スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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始まりの塔編

第25話 真相

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 ギルドの二階にある、会議室。
 そこは会議室と言われていても、実際は外部からの客や別のギルドからやって来た冒険者を招く来客室である。

 そのため部屋の大きさ少しいい宿の二人部屋くらいの広さで、真ん中には巨大な丸机ではなく、小さな四角い机が質のいいソファに囲まれていた。

 早速そんな会議室に足を踏み入れた俺は、移動中にネアからある白い石を受け取り、机の上に置いた。

 それは秩序の塔の宝物庫で見つけ、ネアの《ゲート》の中に保管しておいた『音消しの白石』という道具で、その石が置かれた場所から半径三メートル以内の物音が、範囲外からは一切聞こえなくなるというものであった。

 誰も盗み聞きはしていないと思うが、念には念をである。

「レイくん。その道具はなんなの?」

「それも、今から話させていただきます」

「あ、また敬語になってる」

「……すみません。語るにあたって、敬語の方が話しやすいので、今はこれで許してください」

 深々と頭を下げる俺を前に、フィリアは「ま、強要する気はないしね」と、俺の敬語を許してくれた。

 そして俺の隣にネアが、正面に右からジーク、フィリア、アリサと座り、俺は早速俺が先日までどこでなにをしてきたのかを話すことにした。

「まず、俺は始まりの塔の内部にいました。ここに帰ってくるまで、ずっとです」

「それは、あの日レイさんが目を覚ました日からですか?」

「あぁ、そうだ。そして、俺は始まりの塔の最上階まで挑みました。ちなみに、ジークさん。始まりの塔は何階層まであるかご存じですか?」

「うむ。十階層目までだ」

 やはり、アーラスで最も実力者であるジークでも、それ以降の階層は知らないらしい。

 試しにフィリアに聞いてもジークと同意見で、一応アリサにも聞いてみたが、アリサも二人に同じなのか静かに頷いており、俺は真実を告げることにした。

「始まりの塔は、全部で三十階層あります」

 それを聞き、まず声を上げたのはフィリアであった。

「そ、そんなわけないわ。私はレイくんが嘘をつくとは思っていないけど、それだけはどうしても信じられないわ……」

「……では、五階層目から六階層目へ移動する手段をフィリアさんは知っていますか?」

「当たり前よ。五階層目にいるフレイムドモンキーを討伐したら床に赤い魔法陣が浮かび上がるから、その上に乗ってしばらく待機していれば六階層目へと転移できるわ」

 やはり、フィリアでもあの赤い『魔法探知型転移魔法陣』のことを知らない様子であった。

 それよりも、フレイムドモンキーとはなんのことなのだろうか。

 あの階層にはバーニグモーラしかいないはずだが……いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 もしかしたら本当の名前を知らず、見た目や特徴からフレイムドモンキーという名前が付けられたかもしれないし、それに今は名前の違いなどどうでもいいだろう。

「……正確には違います。あの魔法陣は『魔法探知型転移魔法陣』という名で、簡単に言えば色に適した属性魔法を取得していることで、発動する魔法陣です。つまり、そのバーニグ──いえ、フレイムドモンキーを倒したとき、その場に《炎属性魔法》を取得している人がいないと、先には進めません」

「魔法探知型転移魔法陣……? そんな名前の魔法陣なんて、聞いたことないわ……」

「い、いや。だが俺はその話を信じるぞ。いつだったかは忘れたが、魔法職がいないパーティーがフレイムドモンキーを倒したとき、先に進む魔法陣が現れなかったといって戻ってきたことがあったな。そのことを考えれば、レイくんの話には信憑性があるとは思わないか?」

「そ、それはそうだけれど……」

 腕を組み、どこか納得したように頷くジークとは裏腹に、フィリアはやはり納得できないといった様子で首を傾けていた。

 まぁ、無理もない。
 今俺が話していることは、ここ数年間の始まりの塔に関する常識を否定することであるからだ。

 逆に、そんな俺の発言を素直に受け入れてくれるジークよりも、フィリアの方が当たり前の反応をしているのだ。

 アリサはよく分からなそうにしていたが、それでも俺の発言を聞き逃さないようにこちらを見てくるので、俺もアリサの誠意には答えなければならなかった。

 だが俺が口を開く前に、勘のいいフィリアが口を開いた。

「ということは、十階層目以降に挑むには《氷属性魔法》を取得していないといけないってこと……?」

「……っ、その通りです」

 あまりにも鋭いフィリアの発言に俺は一瞬息を呑むが、あの流れから考えるとそのような結論に至るしかないので、真っ当な意見なのかもしれない。

 それでもここ数分でそこまでの結論を導き出したフィリアは、伊達にSランク冒険者をやっていないというわけだ。

「確かに、フレイムドモンキーやグレイシスウルフには《氷属性魔法》は通用しないから、始まりの塔を挑むときに《氷属性魔法》を取得している冒険者を連れていくことなんてないな」

「えぇ、正直いって足でまといになるわ。それに、《炎属性魔法》と《氷属性魔法》は対立する魔法と言われているから、その二つを取得するのは難しい話と聞くわ」

「そうだな。それに、扱いやすさだけでなく応用の利く《炎属性魔法》の方が《氷属性魔法》よりも取得しやすいというメリットがある。それに、もし《氷属性魔法》を取得していても《炎属性魔法》を覚えていなければ五階層目以降には挑めないというわけか……」

「で、でも待ってください! もしその話が本当でしたら、レイさんがその二つの魔法を取得しているということになりませんか……?」

 何気なく発せられたアリサの一言に、ジークとフィリアはハッとなって俺の顔を凝視してくる。

 まさかフィリアが気付く前にアリサが気付くとは思ってなかったが、ここまで来るのは予想通りだ。

 正直なところ、ここまで上手く話が進んでむしろ有難いぐらいである。

「……自分は、本当は無能力者ではなかったのです」

「っ! レ、レイさん。そ、それって本当なのですか……?」

「あぁ。実は、俺にはスキルがあったんだよ」

「レイくん。そのスキルとは、いったい?」

「……《会得》というスキルです」

 俺は、ここで《殺奪》と言わず、前々から決めていた《会得》というスキル名で通すことにした。

 その《会得》というのは、スキルの種類について記された本にも書いていないスキル名である。

 それにはジークやフィリア、アリサは各々「会得……?」と口にして難しい顔をしていた。

「《会得》というスキルは、倒した魔物が持つスキルのどれか一つを、雀の涙ほどの確率で自分のものにするというスキルです」

「な、なんだその素晴らしいスキルは!? そんなスキルがあれば、俺やフィリアを超えることだって──」

「……ですが、スキルを取得すればするほど新たなスキルを取得する確率はどんどん低くなっていきます。さっきアレクの攻撃を防いだのも、グレイシスウルフ? から、取得した《氷属性魔法》の応用です」

 ジークが興奮する前に、俺は《会得》というスキルはそこまで便利ではないということを伝える。

 実際《会得》という仮のスキルの説明は《殺奪》から拝借した点が多いため、そこまで不自然な点があるとは思えない。

 それに、三人は《会得》というスキルの詳細に関してはそれほどまで疑問を抱いていないため、上手く誤魔化すことはできただろう。

「でも、どうしてそのスキルが判明したんだ? 自分のスキルを見るには、スキルを確認するための道具などを使う必要があるはずなのだが……」

「えーと……自分には、このスキルがあります」

 そう言いながら、俺は自分の右目を青く光らせる。

 それにジークとアリサは首を傾けるだけであったが、フィリアは俺の目を見てその意味を理解したのか、目を大きく見開いて口を半開きにしていた。

「そ、そのスキルって……まさか、取得している人が世界に数人程度しかいない《鑑定眼》じゃない!?」

「はい。少し前、自分は初心者殺しに襲われました。そのときジークさんとフィリアさんに助けてもらいましたが、トドメを刺したのは自分でした。その後、気絶して目を覚ましたあと鏡で自分の顔を見たのですが、そこで《鑑定眼》の力が発動し、《会得》というスキルを取得していることを発見しました」

 俺の説明に信じられないといった様子で口をぱくぱくと開けたり閉じたりするフィリアだが、先ほど俺が《会得》というスキルについて説明したばかりなので、そこまで大袈裟に驚くということはなかった。

 それよりもジークとアリサは俺が《鑑定眼》というとんでもないレアリティのスキルを取得していることに驚いているのか、なにも口にせずただポカンとしていた。

 確か、《鑑定眼》はスペシャルスキルの枠組みにあるスキルのはずだ。

 スペシャルスキルを持つ者がこの世界に数人程度なら、スペシャルスキルを二つ以上持つ者や、さらに上のレジェンドスキルを持つ者なんて、片手で数える必要がないほどの数かもしれない。

 今自分にはスペシャルスキルが五つ以上あるはずなので、それを聞いたらジークとフィリアはきっと腰を抜かしてしまうだろう。

 そう考えたら、《殺奪》のことを隠したことは正解だったかもしれない。

「と、とりあえず……今からお茶を用意しますね?」

「え、えぇ。驚きの連発で喉が乾いたわ」

「ありがとう、アリサくん」

 どこか疲れている二人を前に俺は苦笑いを浮かべつつも、アリサがお茶を用意するまでとりあえず脳内で話を整理することにする。

 そして、アリサが人数分のお茶を用意し終えてからまた俺はゆっくりと話し始めることにした。
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