趣味だったオメガバースの世界に転生したようだが、何か違うので布教しようとしたら変態扱いされる件

トネリコ

文字の大きさ
35 / 49
高校生編

掌小話2 かさ

しおりを挟む
 
 
 連想で書いたので、また別の日の雨模様です~
 







「傘ないや」
「入れよ」
「え。見られるの恥ずかしいから止むの待つよ」
「深夜までか?」
「げ、マジ?」

 慌てて携帯を確認するりこを前に、流石に不貞腐れる。普通の女達なら喜ぶだろうし、普通の彼氏彼女であったら二人で帰るだろう。
 付き合っていることを否定しないとはいえ、目立たなくを心掛ける様子は正直面白くはない。

 携帯を確認したりこは、肩を落としてがっくり項垂れている。

 その様子に、思わず強張った声が出た。無意識に出る不機嫌な唸りは、脅しなど本意でないので止めようとするも、咄嗟に出てしまう。聖也たちよりも濃い血は、先祖返りに近いとの両親の見立てだ。濃過ぎる血など邪魔でしかないものを。

「そんなに嫌か」

 途端、俺の顔を見たりこが目を瞠った。嫌われている訳ではないと感じ、少し落ち着く。

「いや、愚問だな。俺は走れば速いからこれ使って帰れ」

 分かってはいる。俺は周囲に見せつけて牽制したいが、りこにとっては惚れてではなく仕方なしで付き合ってるようなものだ。

 だがそれでも欲しいと決めたのは俺だし、最後にこの腕の中に居ればいい。歯がゆいが、これが現状ならば今は受け入れるしかないだろう。
 
 黒い傘を差し出すのだが、りこは何故か顔を顰めてゆるく頭を振った。うわぁ、自己嫌悪やばいと髪をくしゃりとさせながら小さな声で呻いている。前よりも聞こえにくくなったとはいえ、アルファを前にこの距離で小声とは迂闊だ。それとも、油断する程度には気安いのか

「ごめん。傷付けるつもりじゃなかったけど、自分のことしか考えずに言った。あんたの傘なのに借りれるわけないじゃん」
「別にこれぐらいじゃ風邪引かねえしな」
「そういうなら私もあんたの時以外無敗よ」
「まだ覚えてんのか」
「そりゃ勿論」

 呆れた風に言えば、ふふんとりこが胸を張る。そうして先ほどまでの空気を拭う様にりこが俺の傘を手から取った。パンと乾いた音がして、雨の下に大きめの蝙蝠傘が開く。ぱらぱらと水を弾く音がする。

「そうと決まったらさっさと帰ろっか」
「…いいのか? 気になんだろ」
「あんたの傘を奪って濡らして帰す鬼畜女称号よりマシよ。風邪を心配する方が嫌だ」

 わざとらしく片方を空けて、ゆるりと傘を回しながらりこが振り向いた。にやりと悪戯気に笑う。現金なもので、はやくはやくと瞳と口が急かす。

 無自覚の癖に、俺を心配なんてして憎らしい程手の平で転がすのが上手い女だ。でも、本人は自分勝手を通したとでもまた思っているのだろう。仕方なしにそのかってに乗ってやる。

 一息でその隣に佇むと、掴んでいた黒い傘を奪った。動きが見えなかったのか、驚いた風に見上げる目は猫の様だ。その様子が愉快でまたくつくつと笑う。

「我儘だな」
「その神出鬼没具合やめてよ」
「いつものことだろ」
「傍若無人め」

 鼻を鳴らして笑えば、いつもの様に憤慨しているのに今日は左肩が触れ合ったまま離れない。
 それだけでつい機嫌良く喉が鳴った。俺も大概現金なものだ。

 ぱらぱらと音が鳴る。

 雨は周囲の雑音や臭いが紛れるから嫌いでなかったが、いつもよりも近い声や体温は雨の気怠ささえ心地よさに変える。
 
 不意に視線を感じてそちらに目をやると、目を丸くする女子がいた。
 しぃと口元に指を当て、隠す様に傘を少し傾ける。

「ちょ、あんたが濡れるから真っ直ぐにしなって」
「変わんねぇだろ」
「んじゃ真っ直ぐでもいいでしょ」

 折角傾けたのに、すぐ強引に戻す様子は普通の女子じゃねぇと思う。素直に受け取ればいいのに、ああ言えばこう言って好意は全て受け流そうとする。普通に見れば可愛げのない行為の筈が、子猫の引っ掻きにしか思えないのは俺の目もよっぽど曇っているのか

 仕方なさを装って、細い首に掛かった髪を掬って耳元へと顔を寄せた。ふわりと雨と汗交じりのりこの匂いがする。

「ちょ」
「生徒が見てるから大人しくしてろ」
「なっ」

 耐性がないからか途端に頬が赤くなって睨まれるが、周囲を気にしてかすぐ顔が伏せられる。
 いつもなら反射的に押し出す手が、跳ねた水滴を気にして頼りなく触れて離れた。

「くそう、もう濡れてもいいから走って帰ってやる」
「あと五分だから我慢しろって」

 所在なさげに歩くりこの方に傘を傾けるが、今度は胡乱に見られはするも戻されない。それに気を良くしてくつくつと笑えば、益々不貞腐れた様に顔を背けられる。からかいたくなる様子は愛らしい。

 ぱらぱらと雨音が沈黙を満たす。
 心地のよい無言で歩けば、思ったよりも早く玄関口が見えてしまった。残念に思ってか、自然と歩幅が小さくなる。

 不意に顔を背けて歩いていたりこが、ちろりと俺を見上げた。しかしすぐまた家へとじっと視線を注ぐ。

「傘、ありがと」

 雨音に溶けそうな声をアルファの耳が拾った。

 なるほど、普段は見せつけたいがこの顔は誰にも見せたくはねぇなと、周囲の世界から隔離する様に傾きをそっと深めてしまった。








 


 






あとがき

 みんな糖分補給できてるー? もっとがいいのか、謎だ(おい
 今の所あと八っつくらい小ネタイトルがあるよ~(笑)お花ちゃんと聖也くん視点も入れてあげたくて

 ちなみに付き合って早々大神がさらっと「付き合いだしたから」と聖也くんたちに言って、それを聞いてた教室から激震と共に一気に多学年まで広まったので、バレてはいるんすけど堂々といちゃいちゃをりこちゃんが許容するかは別という(てへぺろ

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた

桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。 どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。 「もういい。愛されたいなんて、くだらない」 そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。 第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。 そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。 愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...