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第四章 竜騎士編
第111話 過酷な奴隷生活 ④
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「……子供が楽しみだな。我と貴様の子だ。きっと素晴らしい戦士になるぞ」
奴隷生活3日目の朝。
下腹部を愛おしそうに撫でたご主人様がそんな事を言った。
ちょっと言っている意味がわかりませんね。
責任を取るつもりは全く無いのだが。
というか。
「俺、そろそろ帰るぞ」
今朝はルーナがしくしく泣いている夢を見たのだ。
泣かすような事をした覚えはないのだが。
なんか胸が痛むような気もするので、そろそろ帰る。
「ええ!? な、何を言っているんだ? 自分が奴隷だってわかっているのか?」
ご主人様は思い切り動揺していた。
「はあ? 奴隷が帰っちゃいけないなんて誰が決めたんだ!?」
「え、いや、誰が決めたのかは知らないけど……」
「そうだろう? だから帰る」
「どういう理屈だ!? ちょ、ちょっと待って! 待っててば!」
問答無用で帰ろうとしたら、ご主人様がしがみついてきた。
力づくで振り切れそうだが、さすがにそこまで鬼じゃない。
ほら、俺って優しいから。
「お願い! お願いだから帰らないで! な、なんでもするから」
なんでもするとな。
一瞬考えてしまったが、ご主人様にして欲しいことは、抱いているうちにほとんどしてもらったので未練はない。
心置きなく帰れる。
「まだ帰ろうとするのか!? ま、待って! せめて、子供が出来るまではいてくれ!」
ほう。
なかなか上手い引き止め方をする。
子供を作るだけ作って、後は放置していいということだろうか。
なんと魅力的な。
ルーナに爪の垢を煎じて飲ませたい。
「詳しく話を聞こうか」
「く、詳しく? ええと、我ら風の民は女しかいないんだ。だから、子供を作る為には、戦場で男を捕まえてくるしかなくて」
んん?
なんか物凄く聞き捨てならない事を言っている。
いや、でもさすがに聞き間違いかもしれない。
「もう一度言ってくれるか?」
「え? だから、戦場で男を捕まえてくるしか」
「いや、その前」
「うん? 我らが女しかいないって所か?」
MAJIDE?
え、まじで?
何その素敵種族。
「つまり、この辺にはダークエルフの女しかいないってことか?」
「だーくえるふってなんだかわからないが、我ら風の民は女だけの種族だ。生まれてくる子供も皆女だ」
なんということだ。
思わず言葉を失ってしまった。
こんな場所に吸血鬼に匹敵する素敵種族が存在したとは。
たしかにダークエルフ男とかエルフ男ってなんの為に存在しているのか意味がわからなかった。
イケメン揃いとか、誰得だよ。
「ちなみに、地の民は男だけの部族だ。生まれてくるのも男だけと――」
「あ、そういうのいいです。聞きたくないんで」
「そ、そうか? とにかくお願いだ。帰らないでくれ。我はお前のような強い男の子供が欲しいんだ」
美女にそんな事を言われてしまっては、ちょっとグラっと来てしまう。
いや、子供を作るのは大歓迎なのだが。
「我が部族の戦士は古より、飛竜を駆って戦場に出てきた。そして、強い男を屈服させ奴隷とし、繁栄してきたんだ」
つくづく素敵種族。
ただ気になることがある。
「ご主人様って、最初ピートを連れて行こうとしてなかったか?」
牢屋で最初にピートを連れて行こうとしたのが気になった。
ご主人様はさっと顔を背ける。
「い、いや、あの時は、あっちのほうが好みだったというか、その……」
ご主人様は気まずそうに頬をかく。
「帰るわ」
帰るついでにピートを殴って帰ろう。
当然だが置いていく。
「うわあ、待ってくれ! 今は貴様一筋だ。あの時の我は目が曇っていたんだ!」
無理やり帰ろうとしたが、ずるずるとご主人様がしがみついてきて離れない。
「お願いだ。置いて行かないでくれ。本当に、あの時は我が馬鹿だった。反省しているから!」
うーん。
だんだんご主人様が可哀想になってきた。
どうしよう。
とりあえず、観光でもするか。
ふとそんな事を思った。
引きこもりの俺は、観光なんてするヤツは頭がどうかしていると思っていたのだが、女ダークエルフだけの村となれば別だ。
世界中のどんなテーマパークより夢があると思うのだ。
「この辺案内してくれるか? そうすれば、もうちょっといてやってもいい」
「あ、ああ! いいぞ、いくらでも案内してやる。……ただ、その、外に出るとなると、貴様は一応我の奴隷だから、その……」
ご主人様は言いづらそうにしながら、じゃらりと手枷と首輪を取り出す。
なるほど。
外に出るならアレをつけろということか。
「別にいいけど。ほら」
そう言いながら、ご主人様に両手を差し出した。
乳が揉めないのが難点だが、それ意外は別に嫌じゃない。
「うう、悪いな。本当にすまない。痛かったら言うんだぞ?」
ご主人様は何度も謝りながら俺に首輪をつけていく。
俺はご主人様の犬なので、別にいいのだが。
「我だって貴様にこんな事をしたいわけじゃないんだ。き、嫌いにならないでくれ。一族の掟で仕方ないんだ。そ、そうだ、帰ったら我に首輪をつけて家の中を引きずり回してくれ。そうすればお相子だろう? な?」
なんかだんだん変な事を言い出した。
そういえば、昨日乳を強く握ったらはあはあ言ってたな。
そっちの気があるのだろうか。
抱いている時も、強引にした方が感じていたし。
俺もドMなので困るんですけど。
ご主人様の家から出ると、冷たい風が吹き抜けた。
結構、外は寒い。
一応、ご主人様に暖かそうな服を着せてもらったのだが。
この辺は、俺が住んでいるセラン荒野より南部にあるらしいのだが大分寒く感じる。
なぜだろうと思いながら、視線を彷徨わせてみて納得した。
広大な平野部を俯瞰で見渡せる。
遠くの山々や平野を流れる川など、目の前には大パノラマが広がっていた。
なるほど、今俺が立っている場所は、大分高い土地らしい。
後ろを振り返ってみると、峻厳な山が見えた。
あの山の中腹と言った所だろうか。
「なかなかいい眺めだろう?」
ご主人様がそう聞いてきたので頷いておく。
以前、牢屋から連れ出された際に通った場所だったが、あの時は暗かったので気づかなかった。
まあ、景色なんてどうでもいいんですが。
俺はダークエルフだらけの村を見物に来たのだ。
そう思いながら、家が並んで建っている方向に向かって歩きだす。
俺の首輪から伸びた鎖を持ったご主人様が慌ててついてきた。
そこは、景色なんか目じゃないほどの絶景が広がっていた。
見目麗しきダークエルフ達がその辺を普通に闊歩している。
大小の違いはあれ、ダークエルフ達は皆美人だった。
どうしよう、全員抱ける。
ここは天国だろうか。
納税するならこんな自治体に収めたい。
もういっそここに住もうかと思ったくらいだ。
ルーナが泣くのでちゃんと帰るが。
ちなみに、ご主人様が言うには、ここにいる褐色美女達は、尖った耳をしているが、ダークエルフという種族ではなくあくまでも風の民であって、エルフとはなんの関係もないらしい。
エルフと違って長寿じゃないそうだ。
とはいえ、見た目はそのまんまダークエルフなので、ご主人様がなんと言おうと俺はダークエルフと呼び続ける。
「あら、リュディアじゃない。おはよう」
そんな時、一人のダークエルフが話しかけてきた。
さらさらロングストレートのご主人様と違って、ふわっとしたミディアムヘアのダークエルフだった。
言うまでもなく美人だったので、全然抱ける。
「ああ、ダナンか。おはよう」
ご主人様はキリッとした表情で、そんな挨拶を返した。
というか、さっきご主人様はリュディアとか呼ばれていたが、それがご主人様の名前なんだろうか。
初めて知った。
「あなたも犬のお散歩?」
「う、うむ。まあな」
ダナンさんと言うらしいダークエルフは、じゃらりと手に持った鎖を引っ張る。
鎖の先にはげっそりした人間の男が繋がれていた。
男の目からは生気が全く感じられない。
あんな美人の犬になれたと言うのになぜそんな顔をするんだろうか。
俺だったら嬉々として尻尾を振りまくるのに。
そんな事を考えていたら、ダナンさんが俺を値踏みするように見てきた。
ちょっとドキドキしてしまう。
「ふーん。この犬、戦場で大暴れしてた犬でしょう? メラニーとミラが飛竜を落とされたって嘆いていたわ。これほどの犬の飼い主になるなんて、さすがリュディアね。一族最強の竜使いなだけはあるわ」
ダナンさんがそう言うと、ご主人様は困ったように笑っていた。
ふむ。
一族最強の竜使いか。
そう言えば、ご主人様だけ赤い飛竜に乗っていた。
あいつ強かったな。
火魔法効かなかったし、火吹くし。
俺の遠隔攻撃は火魔法しかないので、空飛んでるあいつには手も足も出なかった。
いざという時の為に、他の遠隔攻撃も考えていたほうが良いかもしれない。
ご主人様の飛竜とリターンマッチするかもしれないし。
「お、おい。黙りこくってどうしたんだ? お、怒ったのか? 違うんだ、ダナンはああ言っていたが、我は貴様を犬だなんて思ってないぞ」
いつの間にかダナンさんはいなくなっていて、ご主人様はおどおどしながらそんな言い訳を始めた。
別に犬と思われてもいいのだが。
果たしてこのご主人様とリターンマッチする日なんて来るのだろうかと思った。
ダークエルフの村の散策を続けていると、広場のような場所に出た。
そこには何人ものダークエルフが飾り付けをしていた。
祭りでもあるのだろうか。
「ああ、あれは龍神様の花嫁を送り出す儀式の準備をしているんだ」
「龍神様の花嫁?」
「うん。3年に一度、我ら風の民の中で最も強く美しい者が、龍神様の花嫁に選ばれるんだ。龍神様の花嫁になることは、物凄く名誉な事なんだぞ」
土着の宗教みたいなものだろうか。
というか、龍神様って誰だ。
「御山の頂上に古くから住む偉大なドラゴンだそうだ。我もお目にかかったことはないのだが」
「そのドラゴンの嫁になるのか? 嫁になった後はどうなるんだ?」
「うーん、花嫁になった者で帰って来た者はいないから、よくわからないが、きっと御山で幸せに暮らしていると思うぞ」
ご主人様はそう言ってニコっと微笑む。
うーん。
絶対にそのドラゴンに食われてるような気がするが。
最も美人なダークエルフが、ドラゴンに食われるとかもったいなすぎる。
これだから宗教は!
どうせ食われるなら、俺に食われればいいのに。
食うの意味が違うが。
というか、最も強く美しい者とか言っていたがご主人様は大丈夫だろうか。
さっき最強の竜使いとか言われていたので気になった。
「我か? 我はないさ。強さなら誰にも負けるつもりはないが、美しさは、ちょっと自信がない。3年前に選ばれた者は、それは美しかったぞ。我のほうが強かったけど」
そう言いながら、ご主人様はしょぼんとしてしまう。
「ご主人様だって十分綺麗だと思うけどな」
全然抱けるし。
むしろ抱いたし。
思わず漏れてしまった俺の本音に、ご主人様は顔を真赤にして照れていた。
「……ありがとう。貴様がそう言ってくれるなら、我はそれだけで十分だ」
ご主人様は大輪の花のような笑顔を浮かべる。
うーん。
どう見ても美人なんだが、大丈夫だろうか。
ダークエルフ村はあらかた見尽くしたので、一旦家に戻ることにした。
そういえば、ピートの事をすっかり忘れていた。
ずっと地下牢に閉じ込められたままだったが、大丈夫だろうか。
ご主人様が食事は運んでいるようだが。
「あいつも我の家に連れてきて、手枷を外してやろうか? か、勘違いするなよ? 我は貴様だけのものだ。もう他の男には目もくれない。ただ、貴様はあいつを大切にしてたみたいだから、その、悪くてな」
ご主人様がそんな提案をしてくれた。
ご主人様が俺のものなのは当然であって、ピートなんかにNTRされるとも思えないが、今のセリフでご主人様が最初ピートを気に入っていたとかほざいていたのを思い出してしまった。
この際、ピートにはしばらく地下牢にいてもらおうと思う。
そんなわけで、ご主人様と2人だけで家に戻ってきた。
たまには観光もいいものだ。
この村には一見の価値があったが、ちょっと危険だとも思う。
なんというか美女がいすぎてムラムラしてくるのだ。
「い、今すぐ首輪と手枷を外すから。本当に悪かったな。そ、その、かわりにどんなお仕置きでも我慢するから。思う存分、我をいじめてくれ」
家に入るなり、ご主人様は俺の嗜虐心を刺激しまくる。
ちょっとクラっときたので、そのまま夜更けまでご主人様をいじめてやった。
ご主人様は物凄く喜んでくれた。
ずっとドMだと思っていたのだが、ソフトなら攻めもいけるらしい。
思わず自分の新しい一面を発見してしまった。
これからも、ご主人様を満足させられるように頑張りたい。
そんな前向きな事を思いながら、ある事に気付いた。
あれ、今日も帰れなかった。
いつの間にか夜になっているし。
どうしてこうなった。
奴隷生活3日目の朝。
下腹部を愛おしそうに撫でたご主人様がそんな事を言った。
ちょっと言っている意味がわかりませんね。
責任を取るつもりは全く無いのだが。
というか。
「俺、そろそろ帰るぞ」
今朝はルーナがしくしく泣いている夢を見たのだ。
泣かすような事をした覚えはないのだが。
なんか胸が痛むような気もするので、そろそろ帰る。
「ええ!? な、何を言っているんだ? 自分が奴隷だってわかっているのか?」
ご主人様は思い切り動揺していた。
「はあ? 奴隷が帰っちゃいけないなんて誰が決めたんだ!?」
「え、いや、誰が決めたのかは知らないけど……」
「そうだろう? だから帰る」
「どういう理屈だ!? ちょ、ちょっと待って! 待っててば!」
問答無用で帰ろうとしたら、ご主人様がしがみついてきた。
力づくで振り切れそうだが、さすがにそこまで鬼じゃない。
ほら、俺って優しいから。
「お願い! お願いだから帰らないで! な、なんでもするから」
なんでもするとな。
一瞬考えてしまったが、ご主人様にして欲しいことは、抱いているうちにほとんどしてもらったので未練はない。
心置きなく帰れる。
「まだ帰ろうとするのか!? ま、待って! せめて、子供が出来るまではいてくれ!」
ほう。
なかなか上手い引き止め方をする。
子供を作るだけ作って、後は放置していいということだろうか。
なんと魅力的な。
ルーナに爪の垢を煎じて飲ませたい。
「詳しく話を聞こうか」
「く、詳しく? ええと、我ら風の民は女しかいないんだ。だから、子供を作る為には、戦場で男を捕まえてくるしかなくて」
んん?
なんか物凄く聞き捨てならない事を言っている。
いや、でもさすがに聞き間違いかもしれない。
「もう一度言ってくれるか?」
「え? だから、戦場で男を捕まえてくるしか」
「いや、その前」
「うん? 我らが女しかいないって所か?」
MAJIDE?
え、まじで?
何その素敵種族。
「つまり、この辺にはダークエルフの女しかいないってことか?」
「だーくえるふってなんだかわからないが、我ら風の民は女だけの種族だ。生まれてくる子供も皆女だ」
なんということだ。
思わず言葉を失ってしまった。
こんな場所に吸血鬼に匹敵する素敵種族が存在したとは。
たしかにダークエルフ男とかエルフ男ってなんの為に存在しているのか意味がわからなかった。
イケメン揃いとか、誰得だよ。
「ちなみに、地の民は男だけの部族だ。生まれてくるのも男だけと――」
「あ、そういうのいいです。聞きたくないんで」
「そ、そうか? とにかくお願いだ。帰らないでくれ。我はお前のような強い男の子供が欲しいんだ」
美女にそんな事を言われてしまっては、ちょっとグラっと来てしまう。
いや、子供を作るのは大歓迎なのだが。
「我が部族の戦士は古より、飛竜を駆って戦場に出てきた。そして、強い男を屈服させ奴隷とし、繁栄してきたんだ」
つくづく素敵種族。
ただ気になることがある。
「ご主人様って、最初ピートを連れて行こうとしてなかったか?」
牢屋で最初にピートを連れて行こうとしたのが気になった。
ご主人様はさっと顔を背ける。
「い、いや、あの時は、あっちのほうが好みだったというか、その……」
ご主人様は気まずそうに頬をかく。
「帰るわ」
帰るついでにピートを殴って帰ろう。
当然だが置いていく。
「うわあ、待ってくれ! 今は貴様一筋だ。あの時の我は目が曇っていたんだ!」
無理やり帰ろうとしたが、ずるずるとご主人様がしがみついてきて離れない。
「お願いだ。置いて行かないでくれ。本当に、あの時は我が馬鹿だった。反省しているから!」
うーん。
だんだんご主人様が可哀想になってきた。
どうしよう。
とりあえず、観光でもするか。
ふとそんな事を思った。
引きこもりの俺は、観光なんてするヤツは頭がどうかしていると思っていたのだが、女ダークエルフだけの村となれば別だ。
世界中のどんなテーマパークより夢があると思うのだ。
「この辺案内してくれるか? そうすれば、もうちょっといてやってもいい」
「あ、ああ! いいぞ、いくらでも案内してやる。……ただ、その、外に出るとなると、貴様は一応我の奴隷だから、その……」
ご主人様は言いづらそうにしながら、じゃらりと手枷と首輪を取り出す。
なるほど。
外に出るならアレをつけろということか。
「別にいいけど。ほら」
そう言いながら、ご主人様に両手を差し出した。
乳が揉めないのが難点だが、それ意外は別に嫌じゃない。
「うう、悪いな。本当にすまない。痛かったら言うんだぞ?」
ご主人様は何度も謝りながら俺に首輪をつけていく。
俺はご主人様の犬なので、別にいいのだが。
「我だって貴様にこんな事をしたいわけじゃないんだ。き、嫌いにならないでくれ。一族の掟で仕方ないんだ。そ、そうだ、帰ったら我に首輪をつけて家の中を引きずり回してくれ。そうすればお相子だろう? な?」
なんかだんだん変な事を言い出した。
そういえば、昨日乳を強く握ったらはあはあ言ってたな。
そっちの気があるのだろうか。
抱いている時も、強引にした方が感じていたし。
俺もドMなので困るんですけど。
ご主人様の家から出ると、冷たい風が吹き抜けた。
結構、外は寒い。
一応、ご主人様に暖かそうな服を着せてもらったのだが。
この辺は、俺が住んでいるセラン荒野より南部にあるらしいのだが大分寒く感じる。
なぜだろうと思いながら、視線を彷徨わせてみて納得した。
広大な平野部を俯瞰で見渡せる。
遠くの山々や平野を流れる川など、目の前には大パノラマが広がっていた。
なるほど、今俺が立っている場所は、大分高い土地らしい。
後ろを振り返ってみると、峻厳な山が見えた。
あの山の中腹と言った所だろうか。
「なかなかいい眺めだろう?」
ご主人様がそう聞いてきたので頷いておく。
以前、牢屋から連れ出された際に通った場所だったが、あの時は暗かったので気づかなかった。
まあ、景色なんてどうでもいいんですが。
俺はダークエルフだらけの村を見物に来たのだ。
そう思いながら、家が並んで建っている方向に向かって歩きだす。
俺の首輪から伸びた鎖を持ったご主人様が慌ててついてきた。
そこは、景色なんか目じゃないほどの絶景が広がっていた。
見目麗しきダークエルフ達がその辺を普通に闊歩している。
大小の違いはあれ、ダークエルフ達は皆美人だった。
どうしよう、全員抱ける。
ここは天国だろうか。
納税するならこんな自治体に収めたい。
もういっそここに住もうかと思ったくらいだ。
ルーナが泣くのでちゃんと帰るが。
ちなみに、ご主人様が言うには、ここにいる褐色美女達は、尖った耳をしているが、ダークエルフという種族ではなくあくまでも風の民であって、エルフとはなんの関係もないらしい。
エルフと違って長寿じゃないそうだ。
とはいえ、見た目はそのまんまダークエルフなので、ご主人様がなんと言おうと俺はダークエルフと呼び続ける。
「あら、リュディアじゃない。おはよう」
そんな時、一人のダークエルフが話しかけてきた。
さらさらロングストレートのご主人様と違って、ふわっとしたミディアムヘアのダークエルフだった。
言うまでもなく美人だったので、全然抱ける。
「ああ、ダナンか。おはよう」
ご主人様はキリッとした表情で、そんな挨拶を返した。
というか、さっきご主人様はリュディアとか呼ばれていたが、それがご主人様の名前なんだろうか。
初めて知った。
「あなたも犬のお散歩?」
「う、うむ。まあな」
ダナンさんと言うらしいダークエルフは、じゃらりと手に持った鎖を引っ張る。
鎖の先にはげっそりした人間の男が繋がれていた。
男の目からは生気が全く感じられない。
あんな美人の犬になれたと言うのになぜそんな顔をするんだろうか。
俺だったら嬉々として尻尾を振りまくるのに。
そんな事を考えていたら、ダナンさんが俺を値踏みするように見てきた。
ちょっとドキドキしてしまう。
「ふーん。この犬、戦場で大暴れしてた犬でしょう? メラニーとミラが飛竜を落とされたって嘆いていたわ。これほどの犬の飼い主になるなんて、さすがリュディアね。一族最強の竜使いなだけはあるわ」
ダナンさんがそう言うと、ご主人様は困ったように笑っていた。
ふむ。
一族最強の竜使いか。
そう言えば、ご主人様だけ赤い飛竜に乗っていた。
あいつ強かったな。
火魔法効かなかったし、火吹くし。
俺の遠隔攻撃は火魔法しかないので、空飛んでるあいつには手も足も出なかった。
いざという時の為に、他の遠隔攻撃も考えていたほうが良いかもしれない。
ご主人様の飛竜とリターンマッチするかもしれないし。
「お、おい。黙りこくってどうしたんだ? お、怒ったのか? 違うんだ、ダナンはああ言っていたが、我は貴様を犬だなんて思ってないぞ」
いつの間にかダナンさんはいなくなっていて、ご主人様はおどおどしながらそんな言い訳を始めた。
別に犬と思われてもいいのだが。
果たしてこのご主人様とリターンマッチする日なんて来るのだろうかと思った。
ダークエルフの村の散策を続けていると、広場のような場所に出た。
そこには何人ものダークエルフが飾り付けをしていた。
祭りでもあるのだろうか。
「ああ、あれは龍神様の花嫁を送り出す儀式の準備をしているんだ」
「龍神様の花嫁?」
「うん。3年に一度、我ら風の民の中で最も強く美しい者が、龍神様の花嫁に選ばれるんだ。龍神様の花嫁になることは、物凄く名誉な事なんだぞ」
土着の宗教みたいなものだろうか。
というか、龍神様って誰だ。
「御山の頂上に古くから住む偉大なドラゴンだそうだ。我もお目にかかったことはないのだが」
「そのドラゴンの嫁になるのか? 嫁になった後はどうなるんだ?」
「うーん、花嫁になった者で帰って来た者はいないから、よくわからないが、きっと御山で幸せに暮らしていると思うぞ」
ご主人様はそう言ってニコっと微笑む。
うーん。
絶対にそのドラゴンに食われてるような気がするが。
最も美人なダークエルフが、ドラゴンに食われるとかもったいなすぎる。
これだから宗教は!
どうせ食われるなら、俺に食われればいいのに。
食うの意味が違うが。
というか、最も強く美しい者とか言っていたがご主人様は大丈夫だろうか。
さっき最強の竜使いとか言われていたので気になった。
「我か? 我はないさ。強さなら誰にも負けるつもりはないが、美しさは、ちょっと自信がない。3年前に選ばれた者は、それは美しかったぞ。我のほうが強かったけど」
そう言いながら、ご主人様はしょぼんとしてしまう。
「ご主人様だって十分綺麗だと思うけどな」
全然抱けるし。
むしろ抱いたし。
思わず漏れてしまった俺の本音に、ご主人様は顔を真赤にして照れていた。
「……ありがとう。貴様がそう言ってくれるなら、我はそれだけで十分だ」
ご主人様は大輪の花のような笑顔を浮かべる。
うーん。
どう見ても美人なんだが、大丈夫だろうか。
ダークエルフ村はあらかた見尽くしたので、一旦家に戻ることにした。
そういえば、ピートの事をすっかり忘れていた。
ずっと地下牢に閉じ込められたままだったが、大丈夫だろうか。
ご主人様が食事は運んでいるようだが。
「あいつも我の家に連れてきて、手枷を外してやろうか? か、勘違いするなよ? 我は貴様だけのものだ。もう他の男には目もくれない。ただ、貴様はあいつを大切にしてたみたいだから、その、悪くてな」
ご主人様がそんな提案をしてくれた。
ご主人様が俺のものなのは当然であって、ピートなんかにNTRされるとも思えないが、今のセリフでご主人様が最初ピートを気に入っていたとかほざいていたのを思い出してしまった。
この際、ピートにはしばらく地下牢にいてもらおうと思う。
そんなわけで、ご主人様と2人だけで家に戻ってきた。
たまには観光もいいものだ。
この村には一見の価値があったが、ちょっと危険だとも思う。
なんというか美女がいすぎてムラムラしてくるのだ。
「い、今すぐ首輪と手枷を外すから。本当に悪かったな。そ、その、かわりにどんなお仕置きでも我慢するから。思う存分、我をいじめてくれ」
家に入るなり、ご主人様は俺の嗜虐心を刺激しまくる。
ちょっとクラっときたので、そのまま夜更けまでご主人様をいじめてやった。
ご主人様は物凄く喜んでくれた。
ずっとドMだと思っていたのだが、ソフトなら攻めもいけるらしい。
思わず自分の新しい一面を発見してしまった。
これからも、ご主人様を満足させられるように頑張りたい。
そんな前向きな事を思いながら、ある事に気付いた。
あれ、今日も帰れなかった。
いつの間にか夜になっているし。
どうしてこうなった。
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23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
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ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
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*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
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