魔界食肉日和

トネリコ

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53、終わらせてたまるか

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 目を覚ます。
 まるで長い夢から覚めたような心地だ。

 起き上がって周囲を見渡せば自分の部屋。
 なのに何故か違和感を覚える。

 なんだ、何か…

 ベッドから降りようとして、ふと気づいた。
 自分の頬へと手をやる。
 湿った感触が指先を濡らした。

「あれ、何で泣いて……」

 その瞬間、全てを思い出した。
 ハッとして周囲を見渡すも、ワニの腕も、ベッドの汚れも、机上の鱗も跡形もない。
 足がもつれるのも構わず、転がる様に部屋を飛び出した。
 体調は寝る前よりも軽いのに、やけに身体が重い。

「ッ!! 最後まで人の話は聞けよ! 言い逃げとかダセぇことしてんじゃねーよ!! ワニ! 聞こえてんなら出てこい!!」

 大声で、辺り構わず叫ぶように怒鳴る。

 どれくらい眠っていた?

 焦りが募り、幾度呼べども来ぬ姿に胸の奥が焼け付く様に焦げる。

 なぁ、どこだよ
 お前が帰る場所はここだろ
 お前が言ったんだろっ

 不安に曇る心。
 逃げ続けた臆病な内心が、古ぼけた父の記憶を引っ張り出す。
 思い出せよとばかりに実の父に喰われ続けた記憶が何度も過ぎる。姿がだぶる。記憶が被る。
 慣れきれぬ恐怖に結局は都合の良い存在えさなだけじゃないかと理由を探す。

 どうせ恐怖と好意を勘違いして―――

 ハッと嘲笑った。自分を。

 往生際が悪いのはお互い様か

「呪われて思考能力が鈍ってた時の方が、一番簡単に、単純に、意地張らずに答え出せてたなんてとんだ矛盾だなぁ…!」

 最後に答えを突き付けたのが自分だなんてとんだ皮肉だ
 呪いさえ無かったなら未だに誤魔化し続けれただろうに
 最後の最期まで誤魔化して、後悔にさえも気付かぬフリを出来ただろうに
 ワニが姿を消すか、喰われて死ぬか、そんな決まり切った悲劇で終わった話だろうに

 こんなに…、居ない姿を探して汗みずくで走り回ることもなかったろうに

 肺が苦しくて胸を押さえる。
 病み上がりの貧弱さ舐めんなよ
 はぁっと乱れた呼気を吐く。
 苦しいのは―――

「バカワニめッ、こちとら初恋自覚して告った乙女的展開の筈が秒で失恋して今生の別れだぞッ。こんな話売れるかクソがッ」

 逃げ続けたツケが回って来て、信じてすら貰えなかったのが笑える。
 血婚はお互いが魂から相手を愛しあってなければ双方の魂が消滅する血の契約だ。

 知ってるさ、リスクくらい
 こんなクソみたいな魔生をお前と分け合って伸ばしてやろうって
 ああ、そりゃ簡単に応えれなかったさ

 こちとら死にたいわきゃねぇが永遠に生きたいわけでもねぇんだよ。身勝手に殺されるのは癪に障るから、こんなクソみてぇな魔界で吹けば飛ぶような命抱えて必死に生き足掻いてんだ。寿命全うしたいっていう単純でいて、雑魚じゃぁ、こんな魔界でじゃぁ酷く不可能な命題に挑んでたんだ。

 公園、図書館、裏庭、探して探していないいない。

 臆病だから、覚悟決めんのに時間要るんだよ
 ましてや自覚したばっかだぞ
 それでも……、それでもそのゴールをお前に付き合って何十倍も伸ばしてやるっつったんだ
 熱に浮かされてたからって、戯れ言なんかで言えるかよ
 このトカゲ様が、本気の覚悟に対して戯れ言なんかぬかすかよ

 喰われるのはそりゃ今だって嫌さ
 それでもあの時確かに認めちまったら、もう元には戻れねぇんだ
 出会った時に運命だなんてぬかしてたろーが
 私は命ごと賭けた告白かくごだったんだぞ
 おめぇは消滅する方に賭けたのかよ


 無痛なのにいたいいたい胸を耐える様に唇を噛みながら走っていれば、とうとう足がもつれ勢いよく転ぶ。
 擦れた皮膚が滲む。

 求める声を望んで転んだまま顔を伏せた。
 けぎょーけぎょーと愚かなトカゲを馬鹿にして魔鳥が鳴く。

 常ならどんくせーなーとでも言いながら、勝手に現れて勝手に助け起こすだろうが
 勝手にやってきて勝手に喰う癖に、何今更格好つけてんだよ

 解けた呪い、感触の残る舌先、刻まれた新たな呪い。

 なぁ、愛してるなんて言うなら置いてくなよ
 勝手にいなくなんじゃねーよ
 こんだけ振り回しといて、身勝手なのはどっちだよ

 傷口は既に治った。
 血は既に乾き始めた。
 なのにいつもの姿だけがない。

 悔しくて悔しくて転んだまま地面を拳で殴る。
 何度も、何度も。
 痛いのは―――

 すると上から影が差した。
 仕方なしに影を仰ぎ見る。

 魔鳥を肩に止まらせた鳥が、普段の様な飄々とした顔でトカゲを見下ろしていた。

「トカゲさん無様っすねー。汚れるっすよー」
「何だ、鳥かよ」
「何だとはひどい言いようっすねー。これから後ろ盾がなくなることの意味、生き汚いトカゲさんならすぐ理解出来るでしょーに。俺にそんな態度とか、自殺志願っすかー?」
「うっせ、言いたいことはそれだけかよ。今忙しいんだ。あっちでペットと遊んでろ」
「へー、ほぉー」

 どこが忙しいんすかと肩を竦め、呆れた様にこっちを見やる鳥。
 次いで鉤爪の着いた足で背中を踏まれていた。

 ぐえ、相変わらずだなこのクズ鳥め

「なぁーに自業自得の癖に悲劇のヒロインぶってんすかー? 冷めるんでやめてくれますー? あ、俺は元隊長と違って助け起こす義理無いんで自分で起き上がってくださいねー」
「…チッ、言われなくともわかってっよ。このクソ鳥め、そんなん言うなら足どけろ」
「はぁ、元隊長もこんな弱くてその癖吠えるトカゲさんの何処に惚れたんでしょうねぇ」

 そんなのワニに聞きやがれ

 けっと思いつつも起き上がれずにいるとふと疑問を覚える。

 ん?元、隊長?

「なぁ鳥」
「はいはい何すかトカゲさん?」
「元って何だ?」
「そりゃあ簡単っすよ。ワニさんは職を辞したから元隊長。それ以上でも以下でもないっすよー。そりゃ死に行く者に名誉も職もいらないっすもんねー」
「なっ……」

 ワニが居た痕が無くなっていくこと、現実として感じるワニの本気。
 動揺して言葉に詰まっていると、足をどけた鳥が嘴を開いた。

「何を今更動揺してんすか?」
「……そりゃ動揺くらいはするだろ。そういうお前は冷静そうだがな」
「まー俺は上司が挿げ変わるだけっすからねー。けどトカゲさんには朗報っすよー」
「朗…報?」

 無表情の鳥が喉元の毛を膨らませる。 
 真っ黒なビー玉にトカゲを映して、「そうっすよー」と鳥は呟いた。

「ワニさんの退職金を一部とはいえ遺言で貰えるんすよー。大部分は補填用で回収されたそうっすけど、何十分の一とはいえワニさんの総資産ならトカゲさん一生働かず暮らしていけるっすよー」

 「よかったっすねー」と呼び寄せた魔鳥を撫でながら鳥が呟く。
 飛んできた魔鳥が砂を巻き上げる。
 じゃりじゃりと喉に絡まって飲み込めない
 苦い味がする。

「誰が、そんなもん欲しいっつったよ」
「別に、いつもの元隊長の勝手っしょー。トカゲさんは気にせず有難く貰っときゃぁいいじゃないっすか。こんな後腐れ無くて大金貰える機会なんて普通一生無いんすし」
「…」
「今後、一人で生きていくのに綺麗ごと言って意地張ってても仕方ないっすよー?」

 俯いたまま地面の砂を握る。
 暫く立ったままその様子を見下ろしていた鳥。
 けぎょうと魔鳥が飽きたと言いたげに鳴くと、鳥が「ああ」とわざとらしい鳴き声をあげた。

「そうだ忘れてたっす。トカゲさんにお伝えすることがあるっすよー」
「……何だよ」
「えーっと何でしたっすかねー。ああ、思い出した。ワニさんからっすー」
「ッ!」

 ばッと勢いよく顔を上げれば、若干不本意そうに頬を掻きつつ、鳥が咳払いをした。

「はぁ、もう辞めたから仕事じゃないんすけどねぇ。セリフも柄じゃないっすし、まぁ貰ったからにはするっすけどねー。トカゲさんはマジで感謝してくださいねー」
「ッ、焦らすのはいいから早くしろよ鳥…!」
「我儘っすねぇ。えー、それでは―――――『トカゲー、付き合わせて悪かったなー。宰相に言ってあっから、少しは残った筈だぜー。詫び金代わりに受け取ってくれなー。あと軽いから飯は食えよー? でも偶に死に掛けてんだから拾い食いはやめてその金で飯屋行けなー』 トカゲさん拾い食いで死に掛けてたとかウケルっすー。えーっと、後は、『それから城の裏手の森はあんま行くなよー? よく狙われてんの消してやってたけどもう守れねぇからなぁ。あと雄選びもトカゲどんくせぇんだから慎重にしろよー? 俺ぐれぇ強くてちゃんと守れる奴じゃねーとダメだかんなー』 以上っすー。格好つけてる割に未練たらたらで男の嫉妬満載とか見苦しいっすよねー。ワニさんレベルとか認める気さらさらないじゃないっすかー」
「……そうだな」
「へぇ」

 俯いて震えるトカゲを観察するように鳥が見下ろす。

「意外な反応っすけど、ま、それが普通っすね。ワニさんなんて忘れた方がそりゃトカゲさんの身のためってもんすー」
「…ああ、その通りだ」
「まぁ十年付き纏われて損したとはいえ、残りの人生バラ色じゃないっすかー。損得で言えば得したんじゃないっすかー? トカゲさんはほんとラッキーっすねー」

 鳥が褒め称えた風に鳴らす声は何処かあざけりも含んでいる。
 俯いて地面に傷跡をつけたトカゲを見てけぎょーと魔鳥が鳴いた。

「それに比べて、ワニさんはほんと愚かっす~。色恋に狂ってあれほどの名誉も強さも命も捨てるとか愚か者の極みっすよー。俺なら絶対考えられないっすー。いや、いかれた龍族の自己犠牲万歳な血のせいっすかねぇ。そう思うと哀れにすら思うっすー」
「……」
「あれ? トカゲさんそんな地面握っちゃって、怒っちゃったんすかー? 実際その通りじゃないっすかー」

 カタカタと音が鳴る。

 ああ、そうだな、全くもってその通りだ

 ぐっと拳を握れば、先程まで抜けていた力が漲ってくるのが分かる。
 遺言だとか言うふざけた発言から始まり、鳥の発言を聞いてふつふつと溜まっていたものがあふれると、一周して冷静になるようだ。

 いや、冷静じゃねぇか? 久しぶりだぞ、こんなはらわたが煮えくり返った感じは
 俗でいうぷっつん状態だ。涙出そうだ
 勿論感動でじゃねぇ、怒りで、だ

「ああ、鳥、思うぜ。あいつは何勝手なこと押し付けて何馬鹿みてぇな英雄願望こじらせて野垂れ死のうとしてんだってなぁ…!」

 ぐっと膝に力を込めて起き上がる。

「あれ? 現状認識して怒ったんすか? てっきりワニさん侮辱されて起きたのかと思ったっすー」
「はッ、さっきからその通りだっつってんだろ。あの馬鹿ワニめ、鳥の発言諸々聞いてたらやっぱ段々腹立ってきたんだよ」

 ペッと吐いた唾は砂混じりで、吐き出せばすっきりする。
 そして吐いた唾はもう飲み込めないのだ。

「ワニも鳥も馬鹿にしてんじゃねーよ。こちとらそりゃ金に生き汚ねぇがな、目先の金に目が眩むような耄碌じゃねぇぞ。金の卵を産む鶏は食わずに養う派だ」
「へぇ? つまりどういうことっすかー?」
「あの馬鹿ワニ捕まえてそんなシケた金以上にこき使って稼いでやる」
「……ぷはッ! トカゲさん吠えるっすねぇ! ワニさん既に死んでる可能性しかないのによくそんな大言の博打を吐ける! じゃあ金はいらないと言うんすかー?」
「は! 鳥め、話を聞いてなかったのか? 金はいらないんじゃねぇ、後で回収してやるっつってんだ。それに博打でもねぇぞ」
「ふーん? 博打以外の何物でもなさそうっすけどねー?」

 カタカタと嘴を合わせて笑う鳥を胡乱げに見返す。

 てめぇが証人だっつの
 全く、魔界の奴等はなんでこんなひねくれもんばっかなんだか

「鳥、まだ隠してることあるだろ。言え」
「えー、あるっすけどそんな風に言われると言いたくなくなるのが鳥ってもんすー」
「鳥族全般じゃなくて特にてめぇがひねくれ過ぎなんだろ。まずもって発破の掛け方が何で煽り百パーなんだ」
「えー、何の話っすかねー」
「しらじらしいっつの。照れてんのか?」
「調子に乗ると絞めるっすよー?」
「じょ、冗談だっつの」

 からかうと真顔でキレられたので大人しく降参すると、分かればいいんすーと魔力が仕舞われる。
 こいつ普段やらねぇことしたからって逆ギレすんなよなー
 パンパンと土を払ってると、背中を向けた鳥がわざとらしく呟いた。

「はいはい、ワニさんが城出てからまだ丸一日しか経って無いっすよー。あと、宰相が遺言金の受け取りのことでトカゲさん呼んでたんすけど、ワニさんと最後に話してたのも宰相っすー。じゃ、伝えることは終わったんで後はがんばってくださいねー」
「へーへー、ありがとさん。……なぁ」
「なんすかー?」
「何でお前が手伝ってくれたんだ? どうせ上が挿げ変わるだけなんだろ?」

 ふと疑問に思って何とはなしに問えば、鳥は少し考えるように上を見て、あっけらかんと答えた。

「まぁ、お二人のやり取りに迷惑被りまくりだったっすけど、馬鹿なやり取り見てるのも意外と楽しかったからっすかねー。んじゃ、仕事あるんで後は自力でどぞっすー」

 自分のためっつーか、ま、鳥らしーか

 ばっさばっさと飛び立つ背中を少しの間見送ってから、踵を返して走り出す。
 不思議と、荒れ狂う様な焦燥はもう静まっている。
 凪いでいるのではない、奥底で揺蕩っているのだ。
 目的地は一つ。
 覚悟はとっくに決まっている。

 ワニ、馬鹿にしてくれんなよ?

 十年なんてワニの寿命からしたら瞬きの様な一瞬だろ
 トカゲの方が遅くて短いとか思ってるんじゃねーだろうな

 は虫族の子孫が鰐族や龍族だけだと思うなよ
 蜥蜴族も百」年の寿命で一生の相手は一人だけだっつの
 他の雄勧めてんじゃねーよ、ばかわに













後書き
 

 

 

 
 鳥さんツンデレめーとか言ったらぐっさーと嘴で目ん玉やられそうです←
 ツンデレじゃなくて、言葉通り前の日々を「あの」鳥さんが少しだけですが惜しんだからですね~

 ま、言うてもお手伝いは何もせず、あくまで嘴を挟んだだけですが、お仕事でもないのに珍しいです~

 丸一日しか経ってない→まぁ化け物ワニさんの生命力なら生きてる可能性もあるんじゃないっすかー
 最期に会ってたのも宰相→死に場所くらい把握してるんじゃないっすかー

 という読解に(笑)

 鳥さんが「元隊長」とかのフレーズ入れてたりと地味に発破のミニジャブ打ってたのですが、トカゲさんは土壇場ほど頭の回転が良くなるので気付けてよかったです~(スルーしてても鳥はワニを追う覚悟がないならわざわざ失言を零す予定はなかったので。そこらへんの覚悟を見極めての観察でした。金で釣られて終わるならそれまでと判断して飛び去ってたルート
 地味に鳥さんも魔界人らしく化け物レベルで強いワニさんのこと何だかんだで憧れてはいるんすよ(勿論絶対言わないっすし内緒っすけど

 鳥が最期のワニさんに貰ったものは「物」ではなく「言葉」で、「遺言、お前に託すわー。お前なら必ず届けるだろうしなー」です。勿論「もう仕事じゃないっすから届けないかもっすよー」とか「色恋で死ぬ気とか隊長イカレてるっすねー」とかからかったひねくれ発言を返した鳥さんですが、内心嬉しかった模様。同時に自分じゃ止められなくて惜しくて悔しかった模様

 ひねくれ鳥さんなので、「もう仕事じゃないから届けないかもっすよー」→隊長職のままなら言うこと聞いてもいいっすよーなのはお察し

 さて、長くなりましたがお次は宰相とトカゲさんと、ゲスト入れようかここは迷いつつ、強大なお二方にご登場願う予定ですー☆お楽しみに☆

 ちな、ペットリは今の所まだ生きてます(ヨカッタネ!
 ではでは☆



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