ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第三章 戦争編

第92話 論功行賞 ④

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 王宮の中に入ると、広い待合室に案内された。
 ふかふかで真っ赤な絨毯が敷き詰められ、高そうな調度品が随所に置かれた部屋だった。
 壁際に何脚か椅子が並んでいたので、セレナとルーナと並んで腰掛ける。

 しばらくすると待合室の奥にあるドアが開き、仰々しい声で名前が呼ばれた。
 すると離れた所に座っていたオジサンとオバサンの夫婦が待合室の奥に入っていく。
 病院と同じように、名前を呼ばれたら奥に行けばいいらしい。
 しばらくはここに座って待機だろう。
 待機とか。
 こっちの世界に来て、何かを待つのは初めてだ。
 スマホもなしにどうやって時間を潰せばいいのだろうか。
 とりあえず、隣に座るルーナを眺める。
 窓から差し込む陽の光に照らされたルーナは神々しくも美しい。
 ホントに今日のルーナは凄まじいな。
 世界3大ミスコンでも総舐めにするつもりなのだろうかというレベルだ。
 そのまま、俺はボーっとルーナの横顔を眺め続けた。
 そんな時、脇腹を抓られた。

「ちょっと、小娘ばかり見ないでよ。わ、私のことも少しは見なさい?」

 不満そうな顔をしたセレナがそんな可愛いことを言っている。
 見ろと言われれば、喜んで見てしまう。
 今日のセレナはいつもより3割増しで美しい。
 その上、じーっと見つめ続けるとセレナは恥ずかしそうに頬を赤らめていて、美しい上に可愛らしくもある。
 美しくて可愛らしいとか、さすが数百年生きた吸血鬼は伊達じゃない。
 というか、この女本当に数百年も生きているのだろうか。
 最近のセレナを見ていると普通の若い娘にしか見えないのだ。
 特にベッドの上では。
 普段は上品で出来る女風なのに、ベッドの上では奴隷のように従順なのだ。
 ツン奴隷とでも言うべきか。
 あーなんかセレナを抱きたくなってきた。
 そういえば、いつもならセレナを抱いている時間帯な気がする。

 そんな事を考えていたら、ぐいっと強引に首を振り向かされた。
 涙を溜めたルーナがむくれて睨んでいる。

「お前、ちょっと最近浮気しすぎじゃないか?」

 はて。
 浮気なんて全くしていないので、ルーナが何を怒っているのかわからない。
 王都までの道中だって、ルーナを気絶させた後、セレナを抱いていたが、2、3回しかやってない。
 事後、セレナは、ちょっと物足りないわねとか普通に喋っていたし。
 いつもの、あへーごしゅじんしゃまだいしゅきーにはなっていないのだ。
 一体、これのどこが浮気だというのか。

「前にも言っただろう? 私以外の女に触ったら浮気! 私以外の女を見つめても浮気! 私以外の女の事を考えても浮気だ! ねえ、なんですぐに浮気するの?」

 そういえば、そんな面倒くさいこと言ってたな。
 その定義で言えば、近くに住んでいる女全員と浮気していることになってしまう。
 まるで俺が浮気しまくっているみたいじゃないか。
 そもそも、抱いたのだってルーナの他にはカンナさんとセレナとミレイしかいない。
 たった3人だ。
 3人なんて四捨五入すれば0じゃないか。
 誰も抱いていないのと同じだ。

「ぐす、とりあえず、ギュッとして頭をナデナデしてくれ」

 そんな事を言いながら、軽くベソをかいたルーナがしがみついてくる。
 とりあえず、頭を撫でてやるが、物凄く綺麗に結い上げられている髪型を崩してしまわないか心配なんだけど。

「ちょっと! 黙って聞いていればなんて自分勝手な事を言っているの? 世間ではお前みたいな女を独裁者っていうのよ? 恐ろしい小娘ね」

 セレナがガタッと立ち上がってルーナに詰め寄ろうとするので、空いている方の手をその腰に回して抱きしめる。

「あう」

 途端にセレナは押し黙って、しおしおと椅子に座り込んで、俺にしがみついてくる。
 かわいいやつだ。

 ルーナの頭を撫でながら、セレナの腰も撫で回す。

 なんというか。
 ものすごく楽しいです。

「お、おほん、あの、こういった場で、そういった事はお控えになったほうが……」

 近くに座っていた貴族っぽい人にそんな事を言われてしまった。
 イチャイチャするのはダメだったらしい。
 というか、ダメならダメってその辺に張り紙でも張って書いておいて欲しいんだけど!
 女とイチャつくのは禁止って。
 誠に遺憾である。

「セラン荒野、開拓村在住のコウ殿」

 待合室の奥から、そんな声が聞こえた。
 もしかして俺のことだろうか。
 ルーナとセレナが立ち上がったので、俺のことらしい。
 というか、あの荒野はセラン荒野というのか。
 しばらく住んでいるが、初めて知った。

 3人で待合室の奥まで歩いて行く。
 そこには豪華な扉があった。
 両サイドには、フルプレートメイルで完全武装した兵士が立っている。
 俺たちが扉の前に立つと、兵士が開けてくれた。

 扉の先には、待合室よりも更に広い空間が広がっていた。
 荘厳な石造りの部屋だ。
 その中央には赤い絨毯が道を示すように敷かれている。
 絨毯の先には数段の段差があり、その上にはやたら長い背もたれの椅子があった。
 その椅子に腰掛ける人物。
 なんか物凄いオーラを放っている。
 あれが王様だろうか。

 ふむ。
 王様。王様ねえ……。
 どうしよう。全然ピンと来ない。
 お世話になった記憶がないので、忠誠心なんて皆無だし。
 まあアレかな。
 飲み屋でたまたま出会った自称経営者のおじさんくらいに思っておけばいいだろうか。
 似たようなもんだろう(勘)。 

 王様らしき人をじーっと眺めていたら、ルーナに小突かれた。
 歩けってことらしいので、てくてく赤い絨毯の上を歩きだす。
 王様の左右にはそれぞれ人が立っていた。
 左はローブを被ったオッサンだと思うが、右は女性っぽい。
 遠くてよく見えないが、美人特有のオーラを感じる。
 きっと美人に違いない。
 俺の歩く足は自然と速くなった。
 しかし、突然ルーナに服の裾を掴まれてしまう。
 そのまま裾を下に引っ張られた。
 ここで座れと言うことだろうか。
 とりあえず、その場に体育座りをしてみる。
 すると、ルーナにお尻を叩かれた。
 なんだよ、と思って振り返ると、2、3歩離れた所で、ルーナとセレナが片膝を立てて腰を下ろしていた。
 ルーナが膝をぱんぱん叩いている。
 同じようにしろということらしいので、俺も同じような座り方をしてみた。

「よく来たな、コウ。ヴァールテンの街はいかがかな?」

 王様っぽい人にそんな事を聞かれた。
 ちらりと、王様を見てみる。
 40~50歳くらいだろうか、黒髪を撫で付け、見事な顎髭を蓄えている。
 その肌は意外にも日に焼けていて、精悍な顔つきとよく合っていた。
 体格はかなりよく戦士と言っても通じそうなくらいだが、その全身から漂う威厳は凄まじく、この人が戦士ではなく王なのだと納得させられる。

 というか、ヴァールテン?
 なにそれ。

「王都の名前だ」

 後ろでルーナが小声で教えてくれた。
 王都はヴァールテンというらしい。
 初めて知った。

「はあ、まあ、それなりに発展しててイイ感じ……痛っ」

 とりあえず答えようとしていたら、思い切りルーナに尻を抓られた。

「見事な繁栄。行き交う人々の表情も明るく、陛下の治世が現れているようでした。さすが名君と名高き陛下のご威光に、ただただ敬服するばかりでございます。と、主人は思っております」

 突然、ルーナがそれっぽい事を言い出した。
 褒めているのはわかるけど、何を言っているのかはよくわからない。

「ふははは! 見事な口上よ。良い奥方を持ったな。コウ」

 なんか知らんが、王様にウケている。
 とりあえず、俺も愛想笑いをしてみたら、またルーナに抓られた。
 笑ってもいけないらしい。
 というか、なんかこの部屋に来てからルーナが酷い。
 これが噂の家庭内暴力という奴だろうか。
 このままルーナがドメ子になったらどうしよう。

「ふふ、そなたが平民なのは判っておる。奥方もそう堅苦しくすることはない。礼儀作法などは、これから覚えてゆけばよいのだ」

 王様は俺に笑いかけてくれた。
 なんかいい人そうだ。
 それでいて、出来る人オーラもビシビシ感じるし。
 かつて勤めていた会社の社長とは器が全然違う。
 具体的にはペットボトルの蓋と黒部ダムくらい違う。
 クソ社長と同じようなもんだろうとか思った事を、心の中で詫びておいた。

「さて、コウよ。先日の魔族侵攻戦での働き、誠に見事であった。余は此度の働きに対して、そなたを騎士に列しようと考えておる。そなたは魔法使いらしいが、魔道士爵などとは違う。れっきとした騎士爵だ。受けてくれるな?」

 その言葉に、背後でルーナが身を固くするのがわかる。
 というか、騎士か。
 受けるも何も俺は既に暗黒騎士なんですけど(ドヤア)。
 とはいえ、爵位の面倒臭さは、ルーナとセレナに嫌というほど聞いている。
 受けるかと言われたら、NO! と答えたい。
 辞退したら死刑とかセレナに言われたが、ダメ元で断ってみようか。

 そんな事を考えていた時だった。
 後ろでセレナがすくっと立ち上がる。

「陛下。その事についてお話したい事がございます」

 うわー、セレナが敬語喋ってる。

「そなたは……ふむ」

 王様はセレナを見て、何かを考え込んでいる。
 ルーナは真っ青になりながら、セレナのドレスの裾を掴んで引っ張っていた。
 座らせようとしているのだろうか。
 セレナはそんなルーナの手をバチンと叩いた。
 手を叩かれたルーナは涙目になって、手をふーふーしている。
 痛かったのだろう。かわいそうに。

「……良かろう。そなたの話を聞こう。アダルフィン、ゼービア、その他の者もしばし退出せよ」

「御意」

「へ、陛下!?」

 王様の言葉に周囲がざわつき出す。
 王様の隣に立っていた女性なんかは慌てふためいている。
 というか、近くで見てみるとやっぱり美人だった。
 歳は20くらいだろうか。
 よく手入れされた藍色の髪を長く伸ばした女性で、すみれ色の瞳をしている。
 しかも、見事な意匠の白い鎧を着たレティーお嬢様以来の鎧女子だ。
 イエス! 鎧女子イエス!
 その上、薄幸系マイナー美人のレティーお嬢様とは違って、こちらは本格的な正統派美人だ。
 ぜひお近づきになりたい。

「ゼービア、大丈夫だ。何かあったらすぐにそなたを呼ぶ。控えの間で少し待っていてくれ」

「は、はあ」

 名前はゼービアさんというらしい。
 しっかり覚えておこう。

 ゼービアさんはこちらをちらちら厳しい目で見ながら、渋々部屋から出ていった。
 あのキツそうな顔もたまらない。


 部屋には俺、ルーナ、セレナと王様がだけが残る。
 ゼービアさんに夢中でよく把握していなかったが、何この状況?

 王様は、大げさな背もたれの椅子から立ち上がると、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
 そして、俺たちの目の前で立ち止まると、ゆっくりと頭を下げた。

「ダーグリュン女伯爵殿ですな。この度は王都までご足労頂き、恐悦至極に存じます」

「頭を上げなさい。この国の王が私のような吸血鬼に簡単に頭を下げるものではないわ。……それにしても、よく私の正体に気づいたわね」

 王様は頭を上げながら、セレナを見て目を細めた。

「銀髪に赤い瞳、息を飲むような美しさとくれば、最古の吸血鬼である貴女を思い浮かべるものは少なくありますまい」

「そう。これでも伯爵位を貰っているのだから、貴方の臣下という事になるのだけれど。そんなに畏まる必要はないわよ? その為に人払いまでしたのでしょうけど」

「お戯れを。貴女が本気になれば、我が国を一瞬で焦土にすることも容易いでしょう。そんな相手を畏怖しないわけには参りませぬ。貴女に女伯爵を贈ったのは、ただ敬意を表しての事、貴女を従わせようなんて気は毛頭ございませぬ」

 なんか俺を無視して2人で話し合っているが、俺は思った。
 さ、さすがセレナサンだ!
 物凄く偉い人っぽかった王様がセレナサンにビビりまくっている。

 俺はセレナサンにキラキラとしたリスペクトの眼差しを向けた。
 セレナサンはそんな俺の眼差しに気づくと、ニコっと恥ずかしそうに微笑んだ。
 しかも、可愛い!

「それで、この子の事なのだけれど。この子は、なんというか、その、私が可愛がっている子なのよ。残念だけれど、貴方の騎士にするわけにはいかないわ」

 セレナサンが騎士をきっぱり断ってくれた。
 もうリスペクトどころの騒ぎではない。
 この恩はベッドの上で返そうと思う。

「……そういうことですか。ただの平民の少年にしては、信じられぬほどの尋常ならざる戦果だと思っておりましたが」

 王様がじっと見つめてくる。
 ちょっと照れてしまう。

「彼も、その、吸血鬼ですかな?」

「いえ、一応人間よ」

「一応ですか」

 王様が更に見つめてくるので、とりあえず親指を立ててドヤ顔をしてみた。
 バシッとルーナに尻を叩かれる。
 ちょっと調子に乗りすぎたらしい。

「そちらのエルフの貴女は?」

「私は旅好きの放浪者でルシアリーナと申します、陛下。今はコウの妻です」

 ルーナは相変わらず平伏しながら、そんな事を言っている。
 一応、本名を名乗っていたが、旅好きの放浪者ってどんな職業だよ。

「ふむ。貴女の立ち振舞を見ていると、にわかには放浪者だったと思えないのだが」

「この子はエリシフォン家の娘よ」

 あっさりセレナにバラされていた。

「お、おい!」

「何よ? 人払いまでしてくださった陛下に応えようっていう気はないの? それなのに胡散臭い嘘をついて。ホントにセコい娘だわ」

「うっ……ぐっ……ルシアリーナ・アルス・ルネ・エリシフォンと申します、陛下」

「なんと……エルフ王国のエリシフォン公爵のご令嬢か。すると、彼の背後にはエリシフォン公もいらっしゃるのか?」

「いえ、その、実家にはまだ内緒と言いますか……。できれば陛下も、その、エリシフォン家には秘密にしておいて頂けると助かります」

 ルーナは先程までの畏まった口調のメッキが剥がれ始め、汗をダラダラ垂らしながら、ボソボソと喋っている。
 そんなルーナの様子を見て、王様は堪えかねたように笑いだした。

「ふふふ、良かろう。貴女の正体は余の胸のうちに秘めておくことにしよう。それにしても、凄いなそなたは!」

 王様は破顔しながら、俺の肩に手を置く。
 その手は無骨で大きく、思わず気後れしてしまう。

「吸血鬼の真祖殿に、エルフ王家に次ぐ地位の大貴族のご令嬢なんてどうやって口説いたんだ?」

 王様は気さくな態度で、俺の肩をバンバン叩いている。
 ちょっと痛いんだけど。
 というか、言われて気づいたが、俺は2人を口説いた事がない。
 ただ問答無用で犯しただけである。

「いえ、その、2人とも美人ですから、なんというか、必死に頑張ったと言いますか……」

 ……頑張って腰を振ったと言いますか。
 なんというか。
 冷静に考えてみると、鬼畜の所業だ。
 ルーナとセレナが懐いてくれるのが奇跡に思えてきた。

「ふふ、そうか。確かに物凄い美人だが、普通の男なら彼女たちの肩書に気後れしてしまうものだ。見上げた度胸よ。気に入ったぞ」

 なんか褒められてしまった。
 まんざらでもない。
 ルーナについては、そんなに凄い貴族の娘だと知ったのはつい最近だったりするのだが、初めて会った時にその事を知っていても、迷わずルーナを押し倒していたと思う。
 つまり、俺は王様に褒められるべくして褒められたのだ。
 まだまだ俺も捨てたもんじゃない。

「……今の我が国にはそなたのような人材が必要なのかもしれぬな」

 笑顔だった王様は急に真顔になった。
 しかも、不穏な事を言っている。
 あれれ?
 さっきセレナが断ってくれたじゃん。
 それなのに、何いってんの王様。

 俺はそこはかとなく不安になった。
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