38 / 49
高校生編
掌小話5 ぎゅう
しおりを挟むあ、また空を見てる
時折、窓からぼんやりと空を見ているりこちゃんは、どこか寂しそうで、いますぐ消えてしまったりどこか遠くへ飛んで行ってしまいそうに見える。
だから、慌てて近付いて、ぎゅうっと抱きしめる。
そうすると、りこちゃんはすぐに私に気付いてへにゃりと相好を崩すのだ。とろけた笑みは、私なんかよりもよっぽどかわいらしい。
「りこちゃん好き~」
「えへへ、お花ちゃんどうしたの。勿論私も好きだよー」
遊びだと思うのか、軽くぎゅーっと返される。もし居たのならばまるで姉の様な居心地の良い腕に安心する反面、そういう意味じゃないのだというもどかしさもある。
「はっ! 聖也くんにバレたらヤられる!!」
「もう居るよ」
「こわ!!!」
一瞬でお顔が真っ青になる様子は、いつもの陽気で元気なりこちゃんだ。聖くんも、いつもの様ににこにこと仲良く話してる。
でも、聖くんは多分気付いてない。聖くんにいつも頼ってばかりだからか、この不安の名前や理由が自分では分からない。
聖くんが少ししていつもの様に離れるよう言ったけど、私は首を振ってもう少しだけぎゅっとした。
わたわたと二人が慌てるけれど、結局はりこちゃんものんびり髪を梳いてくれる。
「りこちゃん、何でも言ってね。友達だもん」
大事な大事な姉の様な女の子を守りたくてそうっと言えば、りこちゃんは小さく息を吸った後、熱烈な抱擁をした。肩口に顔を埋めて隠す様に。
「これは、三角関係の予感!! 私、お花ちゃんの為なら何でも出来るっ」
「へぇ…。僕がやってもいいけど、大神くんを呼ぶかな」
「手口が悪どい!!!」
ゆるりと梳かれる指は優しい。でも優しい指の反面、頼られない頼りない自分がもどかしい。
お姉ちゃんの様で、でもときどきどこか迷子のこどもみたいな、ほつれそうなちぐはぐに時折見えるりこちゃんが心配で不安だけど―――
頬ずりしていたら、お花ちゃん今日は子供みたいとくすくすと心地よく喉で笑う声がする。ふたりが付き合い出してから、少し似たところも増えてきている。そう言うとりこちゃんは変な顔になるけど。
「―――りこちゃんのこと、まってるね」
「は、花!!? 僕捨てられる!? ……利根田さん、命賭けあおうか」
「え!!? これは略奪のお誘い!!? お花ちゃんが言うなら私!! あ、でも軽く死ねる」
「落ち着けお前等」
タイミングが悪かったのか、二人でわーわーと慌てている。楽しそうなので思わずふふ~と笑っていると、呆れた様子で大神くんが傍にやってきた。
自然にりこちゃんと聖くんの間に入って、観察する様に私を静かに見る。でも、それもすぐにりこちゃんの声がして逸れた。
一瞬で優しく細めた目は、誰から見ても慈しみに満ちている。
だから、私は安堵してようやっと腕を離した。
暖かさが減るけれど、すぐに聖くんにぎゅうっと捕まえられる。
「花、浮気する前に悪いところがあったら言って。全力で直す。無理なら…」
「やばい! ヤられる!!! 大神助けてくれ!」
「助けても浮気されるしなぁ?」
「野郎共がひでぇ! お花ちゃあーん! はっ! エリスちゃん助けて!」
「嫌ですわ」
聖くんは威嚇しながらしっしと手先でりこちゃんを追い払っている。
聖くんと目配せしあって、大神くんに首襟を掴まれずりずりと引き摺られるりこちゃんは涙目だ。
でも、あれくらい強引で力強く引き寄せる腕の方がいいのかもしれない。
今までは不安だけだったけれど、今は傍に守る様に狼さんがいる。
「花、どうしたの」
「ん~、なんでもないよ~」
女の子の背もたれになって、窮屈だけど満足そうにぐるりと寝そべる大きな狼を想像してしまい、思わずふふと笑いが零れる。突然笑ってしまったので、不思議に思った聖くんが声を掛けたけれどゆるく首を振った。
本当は私がぎゅうっと抱き締めてあげれたらいいけど、私じゃたぶん力が足りないから……。
だから、私は手をめいいっぱい広げて待っておく。でも、その代わりもしりこちゃんが何か困って私を頼ってくれたその時は、決して離さないように安心できるくらい力強く抱きしめ返してあげるんだ
「名前、忘れてただろ」
「ま、毎回とか聞いてないし!」
「じゃあ今から毎回な」
「あーあー聞いてませんー」
「ガキか」
遠くから聞こえた仲の良いじゃれ合いに、不安が薄らいで思わずまたふふっと笑いが零れてしまった。
めっちゃ長いあとがき
お花ちゃんはおっとりしてるんですけど、こう、どんなに絡まった糸や状況の中でも、時間はだいぶ掛かるんですが物事の本質を見抜く目があるイメージです~。頭がいいわけでも、意図を汲む読解力があるというわけともまた違います~。なのでゆっくりじっくり時間は掛かる。こう、毛糸玉を解いて中の芯が分かるんじゃなくて、糸の隙間をぬって芯を見抜く感? もはやそれは一種の超直観とか才能ではある。
ただ、社会に出ると、出来ない人間扱いされることもあるでしょう。というか、正直行動はゆっくりなので仕事が出来るかというと出来ない分類です。でもお花ちゃんの真価は日常でなくて、窮地で輝く能力かなぁ。目だけあっても仕方ないので、両方もった強さ?
例えば「100人中99人があの会社の社長は横領をしたんだ。だからこの会社は倒産する。別の会社に行こう」と言ったとして、実際にはやっていないけど恨まれまくってるすんごい自他共に厳しい性格のキツイ人で、その会社の社長がお花ちゃんを使えない者扱いして邪険にしてたとしても「あの社長はそんなことしないと思う」と最後の五人あたりまで掛かりつつも自分の中で見て来た理由をもって判断して「でも悪い点もあったし倒産はするだろう」と認めつつ、倒産を避けられる能力はないので倒産しちゃいます。でも、寄り添いたいと思った人だったら、例え倒産してもその下について、社長が田舎に帰ると決めるまで見送るか、もう一度奮起するので助けてくれと頭を下げたならどんだけマイナススタートでも微笑んでその手助けをする感じイメージかな。お花ちゃんはどんな状況でもおおらかに受け入れてハピエンに持っていく精神的な健やかな強さというか、しなやかな器の様な心の強さイメージ~
大事な守りたいものを見極めて分かっているので、億万長者の嫁でも、畳一畳の部屋の嫁でも、微笑みの質が変わらないのは稀有な子だと思います~。
これ伝わる?長い?ごめんw
まぁ聖也くんが畳一畳の稼ぎで収まるわけないので大丈夫でしょう(ぇ
次話予約「あねき」
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる