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その悪魔は不意に…(建築労務者の場合)
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(ご注意:異常な死に方を表現したシーンがあります)
まぶしい日差しと花見月もキレイな水曜日の昼下がり……
「今日は体は快調、仕事も快調でガンガンいこうぜー!」
東京都O区において、ある高層ビルの建築が進んでいた。
関東センリツ本社という、十三階建てのIT関連企業ビルだ。
このビルのユニークなところは、地下にパーティー会場があることだった。
そんな現場で、三十三歳になる日雇い労務者の和夫も働いていた。
イケメンというほどではなかったが、十人並みの造りにやさしさを加味した顔立ちの男だった。
その和夫の仮住まいは、埼玉県に近いY市にあるアパートで、建築期間中、毎朝マイクロバスで送迎されていた。
和夫のこの日の担当は、南側外壁の基礎部分の施工で、午前八時頃から彼を含めた二十人が作業を始めた。
基本の鉄骨に、二番手三番手の鉄骨を組み込んでいく作業だったが、和夫にとっては経験済みの作業なので、鼻歌まじりでも出来る仕事だった。
激しい騒音の中、効率よく作業を進めていき、昼前には五階までの作業を完了していた。
したがって昼食後は、六階部分からの作業となった。
和夫は機材を簡易エレベーターで運び上げると、先輩たちと共に作業にはいった。
彼は持ち場に着くと一度振り返り、周りの景色を楽しもうとした。
すると、そこに広がっていたのは、真っ赤で、どう見ても江戸時代としか思えない光景だった。
和夫は、えっ? と思って、目をこすってから再度、見てみた。すると……
景色は戻っていたが、金髪が肩まで長くゾクッとするような可愛い少女が正面にいたのだ。
「ん? 何だ? 君は?」
「おじちゃん、見付けたー」
少女は空中に浮いていたのだが、スーッと和夫の横に降りた。
「おいおい、なんだ君は? 子供がそんな所にいちゃダメだよ!」
和夫は、自分の声の勢いで後ろに倒れかけ、空をあおいだ。
そして体を戻すと、もう少女はいなかった。
「おーい和夫、何か叫んだけど、大丈夫かー?」
少し離れた部分の作業をしている先輩が声をかけた。
「はい、大丈夫です。すいません」
そう言いながらも和夫は、今の子は……? と思ったが……
彼は気を取り直して、作業を始めた。
すると空が暗くなり、ポツリ、ポツリ……と雨が降ってきた。
「おい、ちょっと休憩だ!」
しかし和夫の耳には届いてなかった。
突然、和夫が作業している壁に大きなヒビ割れが入った。
「あれ? なんだこれは……?」
雨は本降りになった。
しかし、和夫には分からなかった。
和夫の前の壁に出来たヒビ割れは、さらに大きくなっていった。
「しょうがないな……。後で監督に言わないと……」
すると、そのヒビ割れの中から、さっきの少女が顔を出し、
「おじちゃん、もうすぐだよ」
和夫が呆然とした次の瞬間、彼の体は、そのヒビ割れの中に吸い込まれた。
そのまま管状の闇の中を流れまくり、地下へと真っ逆さまに落ちていった。
雨水が激しく流れ込んできていて、地下空間はプール状態だった。
雨水が完全に満ちた中に、さっきの少女が笑顔で現れて、
「おじちゃん、ちょっと遊ぶよ」
和夫の体には全身にヒビが入り、何度も分裂を繰り返し……一匹の魚になった。
すると少女の口は耳元まで裂け、その魚を丸飲みにした。
その日の作業工程が終わり、事務所に和夫が現れなくても、特に誰も心配しなかった。
途中でイヤになって、別の現場に移ったのだろう……と思っていたからだ。
まぶしい日差しと花見月もキレイな水曜日の昼下がり……
「今日は体は快調、仕事も快調でガンガンいこうぜー!」
東京都O区において、ある高層ビルの建築が進んでいた。
関東センリツ本社という、十三階建てのIT関連企業ビルだ。
このビルのユニークなところは、地下にパーティー会場があることだった。
そんな現場で、三十三歳になる日雇い労務者の和夫も働いていた。
イケメンというほどではなかったが、十人並みの造りにやさしさを加味した顔立ちの男だった。
その和夫の仮住まいは、埼玉県に近いY市にあるアパートで、建築期間中、毎朝マイクロバスで送迎されていた。
和夫のこの日の担当は、南側外壁の基礎部分の施工で、午前八時頃から彼を含めた二十人が作業を始めた。
基本の鉄骨に、二番手三番手の鉄骨を組み込んでいく作業だったが、和夫にとっては経験済みの作業なので、鼻歌まじりでも出来る仕事だった。
激しい騒音の中、効率よく作業を進めていき、昼前には五階までの作業を完了していた。
したがって昼食後は、六階部分からの作業となった。
和夫は機材を簡易エレベーターで運び上げると、先輩たちと共に作業にはいった。
彼は持ち場に着くと一度振り返り、周りの景色を楽しもうとした。
すると、そこに広がっていたのは、真っ赤で、どう見ても江戸時代としか思えない光景だった。
和夫は、えっ? と思って、目をこすってから再度、見てみた。すると……
景色は戻っていたが、金髪が肩まで長くゾクッとするような可愛い少女が正面にいたのだ。
「ん? 何だ? 君は?」
「おじちゃん、見付けたー」
少女は空中に浮いていたのだが、スーッと和夫の横に降りた。
「おいおい、なんだ君は? 子供がそんな所にいちゃダメだよ!」
和夫は、自分の声の勢いで後ろに倒れかけ、空をあおいだ。
そして体を戻すと、もう少女はいなかった。
「おーい和夫、何か叫んだけど、大丈夫かー?」
少し離れた部分の作業をしている先輩が声をかけた。
「はい、大丈夫です。すいません」
そう言いながらも和夫は、今の子は……? と思ったが……
彼は気を取り直して、作業を始めた。
すると空が暗くなり、ポツリ、ポツリ……と雨が降ってきた。
「おい、ちょっと休憩だ!」
しかし和夫の耳には届いてなかった。
突然、和夫が作業している壁に大きなヒビ割れが入った。
「あれ? なんだこれは……?」
雨は本降りになった。
しかし、和夫には分からなかった。
和夫の前の壁に出来たヒビ割れは、さらに大きくなっていった。
「しょうがないな……。後で監督に言わないと……」
すると、そのヒビ割れの中から、さっきの少女が顔を出し、
「おじちゃん、もうすぐだよ」
和夫が呆然とした次の瞬間、彼の体は、そのヒビ割れの中に吸い込まれた。
そのまま管状の闇の中を流れまくり、地下へと真っ逆さまに落ちていった。
雨水が激しく流れ込んできていて、地下空間はプール状態だった。
雨水が完全に満ちた中に、さっきの少女が笑顔で現れて、
「おじちゃん、ちょっと遊ぶよ」
和夫の体には全身にヒビが入り、何度も分裂を繰り返し……一匹の魚になった。
すると少女の口は耳元まで裂け、その魚を丸飲みにした。
その日の作業工程が終わり、事務所に和夫が現れなくても、特に誰も心配しなかった。
途中でイヤになって、別の現場に移ったのだろう……と思っていたからだ。
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