恐怖な少女・各地で笑顔惨殺!

空 佳吹

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その悪魔は不意に…(タクシー運転手の場合)

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(ご注意:異常な死に方を表現したシーンがあります)

 桜前線が話題になり始めた、ある水曜日……

「おい、わしのタクシー、今日も頼むよ」

 埼玉県のD市で中古住宅に単身で住む誠は、自宅近くの駐車場のタクシーの前で言った。
 つづいて通常点検を済ませると、トランク内の簡易クローゼットから仕事服を出して着替えた。
 
 個人タクシーの運転手をしている誠は、髪の三割が白髪という七十代だった。
 そんな彼は夕方から勤務に入り、ずっと翌朝まで流すことになる。

 しかし今日は普段のルートを走行しても、なかなか客をつかめなかった。

「ったく……。今日は前半は不発か……」

 仕方なく誠は東京との境付近の、いつもの公園の傍にタクシーを止めた。
 そして近くの自販機で缶コーヒーを買ってくると、FMラジオを低く流しながら仮眠をとることにした。

 ところが今夜は、なぜか寝付きが悪かった。
 
 ようやく眠りに落ちたが……夢の中の奇妙な家で、白いドレス姿の奇妙な少女に出会った。
 長い金髪が美しく、ゾクッとする可愛い少女だった。
 
<お嬢ちゃん、可愛いね……>
 
 少女は意味ありげに笑うと、

<おじいちゃん、見付けたー>
<えっ、何? わしを?>

 はっと目を覚まし、時計を見ると午前二時だった。
「ヤバい! 寝すぎた……」

 さっき買った缶コーヒーを一口飲むと、本通りに向けて車を出した。
 そして東京方面に向って走行しながら、ふと……

「しかし、奇妙な夢だったな……。あの子の顔、まだ覚えてる……」

 しばらく走ると、橋の手前で白い服の女が手を上げた。
 
「おっ、客だ。しかも女。こういう日はイイことが……」
 
 その側に止め、ドアを開けた。
 
 直後、その女が乗った……はずだった。
 
「今晩はー。ありがとうございますー」
 
 バックミラーに目をやった。……が、客の姿はなかった。

「あれ? お客さん?」
 
 思わず振り向こうとした時、突然、助手席に雪が降りだした。
 そしてそれは、吹雪になって誠にぶつかってきた。

「うわー! なんだー、こりゃぁー?!」
 
 彼は、あわててドアを開けようとしたが、ビクともしなかった。
 
 仕方なく後部席に逃げようとすると誰かがいた。それは夢に出てきた少女だった。
 
「あっ、君は……!」
「おじいちゃん、もうすぐだよ」

 仕方なく誠は、アクセルを踏み込んでタクシーを発進させた。
 
 その少女の周りから吹雪が起こり、運転席に吹き込んできた。
 少女は口からも吹雪を吹き出していた。

 当然ながら車内の温度は、急激に下がっていくので、誠はたまらず、ヒーターのスイッチを入れた。
 が、まったく効果はなかった。

「うわー! お前は雪女かー?!」

 まるで地獄に向う道を疾走しているように、行けども行けども誰もいなかった。

 気がつくと、誠が運転するタクシーは、豪雪の山道を走っていた。

「ここは、いったい何処なんだ……?」

 やがてタクシーが止まり動けなくなると、総てのドアが開き、激しく吹雪が入り込んできた。

 誠は車内の吹雪の中で同化し、耳や口や鼻から、白い液体が流れだしていた。
 タクシーは、そのまま突風に押されるように舞い上がり、近くの大木に突き刺さった。

 少女は車内でにっこり笑い、

「おじいちゃん、一緒に遊ぼうね」


 翌朝、通りかかったハイカーが発見した時、タクシーも運転席で亡くなっていた誠も、真っ白だった。
 驚いたそのハイカーが警察に通報しながら、誠の肩を触ると、まるで砂のように崩れたため、
 
 ウワー!

 と腰を抜かしてしまった。
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