Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八

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元Sランクの俺、不思議な案内看板にたどり着く

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 どれほど歩いただろうか。
 体感ではかなり歩いたが、道中で凶暴なモンスターが襲撃してきたので、もしかしたら全然前に進んでいないかもしれない。

 だが後ろを振り向けばグランニールを囲んでいる山の一角がギリギリ見えるか見えないかの距離にあり、正面には竜の山だと思われる山が見えていた。

 それでもそれらしき山は一目見るだけで沢山連なっているので、これからはグレームに教わったとおり案内看板を探した方が得策だといえるだろう。

「それにしても、中々様になったんじゃないか?」

「えへへ、そうかな? でも意外と無詠唱って簡単だから、レンもやったら案外出来ちゃうかもよ?」

「それはリルネスタに才能があるからだ。出来なくはないかもしれないが、そこまで感覚的には出来ないだろうな」

 過去に挑戦した者を目の前で見たことがあるレンだからこそ、無詠唱の難しさは知っていた。

 脳内で魔法のイメージをして魔名を唱えると、魔言を唱えたときのように魔法を展開できるというのが、無詠唱である。

 無詠唱が使えると魔法を早く展開できるため、使えたらかなり強力な能力なのだが、脳内で魔法をイメージするということは言葉で言うよりも遥かに難しいものなのである。

 魔法がどのように展開され、どのように放たれるか。

 そしてどのように減速し、どのように命中するか。

 このように、一部をあげただけでも頭が痛くなるほど、魔法のイメージというものは複雑で、単純ではないのだ。

 しかしリルネスタがそんな無詠唱を簡単に習得できたのは、普段から魔法のイメージを細部まで固めて使用していたからであろう。

 だがレンは軽いイメージはしたことがあるものの、わざわざ計算などしたことがないため、いきなり無詠唱に挑戦してもリルネスタのように成功することはないと分かっているのである。

「それにしても、リルネスタはもう完璧に無詠唱を使いこなしてるじゃないか。おかげで結構楽になったんじゃないか?」

「うんっ! おかげでレンの援護がやりやすくなったよ! でも、やっぱり普通に魔法を使うよりも疲れちゃうかな。だからもっと練習が必要だね!」

「あぁ。無詠唱は結構頭を使うからな。でもパターンが分かったら疲れることもなくなるはずだ。そこまでいけたらいいな」

「そうだね! よーし、頑張るぞー!」

 休憩中だというのに、リルネスタはいつものテンションで楽しそうに盛り上がっていた。

 今、レン達は見晴らしの大岩の上に腰を下ろしている。

 危険な場所なのに見晴らしのいい大岩の上にいてもいいのかと思われるかもしれないが、下手な岩陰や洞穴の中の方が危険が多いのだ。

 このような場所のように危険なモンスターがうじゃうじゃ生息する場所は、返って見晴らしのいい場所で休憩した方が対処しやすいのである。

 むしろ岩陰や洞穴はこちらの視界も遮られてしまうので、人間よりも感覚が鋭いモンスターにバレてしまうと逃げれなくなってしまう。

 それを避けるため、レンはあえてモンスターに襲われてもすぐに対処できる場所を選んだのである。

「それで、いつまで休憩するの? 私はもう大丈夫だよ?」

「そうか。なら早めに行こう。今だってモンスターがこっちを見てるからな」

「え、どこどこ?」

「正面に見える重なった四つの大岩の裏や、左手方向に見える三角形の砂山……あれはモンスターの背ビレだ。ちなみに見たら襲ってくるから、あんま見るなよ」

「は、早く言ってよ! もう少しで見ちゃうところだったじゃん!」

「ははは、すまんすまん。だがあいつらは襲ってくるというより、こちらを観察してるだけだからそこまで危険じゃないと思うぞ。まぁ、早めにここを去った方がいいのは変わらないがな」

 そんな和気藹々とした中、レンはリルネスタには話さなかった場所に目を移す。

 その数は三箇所
 リルネスタが不安にならないようにあえて二箇所しか教えなかったが、本当は五箇所ほどモンスターが息を潜めていた。

 いったいどれだけのモンスターがいるんだとレンは心の中で毒を吐きつつも、レンはリルネスタを連れて安全な場所を通って竜の山への道をたどる。

 レンの後を追うリルネスタは、どうしてレンは真っ直ぐ向かわずに途中で曲がったりするのかという疑問を抱きつつも、レンのことを信頼しているのでそんな疑問は消えてなくなる。

 なぜそこまでレンを信じられるのかと聞かれても、リルネスタは答えることが出来ないだろう。

 だがわざわざ言葉を交わさず黙ってついていくというのは、解け難い固い絆で二人は結ばれているということである。

『ガルルルルル……ッ!』

「おっと、リルネスタ。またモンスターだ。やれるか?」

「うんっ! 任せて~!」

 CランクやBランクパーティを一匹で壊滅させるほどの力を持つモンスターでさえ、リルネスタの前では瞬きをするだけで呆気なく散ってしまう。

 近距離で敵を一撃で沈めるレンと、遠距離で多彩な攻撃魔法で敵を攻撃し、支援魔法でレンの援護をするリルネスタ。

 たった二人のパーティだが、そこらの四人パーティよりも完璧な連携がとれていた。

 そんな二人は、今いる凶暴な魔物の巣窟の真ん中を歩いているのにも関わらず、現れる魔物達はリルネスタの魔法の『練習』になっていた。

 それがどれだけ異常か、リルネスタは理解出来ていない様子であったが、レンは顔色一つ変えずに無詠唱を使いこなし、着実に強くなっていくリルネスタを前に苦笑いしか浮かばなかった。

 そして本日10度目の襲撃も、レンが一瞬でモンスターを蹴散らすので一分も経たないうちに終わってしまう。

 それを遠目で見ていたモンスター達もレンとリルネスタの異常さに気付いたのか、なぜか竜の山へ近付けば近付くほどモンスターの襲撃がなくなっていく。

 レンはそんな違和感に気付きつつも、リルネスタと共に竜の山への道を歩いていく。

 そして、グランニールを出てから二時間ほどで、やっとグレームの言っていた案内看板の前に辿りついていた。

 だが──

「……なんかこれ、おかしくないか?」

 その案内看板は、ひどく綺麗であった。

 綺麗なのはいい、だがその案内看板はあまりにも綺麗で、まるで最近急ごしらえで作られたような、綺麗な素材で雑に立てられていた。

 しかも書かれている文字は素人が書いたようなところどころ曲がった字で、レンはその違和感を前に不信感を漂わせていた。

「そう? 確かになんか字が汚く見えるけど……そこまでおかしいとは思わないよ?」

「そうか? こんな辺境な地にある看板がここまで綺麗に残ってるものか? 地面も掘られたような跡が残ってるし、最近出来たような気がするのだが」

「んー、分からないけど、レンの言う通り最近出来たんじゃないかな? ほら、何日かに一度だけ案内看板の様子を見る人がいるとか」

「うーん……」

 レンは腕を組み、目を細めて喉を低く唸らせ、注意深く周囲を観察する。

「(リルネスタが言ってることも間違ってはない……と、思う。だがこんな危険な土地まで来てこのような案内看板を立てる意味はあるのか……?)」

 場所は距離でいうと7キロ以上離れている。
 普通に歩いても軽く1時間と30分以上はかかるだろう。

 今回、レンとリルネスタは出てくるモンスターを楽々と倒してきたが、普通の冒険者なら下手をすれば全滅するほどのモンスターばかりだ。

「(この案内看板を確認するのは少なくとも冒険者の仕事ではないはず。だとしたら護衛を雇う必要がある。その費用や、モンスターの強さから見て、毎回のように受けてくれる冒険者は多くはないはずだ)」

 目の前にある案内看板は不自然なほど綺麗で、人工的に作られたことが一目見て分かる代物だ。

 それはどうも不自然で、このような地なら人が作ったものなどはモンスターが破壊したり、どこかへ持っていったりするのが大半である。

 それなのにここまでただの看板が残っているのはあまりにもおかしいのだ。

「(だがわざわざイタズラで看板を立てられるほど、ここは生半可な実力では生きていけない。もし実力があるなら、見知らぬ人を陥れようだなんて無益なことをすることはしないはず。なら、なんのために……?)」

 周囲を警戒しつつも、レンは久しぶりに思考を張り巡らせていた。

 実際、その看板には『左、竜の山。右、竜刻の祠』と記されており、このまま道を真っ直ぐ進んだ先に見える左側の山に入れば、目的のアルケスにありつけるだろう。

 しかしそれよりも竜刻の祠という文字に目が惹かれてしまう。

 その理由は不明だ。
 特に術式な魔法や魔道具が使われているわけでもない。

 それなのになぜ。と、追求しようとするが、あまりに静かに考えすぎたせいで心配になったのか、リルネスタがレンの顔をのぞき込むかのように上目遣いのままレンと看板の間に入ってきていた。

「レーン! どうしたの?」

「ん、いや、なんでもない。ちょっとあまりにも違和感があるから考え込んでいただけだ」

「ふーん、レンにしては珍しいよね。いつもはあまり考えずにパッと行動するのに」

「それらは知識があるからな。今回のように突発的で、調べようがないものを見てパッと動けるほど、俺は軽率じゃないからな」

 古くければいいというわけでもないが、しっかりとモンスター対策がされており、少しばかり薄汚れていて文字が消えかかっていたのならば見ただけで昔からあると断定できる。

 だがここまで素人感満載だと、どうしても疑ってしまうのが長年冒険者をしている者の性なので、レンが異常なほど疑い深くなってしまうというのは仕方がないといえば仕方がないことなのである。

「でもこれしか信じられないし……んー、一回戻って竜の山の場所を聞いてからまた明日来てみる?」

「そうしてもいいが、正直に言ってめんどくさい。ここまで悩んだ俺が言うのもなんだが、この案内看板に従ってもいい気がする」

 もし間違っていたとしても、時間はまだまだある。

 それなら戻るより、数打ちゃ当たると思って二つの山を攻略するのも悪くはない。

「なら、どうするの?」

「ここは看板に従って、ここから左に見える方の山を目指そう。どんな山かは知らんが、山に入ったからといってそこまでモンスターのレベルが上がるわけではないだろ」

「それもそうだね。じゃ、早く行こ! このままじゃ日が暮れちゃうよ!」

 今度はリルネスタがレンを連れ、太陽が斜めより少し上に位置する中、左側に見える竜の山へ向かう。

 先ほどと違うところをあげるならば、リルネスタがレンの手を掴んでいるところだろうか。

 最初はリルネスタを背負って歩いてるだけで心臓が自分でも驚くほど激しく動いていたが、今では手を握られても別にドキドキするだとか、そんなものはない。

 むしろ自分とは違う手の温もりと柔らかさを感じ、どこか安心している自分がいて、レンはあまり味わったことのない感情に首を傾けていた。

 しかしこのような感情を抱くのも悪くないと、レンは暖かい感情に包まれながらリルネスタの思うがまま引かれていくのであった。
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