ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第二章 吸血鬼編

第29話 家に帰る!

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 翌日、朝食を食べた後、俺達はセレナに馬車で家まで送って貰うことになった。

 歩いてもそんなに大した距離ではないのだが、せっかくなので俺とルーナは馬車に乗ることにした。
 馬車になんて乗った事のない俺は、ちょっと楽しみですらあった。

 この時までは。

 セレナの馬車は黒いしつらえの貴族が乗るような馬車だった。
 吸血鬼の馬車だからか、なんか馬車を引く馬の首がなかった。
 ついでに、御者台に座る御者さんの首もなかった。
 日の光が全く差し込まない城の周辺は、朝だと言うのに真っ暗なため、御者さんの頭上には辺りを照らすランプが備え付けられているのだが、なぜかそのランプは青い炎を灯している。

 あえていうと、ホラー感が半端ない。

 俺はビクビクしながらその馬車に乗り込み、ルーナにひっついてガタガタ震えていた。

「大丈夫か? 体調悪いんじゃないか?」

 ルーナが心配してくれるが、何か勘違いしている。
 ただお化け馬車にビビっているだけなのだが、恥ずかしくてそんな事をルーナに言えない。

「いや、気にするな。体調はバッチリだ。お前こそ昨日はよく眠れたのか?」

 ルーナはどこか疲れているように見える。

「ああ、よく眠れたぞ。……というか気絶した」

「気絶?」

「いや、いいんだ」

 言いながらルーナは遠い目をした。
 少し気になったが、ルーナが聞いて欲しくなさそうだったので放置する事にした。

「待たせちゃったかしら」

 そう言いながら、セレナが馬車に乗り込んでくる。
 セレナはいつもの裾の長いドレスではなく、歩きやすそうな普通の黒いドレスを着ていた。
 そして、同じく黒いストールをフードのように被っている。
 セレナが入ってくると、馬車の中に香水の品のいい香りが漂う。
 ルーナの体がぴくんと強張った。

「あら、あなたのその服、スミスの見立てかしら? なかなか似合っているじゃない」

「ああ、どうも……」

 今、俺は昨日セレナに借りた高そうなスーツではなく、しっかりとした生地を黒く染めたズボンと、厚手の白いシャツを着ていた。
 今朝、起きたら昨日のグールが用意してくれたのだ。
 グールが用意した服なんて死臭が染み付いてるんじゃないかと思って、臭いを嗅いでみたが、どこかフローラルな香りがして複雑な気分になった。
 あのグールはスミスという名前らしい。

 というか、昨日はそのスミスのせいで、ひどくうなされた。
 一晩中、スミスのうめき声が聞こえてきて、ろくに眠れなかったのだ。
 むしろ今も聞こえてくるような気さえする。

「……あぁ……おぉ……いぇ……」

 いや、マジで聞こえてくるんだけど。
 俺は不安に思って、馬車の外を見てみた。
 そして、背筋が凍りついた。

「……うぉ……うぅ……あうあ……」

 そこには視界を埋め尽くすくらいグールがひしめき合っていたのだ。
 腐った死体のパラダイスだった。

「あらみんな見送りに来てくれたのね」

 セレナが呑気にグールに手を振っている。

「ひいいいいいいい!」

 ホラー馬車でも大分アレだったのに、俺は恐怖のあまりに発狂しそうになった。

「うわっ! こ、こら、お前またか!? ……まったく仕方のないやつだな」

 とりあえず、ルーナの胸を揉みまくる。
 三度目ともなると、ルーナは特に抵抗もせずに受け入れてくれた。

「……突然、目の前で始まった痴態に言葉もないのだけれど」

「ああ、気にしないでくれ。こいつはたまに私の胸を揉まないと気が済まない病気みたいなんだ」

「そんな病気あるわけないでしょ! というか、お前、都合のいい女すぎてちょっと哀れになるわね……。まんざらでもなさそうなのがムカつくけれど」

 ルーナとセレナが何かを言っていたが、俺は怯えていたので聞こえなかった。


 馬車はガタゴトと揺れながら進み、数十分くらいで家についた。

 馬車から降りると、久しぶりに爽やかな日差しを感じる。
 昨日はいろいろあったけど、無事に帰ってこれてよかったと思う。切実に。

「ふうん、これがあなた達の家?」

 セレナは日の光を忌々しそうにしながらも、黒いストールでガードして馬車から降りてくる。
 吸血鬼といえば日光が弱点だが、セレナは普通に日差しの中を歩いている。
 本当にコイツどうやったら倒せるんだろう。

「この素材は何? 初めて見るのだけれど」

 セレナがうちの土壁を見ている。

「ああ、それは土魔法で作ったんだ」

 ルーナに口止めされていたが、セレナなら今更隠すこともない。

「土魔法? 攻撃魔法で家を作ったの? 本当にデタラメな子ね……」

 セレナは俺に断る事もなく、さも当然のように部屋に入っていく。

「ぐふっ」

 俺は痛む胸を押さえた。
 引きこもりにとって、部屋に勝手に入るというのは、絶対にやっちゃいけない行為だった。
 下手をすると引きこもりは消滅してしまう。 

「ぐはっ!」

 部屋の中でセレナの苦しそうな声が聞こえる。
 引きこもりの聖域に勝手に入った罰が当たったのだろうか。

「どうしたんだ?」

 ルーナがセレナを追って部屋に入っていくので、俺もついていった。

 部屋の中ではセレナが鼻を摘んで、涙目になっていた。

「この部屋、物凄い淫臭がするわ!」

 鼻声でセレナが叫ぶ。
 俺とルーナは咄嗟に目を反らせた。

「グラード! 今すぐあの汚染されたベッドを捨てて新しいものを用意しなさい!」

 いつの間にか近くに来ていたグラードさんが、土魔法で床と固定したはずのベッドをあっさりべりべり引き剥がしていく。

「ああ……。私達のベッドが!」

「お黙りなさい! お前あんなベッドでよく眠れるわね? 常時発情して淫臭を垂れ流してるから気付かないんじゃないの?」

「発情なんかしてない!」

 恥ずかしそうに顔を赤らめて、セレナに掴みかかろうとするルーナを抑えてなだめる。

「いや、寝る前はちゃんと藁を変えていたんだ。ただ、もう藁がなくて……」

 辺りの家の屋根は全て剥き出しになっていた。
 藁葺の屋根は全てうちのベッドに変わったのだ。

「まったく仕方ないわね。うちのベッドとシーツを何枚かあげるわ。その代わり少し多めに血を貰うわよ」

「……ありがとうございます」

 物凄く嬉しかったが、血を取られるのかと思うと少し複雑だった。



 汚染ベッドが除去されると、セレナは一通り家の中を見て回った。

 そんな事をしているうちに、すぐさま新しいベッドがメイドさん達によって運び込まれる。
 メイドさん達が運んできたのは、かつて作ろうとして断念したキングサイズのベッドだった。
 セレナが指示してから数十分しか経っていないが、それだけの時間で城から運んできたのだろうか。
 メイド印の引越社とか作ったら流行りそうだった。



 それからしばらくして、セレナはテーブルに座ってルーナの淹れたお茶を飲んでいた。

「ぬるいわ。あと茶葉が安いわ。ついでに食器も安いわ」

 ルーナがプルプルしだしたので、とりあえず押さえ込む。

「あら、淹れ方には文句を言っていないのだから褒めているのよ?」

「……ぬるいって言ってるじゃないか」

「そんなことより、あっちにお風呂があったのだけれど」

「ふふん、うちの自慢の一つだ。毎日お風呂に入れるなんて、貴族の屋敷より豪華だぞ」

 一瞬で機嫌を直したルーナが誇らしげに胸を張る。

「毎日? あんな汚れたベッドを使っている癖に随分マメな事するのね。お湯を沸かして運ぶの大変でしょうに」

「いや、俺が火魔法と水魔法を合わせて、その場でお湯を生成出来るからな。そんなに大変じゃない」

 俺がそう答えると、セレナは目を大きく開いて呆気に取られた表情を見せた。

「……ぷっ、うふ、あはははは!」

 そして突然笑い出す。

「面白いわ。あなたって本当に面白い子ね。土魔法で家を作ったり、二重魔法(デュアルスペル)でお湯を沸かしたり」

 セレナは笑いすぎて溢れ出た涙を拭っている。
 なんかしらんが、対人スキルの低い俺が美人にウケをとれた。
 俺はしてやった感を感じていた。

「……ふう。おかしかったわ。ねえ、あなたにお願いがあるのだけれど」

 セレナは悪戯な表情を浮かべて、赤い瞳を俺に向ける。

「この辺りに私の別荘を作ってくれないかしら? いちいち城から足を運ぶのも面倒だし。しばらくこの辺りに住む事にするわ」

「異議あり!」

 この辺に住むの辺りでルーナがガタッと立ちあがる。

「黙りなさい、小娘。それとも力づくで黙らせられたいの?」

 セレナが妖しく笑いながら、片手にパリパリと紫色の稲妻を発生させる。

「ううっ……」

 ルーナが怯えながらしがみついて来る。

 俺はセレナの言葉に匠としてのプライドを刺激されていた。
 俺に家の建築を頼むとはいい目をしている。

「どんな家がいいのか聞こうか」

「あら、あっさり引き受けてくれるのね。そうねえ……」

 セレナは少し考え込んでから口を開く。

「別荘なんだから城じゃなくて小さな屋敷がいいわね。木の温かみを感じる家なんかもいいわ。あとお風呂! お風呂も木がいいわ。香りのいい木を使って、泳げるくらい大きいのにしてね。あと、言うまでもないけど、日光は入らないようにね。これでも一応か弱い吸血鬼だから」

 セレナは一通り喋り終わると、一息ついたように大きな胸を揺らせた。
 最後にか弱いとか言ってた気がするけどスルーする。

 要するに、セレナの要求は以下の通りだ。

 ・小さな屋敷くらいの広さである事。
 ・木造である事。
 ・大きな木の風呂がある事。
 ・日光が入らない事。

 うん。土魔法の要素皆無!
 土魔法で家を作ったって言ったのに、木を求めるあたり、セレナはドSだと思う。

「受けて立とうじゃないか」

 だが、クライアントのわがままを聞くのも匠の匠たる所以である。

「悪いけどお願いね。お礼に食材とか必要なものは分けてあげるわ。茶葉とかもね」

 セレナはルーナに目配せする。

「食材……茶葉……」

 ルーナはセレナの一言に目を輝かせている。
 料理の幅が広がるから嬉しいのだろうか。

 というか、家一軒分の報酬が食材ってどうなんだろう。
 まあいいけど。
 他にすることも無いし。
 ルーナは喜んでいるし。

 その時、突然セレナが顔を寄せてきて耳元で囁いた。

「……あなたへのお礼としては、私がなんでも言うことを聞いてあげるっていうのはいかがかしら?」

 すぐに顔を離したセレナは、何事もなかったかのような素振りで座っている。
 ただ一瞬、俺に色っぽい笑みを浮かべた。
 ルーナは食材に浮かれて気付いていなかった。

 何でも言うことを聞いてくれる?

 じゃあ、おっぱい揉ませてもらおう!

 俺はなんの見栄も打算もない素直な気持ちでそう思った。

 すごい頑張ってセレナの別荘を作ろうという気になってくる。
 セレナは恐ろしい女である。

「さてと、それじゃあ私はそろそろ帰るけれど」

 セレナは立ち上がると、俺の方へ歩いてくる。

「最後に今日の分を頂こうかしら」

 セレナはいやらしく俺の肩に手をかける。
 たったそれだけで、俺は生唾を飲み込んでいた。

「ルーナ、俺が暴れないように押さえていてくれ」

「わかった!」

 俺のオリハルコンの意志だけでは心もとないので、ルーナに体を押さえていてもらうのだ。
 ルーナは背中から抱きつくように、俺を押さえつける。

「じゃあ、頂くわね」

 セレナが首筋に唇を押し付ける。
 首筋で感じる柔らかい唇の感触。
 セレナのいい匂いが鼻孔をくすぐる。

 やがて、鋭い痛みを感じた。

 首筋に食い込む牙。

 そして、体中を電流に似た快感が駆け巡る。

「ああっ、うあっ!」

 気持ち良すぎて、変な声を上げてしまう。

 抱きしめてくれているルーナを跳ね除けて、セレナをめちゃくちゃにしたい衝動に襲われる。

 背中で感じるルーナの温もりに、寸前の所で踏み止まっていた。

 やがて、セレナは首筋から溢れる血をチロチロ舐め取ってから、唇を離した。

「んん、あはぁ」

 セレナは頬を上気させながら、ため息とも喘ぎ声とも取れる吐息を漏らす。
 赤い瞳を蕩けさせて、熱に冒されたような表情を浮かべている。

 俺は荒くなった呼吸を整えながら、セレナへの獣欲を抑え込んでいた。
 視界には病気耐性や精神耐性が発動したログが表示されている。

 背中でルーナがゴクリと喉を鳴らす音が聞こえる。

「はあ、物凄く美味しかったわ。ご馳走さま」

 セレナは黒いストールを被り直す。

「また3日後に、ね」

 そう言いながら、俺を流し目で見て、家を出ていった。

 俺はセレナの馬車が去っていくのを確認すると、すぐにルーナを抱きしめた。

「悪い、ちょっと我慢出来ない」

「え? まだ昼間だぞ?」

 戸惑うルーナを新しいベッドに押し倒した。



 そして、俺が正気に戻ったのは夜更けだった。

 改めて、セレナの吸血はやばいと思う。
 完全に正気を失う。
 なんとかしないと、このままでは大変な事になってしまう。
 主にルーナが。

 ルーナはベッドの上で大変な事になっていた。

 俺はあうあう言っているルーナの状態を冷静に観察してみる。
 これは、なんだろう。
 なんというか、噴水? 噴水の真似をしているのかな。

 少し心配になったので、ルーナに水魔法で水を飲ませてやった。
 脱水症状になったら大変だからである。
 
 ふと気になって、一瞬で汚染され尽くしたベッドを見てみる。
 いや、見なかった事にした。

 とりあえず、明日は木の家を作り始めようと思って、俺は眠りについた。
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