作者は異世界にて最強

さくら

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二十三話

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「まだ持続するとはな」
影月は半ば感心しつつ、アラガミの量を増やしていく
既に数千にも上るアラガミが雪音を取り囲み、ジリジリと近づいて行った
「まだ...まだ!」
「ほう。脇差で桜坂剣術を行うとはな」
久遠が使う剣技は、独自に開発した剣術だ
《拷問者の斬首大剣》を使うために大剣術があり、《夜刀神》を使うための居合術があり、戦艦桜坂の武装《神威》を使うための槍術射撃術もある
神威は億や兆に上る数のナノマシンで構成された武装だ
形状機能を任意に切り替えられるため、全ての武装を使いこなせれば相応に強力故に、久遠の剣術には銃も含まれている
「確かそれは、桜坂剣術日本刀防御術だったな。名前は...《陣》か」
日本刀を用いて周囲を斬撃し続ける。それが《陣》
間合い的に脇差では少し攻撃を受けてしまうが
(...避け切ってるな。小癪な小娘が...)
影月は《暴喰者ゴッドイーター》を切り、影の上で軽く手を握った
影から真っ黒な刀が出てきて影月の手に収まり、日本刀の容姿になる
「お前の罪を数えろ」
影月は駆け出し、雪音と刀を合わせる
ギィィン!と音が鳴り響き、アラガミが一歩後ずさる
「直接ですか...!」
「時間をかけていられない。あの龍を殺し、お前を連れ戻すのが俺の仕事だ」
「お断り、です!」
「ならば仕方ない。影縫い!」
影月は地面に──というより自分の影に刀を刺した
すると影月の影から無数の針が飛び出し、雪音を襲う
「アイアン・メイデンを元に開発した技だ。次は...影落し!」
肩の高さに持ち上げた刀を地面に落とす
刀は地面に刺さることなく沈み、全体を隠した
その後、数瞬前まで雪音が立っていた場所に、《吸血王の斬首大剣》のようなサイズの両手剣が落ちてきた
「ギロチンを元に開発したものだ。異能力《拷問者エクセキューショナー》」
影月は背後に愛目と日輪を召喚した
雪音が驚きを隠せぬ間に、愛目は雪音の懐に潜り込む
「がはっ...!」
「土の味はどうだ。ああ、皆まで言うな。何故俺が《拷問者》を使えるか、だろ?」
「......!」
「それはな、俺が先代《拷問者》だからだ」
影月はそう言って雪音の真横に刀を突き立てた
「久遠をないがしろにするお前を許さん」
「ないがしろになんて...」
「自覚がないのかそれともバカなのかわざとか?」
「......」
影月が《拷問者》を解除し、雪音が脇差を仕舞う
「...あの龍は、倒せませんよ。主様の力を継ぐはずだったんですから」
「否。俺なら殺せる」
影月は人差し指で龍を指さす
気に入らないのか、影月を目指して龍が飛んでくる
雪音の警告を無視して、影月は魔術を使った
歴代勇者さえ成しえなかった、この世界では希少とされる魔術を
「魔術《マスタースパーク》」
指先に集中された魔力が球をなし、影月の言葉で一直線に龍に向けて放たれる
龍は一瞬にして灰燼と成され、影月は雪音の肩に手を置いた
「これが世界最強と謳われた《拷問者》の力だ。覚えておくといい」
そう言い残して影月は仮想空間を後にした
久遠に訳を話し、戻ってくるまでここで待てと言って深い眠りにつく
「私...主様に、どんな顔で会えばいいんですか...」
『さぁ?いつもの可愛い顔でいつもみたいに抱きついてくれてもいいんだよ?』
「えっ...!?主様!?」
突如雪音の仮想空間内に、久遠の声が響いた
瞬間、仮想空間が解除されて雪音は現実に引き戻された
「...おはよ、雪音」
「......おはようございます、主様!」
雪音は主たる久遠に抱きつき、久遠はそんな雪音を抱きとめて背中を撫でた
涙を流す雪音の顔を見ないように
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