スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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始まりの塔編

第12話 新たに手にした強力なスキル

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 氷塊の連なる正方形の部屋の中、俺はグレイルーフを倒し終えてから一歩も動くことなく、その場で腰を下ろしていた。

 ちなみに先ほどまで返り血によって真っ赤に染まっていた俺の体は、グレイルーフを討伐したことによってまっさらな状態に戻っていた。

 どうやらバーニグモーラやグレイルーフといった始まりの塔にて立ちはだかるボス級の魔物は、挑戦者に倒されることで跡形もなく姿を消してしまうらしい。

 だから皆素材として売ることができないバーニグモーラやグレイルーフに挑もうとしないのだと、俺は改めて認識した。

 だが返り血が消えたのはいいものの、氷塊に幾度も叩きつけられたせいで服が少しばかり濡れてしまっていたため、俺は消えなかったアイスウルフの亡骸に炎を付けて暖をとり、服を乾かしつつも体を温めていた。

「痛てて……最後の足掻きのせいで、背中が……」

 グレイルーフは最後の最後まで俺を振り払おうと氷塊にタックルしていたので、そのせいでグレイルーフと氷塊に挟まれた俺の肉体はところどころ悲鳴をあげていた。

 だが幸いなことに骨折などはしていない。
 もしかしたらどこもかしかも打撲気味になっているかもしれないため、俺は痛む箇所をマッサージしつつも《鑑定眼》を使用し、自分のステータスを確認する。


───────────────

レイ:剣士《炎魔猿を討ちし者》 男 21歳

ノーマルスキル
・身体能力強化Ⅰ ・腕力Ⅱ ・脚力Ⅲ
・刺突Ⅰ ・弓術Ⅰ ・剣術Ⅰ ・体術Ⅰ
・威嚇Ⅲ ・炎属性魔法Ⅰ ・氷属性魔法Ⅰ

パッシブスキル
・気配察知Ⅰ ・危険察知Ⅰ ・毒耐性 (微)
・温熱耐性(強) ・寒冷耐性(強) ・加速Ⅰ
・炎属性魔法耐性(中) ・氷属性魔法耐性(中)

スペシャルスキル
・鑑定眼Ⅰ ・火事場の馬鹿力
・熱線球生成・放出 ・氷の鎧

レジェンドスキル
・殺奪

───────────────


 俺はステータス画面に表示された新たなスキルの羅列を目にし、つい喉を唸らせてしまった。

「……なるほど。とりあえず取得したスキルはバーニグモーラに似たものばかりだが……《脚力》と《威嚇》はレベルが三にまで上がっている。それに、氷属性魔法まで……」

 スキルレベルが三になったことで、《脚力》の効果は2.5倍。そして《威嚇》の有効範囲は半径三十メートルにまで伸び、それでいて『相手が格下なら気絶する』という追加効果も新たな項目として増えていた。

 そして《氷属性魔法》で使える魔法は《炎属性魔法》と同じようで、冷気を放つ《フリーズ》に氷の玉を生成する《アイスボール》、最後に氷の矢を生成する《アイスアロー》の三つであった。

 なので俺は早速フリーズを使用して傷ついた足や腕などを軽く冷やしつつも、スペシャルスキルの項目に新たに増えたスキルの詳細を確認した。

「《氷の鎧》……氷属性魔法のスキルレベルが高ければ高いほど強固になる氷の鎧を生成することができる。防御力と炎属性魔法耐性が大幅に強化されるものの、少しばかり動きが制限される──まぁ、まさに防御用のスキルだな」

 今回、俺はバーニグモーラのときと違ってグレイルーフを怒らせる前に討伐することができたので、《氷の鎧》の効果をまだ実感したことがない。

 試しに右腕に発動してみるものの、有色透明な氷の篭手ができただけで、それ以上の変化は見られなかった。

 だがきっとこれを攻撃を受ける寸前で発動すればダメージを大幅に軽減できるような、そんなふうに思えるほど立派な鎧であった。

「そして、新たな称号も獲得……か。それで、効果は──」

 グレイルーフを倒したことによって手に入れた《氷狼(ひょうろう)を討ちし者》の称号は、設定時に氷属性魔法を使用すると威力が二倍になり、消費魔力が二分の一になる代わりに他の属性魔法を使用すると消費魔力が二倍になり威力が下がるというものである。

 まさにバーニグモーラを討伐した時に得た《炎魔猿を討ちし者》の効果を氷属性版にしただけの称号ではあるものの、俺は《氷の鎧》を発動することも考えて称号を《氷狼を討ちし者》に設定した。

 これにより《氷の鎧》発動時に消費する魔力が軽減されるかは分からない。そもそも《氷の鎧》を発動するにあたって魔力を消費する必要があるのかすらも不明だが、念の為である。

 だが、今はそれよりも──

「……ここって最上階じゃないのか? あの謎の声の少女は──見当たらないな」

 さすがにあの声の正体はグレイルーフでした──とかはないだろう。

 そもそも魔物が人の言葉を話すなんてありえないし、聞いたことがない。ということは、俺は幻聴でも聞いていたのだろうか。

 いや、幻聴にしてはあまりにもハッキリとした声だった。

 俺の脳内に、心の中に語りかけるような声は、幻聴にしてはできすぎているのである。

 まぁ、どちらにせよ。

「…………今気付いたが、俺の足元には帰還用の魔法陣と青色の魔法陣がある。つまり──」

 ゴクリと息を呑み込みながらも、俺は青色の魔法陣に対して《鑑定眼》を使用する。

 すると、目の前に浮び上がる説明文には俺の思っていた通りの情報が記載されていた。

「えー……魔法探知型転移魔法陣……この魔法陣を起動するには《氷属性魔法》を所持している必要がある。所持していない場合は絶対に起動しない。転移先は十一階層目である。……これは、決まりだな」

 どうやら始まりの塔はまだまだ続いているらしい。

 それならこの場にあの謎の声の少女がいなくても納得できるし、なによりグレイルーフが始まりの塔を支配しているボスだとしたら、少しばかり味気ないと感じたくらいだ。

 突然天から降り注いできた十本ある内の一本だぞ? 例え始まりの塔と言われていても、こんなにあっさり攻略できるはずがない。

 それに──

「……いくら魔法使いでも、複数の魔法を覚えることは難しい。フィリアは四種類使えるらしいが、そんな優秀な魔法使いはそう多くない。ということは……」

 今までどれだけの冒険者が始まりの塔に挑み、ここまで来たのかは不明だ。

 だがこの十階層目にたどり着くには最低でも《炎属性魔法》を取得している者を同行させる必要があり、さらにここから上に進むには《氷属性魔法》を取得している条件である。

 それに、俺が何気なく使用している《鑑定眼》などの魔眼系スキルは、非常に貴重で取得する方法が不明なスキルと言われている。

 一説によれば突然覚えたり、はたまた神に供物を捧げるだとか曖昧なことを聞いたことがあるが、少なくとも俺は俺の他に《鑑定眼》を使う冒険者をまだ見たことがない。

 魔眼系スキルを所持している者は一人二人知っているが、どちらも《鑑定眼》とは違うため、この魔法陣の性質に気付く者もアーラスにはいない。

 そう考えているうちに、俺はある結論に至っていた。

「多分、ここは始まりの塔なんて呼べるほど生ぬるい場所じゃない。どこまで続いてるかは分からないが、この先にはまだまだ階層が続いているはずだ。ということは、まだ俺が知らない魔物もいるかもしれない。先は長いが、この塔を攻略すれば……俺は──」

 きっと、あの最強と名高いジークに負けないくらいの力を手にすることができるかもしれない。

 だがだからといっても実際に戦っても勝てるかどうかは、戦ってみないと分からない。

 それくらい、Sランク冒険者というものは戦闘経験の差や戦闘センスのレベルが違うため、今の俺が頑張っても一回も攻撃が当たらずに負けてしまう可能性は充分にある。

 それでも今の俺は、俺のことを無能力者だと馬鹿にしてきた奴らや、俺のことを『邪魔』という理由でパーティーから追いやったアレクたちよりも、確実に強いという自信がある。

 だが、だからといってこの力に溺れてはいけない。

 天狗になり人を見下してしまえば、俺は、アレクや俺を馬鹿にしてきた奴らと同類になってしまう。

「……馬鹿にされ、貶され、蔑まされる苦痛を俺は嫌ほど味わった。だから、俺の力は俺みたいな境遇の者を助けるために使うべきなんだ。初心者殺しから俺を助けてくれた、あの二人のように」

 俺はグッと火傷している右手を握り締めながらも、おもむろに立ち上がって青色の魔法陣の上に立つ。

 そして、俺は迷うことなく瞼を閉ざし、始まりの塔の十一階層目を目指して転移を行うのであった。


    ──────


 同時刻。
 始まりの塔の五階層目には、ジークとフィリアが訪れていた。

 だがそこで、ジークとフィリアは「……え?」と二人声を合わせながらも、その場で立ち尽くしていた。

 二人がそうなってしまった理由。

 それは──

「フレイムドモンキーが……いない?」

 そう、本来は五階層目にいるはずのフレイムドモンキーの姿がどこにもないのである。

 ジークとフィリアにとって、フレイムドモンキーはそこまで怖くない相手だ。

 しかし、ジークたちはもしものことがあったら困るため、しっかりと準備をしてから五階層目へと訪れたのだ。

 だがいつまで待ってもフレイムドモンキーは姿を見せない。そのせいで、フィリアは拍子抜けしたようにため息を吐いていた。

 だが、そこでフィリアは気付く。
 今自分たちが立っている場所には、帰還用の魔法陣と赤色をした魔法探知型転移魔法陣があるということに。

 そして、床や壁の一部には黒い焦げ跡が残っていることを。

「起動している魔法陣に、この床をなぞるようにしてできた焦げ跡……もしかして、レイくんは怒ったフレイムドモンキーを一人で倒したってこと……?」

「そんな馬鹿な。こんなことはあまり言いたくはないが、レイくんは無能力者のはずだ。そんなレイくんが、フレイムドモンキーに勝てるはずがない。そもそも、五階層目にまでたどり着けるかすらも微妙だ」

「でも、私たちは隅々まで探したわよね? あったのは、魔物の死骸だらけ。しかも、大半は胴体や頭に大きな穴が空いている……これはあまりにも不自然よ」

「確かにな。あの魔物の倒し方は、人間以外ありえない。だとしたら、レイくんは本当にフレイムドモンキーを倒して六階層目へ向かってしまったのか……?」

 ジークの推察にフィリアは否定はしなかったものの、肯定もしなかった。

 だがそこで、二人は同じ疑問を抱いた。

「でも……どうしてレイくんが五階層目以降に向かう必要があるのかしら。それに、そもそもレイくんがこの始まりの塔に訪れたのは、フラワーフロッピを倒して赤傘草を採取するためよね?」

「うぅむ…………謎が深まるばかりだな」

「そうね。正直、不気味とも言えるわ。それで、ジークはどうするの?」

「もちろん、進むさ。もしこの先でレイくんが魔物に襲われていたら、ここで帰ったら見捨ててしまうことに繋がる。それだけは絶対に避けたい」

「ふふっ、ジークらしいわ。ていうか、初心者殺しから私たちを守ってくれたレイくんなんだから、十階層目までたどり着いていたりしてね?」

「それならそれでまた問題だ。十階層目のグレイシスウルフは一人で倒せるほど、生半可な魔物ではないからな。よし、そうと決まれば……フィリア、行くぞ!」

「えぇ!」

 当初は五階層目までというていで動いていた二人だが、もしかしたらこの先にいるかもしれないという可能性が生まれたので、二人はもう一度気合を入れてから赤色の魔法陣の上に立ち、六階層目へと転移する。

 そして危険な地へと踏み入れてしまったレイを助けるべく、ジークとフィリアは抜群のコンビネーションで道中の魔物を蹴散らしつつも、先へと進むのであった──
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