ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第三章 戦争編

第76話 初めての戦場 ⑥

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『剣LV3:《達人剣術》が使用可能になりました。』
『二刀流LV3:《達人二刀流》が使用可能になりました。』

 そんなログが流れた時、俺は地面に口づけをしていた。
 ついさっき、ヴァンダレイジジイに蹴飛ばされたのだ。
 行軍最終日の朝だった。
 戦場はすぐそこらしい。

「くくく……」

 思わず笑ってしまった。
 ずっと待っていた。
 この時を。
 殴られ、蹴られ続けること6日。
 一撃も入れられなかった。
 常に殺る気で行ってたのに、ひらひらと躱されて反撃を食らった。
 だが、そんな辛酸を舐めた日々も今終わる。
 そして、ジジイの命運も終わる。
 《達人剣術》、《達人二刀流》の知識がガンガン頭に流れ込んでくる。
 身体をどう動かせばいいのかはっきりわかる。
 より無駄なく効率的に。
 効果的なフェイント。
 相手の動作からの先読み。
 そうか。
 そういうことだったのか。
 ちなみに、『体術レベル2:《応用格闘技》』も昨日取得済だ。

 俺は跳ね起きる。
 そして、ジジイをひと睨み。

「なんじゃ? さっさと掛かってこんかい」

 ジジイは今日も余裕の表情だ。
 今すぐ殺してやる。

 俺はジジイに向かって半身で構える。
 右手に持った月光魔剣を突き出すようにして、左手の鋼の剣は体の死角に隠した。

 そして、ジジイに向かって月光魔剣を鋭く突き出す。
 何の予備動作も、ためらいもない鋭い一撃。
 突き出される剣の速度は、今までの比ではない。

「むっ!」

 ジジイは咄嗟に月光魔剣を木の棒で跳ね上げた。
 予想外のスピードに避けられなかったらしい。

 木の棒を跳ね上げてしまった事で、ジジイの胴ががら空きになる。
 俺は右足を軸に身体を回転させる。
 そして、隠してあった鋼の剣に遠心力を乗せて振り抜く。
 遠心力が加わったことにより、速度も力も倍になる。

 ジジイは咄嗟に後ろに飛んだ。
 鋼の剣はジジイの胴鎧に浅い傷をつける。
 初めてジジイに傷を付けた。

 しかし、これだけでは止まらない。
 後ろに飛ぶジジイを追いかけるように、俺は大きく一歩踏み込む。

 ジジイの太ももにローキックを入れた。
 ジジイの着地を狙ったのだ。
 ローキックは見事にジジイの腿を打つ。
 乾いた音が聞こえた。
 顔を歪めるジジイ。

 そこに振り上げられていた月光魔剣を、打ち下ろした。
 唸りを上げる月光魔剣。
 ジジイはわずかに顔を傾ける。
 しかし、月光魔剣はジジイの頬を切り裂いていた。
 鮮血が飛び散る。
 やった!
 ジジイを傷つけた!
 このまま殺れる!

 しかし、その時、ジジイの目が明確な殺意を帯びた気がした。

 肩に重い衝撃を受ける。
 ミシミシと。
 いつのまにかジジイの木の棒が肩に食い込んでいた。
 鉄の鎧の肩部分が吹き飛ぶ。
 木の棒で鉄が吹き飛ぶとか!
 木の棒も木っ端微塵になっていたが。

 そして、俺はジジイの拳骨を顔面に食らって、思い切り後方に吹っ飛んだ。


 馬鹿な。
 レベル3のスキルでもジジイに届かないのか。
 俺は何度目になるかわからない程味わいまくった土を吐き出した。

「……ふふふ、今のはなかなかじゃった。思わず昔の血が騒いだわい」

 ジジイは頬の切傷から流れた血を舐め取る。
 というか、目つきが変わっていた。
 完全に俺を殺る目をしている。

「そろそろ、儂も本気を出そうかのう」

 ジジイは黒い設えの長剣を鞘から抜く。
 黒い長剣は金の装飾がついていて、刀身には何やら古代文字のようなものが刻まれている。
 なんかめちゃくちゃかっこいいんだけど。
 というか、今更本気とか。
 さっき結構本気だったのはわかっているのだ。
 小学生の強がりみたいな事を言いやがって。
 負けず嫌いのジジイである。
 ま、まあ、俺もまだ本気じゃなかったし。

 とりあえず、立ち上がって埃を払う。
 結局やられたが、さっきは結構いい感じだった。
 さすが《達人剣術》に《達人二刀流》である。
 達人という名は伊達じゃない。
 さっきやられたのはたまたまだ。
 木の棒の動きが見えなかった気がするが気のせいだ。

 次は吠え面かかせてやんよ!!!!

 俺は再び駆け出した。



 一時間後、俺はフルボッコにされて、地面に転がっていた。
 ジジイは本当に本気じゃなかったらしい。
 あれからジジイの動きが見えなくなった。
 というかジジイ自体が見えなくなった。
 一瞬で姿を消し、気づくと殴られていた。
 反則にも程がある。
 あのかっこいい剣とは打ち合えてすらいない。
 どういうことなの……。

「……ぜえぜえ、み、見たか、小僧が。こ、この儂が、ほ、本気を、出せ、ば、はあはあ」

 しかし、ジジイも見るからに消耗している。
 肩で思い切り息を付いているし。
 額からは汗が滴っている。
 というか、今にも死にそうに見えて、ちょっと心配してしまう。

 ふふ、今なら殺れる。
 今度こそ。絶対にだ。
 なんか納得いかないが、持久力の勝利ということだろう。

「……あのう、そろそろ出発しないと」

 しかし、いつの間にか近くに来ていたお嬢様に水を差されてしまった。

「はあはあ、もう、そんな、時間です、かな」

 そういえば、もう2時間以上ジジイと戦っている気がする。
 いつもならとっくに進発している時間だ。

「ふ、ふむ……」

 ジジイは俺を睨みつけながら、何かを考えている。

「も、もう少し、だけ、休憩してから、出発しましょうかのう、ぜえぜえ」

「え? で、でもそれでは開戦に間に合わないんじゃ……」

 お嬢様は不安そうだ。
 というか、ただジジイが休憩したいだけのような気がする。

「……心配召されるな。我に策ありですじゃ」

「は、はあ」

 そんなこんなで、しばらく休憩になってしまった。
 本当にジジイに策があるのか大いに疑問である。
 絶対に俺との激戦の疲れを癒やしたいだけな気がする。

「心配するでない。あの方には何かお考えがあるのじゃろう」

 そう声をかけてきたのは、いつかのオーククラッシャーの老人だった。
 心配なんて全くしていないのだが。

「あの方の言うとおりにしておけば大丈夫じゃ」

 オーククラッシャーの老人はジジイを信頼しきっていた。
 ジジイ同士感じるものがあるのだろうか。
 俺はジジイじゃないので全くわからないのだが。



「戦の前だって言うのに、お前もよくやるよ」

 どこか緊張した面持ちのピートにそんな事を言われた。
 俺はボコボコにされた体を引きずりながら、ピートとラッセルの元に帰ってきた。
 なんかいつのまにかこの2人のいる場所が俺の居場所になっていた。
 改めて考えてみると、物凄く気色悪いな。
 そもそも俺の居場所といったら。
 不意にルーナの顔が浮かんだ。
 べ、別にあいつの傍が俺の居場所だなんて思ってないんだかんね!
 あー、それにしても、しばらくルーナを抱いていない。
 ルーナの乳が揉みたい。
 というか、最近は夜寝ている時によくルーナの夢を見る。
 このままじゃ夢精しそうで怖い。
 32で夢精なんてしたら割腹自殺を図るが。

「もうすぐ戦場に着くんだよな……」

 ピートが青い顔でそんな事を言う。
 かなり緊張しているらしい。
 ラッセルも同じように緊張しているのか、言葉数が少ない。
 いや、言葉数が少ないのはいつものことだが。
 とはいえ、ラッセルの顔色は悪かった。
 戦争直前は誰でもこんな感じなのだろうか。
 俺はそうでもないけど。
 ヴァンダレイジジイのお陰だろうか。
 散々殴られたせいで、体中がミシミシ言っている。
 HPはそんなに減っていないが。
 とりあえず、出発まで少し眠ろうと思って目を閉じた。
 夢の中でルーナを押し倒すのだ。
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