Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八

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元Sランクの俺、リルネスタの才能に歓喜する

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 心優しいグランニールの人々から北門の場所を教えてもらい、アルケスという名の鉱物を手に入れるべく竜の山へと目指すレンとリルネスタは、早速危険なモンスターに襲われていた。

 出てくるモンスターはどれもBランクを超えており、グランニールを囲う天然の壁がいかに力を発揮しているかをレンは身をもって味わっていた。

 北門を出て少しばかり険しい坂道を下り、南門の前にあったような橋を通ってから蛇が這ったような道を抜けると、そこはまるで別世界のようで、周囲には草花が生えていなかった。

 その代わりに尖った岩や明らかに天然ではないような大穴が空いた岩など、この土地に生息しているモンスターがいかに危険かが一瞬で理解出来た。

「リルネスタッ! 援護!」

「うんっ! 水よ、牢獄となりて敵を閉じ込めろ。アクアプリズン!」

 レン達は今Bランクに指定されている《グラウプマッシュ》という、生物にとって害悪な毒ガスを放出するきのこ型のモンスターと戦っていた。

 攻撃力も防御力も低いのでレンなら一撃で葬り去ることができるのだが、グラウプマッシュは特殊で、きのこの傘の部分だけでなく体全体に毒の胞子があり、空気に触れることで毒ガスとなって霧状に拡散してしまうのだ。

 その空気を一瞬でも吸ってしまうと呼吸困難に陥り、10秒以上吸うと命が危なくなるほどの危険な毒素を含んでいるのである。

 なので攻撃面、耐久面ではDランク並なのだが、少しでも傷つけると毒ガスを放出するという厄介な性質をしているので、Bランクに指定されているのだ。

 しかしそんな危険なグラウプマッシュだが、あることをすると安全に倒すことが出来るのである。

「ふっ!」

 リルネスタが生成した《アクアプリズン》と呼ばれる対象の身動き封じる水魔法に閉じ込められたグラウプマッシュは、呆気なくレンに一刀両断されてしまう。

 そして水の中に閉じ込められているため毒の胞子は空気に触れることなく、水の中に溶けて霧散しなくなる。

 単純だが、これがグラウプマッシュを倒す方法として一番有名な方法であった。

「レン、この水どうするの?」

「その水はそこら辺に捨てても大丈夫だぞ。別に生態系が崩れるほど強い毒ってわけじゃないからな。あ、でも一応遠くに捨ててくれ。これはあくまで念のためだ」

「そうだね。なにかあって毒ガスが出ちゃったら危険だもんね」

 物分かりのいいリルネスタはレンが指差した方向に向かって大きな水の球を起用に操って放り込む。

 こんな場所でももしかしたら人がいるかもしれないという事を考慮し、レンは絶対に人がいないであろう場所を指示したが、実際に見たわけではないので本当に安全かは不明だ。

 しかしわざわざそんなことを考えていられるほど、今回の冒険は優しくはない。

 なのでレンは若干グラウプマッシュの毒素を含んだ水の球を飛ばした方向を気にするが、すぐにそんな思考は綺麗さっぱり消えてなくなる。

 それは、また新たなモンスターが別方向から襲ってきたからだ。

『ビキャァアァァア!!』

「くっ、危ねぇっ!」

「えっ? キャッ!?」

 突然どこからか耳を劈く絶叫が聞こえてきたので、レンはその声の主を見つけるべく周囲を見渡す。

 だが見つける前に自分の足元が暗くなったことで真上から襲ってきたことを察したのか、状況を飲み込めずに耳を押さえているリルネスタを抱き抱えてその場から飛び退く。

 その瞬間、まるで空から隕石が降ってきたのかと錯覚するほどの大きな物体が落下し、地面に大きなヒビを入れて垂直にそのモンスターは突き刺さっていた。

 レンはそのときに生じた風圧で軽く吹き飛ばされるが、リルネスタが怪我しないように宙で体勢を変え、地面に対して自分の背中を預けて下敷きになる。

「──ぐっ……!」

 じんわりとした痛みが背中全体に広がり、背中がゆっくりと熱くなっていくのを感じつつも、レンはリルネスタを優しく地面に寝かせて飛び上がるように立ち上がる。

 そして聖剣を引き抜く頃にはレンの顔を鷲掴み出来るほど大きな鉤爪が迫ってきており、体を反らせながらなんとか攻撃を聖剣の側面で受け止めていた。

「リルネスタッ! 大丈夫か!?」

「う、うん! レンのおかげでどこも痛くないけど……レンは大丈夫じゃないよね!?」

「これくらい全然平気だ! とりあえず、こいつは危険だ。パワーライズを頼む!」

「わ、分かった! 彼に力の祝福を、パワーライズ!」

 攻撃力強化魔法の《パワーライズ》を付与してもらったレンは、目の前の巨大な鳥型のモンスターの攻撃を押し返していく。

 そんなレンに押されたモンスターは分が悪いと思ったのか、力強く聖剣を蹴ってその場から離脱し、再び上空へ飛び去ってしまった。

「レン、あのモンスターは……?」

「あいつはAランク指定のメテオバードだ。その名の通り、まるで隕石のように天高くから降下して獲物を狩るモンスターだ──っ! 次、来るぞ!」

 レンが声を上げると、すぐさまレンの脳天目掛けてメテオバードが鋭いクチバシを向けて光のような速さで降下してくる。

 それを聖剣で受けてしまうと、例え強度が自慢なホーリーメアキャンサーの聖剣でも折れかねない。

 しかし下手に受け流してしまっても、力に耐えきれずやはり根元から折れてしまう。

 だがレンはメテオバードの鋭いクチバシを僅かに傾けた聖剣の腹で受け、滑らせるように聖剣を体ごと引き抜いて退避する。

「そこっ!」

『ビキャァアァァアッ!?』

 そして斜めに刺さったメテオバードの背中を切り付けるレンであったが、傷が浅いのかそのままメテオバードは回転しながら空に向かって飛び立ってしまう。

 だがそれでも異様に高度が低いのは、少なからずレンの斬撃が効果を表している証拠であろう。

 しかし、パワーライズで攻撃力を底上げしたレンの一撃を耐えてまだ平気そうな表情で空を舞う辺り、さすがAランク指定と認めざるを得ないだろう。

「まさか、本当にここまで強いモンスターが次から次へと現れるとはな……!」

 地上から5メートルほど離れたほどの高さで様子を見るメテオバードに向かってレンは臆することなく突撃していく。

 だが5メートルという高さは、どれだけ身体能力が高い人間でも届く距離ではないことを知っているのか、メテオバードはその場で動くことなくレンを見下ろす。

「その油断が……命取りなんだよっ!」

 強く踏み込んで跳躍したレンは聖剣の柄を持ち替え、槍を投げる時に構える姿勢になり、メテオバードの眉間に聖剣の先を合わせて投擲する。

 まさか聖剣を投げるとは思いもしなかったのか、メテオバードはかなり遅めに飛び退こうと翼を大きく羽ばたかせるが、顔に軽い痛みが走ったと思えば目の前が暗くなり、体が動かなくなって気付いた頃にはなにも感じなくなっていた。

 ズシンと重々しくメテオバードの肉塊が落下し、隕石のように降下してきたときとはまた別の風圧が巻き起こるが、その風圧はあまりにも弱々しく、舞い上がる砂煙も膝より上には舞い上がらなくなっていた。

「お、終わったの……?」

「さすがにAランクでも、頭が吹き飛べば死ぬだろう」

「え、このモンスターAランクだったの!?」

「それを言うなら、さっきのキノコもBランクだぞ。とりあえず、ここで現れるモンスターはほぼBランク以上って思っておいた方がいいぞ」

「Bランク以上……う、うん。怖いけど、頑張るっ!」

 ここで恐怖に支配されず、頑張ろうと思えるのは冒険者として一人前と呼んでもいいくらいの成長である。

 最初はルドの村で現れるバットダイバーを倒すのは可哀想と涙を流したのに、あれから数ヶ月ちょっとで心身ともにたくましくなっている。

 それも冒険者の世界の厳しさを知ったからだと思うが、それ以前にリルネスタが自分は冒険者で常に命の危険に身を晒していると自覚したからこそだろう。

「私、どうすればもっと活躍できるかな? 私だってレンみたいにモンスターをカッコよく倒したいよ」

「んー……今でも十分過ぎるくらい活躍してると思うが……強いて言うなら、無詠唱を覚えれば更なる高みへ目指せるぞ」

「無詠唱って、ライトを詠唱するときにいう『光よ、闇夜を照らせ』の部分を言わずに直接『ライト』っていうやつだよね? できるかな~……」

「最初は誰もできない。だが無詠唱という言葉が存在するってことは過去にできた奴がいるってことだろ? なら、魔法に長けているリルネスタならいけると思うぞ。それに、大賢者だからな」

「大賢者……そうだね、私は大賢者。よーし、頑張って無詠唱を習得して、もっともーっと活躍してみせるぞー!」

 当面の目標ができるというのは、成功したとしても失敗したとしても自分が成長するための糧になるので、とてもいい事なのだ。

 無詠唱というものは練習すればすぐにできるほど、簡単なものではない。

 魔力が暴走したりするため危険なのだが、リルネスタなら大丈夫だろうという謎の安心感があり、レンは止めることはせずリルネスタに委ねていた。

「最初はやっぱり簡単な方がいいよね?」

「そうだな。だが、その前にまたモンスターのおでましだぞ」

 肩を並べて竜の山に向けて歩いていると、正面から砂色の毛を生やしたライオンのようなモンスターがレン達の前に姿を見せて威嚇をする。

 そのモンスターは《ロックレオ》と呼ばれ、特別な能力はないのだがそれを補うかのように異常なまでの身体能力をもっていた。

 一応危険度はあまり高くなく、Bランクの中でも中の上くらいなのだが、戦い方が見た目に沿わずトリッキーなので、油断しているといつの間にか死んでしまいましたという状況になりかねないほどのモンスターであった。

「試しにあのモンスターに無詠唱で魔法を唱えてみてくれ」

「大丈夫かな……まだ経験したことないんだけど、暴走しちゃったら危険なんでしょ?」

「もし暴走したら俺がなんとかする。それに落ち着いて頭の中で魔法のイメージを固めてから唱えれば、リルネスタならいけるはずだ」

「そうかな……? でも、レンがそう言うならきっとそうだよね。やってみるっ!」

 リルネスタが脳内で魔法のイメージを固めるため目を閉じたので、レンは聖剣を構えてロックレオの顔を睨みつけて負けじと威嚇をする。

 するとまるでその威嚇に乗るようにロックレオは最初より喉を唸らせて大胆に体を反らす。

 そしてレンはそんなロックレオに対して更に深々と構えて殺気を向ける。だが一方のロックレオもここで引くのはプライドが許さないのか、若干レンの剣幕に押されつつも威嚇をし続ける。

「リルネスタ、そろそろ──」

 リルネスタを呼びかけようとした刹那、突然 "ズガァァアァァアン!" と、聴いたことがないくらいの轟音が鳴り響き、微かだが地面が揺れる。

 その音の方を見ると、先程までロックレオが威嚇していた地面は真っ黒に焦げながら抉れており、そこにはロックレオの残骸はなく、あまりの熱量に肉や骨は全て蒸発してしまっていた。

「はぁ、はぁ……はぁ~……なんか、一気に魔力を使ったから体が重いよ~……」

「リルネスタ……お前、今なにをしたんだ……?」

「え? えっと、頭の中で雷魔法のライトニングをイメージして、そのまま魔力を放った……みたいな? よく分からないけど、余分に魔力を使っちゃったよ」

「いやいや、そうじゃなくて。今リルネスタ『ライトニング』って言ったか?」

「えーっと……言ってない、かな?」

 可愛らしくえへへとはにかんで頬をポリポリと掻くリルネスタであったが、レンはリルネスタが目の前で成し遂げた偉業を目の当たりにして軽く絶句していた。

 大賢者であるリルネスタなら無詠唱くらいすぐに覚えてしまうだろうと思っていたが、まさか魔言だけでなく魔名を唱えずに魔法を使うのは、それこそ至難の業と呼んでもまだ弱いくらいであった。

 今リルネスタがやったのは《完全無詠唱》と呼ばれるもので、魔言を省略して魔法を放つ無詠唱よりも難易度が遥かに高いもので、魔法の名前──通称《魔名》を唱えなくても魔法を使えるというものであった。

 そんな完全無詠唱を使える者はこの世界で数えてもリルネスタの他にはいなくてもおかしくないほど、別次元の技術なのである。

「とりあえず、これからは魔名は唱えようか。完全無詠唱は非常時以外禁止な?」

「そうだよね。あれだけ長く集中して、普通より倍くらい魔力を使っちゃもったいないもんね」

「いや、そういう意味で禁止するわけではないのだが……まぁ、今はそんな認識で大丈夫だ」

 レンが完全無詠唱を禁止した理由は、あまりにも物珍しい技術なので他人にバレてしまうと面倒なことになってしまうというものであった。

 さすがに攫われて研究されるとまではいかないが、魔法を研究している者がリルネスタを狙ってくる可能性があるので、もしそれで攫われると胸糞が悪くなるのでレンは禁止したのだ。

 しかしそれよりもこれでリルネスタが更に強力な力を得たので、完全無詠唱を完全に習得したあとが気になってレンは仕方がなかった。

「よし、リルネスタ。今からは無詠唱で行動するんだ。完全無詠唱ができたなら、無詠唱くらい余裕だ。いけるよな?」

「うんっ、任せてよ! もっともっと強くなって、いつかレンを超えてみせるからね!」

「……っ! 面白い、相手になるぞ」

 まさかちょっと前まで『レンには勝てない』と言っていたリルネスタが『レンを超えてみせる』と発言したことに驚きを隠せないのか、レンは一度大きく目を見開くが、上等だと口角を上げて笑みを浮かべる。

 元々天才なリルネスタに足りなかった『自信』が足されたことで、リルネスタはきっと想像ができないくらいの高みへ登ることが出来るだろう。

 そんな未来を、レンは隣でいつまでも見てみたいと思い、リルネスタの横顔を見つめる。

 だが自分の意思とは関係なくなぜか不意にリルネスタから目を背けてしまう。

 それはなぜか。その答えを探す前にはまた新たなモンスターが現れたので、レンはリルネスタと協力して道を阻むモンスターを倒しつつ、確実に竜の山へと向かっていくのであった。
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