3 / 15
その悪魔は不意に…(タクシー運転手の場合)
しおりを挟む
(ご注意:異常な死に方を表現したシーンがあります)
桜前線が話題になり始めた、ある水曜日……
「おい、わしのタクシー、今日も頼むよ」
埼玉県のD市で中古住宅に単身で住む誠は、自宅近くの駐車場のタクシーの前で言った。
つづいて通常点検を済ませると、トランク内の簡易クローゼットから仕事服を出して着替えた。
個人タクシーの運転手をしている誠は、髪の三割が白髪という七十代だった。
そんな彼は夕方から勤務に入り、ずっと翌朝まで流すことになる。
しかし今日は普段のルートを走行しても、なかなか客をつかめなかった。
「ったく……。今日は前半は不発か……」
仕方なく誠は東京との境付近の、いつもの公園の傍にタクシーを止めた。
そして近くの自販機で缶コーヒーを買ってくると、FMラジオを低く流しながら仮眠をとることにした。
ところが今夜は、なぜか寝付きが悪かった。
ようやく眠りに落ちたが……夢の中の奇妙な家で、白いドレス姿の奇妙な少女に出会った。
長い金髪が美しく、ゾクッとする可愛い少女だった。
<お嬢ちゃん、可愛いね……>
少女は意味ありげに笑うと、
<おじいちゃん、見付けたー>
<えっ、何? わしを?>
はっと目を覚まし、時計を見ると午前二時だった。
「ヤバい! 寝すぎた……」
さっき買った缶コーヒーを一口飲むと、本通りに向けて車を出した。
そして東京方面に向って走行しながら、ふと……
「しかし、奇妙な夢だったな……。あの子の顔、まだ覚えてる……」
しばらく走ると、橋の手前で白い服の女が手を上げた。
「おっ、客だ。しかも女。こういう日はイイことが……」
その側に止め、ドアを開けた。
直後、その女が乗った……はずだった。
「今晩はー。ありがとうございますー」
バックミラーに目をやった。……が、客の姿はなかった。
「あれ? お客さん?」
思わず振り向こうとした時、突然、助手席に雪が降りだした。
そしてそれは、吹雪になって誠にぶつかってきた。
「うわー! なんだー、こりゃぁー?!」
彼は、あわててドアを開けようとしたが、ビクともしなかった。
仕方なく後部席に逃げようとすると誰かがいた。それは夢に出てきた少女だった。
「あっ、君は……!」
「おじいちゃん、もうすぐだよ」
仕方なく誠は、アクセルを踏み込んでタクシーを発進させた。
その少女の周りから吹雪が起こり、運転席に吹き込んできた。
少女は口からも吹雪を吹き出していた。
当然ながら車内の温度は、急激に下がっていくので、誠はたまらず、ヒーターのスイッチを入れた。
が、まったく効果はなかった。
「うわー! お前は雪女かー?!」
まるで地獄に向う道を疾走しているように、行けども行けども誰もいなかった。
気がつくと、誠が運転するタクシーは、豪雪の山道を走っていた。
「ここは、いったい何処なんだ……?」
やがてタクシーが止まり動けなくなると、総てのドアが開き、激しく吹雪が入り込んできた。
誠は車内の吹雪の中で同化し、耳や口や鼻から、白い液体が流れだしていた。
タクシーは、そのまま突風に押されるように舞い上がり、近くの大木に突き刺さった。
少女は車内でにっこり笑い、
「おじいちゃん、一緒に遊ぼうね」
翌朝、通りかかったハイカーが発見した時、タクシーも運転席で亡くなっていた誠も、真っ白だった。
驚いたそのハイカーが警察に通報しながら、誠の肩を触ると、まるで砂のように崩れたため、
ウワー!
と腰を抜かしてしまった。
桜前線が話題になり始めた、ある水曜日……
「おい、わしのタクシー、今日も頼むよ」
埼玉県のD市で中古住宅に単身で住む誠は、自宅近くの駐車場のタクシーの前で言った。
つづいて通常点検を済ませると、トランク内の簡易クローゼットから仕事服を出して着替えた。
個人タクシーの運転手をしている誠は、髪の三割が白髪という七十代だった。
そんな彼は夕方から勤務に入り、ずっと翌朝まで流すことになる。
しかし今日は普段のルートを走行しても、なかなか客をつかめなかった。
「ったく……。今日は前半は不発か……」
仕方なく誠は東京との境付近の、いつもの公園の傍にタクシーを止めた。
そして近くの自販機で缶コーヒーを買ってくると、FMラジオを低く流しながら仮眠をとることにした。
ところが今夜は、なぜか寝付きが悪かった。
ようやく眠りに落ちたが……夢の中の奇妙な家で、白いドレス姿の奇妙な少女に出会った。
長い金髪が美しく、ゾクッとする可愛い少女だった。
<お嬢ちゃん、可愛いね……>
少女は意味ありげに笑うと、
<おじいちゃん、見付けたー>
<えっ、何? わしを?>
はっと目を覚まし、時計を見ると午前二時だった。
「ヤバい! 寝すぎた……」
さっき買った缶コーヒーを一口飲むと、本通りに向けて車を出した。
そして東京方面に向って走行しながら、ふと……
「しかし、奇妙な夢だったな……。あの子の顔、まだ覚えてる……」
しばらく走ると、橋の手前で白い服の女が手を上げた。
「おっ、客だ。しかも女。こういう日はイイことが……」
その側に止め、ドアを開けた。
直後、その女が乗った……はずだった。
「今晩はー。ありがとうございますー」
バックミラーに目をやった。……が、客の姿はなかった。
「あれ? お客さん?」
思わず振り向こうとした時、突然、助手席に雪が降りだした。
そしてそれは、吹雪になって誠にぶつかってきた。
「うわー! なんだー、こりゃぁー?!」
彼は、あわててドアを開けようとしたが、ビクともしなかった。
仕方なく後部席に逃げようとすると誰かがいた。それは夢に出てきた少女だった。
「あっ、君は……!」
「おじいちゃん、もうすぐだよ」
仕方なく誠は、アクセルを踏み込んでタクシーを発進させた。
その少女の周りから吹雪が起こり、運転席に吹き込んできた。
少女は口からも吹雪を吹き出していた。
当然ながら車内の温度は、急激に下がっていくので、誠はたまらず、ヒーターのスイッチを入れた。
が、まったく効果はなかった。
「うわー! お前は雪女かー?!」
まるで地獄に向う道を疾走しているように、行けども行けども誰もいなかった。
気がつくと、誠が運転するタクシーは、豪雪の山道を走っていた。
「ここは、いったい何処なんだ……?」
やがてタクシーが止まり動けなくなると、総てのドアが開き、激しく吹雪が入り込んできた。
誠は車内の吹雪の中で同化し、耳や口や鼻から、白い液体が流れだしていた。
タクシーは、そのまま突風に押されるように舞い上がり、近くの大木に突き刺さった。
少女は車内でにっこり笑い、
「おじいちゃん、一緒に遊ぼうね」
翌朝、通りかかったハイカーが発見した時、タクシーも運転席で亡くなっていた誠も、真っ白だった。
驚いたそのハイカーが警察に通報しながら、誠の肩を触ると、まるで砂のように崩れたため、
ウワー!
と腰を抜かしてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる