作者は異世界にて最強

さくら

文字の大きさ
上 下
1 / 26

一話

しおりを挟む
「エスクード!」
クラス委員長がクラスメイトを守るために異能を行使する
敵であるミノタウロスみたいな生物が、私たちに向けて斬撃を飛ばしたが、俺たちの前に出現した壁に防がれる
委員長の能力「守護する程度の能力」
本当に程度の能力だな。さっさと片付けよう
私は私の異能を行使する
「『創作者シナリオライター』」
委員長のエスクードを掌に小規模展開、機銃を持った機械兵士の射撃を的確に防ぐ
「なっ!俺のエスクード!?」
創作者シナリオライターは登録したものを扱う異能。説明した通りだ」
嘘だけどね
実際には作ったことのある能力を使用する能力
だから私はあのエスクードを使えた
今思えば、ダンジョンとか呼ばれてるここに来たのは二週間前、理不尽な強制召喚のせいだった


二週間前
教室にて自習をしていた時のこと
「そういや最近はやりのアニメあったよな」
クラスメイトの話を彼は聞いていた
彼の名は桜坂さくらざか久遠くおん。暇つぶしにネット小説を書く、普通の高校生だ
後に、異能力『創作者シナリオライター』を手に入れることになる
「流行り?俺わかんね」
「だよな」
(なんで聞いたんだろう)
『無能だからに他ならんな』
久遠の脳に響いたのは、多重人格として解離してしまった遠き日の「久遠」
名を黒鉄というが、この時はその名を呼ぶのは久遠だけだった
(黒鉄、なんか嫌な予感がするんだけど)
『奇遇だな、俺も嫌な予感を感じてるぜ』
二人同時に嫌な予感を感じているときは、大抵何かが起きる時だ
前回は銀行強盗に巻き込まれ、黒鉄が異能力を使って封じこんだ
黒鉄は生まれた時から異能を持っていた
暴喰者グラトニー』と久遠と黒鉄は呼んでいる
これを使って、他人から寿命を喰らい続け、久遠は既に残り寿命が数千年も残っていた
そんなことを思い出していたからだろうか。久遠は教室の異変に気づくのが遅れた
窓の外は、紫色の世界に緑のノイズがはしっている
クラスの誰かが窓を指さして、外を見るように促した
それと同時に、また景色が変わった
西洋の城の中のような場所だ
クラスメイトはどよめきを隠せない
教室のドアが開き、槍を持った人と、ドレスを着た女性が教室に入ってきた
(...黒鉄、あれは...?)
『わからん。星の本棚ライブラリとの接続が切れたってことは、ここは異世界だ』
(...えー)
星の本棚は、黒鉄の弟のもつ能力が関係している
「はじめまして。ルクシエル王女の、エリカ・デア・ルクシエルと申します」
「......え?誰も名乗らないの?あっ、いつものね。私は桜坂久遠。このクラスの代議員...簡単に言えば代弁者をしてるよ」
仕方なく久遠が名乗る
委員長すらあっけに取られて口をぱくぱくさせているだけで、動こうとしない
「えっと...ここはどこか聞いてもいいかな?」
久遠が比較的穏やかに話を試みる
「余計な詮索はせずに、私の話だけお聞きください」
『あァ?こいつら喰っていいか?』
「...加減してね、黒鉄。『暴喰者グラトニー』」
控えめに放たれた黒鉄の異能が、王女と名乗った女性...というよりは少女の背後に立っていた騎士を喰らった
久遠の左腕から溢れ出た黒い何かが、教室に侵入してきた“不審者”の首元にて輪を成した
「ふふっ...。ここが元の世界じゃないことはわかってるんだよ。勝手に召喚しといて、詮索するなだって?どんなに頭の弱い委員長でさえもそんな道理が通らないことは分かるよ。そうでしょ、委員長」
久遠は恐怖で動けないクラスメイトの中で、まだ久遠を見ている委員長に目を向けた
「あ、ああ...。って誰が頭が弱いだ」
委員長が立ち上がったため、久遠はバトンタッチして黒鉄の『暴喰者グラトニー』を収めた
収める寸前に、クラスメイトとこの場にいる騎士と王女の記憶を『暴喰者グラトニー』を使って消すことを忘れない
広まっては困るのだ。元の世界で異能が使えるなんてことが
委員長が初めに話し始めたことになったため、久遠は黒鉄との会話に戻る
(...ここは魔法使えるのかな?)
『さぁな。てか俺ら『暴喰者グラトニー』しかないんだから、何らかの戦闘手段は見つけねぇとな』
(戦い前提かぁ...)
久遠は大きなため息をついた
異世界転生のイメージといえば、だいたい魔王討伐である
「あなた方がお持ちになっている端末が、能力の起動キーになります」
「起動キー...?」
「それを握り、能力名を言えば起動しますよ」
「能力名ってなんです?」
「...そっかまだ取得させてなかった。えっと、寿命を100時間犠牲に一回引ける、あなた方の世界で言う「そしゃげがちゃ」というものがあります。それで能力を得られるんですよ」
それを聞いた男子勢は歓喜した
遠い過去、皆が望んだだろう
こういう能力がほしいだとか、こんなこと出来たらいいな、とか
しかしその後の説明で肩を落とすことになる
「能力は自分で創作に使用しているものだけが出ます。他にも自分で考えた武器も出ますが、どちらもない方はただの武器が出ます」
(...!)
『久遠...!』
(これは私に有利だ!寿命が有り余っているし、能力だってうんざりするくらいある...!)
久遠は確信した
勝利の法則を
しおりを挟む

処理中です...