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54、邪魔すんじゃねぇよ
しおりを挟む「どけ! この土くれゴーレムめ! もう少し知能指数上げやがれ!」
「許可証ノナイモノハトウセマセン。ナマエト、ヨウケンヲ、サイドノベテクダサイ」
「だぁーから! 名前はトカゲで宰相に用事あんだよ! ワニの遺言の件で来いって言われてんだから、通せよ! 許可証はねぇっつの!」
「許可証ノナイモノハトウセマセン」
ええい頑固ゴーレムめ!! 邪魔すんじゃねぇよ!
この騒ぎで宰相が飛んで来ないかと期待したが、どんだけ離れてんだという話である。
つか宰相も鳥もどっちか絶対、許可証を渡すの忘れてるに違ぇねぇ
こんなとこで足止め喰らってる場合じゃねぇのに
唇を噛み、こうなったら実力行使で…、と魔王城のゴーレム相手に無茶しようと考えていると、トンと肩を抱かれた。
ッ、気配無かったぞ。誰だ?
袖から覗く真っ白い腕と暑そうな黒コートを目で辿れば、外面の笑顔をゴーレムに見せる吸血鬼がそこにいた。
「トカゲの雑魚っぷりで馬鹿なことしようとしちゃダメでしょ」
「吸血鬼…か? いや、ワンチャン一回潰されれば死亡判定貰って隙突いて潜り込めねぇかと」
「それって下手したら誰か止めてくれるまでずっと潰されるんじゃない?」
「それで気付かれたら勝ちだろ」
「……潰され続けてもいいって? ほんと、むかつくなぁ」
「うえ、何だよ訳わかんねぇ。牛乳飲んどけよ」
吸血鬼の腹立ちポイントがよく分かんねぇ
血ばっか飲んでるから牛乳が足りてねぇに違いねぇと思う
「べーつに。一途なトカゲちゃんにフラれて傷心なんですー」
「何言ってんだ。彼女達がいっぱいいんだろ」
「……まーね。さ、行くよトカゲ。お礼は後で貰うから」
「許可証ヲ確認シマシタ。オトウリクダサイ」
「なっ、勝手に言ってんじゃねーよ! 助かったけどよ」
さっきまでの態度が嘘の様に壁際に下がったゴーレムを横目に、すたすた歩く吸血鬼の背を追う。
こいつ許可証貰える程度には上層部かよ…と今更知ったが、まぁ態度が変わるわけもなし。
少しして宰相のドアの前で振り向いた吸血鬼がにやりと笑った。
「さぁ、どうぞトカゲ? 面白い劇を見せてくれよ?」
「はん。喜ばす気はさらさらねぇが、逆転劇くらいは見せてやるよ」
挑発的に言い返し、とりあえず勢いを付けて宰相の無駄に豪華なドアに飛び蹴りした。
こういうのって勢いが大事だって本に書いてたんでな
「あっはっは!! やっばい早速笑える!! トカゲ最高!」
「メェ!? 敵襲か!? って、何で普通に入って来ないんだ!!?」
「よお宰相来てやったぜ! とりあえず吐くもん吐けやこら」
吹っ飛ばしたドアの前でふんぞり返ってたら、ゴンと頭を一発蹄で殴られた。
ひでぇ、ちょっとしたジョークじゃねぇか。地味に蹄硬いんだから手加減しろよな
「こんの……、まぁお前もワニが急にいなくなって動転してるんだろ。これで許してやる」
「これでっつぅ割には強烈な蹄だけどな。まぁ宰相聞きてぇことがあんだよ」
蹄型に窪んでそうな頭をさすっていたら、宰相がしきりに頷いた。
というか後ろでさっきから爆笑してる吸血鬼が鬱陶しいのでそっちを蹄パンチしてほしい。
白山羊さんを恨めしげに見ていると、宰相は話を切り替えるようにゴホンと咳払いした。
「メェ、さてトカゲ、此処に来たといういうことは鳥から話は聞いてると思うが、まずは呪いの解呪おめでとうと言っておこう」
「おう、宰相には世話になったな。起きたらお守り無かったけど助かったぜー」
「ワニにでも毟られたか? まぁ役に立ったならよかった。では、本題に移ろう。トカゲにはワニからの遺言で一部だが金銭が譲渡される。血族でないので特例扱いだが、まぁ今回は魔王様からも許可も頂いてるし法律上は問題ない。この用紙にサインだけしてくれれば後はやっておこう」
「あ、それ何だがよ、悪いが捨てといてくれ。ちょっとワニ捕まえてくっから」
「ああ、礼はいい。トカゲの気持ちも分かるから最期に会った者として手続きの省略くらい請け負……、メェ? 聞き間違いか? 今何て言った?」
「んあ? だから、その紙破っててくれって言ったんだ。宰相ならワニの居場所知ってんだろ?」
石の様に固まった宰相、後ろで爆笑して腹まで抱えだした吸血鬼。
何でもないように言い直したら、再起動した宰相に詰め寄られる。
おおう、近い近いこええ
「トカゲ、馬鹿はよせ。そりゃ動転するのも分かるが自分が何言ってるのか分かってるのか?」
「こちとらいたって冷静だぜ? あの馬鹿ワニに一発言ってやりてぇことがあんだよ」
「メェ! 無駄だトカゲ、ワニはもう逝った。諦めて自分の人生を歩め。その方があいつも報われるだろ」
「宰相、無駄かどうかは自分でやり切ってから決めるさ。それに分かんだ。あいつはまだ生きてるってな」
まぁ勘だが、と肩を竦めつつにぃっと笑ってやれば、ため息を吐いた宰相が角を撫でる。
しかし…と悩む宰相を、後ろで笑っていた吸血鬼が後押しした。
どうやら二人は思っていた以上に気心知れた仲らしい。意外だ
「ま、宰相、こう言ってるしいいんじゃないですか? トカゲ一人で行かせるのが心配なら連れて行ってやればいい」
「メ、お前はいつも軽くそう言うが仕事もあるしな」
「転移で行って帰ってくる位すぐでしょ。休憩と思えばいいんじゃない? 書類見るのは嫌だけど侵入者くらいなら排除してあげるよ」
「メーェェ……」
吸血鬼ナイスプッシュだ!
「なぁ宰相、ワニ連れ戻せたらそっちのが損失少ねぇだろ? 別にチャレンジくらいよくねぇか? 失敗しても私の命一つだぜ」
「だがワニに頼まれたしなぁ」
むう、まだ迷っているか……。ならば奥の手を使うしかねぇな
迷う宰相にダメ押しをせねばと懐に手を伸ばした。
宰相の蹄を握り、上目遣いでお願いする。
そして蹄の隙間にばっちりと賄賂を挟んだ。
「宰相、この鹿子さんのサイン入りプレミアムブロマイドやるから」
「分かった。ただし危険ならすぐ帰るからな」
「おっし!!」
ちょろかった。鹿子さんナイスだ!!
地味にめー子の友達だったので余裕で貰えたのだ。
やはりめー子天使だな
内心で敬虔にめー子神に感謝しつつ、準備する宰相から離れる。
とんとんと後ろ向きに進めば、壁に背中を付けて様子を伺う吸血鬼が壁にもたれていた。
もう笑いは収まったらしい。
ふと隣に立つ吸血鬼を見上げた。
「ん? なに?」
「いや、助かったよ。サンキューな」
正直、劇を見て嗤いに来ただけかとも思ってたのだ。
嬉しくてつい親し気に笑いかければ、ふいっと顔をそらされた。
な、舌打ちしてんじゃねーよ! ひでぇ!
「ブサイクな顔見せないでよねー」
「元からこの顔だっつの!! 感謝して損した! 留守番で侵入者にボコられてろばーかばーか」
「トカゲも、泣いて帰ってくればいーよ。そしたら慰めてあげる」
「誰が泣くか! いらねーよ!」
「ほらそこ、準備出来たから早くしろ」
呆れた顔で宰相が止める。
むう、完全に吸血鬼から売ってきた喧嘩なんだが、不本意である。
思いつつ、後ろを振り向かずに転移陣へと飛び込んだ。
まってろワニ、いま行ってやる
だから、それまでくたばってんじゃねーぞ
ただ、目的地だけを見て走り出した。
◇
「お前もいい歳だろ。ガキじゃないんだから雌には優しくだなぁ」
「そう? 優しくしてるけど」
「メェ、相変わらず難儀な奴メ」
「真っ黒になるまで溜め込む宰相に言われたくはないけどねぇ。じゃ、任せたよ。いってらっしゃい」
「メ、そっちも任せたぞ」
二つの人影が消えた跡で、吸血鬼は気怠げに背伸びした。
「さて、面倒だけど噂をすればな侵入者を消しに行きますか。かわい子ちゃんだといいなー」
◇
「なぁ宰相、ワニは何処に行ったんだ?」
「メェ、言ってなかったか。『龍の墓場』だ」
「『龍の墓場』?」
「ああそうだ。どんな龍族も最期に死ぬ場所がそこだ。そこは龍族の長が管理している」
頷く宰相。
その横顔は毛皮がそそり立ちどこか張りつめて警戒心に満ちている。
その名の通り、ワニが最期に選んだ場所もそこらしい。
つまり今は龍族の集落に居るというわけか。どうりでここは魔素が濃いのかと納得した。
さっきから身体が重いというか、息苦しいレベルでそこらで濃い魔力が渦巻いているのだ。
雑魚にはつらい場所だが、宰相の後を追っていると、宰相が白亜の宮殿の中へと入っていく。
門番らしき筋骨隆々の龍族にじろじろ観察されつつ、宰相の背中にぴったりとくっついて進んでいると、宰相が足を止めた。
厳しい表情で見つめる視線の先には壁だと見まがう程の何十mもある精緻な扉。
何処からともなく杖を取り出し片手に握った宰相は「最終確認だ」とトカゲを見た。
「トカゲ、先に言っておこう。ここからは命の保証はできん。一応先触れは出したが、この先にはワニの両親がいる。俺でも二人同時に相手するのは自分の身を守るだけで精一杯だ。二人がどういう態度で来るのか分からんから、最悪覚悟はしておけ」
心配性な宰相が脅しと本気を込めてトカゲを見る。
乾燥した唇を舐めて、強がりも多分に含んで挑発的に笑った。
「わかってっよ、宰相。悪いな、こんな役どころ頼んじまって」
「ふん、よくあるさ。分かってるならいい。行くぞ」
宰相がカツッと杖を突く。
音と共に、ドアを開けた。
瞬間、地を震わすようなダミ声が響き渡った。
「よおおー!! 待ってたぜぇ?? よく来たなぁ、宰相、そして我が憎き小さき者よぉ!!」
「ハニー、まぁまずは用件を聞こうじゃないか」
目の前に現れたのは三m近い長躯と棘のある尾、ワニを更に一回り大きく、更に筋骨隆々にしつつ美しい曲線も併せ持たせた規格外の鰐族の雌。そしてその隣に並び立つのは、撫でつけた淡い金髪と柔和なたれ目に、頬に少し皺のある優し気な雰囲気を持つ壮年の人族を模した男性。
だが分かる。どっちも足元を拝めねぇくらいの化け物だ
見ているだけで吐きそうな程の敵意と圧力を感じ、臓腑が引き攣れる。
何度死んだって傷一つ付けられないだろう
これが、ワニの両親で各部族の長か
ひるみそうになる自分を内心で嗤って、今にも逃げ出しそうな本能をねじ伏せる。
宰相が一歩前に出てコツリと杖をつくと、少し呼吸が楽になった。
どうやら魔術で威圧を緩和してくれたようだ。
「これはお久しぶりです。ご壮健そうで何より」
「ああ? そんなおべんちゃらが聞きてぇ訳じゃねぇんだよ。用件をさっさと言え。後ろに隠れてるお前だ。出てこい」
乱暴に振り下ろされた尾が大理石の地面を割った。
向けられた威圧に、負けてたまるかと母鰐の方へと一歩踏み出す。
「初めまして? じゃあ用件だけ言おうか。ワニに会いてえから会いに来た」
「トカゲッ、無作法に過ぎるぞッ」
「ふむ。ハニー、という訳だそうだ。どうやら息子に会いに来たみたいだよ」
宰相が慌てて仲裁に入ろうとした瞬間、雷が落ちたかのような轟音が響く。
真っ赤な大口を開けた母鰐が嗤う。
「グワッハッハッハ!! ほう、息子に会いに来たとぬかすか!! 知ってるぞ、息子が一番を見つけて以来ずっとアプローチしていたと。見向きもしなかった癖に、狂わせた癖に今更になって会いたいとほざくか!」
「そうだ。自分だって今更だって思うさ。勝手なのは百も承知だ! でも、でも! 今、ワニに会っていってやりたい言葉があるんだよ! 今だからやっと言える言葉があんだ!」
「ぬかせ、卑小で傲慢なる者よ。今更になって逃した獲物が大きかったと尻尾振るか。鰐族で最も恥ずべき行為だ。存在ごと噛み殺しても飽きたらぬよ。大事な獲物に気付かなかった間抜けが、この母の息子が欲しいとわめくな。片腹痛い」
「何と言われようと構わねぇさ。ワニに会う。何をおいても」
足が震えてる?
知るか、武者震いだっつの
笑え、笑え、こんなとこで負けてたまるか
「ああ、小癪な」
「ッ! トカゲこっち来い!」
間一髪、宰相が腕を引き身体を引き寄せる。
母鰐が片手間に振った腕から放たれた真空刃が、逃げ遅れた左腕を捥ぎ取って壁を抉る。
その様子を冷徹に観察していた母鰐が尾を打った。
「雑魚の遠吠えほど聞き苦しいものはないよ。口だけの愚か者め。息子に頼まれてなけりゃぁそのそっ首叩き落としてくれたのにねぇ」
「ハニー。まぁいいじゃないか」
「あんた、うっさいよ」
ぶっしゃあと恍惚の表情で肩を食べられる父龍とそれを見もしない母鰐。
口元を血で染めながら母鰐が呟いた。
「あんたみたいな部外者には分からないだろうけどねえ。鰐族は死んだ者の血肉を取り込む。そうすれば死者は喰った奴の中で生き続ける。つまりずっと一緒にいて弔うんだ。まさかあっても死後喰われる形だろうと思ってたが、愛息子を喰うことになるとはねぇ」
「ハニー、よだれがちょっと出てるよ。まぁ僕が息子とはいえハニーの一部だけでもあげるわけないんだけどねぇ」
「うぜぇ。という訳だ。あんたの出番はないんだよ。お引き取り願おうか、不遜で傲慢で卑小なる侵入者よ」
母鰐が話は終わりだと言いたげに牙を鳴らす。
これが最後の警告だという威嚇音。
宰相が心配げに振り向く。
ハッと鼻で笑えば、宰相が驚いたように手を伸ばした。
その手を避けて軽やかに宰相の背中から前に出る。
ああ? 土壇場ほど小賢しい知恵が回るのがトカゲ様の専売特許なんだよ
ワニに頼まれてるからすぐ殺せるのに殺せねえんだよな
諦めて、たまるか。こんなとこで諦めるなら、最初から此処に立ってねぇんだよ…ッ!
睨み上げる。視線が真っ向から向かい合う。
立場も、種族も能力格差も全て超えて真正面から対峙し合う。
「言いてぇことがあるから帰らねぇ。いま、ワニにあいてぇんだ!!」
「小童が…!」
怒声が地を割る。
視界の端で宰相が杖を振る姿が見えたが、気付いた瞬間には凄まじい勢いで地面に引き倒され、右腕が食い破られていた。
反射で呻いた腹を加減無く踏み抜かれる。
爆心地の様に凹んだ地面が更に陥没する。
ぎちぎちと再生する音と臓物が破れ飛び散る音。
噛み千切った腕を喰うのも嫌だとばかりに吐き捨てようとする母鰐。
生温い息がかかり、再生する間も無くもう片腕も食い破られそうになった時、ふと何かに気付いたように母鰐が動きを止めた。
何かを確かめるように肉片を咀嚼する音がする。
食べているのが自分の腕だと分かるので思わず顔を顰めていると、真っ青になった宰相が心配げにトカゲを見た。
とりあえず動けないので大人しく母鰐の様子を見ていると、呆れた風な顔で見下ろされる。
はぁ、と不本意気なため息が吐かれるが、正直現在進行形で腹に風穴開いては母鰐の足で再生が抉られるこの状況の方が不本意だと思うぞ
「あんた、会いたいってそんな理由かい。―――はぁ、理解ったよ。間抜けなあんたに看取る機会くらい与えてやろう。あんたも現実を見たら何も言えなくなるだろうさ。自分のしたこととその結果を受け止めるがいい」
ずぷりと足を抜いた母鰐が、曇りなく銀色に輝く小刀をトカゲの近くに放った。
澄んだ金属音が響く。
「これをあんたに貸すよ。生命力を刈り取れる小刀さ。ひと思いに苦しまずやれる。このあほみたいな龍族は番相手に殺される死に方が至上らしいしね。息子への母からの最期のはなむけだ」
母鰐が続いて呆れた顔で視線を投げた先には、何故か羨ましそうな顔でこちらを見る父龍。
さっきから変態臭しかしてないぞ。何処に羨ましい様子があったんだ
とりあえず再生が終わったので、穴あきだらけの服をせめてもので叩いて埃を払っていると、のっしのっしと去る母鰐と入れ違いで父龍がやってきた。
「んー、僕はハニーの身体に息子とはいえ僕以外入って欲しくないんだよねぇ。それに僕にとってのハッピーエンドが好きでね。だから君に一つ教えてあげる。僕達龍族と一番目との関係は思っている以上に深い。だから――――」
「余計なことを」
「まぁいいじゃないか、チャンスぐらいあげても。挑戦しても誰も損はしないさ」
失敗しても私の命が無くなるだけだからな
内緒話をする様に耳元に寄せていた顔を離し、ねぇ?と優しく微笑む微笑は空々しい。
宰相が苦々し気に様子を見守る。
なるほど、さすが老獪な龍族達の長だなと小刀を見下ろしながら思った。
ふん、どんな結果になるか、黙ってみてろ
「感謝する」
「ハッ、決まったならさっさと行きな」
それっきり、黙して様子を見る母鰐。
呪文を唱えた父龍が光り輝く転移門を一瞬で用意した。
そして面白がる様に手の平で道行を指し示す。
今日は移動の多い一日だなぁと転移門を見て少しぼんやりする。
ふぅと呼吸を整えていると、後ろから宰相が呼び止めた。
「トカゲ、俺も行こうか?」
「もう答えは分かってんだろ宰相。大丈夫だって、ちょっくら行ってくらぁ」
「……二人で帰って来いよ」
それには答えず、背を向けてひらひらと手を振る。
解けたおさげは適当に一つ縛りにした。
やっとここまで来たのだ
一つ息を吐く。
顔を叩く。
長いような、短かったような、結末はもうすぐそこにある。
その結末は自分で決める。
なぁ、そうだろ
誰にともなく宣戦布告。
「よし、行くか」
運命という名の死神に戦いを挑むのだ。
見てるか?
これがトカゲ様だって魅せてやるよ
傲慢に、不遜に、挑むように笑い掛け軽やかに踏み締めるようにトカゲは一歩踏み出した。
後書き
☆地味補足☆
鰐族は死者の弔いで、その死体を”喰う”のですが、この理由が”喰った肉片の想いや感情、記憶を少し取り入れれるから”が理由です~。鰐族にとって食事とは別で”喰う”というのはとても大事な表現方法の一つでさ~。他種族でも何種族か似た表現方法の子達は居ますね~☆(割愛)とはいえ少数派でさ~(笑) 父龍は母鰐に感化されてるので果てしない理解力を示してますがw
一応新鮮な死体程そういう思いを感じれる量は多いっすね~。時が経ってると全然得られなかったり。あと未練過多だと強い思念が残ってたりも(割愛
というわけでトカゲさんの腕を喰って、約束なので殺しはしないが散々甚振ってやろうとした母鰐さんですが、トカゲさんの想いをちょこっと知ってしまい、「おいマジカヨどうしようもねぇなコイツ。はぁ、しゃーねぇ」とちょこっと見逃すことに。普段は身内想いの豪快で気のいい姉御肌なのです(笑)(面倒になると腕力で全て解決するが←
次話、トカゲとワニが邂逅します。
それがどんな形であれ、お互いの覚悟を見せるでしょう
どうなるかな?どんな形になるかな?
エンドロールはすぐそこ
それがどんな形であれ、願わくば彼らの望み通りでありますよう
次話「愚か者の愛し方」
どうか最後まで彼等の覚悟を見届けてあげてくだせぇ
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