趣味だったオメガバースの世界に転生したようだが、何か違うので布教しようとしたら変態扱いされる件

トネリコ

文字の大きさ
9 / 49
小学生編

幕間1 小学三年生 ドッチッチ あいつやりやがったな 下

しおりを挟む



 よし、健太を大神に売ろう


 一瞬で迷うこともなく判断した自称愛の美少女戦士で大人な利根田 理子であった。

 矛盾する? 貴様は触れてはならぬ闇に触れてしまったようだな…
 さて、というわけでぜえはぁ…。いや、もう息切れがヤバいのである。

「大神くんや……」
「あ? 何だよ」
「聞いてくれ。正直さっさと終わりたい。でもボールに当たりたくない。お互いそうじゃないか?」
「で?」

 ふんと馬鹿にしたように顎をしゃくる様子にいらっとするも、此処は大人しく作戦を告げる。
 健太への慈悲? 主は時に試練を与えるもんだろう? そんなもんである。はい適当。

「健太を当てさせてやるから、そしたら飽きたとでも言ってさっさと終わらせてくれ。チャイムまで待つのしんどい」
「ひでぇやつだな。あっちは頑張ってるのに」

 ちなみにこの間、健太と、敵チームになった友達連合との間で盛大なボールの避ける攻防戦が行われている。

 見てるだけで元気吸われそう。そのまま時間いっぱいまで遊んでくれりゃあいいのに

「あっちはあれが楽しいんでしょ。むしろか弱い女の子をこの主戦場におくなし」
「はっ」
「お前徹底抗戦する気か??」

 流石に大人~な理子ちゃんにも怒る時があるのである。
 こいつ何でも感でも、あ?だの、で?だの、挙句の果てに鼻で笑うだのと……。

 もうこいつに同盟なんて持ってくるんじゃなかった、やはりこいつと馴れ合うなど我が考えが砂糖菓子メープルシロップ掛けレベルで甘かったのだと、まるで最近の国家情勢の縮図みたいに考えを一転緊張関係へと翻していると、「まぁ待て」と大神が自然を装って声を掛けた。

「乗ってやるよ。俺もさっさと終わらせたいしな」
「なら何で無駄に煽ったし」
「とりあえずお前適当に外野の近くでこけろよ」
「はぁ? 当たりたくないっつってんじゃん」

 こやつ、さては馬鹿だなと訝し気な目で見れば、心外だと言わんばかりに大神は片眉を上げた。

「あいつが絶対守りに来るだろ。そしたらその隙を当てられて試合終了だ」
「はあ? 健太が? そりゃ時間もないし運動神経いいから逆に取りに来そうだけど、ダブル狙われるくらいなら引き分けのがいいと思いそうじゃない?」

 至極真っ当な意見を述べれば、逆に大神に呆れた者を見るような目で見られた。

 解せん…!! やはり常人にその思考は理解不能だとでも言うのか…!

「ま、乗るかどうかは任せるぜ。俺はお前が当てられようが時間を潰そうがどっちでもいいしな」
「ドッチだけにってか! くっそう、分かったよ。もし作戦失敗したら後で覚えとけよ…!」

「おいりこ! 狙われてるぞ!」

 瞬間、咄嗟にしゃがんだ頭上をボールが通り抜けた。 

 誰だよ顔面セーフなのに顔面狙ったやつ…!絶対女子だろ…!!

 ボールが遠くの方まで転がっていく内に、ひいこら何とか健太の近くまで撤退する。

 うひい、さっき売る契約が成ったのに健太ナイスぅぅ!! ほんのちょっとだけ申し訳なさが湧いたぞ…! ボールを沼に落としたのもお前だから、正直蚊を潰した時程度の申し訳なさだがな…!!

「おいりこ、さっきまで大神と何話して――」
「健太来た…! 逃げるよ! 健太のこと頼りにしてるから…!!」
「お、おう!」

 何故か予想以上に張り切りだした健太を怪訝に思うも、やはり小学三年生の男子など煽てれば木に登る猿のような扱いやすさなのだろう。

 ふわっはっは! 今からこけるから、頼む我が身を守ってくれ…!
 え? クズい? それは作戦立案者の大神にでも言ってくれ…!

 来るぞ来るぞと別の緊張感も持ちつつ、ボールを持った男子がコートの近くに戻ってくる。
 いまだ!とばかりにずさぁっと顔面からこけてみた。ヘドロに塗れるくらいなら砂ぼこりのがまだマシである。

 おい、大神、今へたくそって言ったの、りこちゃんイヤーで拾ったからな!!

「おい! りこ立てって!」
「健太無理っ、ごめん後は任し…」
「げっへっへ、引き分けにしてやるぜぇ…! このくさくさボールを食らえっ!」

 やんややんやで楽しむ周りに乗っかって意外とみんなノリノリでやっていると、明らかに当たる速度とコースで向かってくるヘドロ砂ボール。

 うわ…、大神に嵌められたかも…。というか健太も流石にわざわざ守って危険になるなんてそんなことする訳ないだろうし―――

 馬鹿をしたな…と、最早一息で当たると目を瞑った時、ざわりと空気が揺れた気がした。

 次いで黄色い悲鳴。…ん? 黄色い悲鳴?

 おそるおそる視線を上げると、健太が目の前に立ってボールを受け止めていた。

「け、健太…、何で…」
「お前見捨てて行けるわけねーだろ」

 無駄に当然とでも言いたげに返されるセリフ。大神の予想は当たってたと言える。腐れ縁レベルで一緒に居た健太の正義感や義侠心を僅か二日で読んだのは、流石と言えるし若干悔しくも感じはする。だが、だがな……。

 何で当たらず受け止めれるんだよ…! お前はアルファか…! そのお猿顔でアルファだとでも抜かすつもりか…!!

 動揺したまま何とか上体を起こして座り込んだ私の前で、何のパワーが働いているのか、健太はその沼ボールを恐れず掴んで、これまでにない速度で回転させながら投げたのだ。

 これには流石の大神も避け切れず真正面から受け止めるしかなかった。

 バッシ――ンッという、最近のお子様用に改良された痛くないふわふわボール素材からあるまじき音が木霊する。

「へっ。やっと受け止めたな」
「お前…」

 その声音には苛立ちと怒りが混じっており、我がりこちゃんイヤーには「お前が中途半端なことしやがったからだろ??」というドスの効いた副音声が聞こえている。

 ひいっ、ヤバイ、二人ともヤラレルっっ

 若干殺意混じりの大神から投げられたボールの速度は凄まじく、受け止めようと真正面から構えた健太の腕を弾き飛ばし、ボールは高らかに宙に舞った。


 そんで、我が顔面に落ちて転がった。


「「あ」」


 私以外の全クラスメイトと大神と健太の声が重なった瞬間、無情にもキーンコーンカーンコーンと試合終了のチャイムが鳴る。


「引き分けだね~」


 と、のんびりお花ちゃんの声が木霊するなか、心の中でむせび泣いたには言うまでもない。





 はい、という因縁があるのである。他にも色々あるがそこは割愛しよう。

 な? 酷いだろ? あのあと、皆から腫れ物扱いを暫くされたんだぜ…?

 な? 酷いだろ? あの後給食の時間だったんだぜ? な、酷いだ以下略。

 まぁ悔しかったから嫌がらせとして授業出てないと分からない問題ばっか出して、え?これも分かんないの?ぷーくすくすみたいに揶揄ってやったら、最近授業には出るようになったんだがな。 

 ちぇ、今度は小学校高学年の問題を出す予定である。

 え? 大人げない?

 まぁこの手の社会に対して斜に構えたやからは、ガミガミと授業に出るよう言うよりもこうした方が勝手に対抗意識燃やすのである。 

 一応りこちゃん大人なんで若人の成長には貢献するのでござるよ、うむ、感動したであろう?さあ崇めるがよい称えるがよ…すんません調子乗りました。



 さて、そんなこんなで四年生になった。
 










後書き
 
 

 あいつやりやがったな…(りこちゃん健太を売るの巻き
 ありつやりやがったな…(健太、男を見せるの巻き
 ありつやりやがったな…(大神、りこちゃんの顔面にボールを当てるの巻き

 伸びすぎたのがこちらでした☆ダイジェストってなくて伸ばしたお☆←おい

 次話は『小学四年生 大神の家に行くとか嫌なんだが。結論、喧嘩売って逃げた』予定でさ~☆


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた

桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。 どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。 「もういい。愛されたいなんて、くだらない」 そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。 第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。 そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。 愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...