作者は異世界にて最強

さくら

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二十五話

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車輪に乗って空を飛び、巡回中の日輪は、またしても面倒なものを見つけた
そう、久遠の元クラスメイトたちである
「あれは...レベル50のナイトゴブリン...?あんなのに手こずってるのね」
呆れ顔でため息をつく日輪は、彼らから見えない場所に降りて車輪を消した
そして谷間に挟んでおいた紙を五枚ほど取り出し、後ろ手に持って彼らに近づく
「い、一般人がここで何をしている!」
「委員長!こっちもう持たない!」
「こっちもだ、指示を!」
「くっ...!」
「...レベルが低いわ。古式魔法《火炎の舞》」
日輪が紙に魔力を流すと、紙に紋様が現れた
委員長が眺めている中、日輪はそれを投げる
紙は襲っていたナイトゴブリンに突き刺さり、火を発し、ナイトゴブリンを包み込んだ
「爆」
日輪の呟きの直後、刺さっていた紙が爆発し、ゴブリンも粉微塵となった
「これくらいできなければ、私の主には勝てないわ」
「...!君は...桜坂の...!」
「拷問器具よ。名前は《豪炎大車輪》っていって、まぁ使い方は色々あるわ。例えば悪魔と契約した人を縛り付けて転がしたりね」
悪魔と言った瞬間、委員長がピクリと反応した
隠せているつもりなのだろうが、日輪にはバレバレだ
「じゃあね。私は貴方達を殺すようには指示されてないの」
日輪は車輪を召喚し、乗った
いつもの様に浮かび始める車輪は、どこか楽しそうでもある
「あと一つ教えてあげる」
「なんだ...。桜坂久遠の仲間ごときが、俺に何を...」
「私たちは魔王と手を組むわ。貴方達は完全に敵。勝つ見込みがあるならかかってきなさい、秒殺してあげるわ」
そう言って日輪はその場をあとにした
「...そこまで堕ちたか!」
(...それは私のセリフよ。貴方は悪魔と契約したんだから)
日輪は車輪を加速させ、巡回を終わらせることを勝手に決めた


その頃の八城
「水晶、今から帰る」
『はーい。あ、牛乳とたまごお願いね!』
「金無いねんけど」
『だいじょーぶ!私学校にいるから寄って!』
「ねぇそれ俺が買い物行く意味ある?」
八城は異世界であるこの世界から元の世界に帰る方法を思いついた
自分の拒絶を使うのではなく、水晶の超越を使うというものだ
超越であれば安全に帰ることが可能だ。何故なら、拒絶した場合にどうなるかが分からない
例えばあの転生を拒絶したら、もしかすると別の何かで死んでいたかもしれない
故に、超越で時空を超えることにしたのだった
「...おい凱亜、時雨。お前らも帰りたいんだろ」
「...さすがだね、八城。バレてたとは」
「帰りたい。置いてきた一族が心配だ」
岩の陰から出てきたのは凱亜と時雨だ
実は数日ほど八城をつけていた
「本当は第三勢力になりたかったのだがね。俺の足がもたないのだよ」
「足ねぇだろお前」
「車椅子が交換時期でね。もう荒れ道のせいでシャフトがガタガタだし、何より妹を置いてきてしまってるのだよ」
「そういうことなら帰るか。時雨は?」
「私も帰る。あとのことは、久遠たちに任せよう」
「委員長じゃねぇのか」
時雨はため息をついて首を振った
何事にも寛容な凱亜でさえ、少し怒気をはらんだ笑みを浮かべている
「時雨をバカにした時点であいつらは敵さ。もう彼らが勝つことはありえないのだよ」
「...《魔王軍ジオウ》の効果か」
「ああ。人の深層心理に俺への恐怖を与え、以降数日おきに心理的ダメージを負う。彼ら全員にかけたのだよ」
「それが幸を為した。私たちはあとをつけられることもなくここまでこれたし、八城を見つけられたのだからな」
時雨はそう言って車椅子から手を離し、タイヤのブレーキをかけた
「私たちを連れていってほしい」
「いいぜ。帰るか、俺たちの世界へ」
八城は凱亜の車椅子を押し、時雨を伴って超越で作ったゲートをくぐった
くぐった先には、元の学校が待っていた
ただし血の海と化していたが
「な、なんだこれは!?」
「まずいね。逃げよう」
「...いや、これは俺達が転移した時期の血だ。見ろ」
紙に付着した血が黒くなっており、硬くなっている
「...つまり...どういうことだ?」
「なるほどね。つまりあの時俺たちは...」
「ああ。俺たちは、殺されていたんだ。創作を行ってる者以外な」
八城は後ろを見るように促した
そこには、凱亜たちをつけてきたのであろう男子生徒がいた
そして超越をくぐり、こちらの世界に来た瞬間消滅する
「...こちらの世界では死んでいるために、これなかったのか」
「ああ、そうみたいだ。つまり創作してない奴らは、あの世界が最後の希望なんだよ」
そう言って八城は、超越のゲートを閉じた
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