた魔王立図書館。ただ、そこは、何やら厳重な警備体制が敷かれていた。


「これは、いつものことですの?」

「……いえ、違います。どうやら、間が悪かったらしい……」


 苦虫を噛み潰したような表情のラディスを見て、どういうことだろうかと辺りを確認してみる。


(あの、馬車は……)


 そこには、一台の豪華な馬車が止まっていた。そして、そこにも警備の者らしき人物が居る。


(誰か、要人が来ている、ということでしょうか?)


 そうだとするならば、本当に間が悪い。
 ラディス様は、それでも館内に入れないか、警備の者に確認を取りに行っていたが、どうにも反応は思わしくなさそうだ。そうこうしているうちに、魔王立図書館の扉が開く。


「あっ……」


 警備……いや、護衛に固められて歩く黒目黒髪の少女を見て、わたくしは、誰がここを利用していたのかに気づく。


(あの人は、ユーカ様?)


 二人の魔王陛下に嫁いだ魔王妃、ユーカ様。その彼女の姿と、パレードで見た灰色の髪が居た。

 きっと、彼女が帰れば、館内に入れる。そう思って待っていると、ふいに、ユーカ様と目が合う。


「ハミル、ちょっとあの人のところに行ってみても良いですか?」

「うん? 良いよ?」


 チョンチョンと灰色の髪の男性の袖を引っ張ったユーカ様は、なぜか、わたくしの方を見て、そう告げる。


(えっ? えっ? えっ?)


 何がなんだか分からないままに混乱していると、ユーカ様は、護衛を引き連れてわたくしの側までやってくる。咄嗟に膝をつけたのは、令嬢としての経験があればこそだっただろう。


「初めまして。あなたは、ルティアスさんの片翼さんですよね?」


 ただ、そう問いかけられた瞬間に、わたくしの混乱はピークに達するのだった。
しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

処理中です...