異世界モノつめあわせセット

銀狐

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5.勇者を育てた俺、次は何を育てる?

5-1

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 とある森の中。森の中にあるとは思えない家が建っている。

「ブラッドー、修行の時間だぞー」

【名 前】レオ・キリヤ
【種 族】人間
【職 業】指導者
【レベル】136
【H P】1020/1020
【M P】980/980
【ATK】320
【DEF】260
【スキル】『育成』

「分かりました!すぐに準備します!」

【名 前】ブラッド・ディヴィス
【種 族】人間
【職 業】勇者
【レベル】574
【H P】7350/7350
【M P】2100/2100
【ATK】780
【DEF】620
【スキル】『勇者ブレイブ

 この世界ではレベルや種族、HP(体力)やMP(魔力量)に加えてATK(攻撃力)とDEF(防御力)が存在する。
 中でもスキルというものが大切になってくる。
 何と言ってもHPなどのステータスの上がり方が大きく変わってくるからだ。

 例えば桐谷怜雄きりや れおの俺とブラッドを比較してみよう。
 一目瞭然、何がどうやったらここまで差が出るのだろうか不思議に思うぐらいだ。
 ちなみにだが、元々は俺のほうがレベルから何やら全て上だった。
 それを覆すのがスキル『勇者ブレイブ』だ。

 これまたチートだと思うほどの成長を可能とさせるスキルなのだ。
 普通の人が1上げるのに対して10上がるほどの速度で成長をする。
 まったく、せっかく異世界に来たのならこういうスキルが欲しいもんだな。

「準備が終わりました」
「よし、今日は合格できるかな?」
「必ず合格して見せます……!!」

 俺とブレッドは外に出ると、家の近くにある運動場に似た場所へと移動をした。

「今日こそ一本取って見せます!」

『スキル、育成が発動されました。ステータスに反映いたします』

【名 前】レオ・キリヤ
【種 族】人間
【職 業】指導者
【レベル】136
【H P】――/――
【M P】――/――
【ATK】――
【DEF】――
【スキル】『育成』

 俺のステータスがバグったかのように数字が消えていった。
 だが決してバグがあるわけでも不具合があるというわけでもない。
 これは測定不能、カンスト値を超えているためこうして文字が潰れてしまっているのだ。

 ブラッドは俺の準備が終わるのを確認すると、まずは準備運動として火の魔法を飛ばしてきた。
 避けてもいいが、当たってもどうせダメージにもならないため、あえて攻撃を受けた。
 ブラッドも予想通りのようで、口元が緩んでいる。

 次の攻撃は腰に差している剣だ。
 普通の修行ならケガをしないように刃を潰したりしているだろう。
 だが、俺がやっている修行ではそんなことをしていない。
 そんなことをしても俺には効かないからだ。

「そんな攻撃だとダメージが入らないぞ」
「わかってます……よっ!」

 剣を受け止めると、すかさずに蹴りを入れてきた。
 普通の蹴りとは違い、足を狙ってバランスを崩させる。
 俺が少しでも浮いた瞬間を逃さずにもう一発入れ、俺は吹き飛ばされた。

 もうすでに分かる通り、ブラッドは俺を殺す気で攻撃をしてきている。
 そうしないと何も攻撃が入らないからだ。
 何より殺す気でかかってこい、なんて言ったのは自分からだからな。

「まだだ!光の弓矢ライト・アロー!!」

 先ほどの火の魔法とは比較にならないほどの魔力を使っているため、こんなのがまともに当たったらひとたまりもない。
 流石にこれをまともに受けると危ないかもしれないから、俺はすぐに起き上がり上へと避けた。

「まだまだー!連鎖光爆弾チェイン・レーザーボム!!」

 俺の下にある光の矢は、爆発と共に俺を目掛けて飛んできた。
 レーザーなだけあって速度がある。
 何より空中にいるため避けるにも避けられなかった。
 そして魔法は直撃する。

「ごほっ!ごほっ!こんな技を隠していたのか」
「ぐぬぬ……!これでもダメージを与えられないとは」
「いやいや、十分に強い。これなら魔王も倒せるんじゃないのか?」
「えっ、ということは……!」
「ああ、合格だ。お前は十分強くなったよ。これなら魔王討伐にも行けるな」
「うおおおお!!!」

 もう俺がみなくてもいいほどに強くなっている。
 いつまでも俺と一緒にいるわけにもいかない。
 勇者とはゲームと同じく、魔王を倒しに行かなければならないのだ。
 そのための修行を俺のところでしていただけ。
 今まで一緒にいたが名残惜しいものだ。

「すぐにでも出発するか?」
「はい!一秒でも早く魔王を倒すために旅をしたいですから!」
「そっか、ならこれを持っていけ」
「これは?」
「俺からのプレゼントだ。お守りだと思って持ってろ」
「ありがとうございます!!」

 渡したのは青いリングがついているネックレス。
 こっちに来る前からつけていたもので、住み込みの時に何度か欲しいと言われていたものだ。

 ブラッドは家から荷物を持ってくると、再び俺のところへやってきた。

「師匠、この5年間本当にありがとうございました!」
「ああ、気を付けていって来いよ」
「はい!絶対に帰ってくるのでその時はまたお相手をお願いします!」
「もちろんだ……!」

 こうして勇者ブラッドは俺の修行を終え、魔王を倒すために旅立っていった。

 5年前、俺は家のドアをくぐったと思ったらこの世界へと飛ばされた。
 仕事帰りや買い物の買えりというわけではなく、友人と遊んで帰って来ただけだから何も持っていなかった。

 そしてやってきた世界はと言うと森の中、持っているのは携帯と財布と鍵だけ。
 一体これから何をすればいいのだろうか悩んでいた。
 そんな時に出会ったのがブラッドだった。

 当時俺は22歳、ブラッドは10歳で一回りも差があった。
 なんでこんな子供が森の中にいるのだろうと考えていたら訳を話してくれた。
 それは『森の中に勇者を育てられる者が現れる』という予言があったため。
 たかだが予言でこんな森の中に来るなんて真面目だなあとは思ったが、その時は何よりも人がいるということが嬉しかった。

 まず俺たちがやるべきことは住む場所をつくると言うことだった。
 俺は何も持っていないし、ブラッドも旅の道具だけで自分一人分しか持っていなかった。
 このままでは飢え死にをすると思い、二人で家をつくろうと考えた。

 その時に俺は自分のスキルの存在を知った。
 俺がお手本として簡単な並べただけの家をつくろうとしたが、完成したのは今住んでいる家。
 そう、教えようと思ったらあり得ないほどの能力が現れたのだ。

 ブラッドに教わりつつステータスを見てみると、もちろんステータスは文字が潰れている。
 そして一番下に『育成』という文字が書かれていた。
 ブラッドと比較しながら見ていたけど、どうやら『育成』というのがブラッドの言う、勇者を育てる者だったみたいだ。
 家をつくれたのもこのスキルのおかげだとすぐに分かった。

 転移されたその日、俺はブラッドが持っていた食事を食べて寝ることにした。
 最初に家をつくったのは正解だったな。
 何よりも雨風を防げて安全な場所でゆっくりと寝れる空間なのだから。

 翌日、流石にこのままではいけないため、まずは生活基盤を固めることにした。
 食材や水の確保、衣服といった問題だらけ。
 正直一人だけだったら何もできていなかっただろうな。

「師匠、生活のほうも大切ですが、俺は強くなりたいのです」
「お、おう……」

 唐突にこんなことを言われたときは驚いた。
 真剣なまなざしでいきなり師匠と呼ばれ、しかも強くなりとまで言われたのだ。
 俺なんか今までケンカというケンカすらしたことがない人間だったんだぞ。
 強くなりたいなら他を当たってくれと思った。

 だがその言葉にスキルが反応をした。


『スキル、育成が発動されました。ステータスに反映いたします』

 最初は何が何だか分からなかったが、ステータスを見てみると文字が潰れている。
 変わっていないと思ったけど、どうすればブラッドが強くなるかが頭に思い浮かんだときは俺が強くさせないといけないと思った。
 それから修行が始まったのだ。

「それからもう5年も経ったのか。早いものだな」

 5年が経つと俺は27歳、ブラッドは15歳になった。
 そしてブラッドはあのスキル使用時の俺に対抗できるまで成長をした、してしまったのだ。

 勇者がいると言うことは魔王もいる、みたいらしい。
 実際に見たわけでも書物で見たわけではなく、ただブラッドから聞いただけだからただの言い伝えという可能性だってある。
 そんなのだったら何のために修行をしたんだろうか、という話になってしまう。

「それよりも、これから俺は何をすればいいんだろうか……」

 一度だけブラッドが一緒に旅に出てくれと頼んできたことがある。
 出来ることなら俺も一緒に行きたいと思ったが、行っても足を引っ張ってしまう。
 その理由は、俺のレベルと普段のステータスの上がり方が一般人より低かったからだ。

 平均レベルは100で少し大きいが、今まで倍以上のレベルのしかも勇者と訓練をしていたんだ。
 スキル使用時はレベルが上がらないかと思ったが、そういうわけではなく何回か普通に上がっていた。
 スキルの影響かと思ったが、そういうわけではなくただ単に上がるのが遅い。
 ブラッドにこのことを話したら、気を使ったのか誘うことはなくなった。

『職業が変更されました。ステータスに反映いたします』
「ん?職業が変更だと?」

 俺は慌ててステータスを見始めた。

【名 前】レオ・キリヤ
【種 族】人間
【職 業】指導者 → なし (NEW!)
【レベル】136
【H P】1020/1020
【M P】980/980
【ATK】320
【DEF】260
【スキル】『育成』

 とうとう俺は無職になってしまったようだ。
 前の世界でも無職なんてなったことなかったのになあ。
 この年で無職、悲しすぎる。
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