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第二章 吸血鬼編
第48話 山賊の所業
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とりあえず、俺は山賊の長らしき男から、装備を剥ぎ取った。
オール鉄製の装備プラス月光魔剣とかいう大剣だ。
『[鉄の額当て]を装備しました。防御力補正+15』
『[鉄の胸当て]を装備しました。防御力補正+20』
『[鉄のベルト]を装備しました。防御力補正+10』
『[鉄の小手]を装備しました。防御力補正+14』
『[鉄のブーツ]を装備しました。防御力補正+15』
『[月光魔剣]を装備しました。攻撃力補正+52』
月光魔剣の攻撃力やばい。
土の剣より上だ。
見た目もかっこいいし。
この部屋に入って最初に殺した2人の装備も剥ぎ取ってみたが、2人が装備していたのは、革シリーズの防具だった。
皮シリーズよりは上だが、鉄シリーズよりは下だ。
見た目的には、革シリーズの方が好みだったが、見た目よりも性能を重視してみた。
鉄シリーズの装備は皮シリーズよりももっと無骨な感じがして、少し野暮ったい。
オール鉄なので、重そうだったが、筋力ステータスのお陰か、全然重さは感じなかった。
そんなわけで、最初に倒した2人は、防具は微妙だったが、2人共、鉄の剣を持っていたので、頂いて鉄のベルトに差しておく。
だいぶ、装備は様になってきた。
装備を整えて何をするんだという気もするが。
特にやりたいゲームもないのに、ハイエンドPCを組んでしまうアノ現象に似ている。
何かのベンチマークでハイスコアを叩き出して満足してから賢者モードに入り、いつの間にかガクッと目減りした貯金を見て虚しさを覚えるアレである。
とりあえず、俺は部屋を物色してみた。
多分、ここはボス部屋なので宝箱的なものはないだろうかと思ったのだ。
そして、部屋の奥に小さな小部屋がある事に気付いた。
小部屋には、棚と宝箱が置かれていた。
俺は内心で喝采を上げた。
棚には、赤い液体の入った小瓶が並べられている。
なにかの薬だろうか。
そして、お待ちかねの宝箱である。
「…………」
腹が立つことに、宝箱には鍵がかかっていた。
部屋とかあの山賊長の死体とかを探せば鍵は見つかりそうだったが、めんどくさいので宝箱に全力で力を込めた。
バキッという音がして、宝箱が壊れる。
『エクストラスキル解放条件を達成しました。』
『解放条件:鍵を使わずに宝箱を開ける』
『解放スキル:盗賊スキル 解錠』
『取得に必要なスキルポイントは1です。』
なんか狙ってもいないスキルが開放されたが、今はとりあえず無視だ。
というか、ここに来てから大剣を振り回したり、人間の頭部を握りつぶしたり、宝箱を力づくでこじ開けたりと、完全に脳筋になっている気がする。
もともと俺は魔法主体のスマートな戦法を得意とする男のはずなのに。
魔法が使えないのホントに嫌だ。
その、なんというかファッション的に。
宝箱の中には、金貨や銀貨、宝石等がぱんぱんに詰まっていた。
これぞ宝箱の中身といった感じだ。
ただ、人の住む街等に近寄る気のない俺は、金貨とか手に入れてもイマイチ嬉しくない。
買い物とかする気がないからね。
この世界にネットショッピングと宅配ボックスがあるのならば別だが。
あれはいい。
人と顔を一切合わせる事なく欲しい物が手に入る。
ホントに考えた人は天才の上に、重度の引きこもりだと思う。
まあ、一応持って帰って、ルーナにでもあげよう。
喜んでくれるだろうか。
一応宝石とかも入っているし。
ご丁寧に棚の下段には麻袋が置いてあった。
有事の際に持ち出せるように備えてあったのだろうか。
俺はとりあえず、麻袋の中に宝箱の中身を突っ込んだ。
宝箱は残念ながら壊れてしまったので、ポイする。
その他にも、棚にあった薬品ぽいものも麻袋の中に全部ぶち込んだ。
薬品はガラスの瓶に入っているので、割れないか心配だったが、結構分厚い瓶だったので、強い衝撃を与えなければ大丈夫だと思う。
あとは、棚の奥に何本かの生地のロールがあったのでそれも回収しておく。
なんの生地かは分からないが、綿ぽいものや絹ぽいものまであった。
これもルーナにあげたら喜びそうだ。
色々ぶち込んだ麻袋を担ぐと、ガチャガチャ音がした。
それにしても、突然、襲撃して皆殺しにして、装備を奪って財宝も持ち去るなんて、ただの強盗じゃんと思う。
しかし、俺のルーナを傷つけたのだ。
これくらいされても文句は言えまい。
というか、山賊狩りは結構楽しかった。
ぜひ今後も続けていきたいです☆
最後に山賊の長に真面目な説教っぽいものをされたのが、少し癇に障ったが。
俺は戦利品を抱えて、来た道を戻る。
今更だが、なんか怖くなってきた。
薄暗い洞窟の中は、ただでさえ不気味な上に、そこら中に死体が散乱しているのだ。
この上なくホラーである。
まあ、死体を作ったのは私ですが。
俺は、足早に洞窟を駆け抜けようとして、来たときには気付かなかった小部屋があるのに気付いた。
小部屋からは、小さな明かりが漏れている。
まだ生き残りがいるのだろうか。
生き残りがいるならば、殲滅しなくてはならない。
ゆっくりと小部屋に近づいて、中を覗き込んで見る。
そして、俺は息を飲んだ。
部屋の中からは、物凄い淫臭が漂っていた。
裸の女が何人か、股を蛙みたいに開いたまま倒れている。
そして、部屋の奥には同じく裸の女が身を寄せ合うようにして、怯えて震えていた。
先程、殺した山賊長の顔が思い浮かぶ。
偉そうな事を言っておいて、結局やっていることはこれか。
床に倒れている女達も、奥で怯えている女達も一様に、顔は腫れ上がり、体中痣だらけだった。
特殊な趣味を持っていない俺にとって、この光景には嫌悪感しか浮かばない。
女達は30人くらいだろうか。
俺は、そんな女達を怯えさせないように、ゆっくりと近づいていった。
「助けに来ました。もう大丈夫ですよ」
できるだけ、優しく聞こえるように気をつけながら、そう女達に声をかけた。
俺の言葉に、女達にどよめきが走る。
なんとなく判ってはいたが、いまいち俺を信用していないのだろう。
当たり前だ。
俺だって見ず知らずの奴なんて、絶対に信用しない。
とはいえ、俺はもうこの女達を助けると決めたのだ。
助けると言っても、入り口まで連れて行くだけだが。
家まで送るとかは、引きこもり的にやりたくない。
女達は俺を見て、コソコソ相談し始めた。
なので、まずは床に倒れている女達を助けようと思った。
倒れている女の殆どは、既に事切れていた。
白目を向いて、泡を吹いていたので、せめて目を閉じさせてやる。
そんな中、一人だけまだピクピクと動いている女がいた。
栗色の癖っ毛を長く伸ばした女だった。
その顔立ちには、見覚えがあった。
いつか、フィリスに神聖魔法をかけたシスターさんだ。
以前は修道着で髪型を隠していたが、間違いない。
シスターさんは、かつての姿は見る影もなく、結構整っていた顔は無残に腫れ上がっている。
俺達の家から帰る途中に、山賊に襲われて連れてこられたのだろうか。
そう言えば、シスターさん達が帰っていた方向は、この山の方向だった気がする。
お付きの神父さん達はどうしたのだろう。
(あの女から、聞いたとおりだったぜ)
いつか我が家を襲撃した山賊がそんな事を言っていたのが思い出される。
あの女とは、このシスターさんだったのだろうか。
山賊たちに俺達の情報を伝えたのだろう。
シスターさんは、かろうじて息をしているが、今にも力尽きそうだった。
不意に、シスターさんのHPを見ようとしたが、ルーナと違ってHPは表示されなかった。
何か条件があるのだろうか。
まあ、このシスターさんのせいで、ルーナが怪我をしたと言っても過言ではない。
このまま放置してもいいかと思った。
ただ、シスターさんの哀れな姿を見ていると心が痛む。
「あの、この薬ってなんだかわかりますか?」
俺は思いついて、戦利品の麻袋から赤い薬品を取り出して、奥にいる女達に聞いてみた。
「……それは、高級な回復薬です」
やっぱり。
見た目からして、ポーションぽいと思っていたのだ。
効くかどうかわからないがシスターさんに回復薬を飲ませてみた。
シスターさんは、ゆっくりとだが、赤い回復薬を嚥下していく。
「……あの、その人、綺麗だったから、しつこく、その……」
女達の一人が、そんな事を教えてくれた。
まあ、たしかにもともとのシスターさんは結構な美人だった。
言っては悪いが、ここにいるのは皆十人並みの容姿の女達で、この中ではダントツだっただろう。
まあ、反吐が出るが。
「……ちょっと待っててくださいね」
俺は、そう言い残すと部屋を後にした。
この部屋の外は、盗賊達の寝室だったらしく、ボロいベッドがいくつも並んでいた。
そして、部屋の隅には、タオルのような布切れが積み重なっていた。
また、部屋の奥には地下水に繋がっているのか、井戸のようなものもあった。
100人近くの人間が生活していたのだ。
最低限のライフラインは備えてあるらしい。
衛生面が少し心配になったが、タオルを水で湿らせていく。
先程から気になっていたが、女達からは酷い臭いがする。
さぞかし本人たちも不快だろうと思ったのだ。
女達の部屋に戻って、濡れたタオルを配っていく。
痣だらけの女達には、濡れタオルは染みるかもしれないが、そのままにしておくよりはマシだと思ったのだ。
怪我の酷いものには、ポーションも配った。
ポーションはまだまだ腐るほどある。
女達は、タオルやポーションを受け取ると、ボソボソと感謝の言葉を述べていた。
俺は、床に横たわるシスターさんの身体を濡れタオルで拭いてやった。
シスターさんの身体は、泥やら謎の液体やらで汚れきって黒くなっている。
濡れタオルで拭うと、綺麗な白い肌が覗いたが、至る所に青黒い痣が浮かんでいた。
シスターさんはポーションを飲んで、少し回復したのか、その表情が僅かに和らいでいるが、まだ疲労の色が濃い。
俺はシスターさんをひょいっと持ち上げると、部屋の外にあるベッドに寝かせることにした。
ふと他の女達に目を向けると、皆一様に疲れた表情を浮かべている。
「そ、外にベッドがあるので、皆さん一旦休息を取ってください。少し眠ってから、ここを出ましょう」
対人恐怖症的に、大勢の人間に声をかけるのは、かなり緊張した。
結構、小さな声だったが、なんとか女達には伝わったようだ。
「あ、あの、戦士様?」
女達の一人が、俺に声をかけてくる。
戦士様とは俺のことだろうか。
脳筋ぽくてちょっと嫌だ。
暗黒騎士様とか呼んで欲しかった。
「なんでしょうか?」
「そ、その、外には、あ、あの人達が……」
ああ、そうか。
この人達はまだ事情を理解できていないのだ。
「外にいた山賊たちは、皆殺しにしたので安心してください」
そう言うと、女達がざわめき出す。
突然、そんな事を言われても信じられないのだろうか。
とは言え、盗賊たちがいなくなったのは事実なので、女達は納得するしかなかったのか、次第にざわめきが収まっていく。
「……あの、それではこれから私たちは、戦士様のものになるのでしょうか?」
おずおずと、一人の女がそんな事を言ってきた。
他の女達も、俺を見て怯えた表情を見せる。
俺のもの?
この30人位の裸の女が全て?
何そのハーレム展開。
いや、さすがにルーナが泣くどころの騒ぎではない。
一瞬。
ほんとに一瞬だけ、ルーナのもとには帰らずここでこの女達を囲ってハーレムを形成するのも悪くないかもと思ってしまった。
一時の気の迷いだ。
ちなみに、その場合、俺は山賊になろうと思う。
意外と成立しそうで怖い。
「……いえ、俺にはそんな甲斐性はないです。少し休憩したら、ご自宅にお戻りください」
少しだけ迷ってから、そんな情けないことを言ってみた。
実際に30人の食い扶持をなんとかする自信はない。
もう魔法は使えないし。
「……え? 私達、お家に帰れるんですか?」
一人がそんな事を言い始めると、その呟きはじわじわと広がっていき、やがて爆発したような歓声が生まれる。
女達の喜びようは、物凄いものだった。
人の喧騒が苦手な俺は、とにかくそういうことで! とか言いながら、女達の部屋を後にした。
ベッドの一つに腰掛けて、少しだけ横になってみる。
そう言えば、今は何時くらいだろうか。
ここに乗り込んできたのは、まだ午前中だったと思うが、あれから結構な時間が経っている。
洞窟の中なので、今が昼なのか夜なのかわからないが、そろそろ日が暮れている頃かもしれない。
さっき女達には、少し休憩してからと言ったが、このまま朝まで寝てからでも良いかもしれない。
というか、さっきから眠気が酷い。
そう言えば、病み上がりだったのを思い出す。
俺は腕に浮き上がった赤い筋を見つめながら、眠りに落ちていった。
オール鉄製の装備プラス月光魔剣とかいう大剣だ。
『[鉄の額当て]を装備しました。防御力補正+15』
『[鉄の胸当て]を装備しました。防御力補正+20』
『[鉄のベルト]を装備しました。防御力補正+10』
『[鉄の小手]を装備しました。防御力補正+14』
『[鉄のブーツ]を装備しました。防御力補正+15』
『[月光魔剣]を装備しました。攻撃力補正+52』
月光魔剣の攻撃力やばい。
土の剣より上だ。
見た目もかっこいいし。
この部屋に入って最初に殺した2人の装備も剥ぎ取ってみたが、2人が装備していたのは、革シリーズの防具だった。
皮シリーズよりは上だが、鉄シリーズよりは下だ。
見た目的には、革シリーズの方が好みだったが、見た目よりも性能を重視してみた。
鉄シリーズの装備は皮シリーズよりももっと無骨な感じがして、少し野暮ったい。
オール鉄なので、重そうだったが、筋力ステータスのお陰か、全然重さは感じなかった。
そんなわけで、最初に倒した2人は、防具は微妙だったが、2人共、鉄の剣を持っていたので、頂いて鉄のベルトに差しておく。
だいぶ、装備は様になってきた。
装備を整えて何をするんだという気もするが。
特にやりたいゲームもないのに、ハイエンドPCを組んでしまうアノ現象に似ている。
何かのベンチマークでハイスコアを叩き出して満足してから賢者モードに入り、いつの間にかガクッと目減りした貯金を見て虚しさを覚えるアレである。
とりあえず、俺は部屋を物色してみた。
多分、ここはボス部屋なので宝箱的なものはないだろうかと思ったのだ。
そして、部屋の奥に小さな小部屋がある事に気付いた。
小部屋には、棚と宝箱が置かれていた。
俺は内心で喝采を上げた。
棚には、赤い液体の入った小瓶が並べられている。
なにかの薬だろうか。
そして、お待ちかねの宝箱である。
「…………」
腹が立つことに、宝箱には鍵がかかっていた。
部屋とかあの山賊長の死体とかを探せば鍵は見つかりそうだったが、めんどくさいので宝箱に全力で力を込めた。
バキッという音がして、宝箱が壊れる。
『エクストラスキル解放条件を達成しました。』
『解放条件:鍵を使わずに宝箱を開ける』
『解放スキル:盗賊スキル 解錠』
『取得に必要なスキルポイントは1です。』
なんか狙ってもいないスキルが開放されたが、今はとりあえず無視だ。
というか、ここに来てから大剣を振り回したり、人間の頭部を握りつぶしたり、宝箱を力づくでこじ開けたりと、完全に脳筋になっている気がする。
もともと俺は魔法主体のスマートな戦法を得意とする男のはずなのに。
魔法が使えないのホントに嫌だ。
その、なんというかファッション的に。
宝箱の中には、金貨や銀貨、宝石等がぱんぱんに詰まっていた。
これぞ宝箱の中身といった感じだ。
ただ、人の住む街等に近寄る気のない俺は、金貨とか手に入れてもイマイチ嬉しくない。
買い物とかする気がないからね。
この世界にネットショッピングと宅配ボックスがあるのならば別だが。
あれはいい。
人と顔を一切合わせる事なく欲しい物が手に入る。
ホントに考えた人は天才の上に、重度の引きこもりだと思う。
まあ、一応持って帰って、ルーナにでもあげよう。
喜んでくれるだろうか。
一応宝石とかも入っているし。
ご丁寧に棚の下段には麻袋が置いてあった。
有事の際に持ち出せるように備えてあったのだろうか。
俺はとりあえず、麻袋の中に宝箱の中身を突っ込んだ。
宝箱は残念ながら壊れてしまったので、ポイする。
その他にも、棚にあった薬品ぽいものも麻袋の中に全部ぶち込んだ。
薬品はガラスの瓶に入っているので、割れないか心配だったが、結構分厚い瓶だったので、強い衝撃を与えなければ大丈夫だと思う。
あとは、棚の奥に何本かの生地のロールがあったのでそれも回収しておく。
なんの生地かは分からないが、綿ぽいものや絹ぽいものまであった。
これもルーナにあげたら喜びそうだ。
色々ぶち込んだ麻袋を担ぐと、ガチャガチャ音がした。
それにしても、突然、襲撃して皆殺しにして、装備を奪って財宝も持ち去るなんて、ただの強盗じゃんと思う。
しかし、俺のルーナを傷つけたのだ。
これくらいされても文句は言えまい。
というか、山賊狩りは結構楽しかった。
ぜひ今後も続けていきたいです☆
最後に山賊の長に真面目な説教っぽいものをされたのが、少し癇に障ったが。
俺は戦利品を抱えて、来た道を戻る。
今更だが、なんか怖くなってきた。
薄暗い洞窟の中は、ただでさえ不気味な上に、そこら中に死体が散乱しているのだ。
この上なくホラーである。
まあ、死体を作ったのは私ですが。
俺は、足早に洞窟を駆け抜けようとして、来たときには気付かなかった小部屋があるのに気付いた。
小部屋からは、小さな明かりが漏れている。
まだ生き残りがいるのだろうか。
生き残りがいるならば、殲滅しなくてはならない。
ゆっくりと小部屋に近づいて、中を覗き込んで見る。
そして、俺は息を飲んだ。
部屋の中からは、物凄い淫臭が漂っていた。
裸の女が何人か、股を蛙みたいに開いたまま倒れている。
そして、部屋の奥には同じく裸の女が身を寄せ合うようにして、怯えて震えていた。
先程、殺した山賊長の顔が思い浮かぶ。
偉そうな事を言っておいて、結局やっていることはこれか。
床に倒れている女達も、奥で怯えている女達も一様に、顔は腫れ上がり、体中痣だらけだった。
特殊な趣味を持っていない俺にとって、この光景には嫌悪感しか浮かばない。
女達は30人くらいだろうか。
俺は、そんな女達を怯えさせないように、ゆっくりと近づいていった。
「助けに来ました。もう大丈夫ですよ」
できるだけ、優しく聞こえるように気をつけながら、そう女達に声をかけた。
俺の言葉に、女達にどよめきが走る。
なんとなく判ってはいたが、いまいち俺を信用していないのだろう。
当たり前だ。
俺だって見ず知らずの奴なんて、絶対に信用しない。
とはいえ、俺はもうこの女達を助けると決めたのだ。
助けると言っても、入り口まで連れて行くだけだが。
家まで送るとかは、引きこもり的にやりたくない。
女達は俺を見て、コソコソ相談し始めた。
なので、まずは床に倒れている女達を助けようと思った。
倒れている女の殆どは、既に事切れていた。
白目を向いて、泡を吹いていたので、せめて目を閉じさせてやる。
そんな中、一人だけまだピクピクと動いている女がいた。
栗色の癖っ毛を長く伸ばした女だった。
その顔立ちには、見覚えがあった。
いつか、フィリスに神聖魔法をかけたシスターさんだ。
以前は修道着で髪型を隠していたが、間違いない。
シスターさんは、かつての姿は見る影もなく、結構整っていた顔は無残に腫れ上がっている。
俺達の家から帰る途中に、山賊に襲われて連れてこられたのだろうか。
そう言えば、シスターさん達が帰っていた方向は、この山の方向だった気がする。
お付きの神父さん達はどうしたのだろう。
(あの女から、聞いたとおりだったぜ)
いつか我が家を襲撃した山賊がそんな事を言っていたのが思い出される。
あの女とは、このシスターさんだったのだろうか。
山賊たちに俺達の情報を伝えたのだろう。
シスターさんは、かろうじて息をしているが、今にも力尽きそうだった。
不意に、シスターさんのHPを見ようとしたが、ルーナと違ってHPは表示されなかった。
何か条件があるのだろうか。
まあ、このシスターさんのせいで、ルーナが怪我をしたと言っても過言ではない。
このまま放置してもいいかと思った。
ただ、シスターさんの哀れな姿を見ていると心が痛む。
「あの、この薬ってなんだかわかりますか?」
俺は思いついて、戦利品の麻袋から赤い薬品を取り出して、奥にいる女達に聞いてみた。
「……それは、高級な回復薬です」
やっぱり。
見た目からして、ポーションぽいと思っていたのだ。
効くかどうかわからないがシスターさんに回復薬を飲ませてみた。
シスターさんは、ゆっくりとだが、赤い回復薬を嚥下していく。
「……あの、その人、綺麗だったから、しつこく、その……」
女達の一人が、そんな事を教えてくれた。
まあ、たしかにもともとのシスターさんは結構な美人だった。
言っては悪いが、ここにいるのは皆十人並みの容姿の女達で、この中ではダントツだっただろう。
まあ、反吐が出るが。
「……ちょっと待っててくださいね」
俺は、そう言い残すと部屋を後にした。
この部屋の外は、盗賊達の寝室だったらしく、ボロいベッドがいくつも並んでいた。
そして、部屋の隅には、タオルのような布切れが積み重なっていた。
また、部屋の奥には地下水に繋がっているのか、井戸のようなものもあった。
100人近くの人間が生活していたのだ。
最低限のライフラインは備えてあるらしい。
衛生面が少し心配になったが、タオルを水で湿らせていく。
先程から気になっていたが、女達からは酷い臭いがする。
さぞかし本人たちも不快だろうと思ったのだ。
女達の部屋に戻って、濡れたタオルを配っていく。
痣だらけの女達には、濡れタオルは染みるかもしれないが、そのままにしておくよりはマシだと思ったのだ。
怪我の酷いものには、ポーションも配った。
ポーションはまだまだ腐るほどある。
女達は、タオルやポーションを受け取ると、ボソボソと感謝の言葉を述べていた。
俺は、床に横たわるシスターさんの身体を濡れタオルで拭いてやった。
シスターさんの身体は、泥やら謎の液体やらで汚れきって黒くなっている。
濡れタオルで拭うと、綺麗な白い肌が覗いたが、至る所に青黒い痣が浮かんでいた。
シスターさんはポーションを飲んで、少し回復したのか、その表情が僅かに和らいでいるが、まだ疲労の色が濃い。
俺はシスターさんをひょいっと持ち上げると、部屋の外にあるベッドに寝かせることにした。
ふと他の女達に目を向けると、皆一様に疲れた表情を浮かべている。
「そ、外にベッドがあるので、皆さん一旦休息を取ってください。少し眠ってから、ここを出ましょう」
対人恐怖症的に、大勢の人間に声をかけるのは、かなり緊張した。
結構、小さな声だったが、なんとか女達には伝わったようだ。
「あ、あの、戦士様?」
女達の一人が、俺に声をかけてくる。
戦士様とは俺のことだろうか。
脳筋ぽくてちょっと嫌だ。
暗黒騎士様とか呼んで欲しかった。
「なんでしょうか?」
「そ、その、外には、あ、あの人達が……」
ああ、そうか。
この人達はまだ事情を理解できていないのだ。
「外にいた山賊たちは、皆殺しにしたので安心してください」
そう言うと、女達がざわめき出す。
突然、そんな事を言われても信じられないのだろうか。
とは言え、盗賊たちがいなくなったのは事実なので、女達は納得するしかなかったのか、次第にざわめきが収まっていく。
「……あの、それではこれから私たちは、戦士様のものになるのでしょうか?」
おずおずと、一人の女がそんな事を言ってきた。
他の女達も、俺を見て怯えた表情を見せる。
俺のもの?
この30人位の裸の女が全て?
何そのハーレム展開。
いや、さすがにルーナが泣くどころの騒ぎではない。
一瞬。
ほんとに一瞬だけ、ルーナのもとには帰らずここでこの女達を囲ってハーレムを形成するのも悪くないかもと思ってしまった。
一時の気の迷いだ。
ちなみに、その場合、俺は山賊になろうと思う。
意外と成立しそうで怖い。
「……いえ、俺にはそんな甲斐性はないです。少し休憩したら、ご自宅にお戻りください」
少しだけ迷ってから、そんな情けないことを言ってみた。
実際に30人の食い扶持をなんとかする自信はない。
もう魔法は使えないし。
「……え? 私達、お家に帰れるんですか?」
一人がそんな事を言い始めると、その呟きはじわじわと広がっていき、やがて爆発したような歓声が生まれる。
女達の喜びようは、物凄いものだった。
人の喧騒が苦手な俺は、とにかくそういうことで! とか言いながら、女達の部屋を後にした。
ベッドの一つに腰掛けて、少しだけ横になってみる。
そう言えば、今は何時くらいだろうか。
ここに乗り込んできたのは、まだ午前中だったと思うが、あれから結構な時間が経っている。
洞窟の中なので、今が昼なのか夜なのかわからないが、そろそろ日が暮れている頃かもしれない。
さっき女達には、少し休憩してからと言ったが、このまま朝まで寝てからでも良いかもしれない。
というか、さっきから眠気が酷い。
そう言えば、病み上がりだったのを思い出す。
俺は腕に浮き上がった赤い筋を見つめながら、眠りに落ちていった。
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――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
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最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
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