異世界モノつめあわせセット

銀狐

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5.勇者を育てた俺、次は何を育てる?

5-6

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 俺とイトナ、それにフラウは出かける準備をした。
 とは言ったものの、持っていくものはお金と服を買った時用のカバンだけ。
 それほど遠くもないから移動時の食事も飲み物も要らないみたい。
 本当に近かったんだな。
 ん?ならなぜフラウを養っていたエルフは探しに来なかったんだろうか。
 まあ、今更そんなことはいいか。

 家を出て歩くこと3時間、本当に近くにあった。
 エルフの里と言われているだけあって、人間で言う町程の大きさがある。
 家は木の上にあるというわけでもなく、俺たちと一緒で地面に木造の家があった。
 俺たち人間や鬼人、アルラウネが入っても怪しまれるかと思ったが、俺以外にも人間もいるし獣人もいる。
 だけどエルフの里だからエルフの人数に比べたら他種族は少ない。

 俺たちは目標である服屋を探している。
 民家とお店の区別はしっかりと看板がついているから分かりやすい。
 他種族もいるため、言語ではなく絵が描かれていた。
 服屋もすぐに見つけることが出来た。

「いらっしゃいませー」

 店員はもちろんエルフ。
 そして女性であるから俺が決めるより店員に聞いたほうがいいだろう。

「二人の服を買いたいんですが、何かいいのはありますか?」
「もちろんございますよ。お値段はどれぐらいまでがいいでしょうか?」
「特に気にしないで可愛いのを選んであげて欲しい」
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ」

 二人は店員に誘導されると奥のほうへと連れて行かれた。
 一応俺の周りにも服はたくさんあるが、どちらかと言うと安めだがシンプルな服ばかりだ。
 俺はこっちでもいいが、女性が好む服は奥のほうに置いてある。
 簡単に言えばお店の手前側が男物で奥が女物というわけだ。
 俺も暇だから服を見ていたけど、まだ服はあるし買わなくていいか。

 この時はまだ楽しみだった。
 二人がどんな姿になるか楽しみだったからだ。
 だけどそれは束の間、地獄の始まりが始まったのだ。

 まずは一着着ては呼ばれ、感想を細かく言わされる。
 また次の服を着れば呼ばれ、また感想を細かく言わされる。
 それをひたすら繰り返し、気づけば時間はもう2時間近くは経っていた。
 喜ぶ二人を見ていると、どうも早く行こうなんて言えなかった。
 そして結局買ったのは3着程度。
 もっと買っても良かったんだけどなあ。

「ありがとうございます!師匠!!」
「可愛い服、ありがとう」
「どういたしまして。でもすぐにボロボロにするなよ?」

 イトナは少し短めのスカートにTシャツ。
 フラウはワンピースを着ている。
 二人ともよく似あっているけど、よくそんなにいい服が置いてあったな。
 森の中にある町にある服とは思えないほど出来がいい。
 もしかしてつくっている人が優秀なのか?

「すみません、この服をつくっている人ってこの里にいますか?」
「いますよ。このお店の裏にある家に住んでいます」
「会う事ってできますか?」
「構いませんよ。呼んできますので少々お待ちください」

 まさかそんないきなり会わせてくれるなんて優しい人もいるんだな。
 さっきの店員さん、なんだが慣れていたような対応だったのが気になる。
 もしかしたらこういう話が何回もあるのだろうか。
 確かにこれほどの服をつくれる人がいるなら引き抜きたい人も多いだろう。
 俺もその中の一人だと思われているのかも知れないな。

「お待たせしました。来てもらおうと思ったんですが、手を離せない状況なので来てほしいとのことです」
「分かりました。裏の家ですよね」
「はい。ただ、気を付けてください」
「……?」

 気を付けてくださいってどういうことだ?
 単純に忙しいから気が立っているということだろうか。
 とりあえず、機嫌を損ねないよう気を付けておこう。

 裏の家に移動し、ノックしたけど反応はない。
 少し気が引けるが、勝手にドアを開けさせてもらおう。

「こんにちわー」
「条件は綿を常に確保することよ」
「…綿?」

 家に入ると出合い頭にそう言われた。
 話している最中も俺たちを見ることなくずっと作業をしている。
 第一印象は、まあエルフで長寿というだけあって若い人だ。
 今更だが、エルフと言えば魔法を研究しているイメージだったけど、こうして別のこともしているのだな。
 エルフの里だけど誰か別の人がつくっているという可能性もあっただろうけどさ。

 それはいいとして、問題は綿の件だ。
 綿なんて育てたこともないし、実際にできているところも見たことが無い。
 知識は全くないからつくることが出来ない。
 門前払いされているというわけだな。

「師匠、綿なら私がつくれる」
「本当か?俺は全く知識がないから手伝えるかは分からないけど、本当に大丈夫か?」
「大丈夫。前につくったこともあるから」

 それなら交渉の材料として使える。
 流石はフラウ、素晴らしい成長を遂げているな。

「綿は用意できる。だから話をさせてくれないか」
「…ほう。それはまた…なるほど、そういうことか」

 ようやく手を止めて俺たちのほうを向いた。
 後ろからは髪の毛でよく見えなかったけど、眼鏡をかけていた。
 そしてジッとフラウを見ている。

「君はアルラウネ、それもレベルが高いようだね」
「フラウという名前です。仰る通り、アルラウネです」
「まだ名乗っていなかったね。私はリーア、見た目通りエルフだよ」

【名 前】リーア
【種 族】エルフ
【職 業】デザイナー
【レベル】132
【H P】1040/1040
【M P】1810/1810
【ATK】230
【DEF】210
【スキル】『選別者』

 レベルは132、結構高いレベルだな。
 勘違いされそうだが、レベルの平均は100前後。
 俺たちのレベルがおかしいだけだから、普通の人から見れば高い方になる。

 ステータスも特に何かが尖っているわけではなく、フラウと同じで魔力が高い。
 一番に目が行くのは『選別者』というスキルだろう。
 スキル名だけだと何の効果があるのかは全然分からないな。

『選別者』:モノの価値を見分け、使い方を知ることが出来る

 なるほど、どちらかと言うと選別者というより探究とか調査とかそういう言葉のほうがあっていると思うが。
 どちらにせよ、このスキルを持っているということは、偽物の綿を渡したところでばれるというわけだな。

「まずは私を勧誘した訳を話してほしい」
「分かった」

 俺は簡潔に「食事と住む場所は困らないが、衣服が手に入らない」と説明した。
 手に入れるにも、現状は手持ちにあるお金のみで、普段は買ったり売ったりせずに自給自足をしている。
 今日みたいに二人の服を買うのも限りがあるのだ。
 だから服をつくれる人を探していた、と。

 それと一緒に、なぜ俺とイトナ、それにフラウが一緒にいるわけも話した。
 もちろんネストのこともだ。
 もし来てくれるのなら黙っておくわけにはいかないからな。

「なるほど、それなら弟子の誰かが服のつくり方を教えてくれと言えばよかったのでは?」
「「「……あっ」」」
「思いつかなかったの?素晴らしいスキルがあるのに、勿体ないわよ」

 言われてみれば確かにそうだ。
 そうなれば俺もどう作ればいいか、頭の中に浮かび上がってくる。
 今更思い出しても遅いし、こっちの世界ではどういう服があるのか知れたならそれはそれで良しとしよう。

「それでも私を呼びたいと?」
「そうだな。それでも来て欲しい。元々弟子の三人は強くなるためにいるからな」
「ふむ、私も興味があるが、残念だが私はいけない」
「えっ、ならさっきの条件は?」
「あれは勧誘を断るためにいつも言っていること。本当に申し訳ない」

 いや、いけないのは当たり前だ。
 この人がいるおかげで服屋が成り立っているんだ。
 いきなりやってきた俺たちがひょいひょい引っこ抜いていいわけがないだろう。
 ここは大人しく戻って考え直すか。

「私の代わりと言っては何だが、私の弟子を渡そう」
「弟子ですか?」
「ああ。もう一人前で独り立ちするための仕事場を探していたんだ。食事と住むところがあるなら安心して行ってもらえるからね。メリー」

 本人は来てもらえないけど、弟子が来てくれるのか。
 それはそれでいいかもしれない。
 服をつくれる人がいるに越したことはないからな。

「何でしょうか、お師匠様」
「この子はメリー。まだ幼いように見えるが、もう成人している」
「初めまして。メリーと言います」

【名 前】メリー
【種 族】エルフ
【職 業】デザイナー
【レベル】101
【H P】950/950
【M P】920/920
【ATK】160
【DEF】110
【スキル】『技術者』

 平均レベルには達している者の、ステータスはMP以外全部下回っている。
 もしかして、服をつくるために他の全部を捨ててきちゃったのか?
 この状態から強くなりたい、なんか言われたらどう成長するか見てみたいけど、今更そんなことをいう事はないだろう。

 スルーしてしまうかと思ったが、この子、女の子じゃない?
 ただでさえイトナとフラウがいる現状でも抑えているのに、これ以上は本当にまずい。
 家、大きくするか新しくつくろうかなあ。

「メリー、君が働ける場所が見つかった」
「本当ですか!?」
「ああ、彼が雇おうとしている人よ」
「あ、あの!よろしくお願いします!!」
「こちらこそよろしく。食事と住む場所は出せるけど、お金のほうは少し待つ感じになるけどいいか?」
「構いません!服さえつくれるならお金なんて必要ありません!!」

 本当に服をつくるのが好きな人なんだな。
 まあ、そういう人が一人いるだけで俺たちは大助かりになるからいいけど。

「ありがとうございました。いきなり来てお弟子さんまで」
「構わないよ。だが、メリーに何かあったら私が違う意味でそっちに行くからな」
「分かっていますよ」

 店を出て俺たちは自分の家へ帰るために来た道を戻り始めた。
 帰っている途中、メリーはイトナとフラウをずっと見ていた。
 なぜそんなに見ているかを聞いてみたら、どういう服がいいか考えていたみたい。
 仕事が早すぎるぞ……。
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