異世界モノつめあわせセット

銀狐

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3.毒かと思ったら美少女になる薬だった件

3-1

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「勇者アビスと王女エリーの結婚を祝し、かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!」」」

 俺、勇者アビスは転生者だ。

 前の世界で不幸な事故に会い、死亡。
 年は15歳、早すぎる死だった。
 その時に別の世界で勇者になれと言われ、この世界へとやってきた。

 正直話が急すぎて、何が何だか分からなかったが、そんな自分を助けてくれたのがエリーだった。
 何処の誰かもわからない俺に声をかけてくれた。

 なんとエリーはここ、スーダルク王国の王女様だった。
 なぜ俺がこんなところに来ることになったかと言うと、神様のお告げのため招かれたのだ。
 勇者が来るのは知っていたらしい。

 招かれた時にこっちでの名前、アビス・メイビスを名乗った。
 そして俺は馬鹿正直に勇者ですと言ってしまった。
 笑われるとは思ったが、周りにいた人たちは真剣なまなざしだった。

 それから何があったかと言うと、本当に辛いことばかりだった。

 俺は魔王を倒すために旅に行かされたのだ。
 もちろん俺一人ではなく、パーティで行くことになった。
 仲間は3人、その中にエリーがいた。

 それからというもの、旅にでれば修行、死にかける戦いもあれば仲間のピンチで絶望の中に突っ込むこともあった。
 だけど仲間は誰一人欠けることなく魔王を倒すことができた。
 その瞬間は本当にうれしかった。

 かかった年月はなんと5年!
 本当につらかったよ……。

 だけどそんな俺に朗報が入った。
 何とエリーが俺のことが好きだという話だった。

 もちろん俺もエリーのことが大好きだ。
 俺がこうして生きているのもエリーのおかげなのだから。
 彼女がいなかったら、今頃俺は一人悲しく死んでいたかもしれない。

 そして俺は勇気を振り絞り、エリーに告白した。
 答えはもちろんYes、飛び上がってしまうほどうれしかった。

 その後正式な結婚が決まり、今日俺とエリーは結婚した。
 結婚式後、俺たちは仲間たちと宴会をしていた。

「やっぱり俺が言った通りアビスとエリーが結婚するわけだ!」
「はぁーあ、エリーに先を越されるとはねー。わたしもいい男に出会えないかしら」
「俺なんてどうだ?かっこいいだろう?」
「やーよ!もっと可愛くて小さい子がいいわ」
「おいおい、それだとショタになるぞ」
「むしろそっちの方がいいわ!!」

 戦士のガッカ・マドリーに魔法使いのアレン・グース。

 ガッカは俺と同じ前衛。
 俺に勇者の恩恵が無かったら世界一の戦士かもしれない。

 アレンは魔法使いだが、戦闘特化の魔法使い。
 エリーはアレンとは違い、援護や回復特化。
 結構バランスが取れていたパーティだ。

「俺も早く結婚してー!!」
「おいガッカ!すぐに飲みすぎる癖やめろよ!」
「らいじょうぶらいじょうぶ。おりゃあよってはいにゃいから」
「――ったく」

 ガッカは豪快に酒を飲むが、とても酒に弱い。
 こんな感じに飲んだ瞬間酔いつぶれてしまう。

「せっかくのお祝いなのに、ごめんね?」
「大丈夫だよ、いつものことだろ?」
「私は祝われただけでうれしいわ」

 いつもこうして飲むときはガッカが最初に落ちる。
 いつになったら学ぶことやら……。

「まあ元々長くはやらないつもりでいたからいいかもしれないね」
「なんでだ?」
「そりゃあ、二人の初夜を邪魔するわけにはいかないじゃない」
「「しょっ!?!?」」
「あら、意外と二人ってうぶなのね」

 そりゃあいつかは来るとは考えていた。
 でもこうして声に出されると恥ずかしい。

「…アビス」
「は、はい!」
「私、先に帰っているね?部屋で待っているから……」

 エリーは顔を真っ赤にしていた。
 これって、いわゆるOKサイン?
 マジで?マジなの?

 エリーはそう言うと、先に帰っていった。

「まだ始めたばかりなのに行っちゃうなんて、けっこう期待していたんじゃないの?」
「あ、あははは……」

 目の前には大好きな料理ばかりで食べたかったのに、緊張のせいで食べたいと思わなくなってしまった。
 まさかエリーもそういうこと期待していたとは。

 やばい、どうしたらいいんだろう。
 前の世界では卒業せずに死んでしまった。
 経験ゼロ、どうすればいいのかわからない。

 とりあえず、緊張を和らげるために水を飲んでいた。

「そろそろ行ってあげたら?」
「そ、そうするよ。ガッカを頼むね、アレン」
「はいよ、頑張りすぎるなよー?」
「からかうなよ!!」

 俺は席を立ちあがった。
 あ、やばい。めちゃめちゃ緊張してきた。

 俺は少しふらつきながらも、エリーがいるところへと向かった。
 落ち着け、落ち着け俺。
 初めは大切なんだから。

「もし、そこの人」
「は、はい」

 エリーのところへ行く途中、誰かに引き留められた。
 フードを深くかぶって顔は見えない。

「もしかしてものすごく緊張されていませんか?」
「ああそうだよ」

 できれば今は話しかけないでほしかった。
 心臓がバクバク言っている。
 頭が回らない。

「よろしければこれをどうぞ」
「なんだこれ?」
「緊張をほぐす、特製の薬です」

 俺はどうかしていたんだろう。
 この時、疑いもせずに飲んでしまった。

 飲んだらさっきまでの緊張が嘘のようになくなった。
 心臓もうるさくない。

「ありがとう、少し楽になったよ」
「そうですか。では自分はこれで」

 その人は笑いながら立ち去っていった。
 このためにわざわざ声をかけたのか?
 よくわからないこともあるんだな。

「それよりも早くエリーの部屋に行かないと」

 ようやくエリーがいる部屋に着いた。
 薬の効果がまだ残っており、緊張はない。

「エリー、入るよ」
「ど、どうぞ!」

 中ではキャミソールワンピースを着たエリーが待っていた。
 その姿を見た瞬間、緊張が戻ってきた。

 待って、可愛すぎて直視できない。
 あんなに可愛いエリーが薄い服だけしか着ていないって。
 もうごちそうさまです。

「アビス、その…優しくしてね」
「も、もちろん!」

 今から俺は卒業する。
 ああ、生きていてよかったー!!

 そんな時だった。
 心臓が死ぬほど過剰に動き出したのだ。
 先ほどの緊張とは比較できないほどに。

「うぐっ……!」
「どうしたのアビス?」
「ちょっと、心臓が……」
「待ってて!回復ヒール!!」

 エリーの回復ヒールの力は強い。
 腕がなくなってしまっても治してしまうほどに。
 だけど全然心臓は収まらない。
 むしろどんどんと激しくなり、段々と痛くなってきた。

「うぐっ……。なんだよ…この痛みは……」
「アビス!死んじゃ嫌!お願い!!誰か、誰か助けて!!」
「うわあああああ!!」

 痛みが頂点に達し、俺は叫んだ。

 不思議なことに、俺から煙が噴き出ている。
 もしかしてさっき渡された薬は毒だったのか?
 くっそー!もっと冷静でいたら絶対飲まなかったのに!!
 なんだよちくしょう!結局卒業せずに死ぬのかよ!

 …待てよ?
 今もこうして考え事ができている。

 もしかして俺はまだ生きているんじゃないのか?

「よかった!生きている!!なんだよー、びっくりしたなー」

 さっきまでの心臓の痛みはなくなり、すっかり元気な状態だ。

「エリーごめんな、心配かけさせて」
「……」

 エリーは涙目になったまま動かない。
 すごく驚いた顔のままだ。
 一体どうしたんだ?

「おーい、エリー?」
「アビスが……」
「俺が?」
「アビスが……女の子になっちゃった……」
「はっ?」

 いやいや、何を言っているんだ?
 そんなわけないだろう?
 ほら、あんなにたくさん剣を振った、がっしりとした手が――

「誰の手だこれ?」

 自分の手を出したつもりが女の子の手が出てきた。
 もしかしてエリー…ってことはない。

 えっ、嘘だろ?
 まさか俺、本当に……。

 本当かと思い、胸に手を当てた。
 そこには大きくはないものの、男にはない柔らかなふくらみがあった。

「女の子になっているううう!!!!」

 俺は女の子になっていた。
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