わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

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エピローグ

第七十七話 結婚式

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 ルティは、何一つ後遺症もなく、健康体そのものだった。
 わたくしの方はといえば、ルティに結婚の承諾を伝えた後、思いっきり抱き締められて、口づけを何度も行われて、良い雰囲気にはなったものの、緊張の糸が切れたのと、羞恥心のバロメーターが振り切れたのとで、人生初の気絶を経験することとなった。朝、起きた時、土下座するルティが目の前に居たのは、記憶に新しい。

 メリナ様へ、魔の森の脅威がなくなったことを伝えたり、アルムやラディス様にルティの無事を伝えたり、ユーカ様へも伝言を頼もうとしたら、なぜかお茶会に招かれて、楽しく女子会をすることになったりして、わたくしは、騒動の決着をつける。そして、今、専らの問題は……。


「リリス、結婚式はいつにする?」

「そ、そうですわね……半年後、くらい、なら……」

「半年も待てないよっ」

「で、ですが、わたくしにも心の準備というものがありましてですね……」

「半年もお預けなんて……無理、僕の理性、そこまでもたない……」

「もたせてくださいましっ」


 夜を共に過ごすのは、結婚してからが良いと言ったわたくしに、渋々同意したルティは、ことあるごとに結婚式の予定を決めようとしてくる。しかも、『明日』とか『明後日』とかいう案しか出てこないため、わたくしは戦々恐々だ。そして、さらに厄介なのは……。


「それなら……きゅーんきゅーん」

「くっ、また、子狼姿……」


 ルティは、わたくしが子狼姿に弱いことをしっかりと理解していて、最近はその姿で結婚式の日取りを早めにすることを迫ってきているのだ。


「りりす、けっこんしき、あしたじゃ、だめ?」


 しかも、わざとではあるのだろうけれど、舌ったらずな感じで話しかけられると、わたくしはもう、悶絶するしかない。


「い……いいえっ、ダメ、ですわっ」


 『良い』と言いかけて、わたくしは慌てて否定の言葉へと組み換える。


「きゅーん」


 可愛らしい子狼の声が響く。


「ダ、メ……」


 わたくしは、かろうじてそれだけ答える。


「くぅん」


 潤んだ瞳が、ジーっとわたくしを直視する。


「そ、そんな目で見つめないでくださいまし」


 もう、陥落寸前かもしれない。


「きゅーん、きゅーん」


 スリスリと足元にすり寄られる。


「あ、あぅう」


 もはや、まともな言葉すらも紡げなくなる。


 こんなやり取りを繰り返した結果、結婚式の日取りが一週間後となったのは……わたくしの努力の結果と言って良いのか、それとも、耐えきれなかった結果と言えば良いのか……。
 結婚式には、ミーア達夫婦と、シェイラとアルム、ルティのご家族、そして、ルティの同僚が数人と、なぜか、ユーカ様やヴァイラン魔国魔王陛下、ジークフリート様とリアン魔国魔王陛下、ハミルトン様まで出席という運びになって……緊張で青くなったのは言うまでもない。


「――――病める時も健やかなる時も、ルティアス・バルトランを愛し続けることを誓いますか?」

「誓います」


 真っ白なウェディングドレスを身に纏ったわたくしは、なぜか牧師役をしているオネエさん魔族の言葉に、誓いを告げる。


「それでは、誓いのキスを」


 ルティに向き合えば、わたくしのベールを取って、蕩けるような笑みを浮かべてくる。


「あぁ、夢みたいだ」

「夢ではありませんわ。もう、ルティは下僕ではなく、夫なのです。だから、幸せにしてくださいまし」

「うん、もちろんだよ」


 そうして、わたくし達は誓いを交わす。永遠に、朽ちることのない誓いを。どんなことがあっても、ルティを、愛し続けるという誓いを。

 陽の光に照らされたその結婚式は、幸せの序章。これから、わたくしは、ルティと一緒に、どんどん幸せを積み重ねていくことだろう。


「リリス、愛してる」

「わ、わたくしも、ですわ。愛してますわ。ルティ」


 幸せに包まれた教会の上では、美しい鐘が鳴り響いていたのだった。


(完)
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