ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第三章 戦争編

第97話 王都デート ②

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 ルーナにつれてこられたのは、高級家具店だった。
 セレブ御用達な感じがビシビシ伝わってくる。
 ハイセンスな店内に、身なりの良い店員。
 日本にいた頃の俺が入ったら、ビビりまくった挙句に漏らしていたかもしれないというレベルだ。
 だがしかし!
 今の俺には金がある。
 泥酔している時に、綺麗なお姉さんに声をかけられて、ホイホイとついて行った店が高級感ばりばりで、メニューに値段が書いてなくて、注文する前に、こっそりトイレの窓から逃げ出した。
 あの頃の俺とは違うのである。

「なあなあ、この鏡台見てくれ! すごく可愛いだろう? さっき外を通った時にいいなと思っていたんだ」

 ルーナは窓際にディスプレイされた鏡台をうっとり眺めていた。
 これが欲しいらしい。
 女の言う可愛いは汎用性が高すぎてよく理解できないが、しっかりとした造りで丹念にニスが塗り込まれ、所々に精緻な彫りが刻まれている。
 鏡面も澄んでいるし、品質は高いのだろう。
 というか、鏡か。
 家具なら俺が作ってやると言いたい所だが、鏡は土魔法で作れそうにない。
 ルーナが欲しいなら買ってやろうと思う。

「こちらは稀代の名工コーターバルの作品でございます。こちらに目をつけるとは、お客様はお目が高い」

 店員の老人がそんな事を言っている。
 稀代の名工ということは俺のライバルだろうか。
 というか、お目が高いも何も、堂々と一番目立つ所にディスプレイしてあるじゃないか。

「……ちょっと、あんなの私ですら持ってないわよ?」

 セレナはなぜか青ざめながら、小声で話しかけてきた。
 よくわからないが、持ってないならセレナにも買ってやるか。
 というか、鏡って女には必需品なんじゃないだろうか。
 そう考えれば、ミレイとメグにも買ってやるべきだ。
 フィリスとカンナさんも必要だろう。
 王都土産にはちょうどいいかもしれない。
 皆、俺の作った家に住んでいるので、鏡はないはずだ。

「よし、じゃああの鏡台を6つ貰おうか」

 そう軽く言ってみたら、店内がザワザワしだした。

「む、6つでございますか?」

 老店員が汗をかきながら聞いてくる。
 もしかして俺の懐具合を疑っているのだろうか。

「二度も言わせるな。6つだ。大丈夫、金ならある」

 金貨がパンパンに詰まった袋を見せつける。
 王様に貰った金もついでに見せびらかしてみた。
 うちから持ってきた金貨については、ずっとルーナが持っていたのだが、俺に買ってもらう感じがたまらないとか言って、買い物中は俺が持たされていたのだ。

「はっ! 失礼いたしました。すぐに在庫を確認してまいります!」

 老店員は血相を変えて足早に立ち去る。
 なんというか。
 軽くイッてしまいそうな程気持ちいい。
 これがセレブリティの感覚なんだろうか。
 まるで王様にでもなったかのような錯覚を覚える。
 帰りに店まるごと買い占めとかやってみようか。

「……なんで6つなんだ?」

「え? ミレイとかカンナさん達のお土産にしようかと思って」

「お土産ってあなた……」

 なんかルーナとセレナが青ざめている。
 何を心配しているんだろうか。

「大丈夫、金ならある!」

 同じセリフをキメ顔で言ってみた。
 というか、このセリフ言うとすっごい気持ちいい。
 今後、事ある毎に言ってしまいそうだ。

 俺の決め台詞にルーナもセレナも顔を赤らめて押し黙る。
 久しぶりにチョロルーナを見れて安心したが、セレナも同じ反応をしているのが気になる。
 セレナもいよいよダメかもしれない。

 そこからは、店長が挨拶に出てきたり、応接間に案内されてお茶とお菓子を出されたりと、至れり尽くせりだった。
 応接間のソファーにふんぞり返りながら、キメ顔をして以来しおらしくなったルーナとセレナを両手に抱きしめた。
 金持ちってなんて楽しいんだろう。

 そんな事を考えていた時期が私にもありました。

 幸い鏡台はギリギリ6つ在庫があったらしいので、全部家まで配送してもらうことになった。
 そして、つつがなくお会計を済ませ。
 結果として、俺の手には金貨3枚だけが残った。

 あれ?

 軽く放心状態になってしまう。

 だって、あれ?

 俺すげえ金持ってたはずなのに。
 ルーナが家が買えるくらい持ってきたとか言ってたし、王様からもかなりお金を貰ったはずなのに。
 それがたった金貨3枚になるとか。
 どゆこと?

「……そ、その、鏡ってすっごく高いんだ。しかも、あれ名工の作品とか言ってたし」

 B級戦犯のルーナが気まずそうにそんな事を言っていた。
 ちなみにA級戦犯は私です。

「まったく、私の分まで買うことないのよ。どういう金銭感覚しているのかしら」

 セレナに呆れられてしまう。
 確かに、よく考えたらセレナは一言も欲しいなんて言わなかった。
 物凄く余計なことをしてしまった感がする。

「……私のことを考えてくれたのは嬉しいけど」

 セレナはボソッとそんな事を言ってたので、まあ良かったのだろうか。

 とりあえず、憔悴しながら家具店を出る。
 店員総出で見送ってくれた。
 ちょっと優越感に浸れた。

 それにしても、金を使いすぎてしまった。
 まあ、金の使いみちなんて特になかったのだ。
 山賊から金をパクってきた時も、ルーナが喜べばいいなーくらいに思っていたし。
 とはいえ、これからは節約せねばと思った。
 具体的には、もう帰ろうと思う。
 家で引きこもる。
 家賃も電気代ガス代水道代もなく、ましてやECサイトすら無いこの世界では引きこもることこそが最も金のかからない生き方だ。
 引きこもりって本当に素晴らしい。
 こんな危険に溢れた王都は一刻も早く立ち去るべきだろう。
 ルーナは迷子になるし、金は巻き上げられるし、ロクな事がない。


 そんな事を考えながら歩いていると、突然、目眩がした。
 しかも、急激な嘔吐感に襲われる。
 思わず道端にエロエローと吐いてしまった。
 一体何が!?
 毒ガスを使ったテロだろうか。
 そういえば、辺りに瘴気のようなものが漂っている。
 毒ガスだ!
 俺は咄嗟に毒ガスの発生源を目で追った。
 そして、愕然とした。

 なんということだ……。

 そこは橋だった。
 橋の手すりの部分。
 そこにおぞましい物体がびっしりと張り付いている。
 それはおびただしい数の南京錠だった。
 南京錠には、読めないけどミミズ文字が書いてある。
 これはきっと名前が書いてあるのだろう。

 俺は全身が粟立つのを感じた。
 以前、これと同じようなものをネットで見たことがある。
 あれは確かパリだっただろうか。

「うぷっ」

 思い出しただけで、吐き気が込み上げてくる。
 そんな俺をあざ笑うかのように、目の前で一組のカップルが橋に南京錠を付けていた。
 そして、イチャコラと抱き合っている。

 もう間違いない。
 これはアレだ。
 リア充どもの狂気の儀式だ。
 そういえば、恐るべきことに日本にも同じような場所が数か所あるらしい。
 まさか異世界に来てまでお目にかかろうとは。
 橋に鍵をかければ永遠の愛を誓えるとか胡散臭い事を言って、ただ鍵屋が儲かっているだけという。
 鍵屋にお布施をした上に、橋に重りをつけて耐久度を削るというなんの生産性もないトチ狂った儀式だ。
 さすが狂気の儀式だけあって、おびただしい数の南京錠からはぷーんとリア充オーラが立ち上り、俺の胃を直撃する。
 なんと残酷なテロ行為だろう。

 こんな橋は消滅させなければならない。
 俺は使命感ともに火魔法の構築を始めた。
 全て溶解させてやる!

「なあなあ、あそこにこれを一緒につけよう?」

 その時、ルーナが嬉しそうにそんな事を言ってきた。
 その手にはミミズ文字の書かれたピンク色の南京錠が握られている。

「このバカ!」

「ええ!?」

 前からバカなんじゃないだろうかと思っていたが、やっぱりバカだった。
 まんまと鍵屋の思惑にのりやがって!
 だいたい、さっき金を使いすぎたから、節約しようと思っていたのに、この世でもっとも無駄なものに金を使いやがった。
 今すぐ返してこい。

 そんな想いを、100倍口汚くして罵ってみた。
 ルーナはあっさり泣いたのだが。

「やだやだ! 絶対やだ! ここでお前と永遠の愛を誓うんだもん!」

 そんな事を言いながら、じたばたと地団駄を踏み始める。
 ホントにこいつは……。

「なあ、どうしてもダメ?」

 ルーナは目をうるうるさせながらそんな事を上目遣いで言ってくる。
 くそ、バカだけど可愛い。
 だがここで折れるわけにはいかない。
 鍵屋の思惑に乗ることだけは、絶対に避けたい。

「……ダメだ」

「もー! 一体、お前は鍵屋に何をされたんだ? ……ほら、こっそりなら揉んでいいから」

 ルーナは人目を忍びながら、そそくさと俺の手を胸元に誘導する。
 だから、俺をなんだと思って――むう、悔しいけどいい乳だ。
 よく考えたら、ルーナは俺の妻面をしているが、籍はおろか、式も挙げてなければ、指輪も渡していない。
 それなのに、健気に妻だとか言っているルーナがだんだん哀れに思えてきた。
 うう、悪い男に引っかかったものだ。
 まあ、私なんですが。
 不覚にも、鍵屋の思惑に乗るくらいいいじゃないと思ってしまった。

「……ちょっとだけだからな」

「うん! えへへ! もう、まったく素直じゃないな、お前は」

 ルーナと2人で橋に南京錠をかける。
 ちなみに南京錠には俺とルーナの名前が書いてあるそうだ。
 鍵をかけ終わると、ルーナが抱きついてきた。
 そのままキスをする。

「……大好きだぞ」

 嬉しそうに涙ぐみながら、そんな事を言うルーナは幸せそうで。
 俺はもう一度キスをした。

 鍵屋の思惑に乗ってしまったのは物凄くシャクなのだが、ルーナが幸せそうならいいかと思えた。

「あ、そういえば、まだ鍵のお金払ってないんだ。ほら、お金は全部お前に渡しちゃったから。払ってくるからお金をくれ」

「お、おう」

 なんか物凄く負けた感じがしながらも、ルーナに金を渡す。
 なんだろう。
 ちょっと最近、ルーナにいいように転がされすぎている気がする。
 前はもうちょっと俺が主導権を握っていた気がするのだが。

 鍵屋に金を払いに行くルーナの背中を見つめながら、そんな事を考えていた。

「あ、あの、わ、私も、その……」

 セレナがモジモジしながら話しかけてきた。
 その手にはミミズ文字の書かれた青い南京錠が握られている。
 南京錠は色んなカラーバリエーションがあるらしい。どうでもいいけど。
 というか、こいつマジか。
 世界最強の吸血鬼としてのプライドはないのだろうか。
 セレナは恥ずかしそうに頬を染めながら、俺をチラチラ見ている。
 死ぬほど可愛かったので、無意識のうちにルーナと同じ事を繰り返してしまった。

「……心の底から愛しているわ」

 キスをしながらそんな事を言うセレナも可愛かった。
 というか、さっきルーナと永遠の愛を誓ったばかりなのに、セレナともしてしまった。
 本当に鍵の効力なんていい加減なものである。

「……あいつ、さっき別の女ともしてたわよ? サイテー」

「僕は絶対あんな事はしないよ」

 周りのカップルがヒソヒソとそんな事を言っていた。
 鍵の効力がいい加減なだけなのに、なんで俺がディスられなきゃいけないのか。
 理不尽すぎるんだけど。

 ホントに王都ではロクなことがない。
 早く家に帰ろうと思う。
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