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11、触る
しおりを挟む「めー子もふらせろ」
「トカゲ浮気かー?」
「妄想彼女とかマジキチ感ワロス」
恥ずかしいよぉ、やメ~てと恥ずかしがる友人の腕をふにふにする。
この触り心地、顔うずめてすりすりしてえ
羊族でちょいぽちゃ気味のめー子はマジ神である。
もうふわっふわぷにっぷに
「あー、最高、顔埋めていい? ここで友情壊れてもいいから」
「トカちゃんおちついて~」
はあはあと変質者の如くもふもふしていると、ずいっと目の前にゴツイ腕が現れた。
邪魔である。
「トカゲー触っていいぞー」
「お呼びじゃねえ」
「トカちゃんおちついて~」
あわあわしているめー子にいつもこんな感じだと伝える。
めー子かわえー
そして鱗つめてーんだよ、いい加減どけやがれ
押し付けんじゃねえ
「トカゲすべすべだぞ」
「ワニよ、我はモフモフ教なり」
「これでもメスにはモテモテだぜ?」
「どうせキュバ嬢だろ」
「この前食っちまったのは貴族の令嬢だったなー」
「お前に負けるとかクッソ! なんでだ!!」
ガッデムとこんな筋肉ダルマがモテてか弱い乙女が売れ残る現実に凹む。
ストレスが溜まる。
めー子に癒される。
俺も俺もと腕を押しつけてくる。
ストレス溜まる。
めー子に癒される。
以下エンドレス。
めー子からもう離れられんわー
「てかさっきからワニの鱗で皮膚削れてんだよ、やめれ」
「おー、興奮するとついなー」
「ワニよ、何処に興奮する要素があった? ドエムか?」
腕についた私の血を舐め取るワニに引いた目線を投げつつ、ふとイタズラを思いついた。
「なあドエムワニ、そんなに触って欲しいか」
「トカゲ触ってくれるのか!」
「おう、ワニ、ただし絶対お前から私に触るなよ、つまり絶対動くなってことだ」
「トカゲこそ逃げるのはなしだぜー?」
「トカゲに二言はねえ。ついでに鱗も逆立てんなよ、裸なるし」
「トカゲがそんなに積極的に! 俺はいいが外でもトカゲいいんかー?」
「ああいいぞ」
いつになく緊張と興奮で彫像の様に固まるワニ。
めー子は顔を赤らめつつも心配そうにしている。
ふっ、バカなワニよ。何を想像してやがるんだか
私が日頃の恨みを晴らさぬわけがなかろうに!
むしろ外じゃないとお前の醜態をみんなに晒せないだろ?
めー子の手を離し、指先をつ…とワニの鱗へ滑らせる。
身体を動かさないのは流石だが、筋肉が強ばったのが分かった。
「ワニ、アウトか?」
「トカゲセーフだって」
「トカちゃんひゃあー」
はい喋って口動いたー、アウトーとしても良かったがそれじゃつまらん
それにめー子もひゃーひゃー言いつつヒヅメの隙間からばっちり見てるしな
観客の期待に応えるかと調子に乗った私は指先から肩までヘビの様に掌を這わせた。
這わせた部分だけ鱗が濃緑色へと深く色付く。
まるで縛りつける痣の様だ。
こんなやつ縛りつける必要もないが
背を震わすワニの胸を押す。
おっも! やっぱ押さえつけはムリか
「ワニ倒れろ」
「トカゲもうやんのか? もうちょっと後でもいいぞ」
「さっさとしろ」
「おー」
静かに興奮していつつも何故かワニの方が心配そうに見てくる。
なんかムカつくんだが
仰向けに倒れたワニの上に身軽く乗った。
こいつ横幅広いから普通に乗れるのである。
てかめー子、気を利かせて隠れてるつもりだろうがばっちり耳がこっち向いてるぞ
「ワニ、動くなよ」
「トカゲ何するんだ?」
「首あげて」
「っ、トカゲそれは」
「ワニには二言ありそうだなー?」
にまにまと上から見下ろして煽れば、鋭く呼気を吐きながらもワニは大人しく喉元を晒した。
他の部位よりも少し白く柔らかそうなクリーム色が覗く。
口だけで動けないワニをおちょくりつつ、ワニの喉元へと顔を寄せた。
龍族の弱点である逆鱗をいっちょまえにワニも持っている。
ふはは!雑魚に弱点を触られる恐怖と屈辱に悶えるがいいわ!
あー?約束反故にして動いてもいいんだぜー?
ゲスな思いのまま態とじれったく顔を寄せるが、ワニは続行を選んだようだ。
いつもなら髪も食べられているだろうが、ワニは筋肉を強張らせたまま動かない。
さっさと負けろと逆鱗を舐め上げた。
態とらしい水音が辺りに響く。
座っている床の温度が上がったが、顔をあげて確認してみてもワニの見かけはそんな変わってない。
何だか敗北感に包まれてさっさと降りた。
けっ、プゲラとか言えよなー
「ワニ萎えた、仕事行くわー」
「トカゲマジかよ、超据え膳だぞ」
「不味そうだな。いらね」
何処にあったのか分からん興奮要素に興奮し過ぎてめー子はメーメーしか言ってない。
ちぇー、と珍しく胡座のまま着いて来ないワニを放置して仕事に戻った。
リベンジした時はプギャーって言わす予定である。
後書き
「危ねー、理性飛びかけた」
トカゲも運悪けりゃ食われてたのに慣れ過ぎてるせいで自ら危険に突っ込むように。
慣れによるマヒってこわいね!
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