わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

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第七章 結ぶ心

第七十五話 救う手立て

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 ユーカ様に言われた言葉に、一瞬ポカンとしてしまったものの、すぐに返事をする。


「はい、そうですわ。わたくしが、ルティアスの片翼ですわ」


 なぜ、そのことをユーカ様が知っているのか、そもそも、なぜわたくしに声をかけたのか分からないまま、頭を下げ続ける。


「あっ、頭を上げてください。その、良かったら、少しお話しませんか?」


 それは、今でなければ乗っていたであろう提案。ユーカ様が日本人かどうか確かめたい気持ちは、未だに存在する。けれど、ルティアスの危機を放っておくつもりは毛頭もない。ユーカ様の言う通り、頭を上げたわたくしは、ユーカ様の黒い目を一直線に見据える。そして……。


「申し訳ありませ……っ」


 断りの言葉を言いかけた途端、凄まじい威圧感が降ってくる。『破壊のクラウン』と対峙した時ですら感じなかったその威圧感に、わたくしは冷や汗をかく。


(いったい、誰が……?)


 ユーカ様に気づかれないように視線をズラせば、ユーカ様の隣に立つ灰色の髪の男性魔族から、その威圧感が出ていて、にっこり笑ったまま、口パクで、『断らないよね?』と告げてくる。


(……これは……断ったら殺されそう?)


 本能的に、これは断れないと思うものの、それでもルティアスのことを思えば、断るのが最善だ。


「……ハミル?」

「ん? 何かな? ユーカ?」


 ユーカ様の声に、ハミルと呼ばれた威圧感を出す魔族の男性が、一瞬ピクリとしながら応える。


「脅すの禁止です」

「……何のことかな?」


 ユーカ様に言われて、素知らぬふりを通そうとするハミル様。すると……。


「……モフモフの刑」

「ごめんなさいっ、もうしませんっ!」


 ポツリと呟かれた言葉に、一瞬にしてハミル様は自分の意見を翻し、その威圧感もなくしてしまう。


「っ」


 威圧感がなくなった途端、わたくしはよろけたものの、どうにか立った状態を維持する。ただし、ユーカ様の周りに居た護衛や警備の者、そして、少し離れた場所で心配そうにこちらを見ていたラディス様にもその威圧感の影響はあったのか、ほとんどの者が膝をついている。


「ハミル?」

「モフモフの刑だけは勘弁して!」


 何やら楽しそうな名前の刑罰を異常なほどに恐れるハミル様を見て、わたくしは、このユーカ様はただ者ではないと感じ取る。


「ハミルが脅してしまって、ごめんなさい。えっと……お名前を伺っても?」

「っ、失礼しました。リリス・シャル……いえ、リリス・バルトランと申しますわ」

「リリスさんですね。私は、ユーカ・サクラです。その、お忙しいようでしたら、また後日改めて、お話しませんか?」

「は、はい。そうしていただけるとありがたいですわ」


 そう答えたものの、次の瞬間、つい先程まで威圧感の影響でよろけていたラディス様から待ったがかかる。


「いえ、ここはぜひ、お話をさせていただきたい」

「ラディス様?」

「魔王妃様は、多くの魔法に精通しておられますので、何か良い案が聞けるかもしれません」


 いつの間に近くまで忍び寄っていたのかは分からないものの、ラディス様の話が本当であれば、ぜひとも意見を聞きたいところだ。


「魔法? 何か、困ってることでもあるんですか?」


 そう問いかけたユーカ様に、とりあえず、魔王立図書館の中で話そうということで、大きな落ち着いた色合いの建物の中に入るのだった。







「愛の魔法。闇の神級魔法……」


 ラディス様からは、全てを話すと良いと言われたため、それを信用して、ルティアスの身に何が起こったのかを説明した。すると、ユーカ様はしばらく考え込んだ後、首を横に振る。


「残念ながら、この国では闇の神級魔法を二度使って助かった者に関する記述はありません」

「っ、そんなっ」


 ユーカ様は、魔法に関する本はほとんど読み終えているという。そこから考えると、ユーカ様のその言葉は正しいのだろう。けれど、わたくしはその現実が受け入れられずに叫ぶ。


「お願いしますわっ。ルティが代償を払わずにすむというのなら、わたくし、何でもします。ですから、どうか、どうかっ」


 ルティアスを失いたくない。その一心だけで、わたくしは小柄なユーカ様へと懇願する。


「理論のお話で良ければ、可能性はありますよ」


 そして、そんな一言に、わたくしは藁をも掴む気持ちで必死になる。


「それでも構いませんわっ。お願いしますっ。教えてくださいましっ」


 形振り構ってられないわたくしは、本来であれば何らかの交渉をすべき場面で、とにかく必死に頼み込む。
 それから、ユーカ様に教えてもらった内容に、わたくしはしばらく悩み、しっかりと覚悟を決めるのだった。
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