趣味だったオメガバースの世界に転生したようだが、何か違うので布教しようとしたら変態扱いされる件

トネリコ

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高校生編

掌小話6 あねき

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「翔馬、見ておじクマちゃんぬいぐるみ! 可愛くない!?」
「暑苦しい。来んな」

 姉貴がぐりぐりと随分前からハマってる変なぬいぐるみを押し付けてくる。何でこんなオッサンみたいなゲジ眉のブサイクグマが好きなのか全くわからない。

 というか、姉貴の部屋は女子の部屋というよりゲテモノの部屋な気がする。座布団も枕カバーも変なブサイクな猫だし。なんか狸増えてたし。

 折角リビングのソファで漫画を読んでいたのに、帰って来て早々絡まれてしまった。ぐいぐいと頬に押し付けられるクマを押し返して抗議すると、相変わらず大げさにショックを受けた様子で床に座る。

「うう、反抗期が長い」
「反抗期じゃねぇ!」
「明らか反抗期じゃん」
「違うっつの!」

 じとーっとした目でブサイクグマを抱きながら見てくる視線は鬱陶しい。俺は反抗期じゃなくて普通の主張だっつうのに。

「昔は天使の塩顔だったのに。今ではこんなに塩対応」
「上手くもねぇから。顔も変わんねーし」

 無視して漫画を読もうとすると、拗ねた様に横でぬいぐるみで遊んでいる。
 いつもなら俺が不機嫌だとすぐに引くのに、珍しいと姉貴を見て卓上のカレンダーに目が留まった。

 あ、そうか、もうすぐ姉貴の誕生日だ

 理解してしまえば、邪険にしづらくなる。仕方なく漫画を閉じて、適当に目に付いたブサイクなぬいぐるみの話を振った。

「それ、買ったの?」
「! これ、大神が取ったやつ。あいつクレーンゲームも意外と上手くてさ」
「へー、大神兄ちゃんやっぱすげぇや」

 近所中の憧れの兄さんの名前を素直に感心して呼べば、先ほどまで話し掛けられて嬉しそうにしてたのに、途端に顔を顰めて複雑そうな顔をする。
 惚気話でも聞かされるかと思ったのに、変な顔だ。

「大神が褒められるのは複雑だ。翔馬の関心を奪いやがってあいつめ」
「大神兄ちゃん不憫」

 姉貴の俺への愛が強すぎてげんなりするが、あの運動も出来て顔も良くて背も高くて頭がいいという、異次元の雲の上の兄ちゃんよりも俺の方がいいというのは、ちょっとだけ嬉しい。勿論ちょっとだけだけど。

 つい顔を逸らしながら横目で姉貴を見れば、何を思ったかぬいぐるみの頬を引っ張っていじめている。

 正直、家族の贔屓目で見ても姉貴は普通に毛が生えたような容姿だし、あの大神兄ちゃんならもっとモデルみたいに可愛いかったり綺麗な彼女も作れるだろうに、不思議という気持ちが大きい。

 普通なら弄ばれてるのを心配するけど、あの大神兄ちゃんの砂糖を吐きそうな態度を見てたら目を疑いつつも信じるしかない。

 とはいえ姉貴も、中学に入ってから益々変になったのはやめて欲しいけど。それとももしかして両親を見て目が肥え過ぎたから姉貴の珍妙さがいいんだろうか。学校に行くと「お前の姉貴って女堕としのプロなんだろ。コツ教えてくれよ」って友達に言われた時の気持ちを姉貴も分かればいいのに

「ん? 翔馬どうしたの」
「姉貴を恨んでた」
「さっきまでの間に一体何が!?」

 つい八つ当たりしてると愕然とした表情の姉貴が頭を抱えるので、それを見て留飲が下がる。
 ころんと落ちたぬいぐるみを拾えば、確かに触り心地はいい。

「へぇ、意外と高そう。これベッドに飾んの?」

 何の気なしにぬいぐるみを返しながら問いかければ、珍しく歯切れ悪く答えが返った。
 よく見れば少し目線が逸れていて、何故かぬいぐるみを受け取ろうとしない。

「いや…。床にでも置こう…かな。うん」
「床だと汚れるし机でいんじゃね」
「いや、机もちょっと」

 何故か頑なに傍に置きたがらないので、折角の大神兄ちゃんからのプレゼントなのにと不思議に思ってゲジ眉の赤色ぬいぐるみを見ていると、ふと閃いた。

 分かった瞬間、つい「あ」と声が漏れる。

 びくりとした姉貴が恐々こちらを伺うので、つい意地悪く笑いながらぬいぐるみを見せて腕を振った。
 声真似、意外と似てると評判なのだ。

「“抱いて寝ろよ”とでも言われた? 大神兄ちゃん流石だなぁ」
「だっ、ちょっ、ちがっ」

 真っ赤になってぱくぱくと声を詰まらす様子は、家族でも初めて見る顔だ。姉貴は普段大げさな動転はすれど、本気の動揺は見せないから

 その様子に、どこか肩の力が抜けた気がして、ぬいぐるみを押し付けてその腕に返す。

「姉貴、ぬいぐるみに大神兄ちゃんの名前とか付けないでよ」
「だ、誰が付けるか! こら! 翔馬待ちなって!」
「漫画読むから部屋帰る」
「うう、姉の扱いが超酷いっ」

 後ろから聞こえる声に肩を竦めつつ、のんびりと階段を上る。自分の部屋は二階の廊下の奥だ。同じ二階にある姉貴の部屋の前は必ず通らねばならない。

 いつもの様に何気なく通ろうとした時、姉貴の部屋のドアが少し開いていて、無人の真っ暗な中の様子が不意に目に入った。

 あの時と同じ様に、ぽつんと机と椅子が変わらぬ様子で映る。

「そうだ、大神兄ちゃんを誕生日会に呼ぶかな」

 ふと思いついた案は、思いのほか名案に思えた。
 強くて陽気で能天気そうな姉が、深夜に嗚咽を堪えていた様子を偶々見てしまった衝撃など、願わくばもう受けたくない。あの後味の悪さは強烈だ。

 あの日はお陰様できっちり寝不足だったのに、当の本人はその日も通常通りというか更に異名を引っ提げてはっちゃけて帰ってくる始末だし。

 昔から、手間の掛かる面倒な姉である。

 思わずため息を吐きながら、パタンと姉貴の部屋のドアを閉じる。

 隠してるけど姉貴は何故か誕生日を祝われないように友達の家に行ったり、やたらと逆に陽気に振舞ったり、誕生日が近付くとやけに寂しがるから、たぶん、大神兄ちゃんと一緒の方がいい。押し付けともいうが、弟なりの思いやりだ。
 
 やたらと小規模にしてあわよくば流そうとする姉貴と、準備に張り切る母の間に立つのは毎年大変なのである。

 のっそりとドアを開いて自分の部屋に入れば、自然とドアが閉じようとした。

 しかし、ついいつもの癖で閉じかけたドアを逆に押してしまう。
 きぃ…と小さな音を立て、閉じ掛けたドアが人一人分開いて止まる。

 残念なことに、あれ以来、時折ドアを開けて寝る癖が付いてしまったのである。幸い、一度しか見ていないけど。

 当の本人は「開いてるよー」と偶に呑気に閉じてくる始末なので、本当、困った姉であると、ついついため息を零してしまった。












 




あとがき
 
 弟くんのイメージ「なんだかんだのシスコンっ子」

 周囲があんな感じなので結構常識人というかまともというか、真面目?(笑) ちょっと苦労人気質があるけど、普通の健康的な一般健全男子イメージかな。顔はブサイクよりというか、格好いいわけではないモブ顔なんですけど、清潔感はあるし声も大神の声真似が意外と似てる感出せるので、意外と格好いい声。(←言い方ひどい) 女子からも嫌われておらず、探せば中学生活中一人くらい彼女できそう(おい) まぁ作者、こんな風に書きつつ可愛がってます(にまにま

 てことで纏めるとなんだかんだシスコンブラコンの仲いい姉弟である。なお、絶賛反抗期中(作者も認定←

 裏豆事情なんですけど、前の地球には弟という存在がいなかったので、無意識に母や父よりも一歩心の距離の近い愛情を注いでます

次話「なかまいしき」 聖也くん視点☆
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