作者は異世界にて最強

さくら

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二話

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最初だけ十回タダでできるというので、久遠含め全員がその広場へと向かった
ガチャ、とクラスでは定義したが、実際の呼び名は信託というらしい
久遠以外はほとんど無銘の刀や大剣が出る中、三人ほど能力を引いた者がいた
黒桜くろざくら時雨しぐれあかつき凱亜がいあ桜嶺さくらみね晴香はるかの三人だ
時雨の能力は『桜華幻想チェリーブロッサム・ファンタジー』という名前で、効果は事象を引き起こすというもの
つまりは快晴でも台風を起こしたり、穏やかな海を荒れさせることも可能だという
「...凱亜が、『召喚サモン』だね」
『伝説上の生物を召喚し、使役する能力だって言ってたな』
(何がすごいって、時雨と凱亜は私の小説用に能力作ってくれたんだよね)
久遠の書くウェブ小説に、二人のキャラが登場する
そして久遠の書いたものを参考に、アナザーストーリーを書いているのだ
「で、私と同じ桜の一族は...」
『名前で呼べ』
桜嶺晴香の能力は『指輪の魔法使いリング・ウィザード』といい、内容は指輪に魔法を登録しておくことで、魔力を使わずに魔法を使うというものだ
そして四人目は久遠だが、能力を引いたことを隠すために、武装を見せた
「夜刀神、だってさ」
久遠はひとしきりクラスメイトと話し、王城の中を見て回ると言って別れた
誰もいない第三倉庫にて
「さて、と...。『創作者シナリオライター』、無音空間」
能力を使って、倉庫に結界を張った
外に音と光を漏らさないための結界だ
『無音空間か。それって『暴喰者グラトニー』で光と音を喰うんじゃねぇの?』
「この能力はあくまで私の作った能力を使うっていう能力だからね。無音空間は私が『暴喰者グラトニー』の応用のために作ったから、私が考えたって扱いみたい」
言いながら久遠は目の前に手を向けた
ランタンが久遠の背中を照らし、正面に影を作っている
その影に手を向けているのだ
『何してんだ?』
「黒鉄の体を作ってる。私が合図したら、『暴喰者グラトニー』を全開にして」
過去に作った能力である闇属性魔法を、自分の影に向けて放つ
そして腕を一文字に振り抜くと同時に、黒鉄が『暴喰者グラトニー』を起動する
暴喰の力によって影と闇を喰らい、黒鉄自身の糧にする
それを元に久遠が十連ガチャで引いた、夜刀神の能力で形を成させる
「おはよう、黒鉄。気分はどう?」
「...ああ、最っ高だぜ。けど俺を外に出しちまったら、クロガネステイツにはなれなくなるぞ?」
「大丈夫だよ、その体はただの情報体。これ使えばクロガネステイツになれるから」
そう言って久遠が黒鉄に投げ渡したのは、一本の記憶端末に似たなにかだった
「これは...」
「シードメモリ。それのボタン押してこのスロットに挿してみて」
久遠が黒鉄の右腰に、黒い箱のようなものをつけた
ちょうど黒鉄に渡したシードメモリが刺さるようなサイズだ
「...おう」
黒鉄は躊躇しながら差し込み、変化を待った
すると黒鉄の視界が暗転し、復活したと同時に驚愕する
黒鉄が見ていたのは、倒れた自分だ
「これは...!」
『クロガネステイツ改とでも言えばいいのかな。あのスロットつけてる時には連絡取れるから、いざとなったら呼ぶよ』
「逆はできるのか?」
自分の体に戻った黒鉄が、日本刀のような夜刀神を取り出して腰につけた久遠に訊ねた
「無理だよ。理論的にはできるけど、やる意味が無いからね」
「この世界の概要としては、魔力と霊力が存在するってのがデカイな。大気に飛んでるおかげで、俺の『暴喰者グラトニー』も久遠の魔力を使わずに済むぜ」
「私の『創作者シナリオライター』は霊力駆動みたいだね。おそらくこの世界はソーシャルゲームと同じだよ」
久遠は夜刀神に『創作者シナリオライター』の力を流し込み改良しながら黒鉄に話した
「神と呼ばれる運営が私たちを支配してて、能力も本来はその神の支配にある。私の『創作者シナリオライター』は、私の向こうから持ってきた能力に支配されないっていう定義があるから支配から外れてるけどね」
「俺の『暴喰者グラトニー』は向こうから持ってきた能力だからなんの問題もなく支配されねぇのか」
改良が終わった夜刀神を地面に突き刺した久遠が魔力を流し込むと、夜刀神が紫色の焔に包まれた
そして人型になり、久遠の前に膝をつく
「おはよう、夜刀神」
「おはようございます、マスター」
「...!どういうことだ?」
「『創作者シナリオライター』の力で人間化の能力を作って、向こうから持ってきた『侵入者インベイダー』で夜刀神に埋め込んだんだよ」
無音空間を解除した久遠は、ドアを開けて倉庫の外に出た
「早めに戻ろっか。怪しまれる前にさ」
久遠は黒鉄と夜刀神に笑いかけた
黒鉄は夜刀神と顔を見合わせてため息をつき、ふたりほぼ同時に外へ出た
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